Habi*do通信

新入社員・若手社員の育成のカギ「叱ると褒める」で成功させる、マネージャーの春の大仕事

毎年のことですが、新入社員が入社する季節がやってきました。

新年度が始まり多くの会社で入社式が開かれたかと思います。
新型コロナウイルスの感染が広がる中、開催時間の短縮や規模を縮小、テレビ会議方式、式自体を中止といった感染防止対策を実施した企業も多く見受けられました。

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため研修が自宅で実施されたり、テレワークが広がり新入社員の職場デビューが遅れる、という場合もあるでしょうが、新しい人材の着任にソワソワしている方も多いはず。

春は会社自体が活気づく季節です。入社だけではなく従来社員の異動も行われるため、雰囲気が大きく変わるチームもあるでしょう。それを楽しみにするか、不安に思うかもそれぞれですね。

そして、上司の不安は「新しい人材が定着するか」の一点でしょう。口には出さなくとも、ちょっと憂鬱…と感じているマネジメント層も多いのではないでしょうか。

世代間ギャップはいつの時代もなくなりませんが、もし「最近の若者は分からない」「我々とは違う価値観で行動する」と決めつけていては、コミュニケーションの不安は払しょくされません。
まずは近年の若手社員の傾向を知り、同じ目的に向かえるチーム員として、成長できる環境を構築してあげましょう。それこそがマネージャーの「春の大仕事」です。

近年の新入社員・若手社員の傾向とは


基本的に、とても素直で、周囲の雰囲気に合わせて動く傾向があります。その輪が広がったとき、全体が動き出すため、突出した個人は見つけにくいかも知れません。

検索

また失敗を恐れ、頭で考えすぎて行動に移すのに時間がかかりがちです。間違うのが怖いから、すぐに正しい解答を欲しがります。調べることも苦手。上司からすると「Googleで検索できるでしょ!」「そこにある資料に書いている!」と思うようなことも起こるはず。「聞けば答えてくれる」という姿勢で、世の中の問題には答えが存在すると思い込んでいるふしもあります。

より良い結果を出そうとするアクティブさは見えにくく、企業の成長より自身の生活の安定と平和を求めます。
自分に関係ないものごとに興味がないため、視野は狭め。逆に、自身に関することには譲れない頑固さも持っています。たとえ給料などの待遇面がよくても、任意の日程で休めないなら辞めるという、会社組織に対する淡泊さもあり、コントロールはしにくいでしょう。

こんな新入社員たち、あなたはどう育成していきますか?
「いいところがないじゃないか!」と思いましたか?
しかしこれが現実です。そして、素直な分、信頼関係が築けたら「Win-Win」の間柄になれるという大きなメリットもあります。

まずは定着させる。そこから始まる部下育成

長い目で見ると「育成」は必要ですが、まずは管理職層とはまったく違う価値観を持つ若者世代を、会社に定着させることに注力しましょう。

人は、会社に愛着を感じると、長くとどまろうとします。さらに「ウチの会社は、人材が優遇されている」と感じれば、労働環境に敏感な若い世代は「しばらくはここにいよう」と思います。
転職活動

誰ともすぐに連絡が取れる昨今、わざわざ会わなくてもSNSを覗くだけで、友人知人の近況は分かります。そこで比較し、自分の環境が不遇だと思えば転職を考えるでしょう。若手社員は売り手市場ですし、転職サイトに登録すれば自動的にスカウトがくるような現代社会において、「他社よりここがいい」と感じさせる環境整備は必須です。
本気の育成は、そのあとからでも遅くはありません。

管理職が身に付けるべきは「叱る・褒める」スキル

育成環境といっても、いちマネージャーがすぐに評価制度を変えたり、社内インフラをととのえるのは難しいでしょう。しかしすぐにできることがあります。それは、「叱る・褒める」のコントロールです。

褒めることが部下育成において大切なのは認識しているはずです。しかし、マイナスな要素をきっちり叱ることも、褒めと同じくらい大切です。

激怒

しかし今の上司世代は、自身も褒められ慣れておらず、褒めること自体をしてこなかった世代。おまけに「叱る」に関しては、頭ごなしに叱る!しかない世界で育ってきたため、効果的な「叱る・褒める」が身に付いていません。

組織における正しい褒めは、決してご機嫌取りでもなだめるためでもありません。そして「叱る」も、そこに「育成」の視点がなければ、叱責がただの「怒り」だと部下に受け取られてしまいます。

