「ウーマノミクス」2015年に生まれたこの言葉、みなさんご存知ですか。
女性の活躍により組織だけでなく日本経済の活性化につなげる社会づくり「ウーマノミクス」。
企業活動を支える働き手として、長期低迷に苦しむ日本企業と日本経済の救済の動きとして、女性の活躍推進はどの企業においても無視することができなくなっています。
出産を機に仕事を退職、仕事と育児の両立が難しいといった理由で退職する女性が未だに多く存在しています。
女性が活躍できていないという現状は、経済的損失とも言えます。しかしプラスにとらえれば、女性の活躍により経済的に発展できる”のびしろ”が日本にはある!ということです。
女性活躍の現状を振り返りながら、女性の働く割合が全国1位である福井県をみていきます。
また、今後の女性活躍のキーである「イクボス」にも注目します。
女性活躍の現状 働く女性の実感のなさが浮き彫りに
まず、女性活躍の現状についてみていきます。
総務省の労働力調査によると、16年の女性就業者数は約2800万人と13年より100万人増加。15~64歳の女性の就業率は66.0%と同3.6ポイント上がっています。
厚生労働省の雇用均等基本調査によると、16年度の女性管理職比率は12.1%で、13年度より3ポイント上昇。女性役員がいる企業は45.4%と同8.4ポイント増えています。女性登用が進んでいると言えます。
女性活躍はデータ上では進んでいるように見えるかと思いきや、働く女性自身の実感は伴っていません。
日本経済新聞が行った2000人意識調査によると、自社の女性活躍が進んだ実感がある女性は2割どまり。6割は職場改革が進んでいないと感じています。
男性中心の組織風土で、活躍できないとの声が多く上がっています。
また、仕事と育児の両立が難しい状況は続いています。
両立経験者のうち、仕事をやめようと思ったことがある人は半数以上。20代、30代は6割を超しています。理由は「時間的な余裕がなく、子どもに向き合えない」が46.1%と最も多くなっています。
仕事と子育ての両立に最も重要なことを聞いたところ、「上司や職場の理解」(30.5%)がトップ。「夫の理解と協力」(15.2%)が続いています。
家庭において男性側の理解や協力以上に、職場における意識や行動の変革が必要とされていることが分かります。
全国1位!女性が働く福井県 働くことが当たり前の風土
福井県がまとめた2016年社会生活基本調査(生活時間編)によると、15歳以上の働く女性の割合を示す有業率が58.6%となり、全国1位となりました。
女性の働く意欲が高く、記録が残る1996年から上位を維持しています。母親やその上の世代においても専業主婦でいる女性が少なく、働くこと・共働きであることが当たり前であるといった風土が根付いています。
平成27年国勢調査 就業状態等基本集計 福井県結果の概要によると
- 労働力率・・・15歳以上人口に占める労働力人口(就業者と完全失業者を合わせた人口)の割合
62.4%(全国第3位) 男 71.7%(全国第9位) 女 53.9%(全国第1位) - 就業率・・・15歳以上人口に占める就業者数の割合
60.4%(全国第3位) 男 68.9%(全国第6位) 女 52.6%(全国第1位) - 共働き率・・・夫婦のいる一般世帯に占める共働き世帯(夫婦ともに「就業者」の世帯)の割合
58.6%(全国第1位) - 雇用者(役員を除く)に占める「正規の職員・従業員」の割合
69.8%(全国第3位) 男 84.3%(全国第6位) 女 53.9%(全国第2位)
女性が社会で活躍する、他の都道府県に比べて進んでいることが分かります。
共働きの世帯が当たり前。
子どもが1歳にもなれば復帰して働く、そういった先輩や上司の姿があるので、後輩や部下たちも自然とその流れになっていきます。
福井県は「カツレツ」「やきとり」「天ぷら・フライ」「コロッケ」といった総菜の消費金額が高く、調理食品の利用頻度が高いといったデータがあります。三世代が同居が多く、料理を準備するのが大変といった背景もあってのことですが、スーパーやコンビニには色とりどりの惣菜が並び、母親やその家族も惣菜の購入に対して抵抗が低く、うまく利用しています。
