リモートワーク時代のマネジャーは、これまで以上に多くの不安を抱えていると各種調査から分かってきました。
業務の進捗はもちろん、部下の仕事ぶり、精神状況などを直接見ることができず、マネジャーはこれまで体験したことのマネジメントに挑んでいます。そのような状況下でチームの成果を上げるためにマネジメントに真面目に取り組むほど、チームの状況が悪化してしまっていることはないでしょうか?
もしかするとその元凶は「マイクロマネジメント」かもしれません。
マイクロマネジメントとは
マイクロマネジメントは、過度に細かく部下を管理、統制としてしまうことであり、部下の成長や組織の成果に対してネガティブな影響を及ぼします。
例として、部下に対して1週間を要するタスクを課した場合を想定しましょう。
マイクロマネジメントでは、タスクのゴールだけでなく、細部にわたりプロセスを指示します。さらに途中経過を何度も確認し、仮に進捗が遅れた場合はマネージャーが考えた改善案を指示をします。挙句の果てには、自分の指示通り仕事しているか、部下の仕事ぶりが常に気になってしまい、PC越しでも監視を始めます。
このようなマイクロマネジメントを受ける部下は自分で考える前にマネージャーから指示を受けるため、目的のある仕事ではなく単純な作業となってしまいます。
指示通り進めた作業なので、仮にうまく行かなくても自分ではなくマネージャーの責任と考えかねません。
さらに、このような状況が続くと部下は指示待ちになったり、上司から信頼されていないと感じて熱意が低下してしまいます。
一方でマイクロマネジメントをしているマネージャーは、タスクを予定通り完了させるため、部下の働きをサポートするため、と真面目にマネジメントをしているのであって、よもやマイクロマネジメントだとは考えていません。
そのため、自分のマイクロマネジメントが原因にもかかわらず、思考停止や指示待ちになった部下に対してサポート不足が原因と考え、より細かく管理、統制していくのです。
この悪循環により、真面目なマネージャーほどマイクロマネジメントの沼により深くはまっていってしまいます。
適切なフィードバックが「マイクロマネジメント」を防ぐ
知らず知らずに陥ってしまうマイクロマネジメントの沼から抜け出すだめには、適切なフィードバックが欠かせません。
フィードバック自体は部下の成長や目標達成のための情報通知、指示、支援を伝えますが適切に行うことが求められます。
適切なフィードバックにはいくつかポイントがありますが、一番重要なことは部下の内省の後に行うことです。部下の内省、振り返りがないまま、マネージャーがフィードバックを行うとどうなるでしょうか?
いくら良い内容であっても、部下は自分自身の考えがないままフィードバックを受けて、言われたことをそのまま行うだけになります。こうすることは部下が自分で考え悩む機会、つまり部下が成長、改善する機会を奪います。
この状態を続けていくと、部下は自ずと思考停止、指示待ちになってしまいます。
また、部下の状況を正しく理解すること、そしてその上で適切なフィードバックを行うことが重要です。部下の状況で一番気をつけるべきは、経験や期待水準の差です。
経験が少なく成熟度が低い部下には指示、指導を多くする必要があります。
一方で、スキルや経験が多い部下には指示を少なくして、支援、委任的なフィードバックを増やしていかなければなりません。
経験があるにも関わらず伸び悩んでいる部下がいるとしたら、マイクロマネジメントが原因の可能性もあります。
適切なフィードバックを仕組み化、習慣化する
部下による内省やマネージャーによる適切なフィードバックの重要性に異論はないと思います。
しかしながら、実際には重要性を説いただけで、実行できるほど簡単な問題ではありません。現場レベルで着実に実行していくためには、内省とフィードバックの仕組み化、習慣化をしましょう。
マネージャーがフィードバックする前に、部下が内省を自然にできる状態を作ることが仕組み化の目的です。
そのため、フィードバックをする前に、部下は内省をアジェンダ化する仕組みを作りましょう。
- どのようなことを行ったか?
- そこから何を学んだか?
- 次にどうするか?
- そのための障害はあるか?
これらのポイントについて簡単で良いので、フィードバック前にアジェンダとしてメモを作成する仕組みを作ることで、部下は内省ができるようになります。
一方で、上司も自分の考えを伝える前に部下の状況を把握できるので、より適切なフィードバックができるでしょう。
ただし、手書きメモやワードファイルなどで個人管理すると習慣化が難しくなります。ITツールを使って管理することで習慣化することがおすすめです。
マネージャーと部下が簡単に共有でき、ログが残せ、かつ検索が容易なので、例えば前回の内容をお互いに振り返ることができたり、他の人に共有したい内容をすぐに引き出せるので、活用方法が拡がり習慣化しやすくなります。
脱マイクロマネジメントで部下もチームも学習できる
マネージャー主体による部下の細かい管理から脱却し、部下が主体的に自分の成長のために内省を習慣化し、マネージャーがサポートする体制に変換していきましょう。
内省を受け止めた上で、適切なフィードバックをする習慣が部下の学習を生み、成長が促進されます。
同時にサポートが習慣化していく中で、厳しいフィードバックであっても受け入れやすくなります。適切なフィードバックはチームに心理的安全性を育むため、部下はもちろんチームにも良い学習が生まれ、より良いチームへと成長していきます。
部下やチームの成長に真面目に取り組むマネージャーは、マイクロマネジメントになっていないか一度点検してみてはいかがでしょうか。