「叱る」の先にあるのは、「自分で考える力」

ポイント

よい「叱る」には、いくつかのポイントがあります。

(1)叱る目的と行為を明確にしておく
(2)叱る理由をキチンと伝える
(3)行為だけを叱り、人柄や人格まで叱らない
(4)過去のことや他のことを持ち出さない
(5)感情的にならず冷静に叱る、怒鳴らない
(6)誰に対しても公平に叱る、男女差別しない
(7)逃げ道をつくっておく、徹底的に追い込んだりはしない

まずはルールを守らせる必要があります。ルールがあいまいだったり、惰性的に許す行為が蔓延すると、部下は何を守っていいのか、そして何を破ったら叱られるのかの事前判断がつきません。
また上司の指示は的確か、無理はなかったかは先に確認すべきです。上司側に落ち度がなかったと確認できて、はじめてその部下は叱る対象になります。

「叱る」の目的は、相手の行動を正しい方向に導くこと。
絶対に、感情で怒ってはいけません。

責めるのではなく、「なぜ?」「どうしたの?」と問いかけ、取った行動と取るべき行動を必ず本人に考えさせます。ここで正しい答えをポンと与えてしまうと、相手は自分の頭で答えを考えて行動しなくなるので、それは避けましょう。

自分の頭で考えるのが苦手な若手世代が相手です。育成するというスタンスを忘れず、根気よく向き合ってください。決してなぁなぁで終わらせずに、肝は押さえましょう。

適当に終わらせると、「この上司は甘いな」と思われます。軽視されたり軽蔑されるという部下からの評価は、よほどのことがないと覆せません。あなたも昔々、上司で嫌な思いをしたこと、ありませんか?そのときの気持ち、忘れていませんよね。

「褒める」は部下の成長の必須条件

応援する

逆に、うまくいったときに行うのが「強化」のフィードバックです。「強化」のフィードバックでは、よい行動に対して、褒めるだけではなく、何がどうよかったのかを本人に問いかけ、具体的に分析させます。
こうすることで「次もやってみよう」というモチベーションが生まれ、よい行動を慣習化できます。

(1)誰もが誉められると嬉しく、その人を好きになる
部下にとって最大の理解者は、上司であるべきです!
(2)どこを誉めればよいかを知っておくこと
長所を的確に把握し、得意を伸ばします。どうすれば長所がもっと伸びるか、そして業績につながるかを常に念頭に置きましょう。
(3)部下が誉めて欲しいと思っていることを誉める
ピンポイントで褒められると、「ちゃんと見てくれていた!」と嬉しくなるものです。
(4)心にもないことは誉めない、お世辞は逆効果でしかない
(5)誉めるタイミングを外さない
「今のプレゼンではあの言葉がキラーワードだった」など、すぐに褒めることで効果が上がります。
(6)誉めた後で次の課題を示し、導く
あと少し具体的な案を提示できればもっと良くなる…など、リアルな助言をしましょう。
(7)抽象的ではなく具体的に
プロセスの評価、結果だけではなく、過程も褒めてみてください。過程も評価対象であると相手に伝え、結果が良くなくても、次の成果につながるように成長を促すことが大切です。
(8)他の人の前で誉める
他の社員にも目標達成を知らせ、拍手や、朝礼・会議での成果発表などで称賛を。目立つことを負担に思う部下もいるので大々的にする必要はありませんが、恒例とし、定着させます。

まとめ

やる気

仕事はいつもうまくいく訳ではありません。だからこそ、達成したら「褒め」、達成できなくてもいい点があったなら必ず「褒め」を繰り返しましょう。
そのためにも、新入社員や若手社員個人を観察し、適材適所に配置できるようにしてください。個人をよく見て長所を伸ばし、自ら考えて行動できるよう育成をしていきましょう。

ただし、ルール違反や指示の無視、行動しないといった行為がみられるときは、必ず「叱る」。部下のマイナスな行動を見逃さず、かつ見放さないことが、上司の大きな役割です。部下に「期待されていない」と感じさせず、導くために叱るのです。

「褒める・叱る」を機能させるためには、部下からの意見を聞き、討論し、環境を変えていくことも必要です。管理職が「あたり前」と思っている仕事ができない部下が多いのは、今のやり方が若手・新入社員の心に届いていない可能性もあるからです。

残念ながら、管理職がどう若手社員や新入社員に目をかけ、成長させるかの研修は行わない企業が多いのが現状です。
しかし、マネージャーとして「春の大仕事」を成功させなければならないのであれば、教わらずとも自分の価値観を変え、部下に向き合う必要があるでしょう。それができれば、本気の「褒める・叱る」は若手社員の心にきちんと届くはずです。
頑張ってください!