Habi*do通信

タスク管理に頼り切らないで! 「テレワーク」成功のカギは目標共有

数ある「働き方」の選択肢のひとつとして、「テレワーク」もすっかり認知されてきました。しかしその前に考えたいのは、テレワークの本当の意味での「成功」について。単に流行っているからという理由での安易な導入では、失敗の確率が上がってしまいます。

「必要に迫られて、急いで制度を導入したけれど、まったくうまくいっていない」
「生産性が下がっていく気がして、怖い」

もしあなたの会社に、上記のような空気が蔓延しているのなら、今一度テレワークの意味と成功のカギについて見直す必要がありそうです。

「テレワーク」のメリット4つ

ご存知の通り、テレワークにはたくさんのメリットがあります。
WORKLIFEBALANCE

テレワークメリット
1. 育児や介護などを理由とする離職の防止
育児や介護などで離職を検討する社員の、「仕事との両立」が実現できる

2. コスト削減
通勤交通費やワークスペースの削減、さらにペーパーレス化も導入すれば、印刷代や紙代の節約にも

3. 社員のワークライフバランスの充実
時間に縛られない柔軟な働き方を提案でき、採用ブランディングにも役立つ

4. 災害時の事業継続
自然災害や感染症の流行などが起きた場合でも、事業を継続することが可能になる

個々の環境に対応した働き方は、社員のモチベーションUPや、多種多様な人材の確保につながります。これらがテレワークの大きな強みです。

導入しただけでは成果は上がらない?

「これだけのメリットがあるなら、導入決定!」と、セキュリティ環境、端末、労働環境を揃えた会社もあると思いますが、ちょっとお待ちください。テレワークの要は、導入後の定着です。個人としてもチームとしても、生産性を保つだけではなく、むしろ向上させて企業活動を継続できて、初めて「テレワークが成功した」といえるでしょう。

では、生産性を上げ、社員のやる気も倍増させ、しっかりと定着する「テレワーク」には何が必要なのでしょうか?

「テレワーク」の最大の不安は、姿が見えないこと

悩む上司

制度ができ、いざ現場での運用を始めるとき、管理職が一番不安なのは、「きちんと部下を評価できるだろうか?」ということではないでしょうか。

部下の働く姿が見えないので、指示したとおりの業務をしてくれているか、わからない。その一方で、部下も「今やっている仕事と新しく発生した仕事、どちらを優先すべき?」と不安を抱きながら、仕事をしているかもしれません。

この状況で仕事を進めるのは、上司にとっても部下にとっても、プラスではありませんね。

「タスク管理」は「テレワーク」の救世主?

タスク管理

この状況を改善する方法のひとつが「タスク管理」です。「タスク管理」とは「行うべき仕事を細分化し、優先度をつけて効率的に仕事を進める手法」。うまくいけば、指示した業務やその優先順位、そして進捗状況がクリアになり、上司は、的確なマネジメントと正しい評価をしやすくなります。そして部下はよりスムーズに業務を進めることができるようになります。

そのため業務内容を詳しく記した「職務記述書(ジョブディスクリプション)」や、「タスク表」を作成し、マネジメントに活用している会社も多いでしょう。

しかし、タスク管理にはデメリットもあります。決して、テレワークを成功させる魔法の手法ではありません。

「タスク管理」は諸刃の剣 使い方に要注意!

「通常より、細かい業務設定をしたほうがいいに違いない。だって、姿の見えないテレワークなんだから」と思っていませんか?その考えに固執するのは、少し危険です。「テレワーク」特有の業務の細分化が、社員のモチベーションに悪影響を及ぼすケースは、後を絶ちません。

パソコンの画面を見ながら憂鬱そうな女性

では、テレワーク社員がよく口にする「タスク管理」についての、「3大ネガティブ発言」をご紹介しましょう。

3大ネガティブ発言
第1位 「これ、誰のタスク?」
通常業務より細かく分担分けされているため、予想していなかったことが突発的に起こると誰もが「自分の担当ではないので」といって、処理しない…

