Habi*do通信

企業におけるダイバーシティ推進~現状・コロナやSDGsとの関係性~

変化のスピードが速く、先の読めない今。
正解がないからこそ、今までの型にはまらず、個を活かし創造性を発揮させたい。

実は、企業のダイバーシティへの取り組みは、より真剣なフェーズに入ってきています。
なぜなら、社員の多様性を高めること自体が目的ではなく、経営戦略を実現するうえで不可欠なものだからです。

この記事では、そもそものダイバーシティについて、また現状やコロナ、SDGsとダイバーシティとの関係性についてもご紹介します。
記事を読み終えると、自社に必要なダイバーシティとは何であるのか、具体的な今後の取り組みについての一歩が踏み出せるでしょう。

ダイバーシティとは

ダイバーシティは日本語で「多様性」と訳され、様々な異なるものが存在する、相違といった意味があります。ビジネスにおいては、国籍、性別、年齢などにとらわれることなく様々な人材を登用し、多様な働き方を受容していこうという考え方のことをいいます。

ダイバーシティ

国際社会における「ダイバーシティ」。
性別、年齢、職歴、人種、国籍、働き方、ライフスタイルなど、さまざまな属性や背景を持った人々が一つの社会に属し、お互いに認め受容する、ことが権利として確立されています。

日本においてはダイバーシティというと、女性活躍、障害者採用といった限られた側面からだけ捉えられていることが多いかと思います。
本来のダイバーシティにおける目的は、国境、性別、ハンディキャップ、年齢でわけて考えるのではなく、一人一人に違いがあることを当たり前に受け入れ、そのうえで能力や可能性を引き出し、組織の強みとして活かすことです。
LGBTなどの性的マイノリティに関する取り組みも始まっています。

多様な人材の能力や可能性を引き出す。イノベーションを実現する。
ダイバーシティは企業にとって重要なミッションとなりつつあります。

ダイバーシティ&インクルージョンの現状

「多様性」を意味するダイバーシティ、そして「受容」を意味するインクルージョン。
多様性を受け入れ、そして認め合いながら一体感を醸成し成長をしていく。多様な人材を受け入れるだけでなく、受け入れた上でそれぞれの人材の能力が発揮できる環境整備(インクルージョン)が求められています。

近年注目を集めるダイバーシティ&インクルージョン。
日本企業における実態はどうなのでしょうか。

「ダイバーシティ&インクルージョン」調査データ

オーストラリアのコンサルティング企業 The Dream Collective Global Pty Ltdが人財の多様性を受け入れ活かす姿勢として近年しようされている「ダイバーシティ&インクルージョン」について、職場がどの程度取り組んでいるかについて調査。
37.2%の企業は取り組んでいるものの、約7割の企業は対応が出来ていないことが浮き彫りになりました。
(参照:The Dream Collective Global Pty Ltd「働き方の多様性に関する意識調査」~全国の働く男女800名に調査~

ダイバーシティ&インクルージョンの現状

早くからダイバーシティ&インクルージョンの重要性を経営層が認識し、その推進に取り組んでいる企業も存在しています。
しかし、大部分の日本の企業においては、ダイバーシティ&インクルージョンに関する認知度と浸透度は依然として低いことが明らかになっています。

ダイバーシティの企業における重要性とは

人材マネジメントやビジネスの成長を語る上で、もはやダイバーシティは避けては通れないキーワードになっているのではないでしょうか。

少子高齢化が進むなか、日本の生産年齢人口(15~64歳の人口)は減少する一方です。企業・組織はフルコミットメントではない多様な労働力を活用することを迫られています。

市場が成熟しニーズが趣味的領分をも含むようになりました。顧客ニーズは多様化、多面化しています。また、顧客ニーズは時間の経過や状況に応じて変わりやすいものです。
多種多様な価値観やバックグラウンドをもつ人たちを組織にひきつけ、その多様な人材を活かし、ニーズの多様化、変化の速さへの対応が求められています。

多様性とイノベーションの関係性に関する調査

ハーバードビジネススクールのLee Fleming准教による「ブレークスルーの関係性」の研究。
ブレークスルーとは、進化や進歩の障壁を従来にない方法によって突破することを指します。

17,000件あまりの特許を調べ、縦軸に「イノベーション(特許)に金銭的な価値があったかどうか」、横軸に「メンバーのダイバーシティ」を表しました。
その結果、生み出されるイノベーションの価値の平均をとると、価値は類似性や関連性と反比例するということが示されました。画期的な発明はより類似性の低い集団から生まれることも示されています。
組織の中で多様性が増えるほど、平均のイノベーション達成度は下がります。しかし、多様性が少ない場合にはブレークスルーは出ないのです。多様性を増すことによってブレークスルーが出てきます。

突破口

つまり、多様性がないところには、課題を打ち破る革新的な解決策はない、のです。

イノベーションを生み出し顧客に新しい価値を顧客に提供していく。また従来にない新しい発想や技術を持つだけでなく、難関や障害を突破することもできるようになる。
ダイバーシティの導入は組織を持続的に成長させる手段として必要不可欠です。