47都道府県の「幸福度」ランキングにおいて福井県は3回連続幸福度全国1位を獲得。仕事分野の大卒者進路未定者率の低さをはじめ、教育分野の学力や社会教育費、子どもの運動能力など8項目で1位。
子どもの学力・体力においても全国でトップクラスを維持し続けています。世帯あたり預貯金残高なども全国トップクラス。
三世代が同居もしくは近くに親が住んでいるといったこともあり、子どもたちの教育に対しての助けも多くあるといったことも影響があるようです。また、子どもの教育資金確保のためにも母親は働き続けるといったこともあるようです。
母親が働きやすい環境が整い、幸福度も高く、子供の教育にも熱心。
女性活躍推進の見本として「福井県モデル」とよばれ注目を集めています。
しかしこの福井県にも課題はあります。男性の家事参加の時間数はほかの都道府県に比べ少なく、管理職の女性比率は国内で常に下位です。
眼鏡や繊維といった地場産業で女性の労働力は明治時代ごろから重要であった、女性が働くことが当たり前の中働かないといった選択肢をとることが許されない、そういった風土が福井ではまだ残っているのかもしれません。
三世代同居や近くに親や身内がいる、女性が働くことが当たり前である。そういった環境が整っているという背景は女性が活躍し続けるために重要であることに間違いないようです。
女性活躍のキーマン「イクボス」
では福井県のように同居が難しい、そんな女性たちの活躍はどうしていけばいいのでしょうか。
総務省の社会生活基本調査(16年)によると、共働きの夫の1日の家事・育児時間は46分で妻の6分の1以下。負担は女性に偏っていることが分かります。
夫婦と子どもという核家族が多くを占める日本の世帯状況。
福井県のように同居ではなく核家族化が進んでいる中で、子育て世代の女性がイキイキと働き続けるためには、男性の家事や育児への参加が必須となります。女性の家事や育児の負担軽減が必要です。
しかし父親側が家事や育児に積極的に参加したくとも、仕事に忙しく帰宅が遅い、帰りたくても帰れない・・・このような状況では不可能です。
後押ししてくれる環境がなければ、男性の家事育児への参加、女性の活躍の推進へはつながりません。
男性の家事への参加を促す取り組みは国や家庭だけでは成り立ちません。働く職場における理解がカギとなります。
上司そして企業の経営層が女性だけでなく男性側に関しても、同様に認め、協力する姿勢を持たなくてはいけません。
昨今、職場で共に働く部下・スタッフのワークライフバランスを考える且つ企業の業績を向上に向かわせる「イクボス」の存在に注目が集まっています。
「イク(子育て)」と「ボス(上司)」が合体してできた造語。
「イクボス」とは、男性の従業員や部下の育児参加に理解のある経営者や上司のことです。子育てに積極的に関わる男性をイクメンと呼ぶのに倣い、そのイクメンを職場で支援するために、部下の育児休業取得を促すなど、仕事と育児を両立しやすい環境の整備に努めるリーダーをイクボスと呼びます。
(日本の人事部 より引用)
核家族がスタンダードとなった現在。男性社員の長時間労働や休みの取りづらさはその家族への影響が大きく、ワークライフバランスを重要視するスタッフとの乖離がでてきています。子育て世帯を含めどのようなメンバーも働きやすく生きやすい、男性も積極的に育児に参加できる制度や環境を整えることが大切です。
NPO法人ファザーリング・ジャパンが2014年3月からダイバーシティ・マネジメントができる管理職を養成する事業 イクボスプロジェクト を展開。地方自治体や企業によるイクボス宣言がテレビやメディアでも取り上げられ、話題となっています。
イクボスの上司がいる職場。イクボスの下で働くワーキングマザーだけでなく。今後結婚や妊娠を希望している部下、そして男性社員にとっても働きやすい環境になります。
また、イクボス自身が育児休暇取得や有給休暇取得を積極的に行う。当たり前のように休暇がとりやすい雰囲気がつくられていきます。
なかなか実感値の伴わない女性活躍推進。女性が働き続けることができる働きたいと思うためにはやはり環境の整備が大切です。
仕事と家庭の両立を応援しながら、仕事と私生活を楽しみイキイキとしている「イクボス」の存在ー活躍推進のカギになるかもしれません。