第2位 「これ、何のタスク?」
通常業務より長期の仕事がリストアップされており、あまりに長い間リストに上がっているため「結局どういうこと?」を引き起こす。そして誰も処理しない…

第3位 「このタスク、何のため?」
2位と同じく長期間リストとしてあがっているため、状況が当初から変化しており、もはや、そもそもの目的が見失われている。そして誰も処理しない…

上記のようなことが頻繁に起きると、緊急性が高い業務への対応スピードが落ちてしまいます。本来の「お客様にとって何が大事か?この仕事で達成すべきことは何か?」という視点を忘れなければ、迅速な対応ができるはず。しかし振り分けたタスクだけで優先順位を判断するようになると、人は思考停止してしまいます。

「タスクベース」の弊害

まず、「業務中の様子が見えないから」と、いつもより細かい「タスク」を部下に課してはいけません。「タスク」の細分化は責任の押し付け合いを引き起こします。一人ひとりに「タスク」を振り分けられることで個人に責任負担が大きくなるからです。

そうなると、部下は、全員で成し遂げる「会社としてのゴール」ではなく、振り分けられた「自分のタスク」だけを見るはめに。この状況に陥ると、それぞれが自分のタスクを片付けることに精一杯になり、タスクがまだ残っているほかのメンバーに対し、不満さえ感じるようになります。

そもそも「タスク」とは、「仕事」の小さい単位

つまり、テレワークでタスクを重視しすぎると、「タスク管理」が目的になってしまうのです。あくまで目的は「仕事での成果を上げること」であり、タスクを管理することではありません。

木と森

「木(タスク)を見て森(仕事)を見ず」では本末転倒。これを防ぐには、それぞれが目の前の「タスク」はどんな「仕事」の一部なのかをきちんと理解することが重要です。

この「一本の木(タスク)」はどんな「森(仕事)」になるのか、さらにはどんな「森(仕事)」を目指しているのか。部下としっかりとコミュニケーションをとって、まめに「目指しているゴールが一致しているか」を確認しましょう。

思い浮かべてみて。もし、みんなでカレーを作るなら…

カレーライス

調理実習を思い浮かべてください。メニューは「ゴロゴロ具沢山の絶品ビーフカレー」。
あなたは担当を振り分ける係。「材料の調達」や「下ごしらえ」、「調理」をそれぞれの担当者に振り分けます。もし担当者に「カレー」としか伝わっていなければ、材料にはビーフではなく、ミンチ肉が用意され、野菜はすべてみじん切りで、気が付いた時にはドライカレーが完成しているかもしれません。でも、それぞれの担当者は決して間違ったことはしていないのです。

もし、「ゴロゴロ具沢山の絶品ビーフカレー」を作るときちんと伝わっていれば、それぞれの担当者は知恵をしぼり、予算内の最上級の和牛が用意され、大きく食べ応えのあるサイズに野菜をカットし、隠し味をたくさん加えて調理した「ゴロゴロ具沢山の絶品ビーフカレー」を仕上げてくれるでしょう。

同じ「カレー」でも意図がしっかり伝わっていないと、出来上がるメニューは全く違うものになります。これは仕事でもまったく一緒ではないでしょうか。

「テレワーク」成功のカギは、目標の共有

やる気

テレワークで重要なのは、明確な目標と、メンバーの信頼関係構築。それを後回しにして、タスク管理に頼ることはおすすめできません。

フェイストゥフェイスで意思を伝えられない「テレワーク」では、より一層細やかなコミュニケーションが必要になります。「会社として、どのような目標を成し遂げたいのか」、というビジョンをしっかりと部下に伝えましょう。

そもそもの組織の在り方、信頼関係、目標の設定・共有ができていて、はじめてテレワークは現場に定着し、成果を上げてくれます。

そして、「テレワーク」を導入するかしないかに関わらず、コミュニケーションは労働生産性の向上を目指す上で絶対に欠かせない要素。「うちはテレワークなんてしないから、関係ないよ」なんていわずに、「もしテレワークを導入するとしたら…」と考えてみては?きっと、あなたの会社にとって大きな利益につながること、間違いありません。