コロナとダイバーシティ

新型コロナウイルス感染症にかかる緊急事態宣言。
感染防止のため人との接触を減らす、不要不急の外出を控えることが求められました。
企業はテレワークにシフトせざるを得ない状況に…。

介護

小さな子供をもつ世代。ワーキングマザーやワーキングファザーが働きやすいようにテレワーク、時短勤務といった制度を整えていた企業。
要介護者を持つ社員が有給休暇を取得しやすく、フレキシブルに働ける環境が構築されていた企業。
そもそもテレワークを実践していた企業。
大きな混乱なくこの事態に対応できたのではないでしょうか。

時間や場所にとらわれない多様な働き方を導入していることで、自然災害や新型感染症による世界的な混乱にも柔軟に対応ができます。事業継続が可能となるのです。

いざというときに対応ができる体制が自然に出来上がっている、ダイバーシティのメリットです。
子どもを育てる社員、介護を担う社員。そこから全社員へと適用範囲を広げることで対応が可能となるのです。

メンバー個々への意識や理解、サポート体制が整っている企業。何らかの外部要因での働き方への変化を求められた際、働き方や思想を劇的に変える必要なく、柔軟な対応ができるのです。

多様な背景を持つ人材を活用することが環境変化に強い組織につながる。この新型コロナウイルスの感染拡大で具体的に示された、といえるでしょう。

ダイバーシティとSDGs(エスディージーズ)の関係性

SDGsSDGs(エスディージーズ)とは「Sustainable Development Goals」の略称。
2015年の国連サミットで採択された、2030年までに達成すべき世界的な開発目標のことです。
17の大きな目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成されています。

ダイバーシティがもたらす「多様性」は、SDGsの取り組みを深めていくうえでも大きな役割を果たします。

SDGsでは「地球上の誰一人として取り残さない」ことを理念としています。
多様な人材を受け入れ、包括するダイバーシティ&インクルージョンの思想といえるでしょう。
SDGsの実現のため、多様性は重要な柱であり、17のゴールを結ぶものであるのです。

企業自体の持続可能性はもちろん、社会の持続可能性に向き合うこと。
製品や商品に付加価値をもたらす、信頼が高まるだけでなく、共通の目標を持つことで社内に一体感が生まれ、メンバーのモチベーション向上にもつながります。
SDGsの取り組みを進めるうえで、ダイバーシティは欠かせないものなのです。

ダイバーシティにおける障壁

ダイバーシティの推進はメリットばかりではなく、時に障壁も生じます。

多様な人材が集まるということは、同質ではなく異質なものが集まるということ。異質な要素がトラブルの原因となり、まさつや葛藤を引き起こすことにつながる可能性があります。

黒い羊効果

黒い羊効果

黒い羊効果をご存知でしょうか。
白い羊の集団に1頭だけ黒い羊が入ってきた場合、集団は黒い羊を仲間とみなさず、のけ者として扱い自分たちを守ろうとします。
黒い羊1匹をいじめることで、他の羊に一体感が生まれるのです。

理解できない、分からないものに恐怖を感じます。
自分と違うもの(異質なもの)を自身が受け入れられないと思うと、異なるものと認識しているものに排他的、攻撃的、排除する行動にでます。

これがパワハラ、セクハラ、マタニティハラスメントといった「ハラスメント」です。これにより、チームの生産性やパフォーマンスが低下してしまいます。

似たようなメンバーが集まり、安心する。それ以外の者は排除する。浅はかですが、人間はついつい引き込まれてしまうのです。
同じ部署の人、隣に座る人、同僚…誰もが自分とは違うものをもっています。まずはお互いに「違い」を知る、認める。そこがダイバーシティの要とも言えるでしょう。

ダイバーシティのカギは業務の見える化・可視化そして共有化

多様な人材が活躍できる組織にするカギ。それは業務を可視化し、共有することです。

個人の得意なスキルや長所を活かす。苦手なところは互いに補う。
「ここなら得意、できる」といった、「得意分野」は誰にでもあるのです。その「得意分野」を見出す、そして活かすことが求められています。
また多様な人材がいる中で、一連の業務プロセスを一人で完遂することができない場合もあります。その際、業務フローが可視化されていることで、「引き継ぐ側」と「引き継がれる側」の確実なコミュニケーションがとれるようになります。
業務の可視化をすることで、 これまで慣例化していた業務を改めて見直すきっかけにもなります。業務改善にもつながるのです。

多様性(ダイバーシティ)を持つメンバーがその力を発揮して活躍できる環境が整備(インクルージョン)できるか否か。
人事評価や配置、両立支援などの人事 処遇制度の整備や運用だけにとどまらず、職場マネジメントなど業務遂行の方法。
組織全体の在り方、見直すことが求められています。

新しい働き方とは 資料