おさまる様子のない、新型コロナ騒動。年明けには二回目の緊急事態宣言も発令され、GoTo施策や雇用の安定に関する取り組みなども、二転三転しています。
「マスクなんて、春先の花粉が飛びかう季節に使っていなかった」という方も、今ではどこへ行くにもマスクは必需品。外食を避けるため、UberEatsなどのデリバリーサービスが当たり前になり、映画やドラマのサブスク配信も巣篭り生活に彩りを与えましたね。まさに「新しい生活様式」の定着です。
日常生活に加え、働き方も大きく変わりました。
ここ1年の変化スピードは、すべてのビジネスマンが文字通り肌で感じたはずです。
今回は、コロナで変化した働き方とそのコントロールについて、「マネジメントの在り方」という観点から見ていきたいと思います。
「絶対無理」と思われていたことが、あっけなく実現した
否応なしに対応せざるを得なかった職場変化の多くは、人との接触を避けるためのものでした。
・テレワークやフレックス制度の導入
・会議は基本的にオンライン化
・出張の中止
・会食の中止
コロナ前は、テレワークやオンライン会議なども、「聞いたことはあるけど、きっと実現しないよね」「うらやましいけど、別世界の話」と思っていませんでしたか?
しかしコロナが、これらを一気に現実のものとしました。検討や稟議などの長いプロセスを待つまでもなく、危機感のある環境が社会を変化させたのです。
働き方の変化がもたらしたメリット
結果、「意外とテレワークでも大丈夫だった」という人もいれば、「やはり、オフィスで働くほうが効率的だ」と思う人もいるはずです。これは、生き方には個人差があることを示しています。同じ時間に、同じ場所で働くことに対する価値観の違いが浮き彫りになったともいえます。
とはいえよく見聞きするのは、「会社に行かなくても仕事が進む」という喜びの声。そこでまずは、テレワークに象徴される「人になるべく会わない働き方」の、従業員と企業のメリットを確認してみたいと思います。
テレワーク | 従業員のメリット
1. ワークライフバランスが実現しやすい
通勤時間の縮小や、無駄な会議が減少。時間の融通が利くようになった。
2.業務に集中できる
雑務や雑談で業務を中断されることが減り、メリハリをつけて、より意欲的に自分のペースで働くことができるようになった。
3. 自律性が強化される
テレワークでは上司からの直接指示が少なくなるため、従業員自身がタスクや時間を管理する必要が生まれ、自律的に仕事を進める能力が強化された。
テレワーク | 企業のメリット
1. 優秀な人材の確保
テレワークの導入により、介護や育児などさまざまな理由で仕事ができなかった優秀な人材の雇用を可能にした。
2. 生産性の向上
業務を中断されることが少なくなったので、従業員の生産性が向上した。
3. オフィスコストの削減
印刷費や出張費、交通費などの支出が減った。
メリットを眺めてみると、今までの仕事にいかに「削減できるもの」が多かったかが見えてきますね。
デメリットと、求められるマネジメントの変化
しかし、メリットだけではありません。
テレワークで生まれたデメリットを見ていきましょう。
テレワーク | 従業員のデメリット
1.コミュニケーションの取り方が難しい
2.仕事とプライベートの切り分けが難しい
3.運動不足になりやすい
テレワーク | 企業のデメリット
1.コミュニケーションの取り方が難しい
2.評価が難しい
3.指示が難しい
当たり前のことですが、コミュニケーションや報連相など人との関わり方において難しさを感じる人が多いようです。
テレワークのマネジメントは何に重点を置くべきか
テレワーク下での企業の課題は、次の3つに分類されます。
1. コミュニケーション不足をどのように補うか
2. 従業員のモチベーションをどのように維持するか
3. 従業員の健康問題にどう対応するか
ひとつずつ見ていきましょう。
1.コミュニケーション不足をどのように補うか
オンライン上でのやりとりだけでは、お互いの意思がきちんと伝わらないことがあります。オフィスとの違いをしっかり意識して、まめに、詳細なコミュニケーションを取るように心がけましょう。お互いが何に取り組んでいて、今どのようなコンディションなのを理解しにくくなるため、今一度「報連相」の在り方を確認することをおすすめします。
2. 従業員のモチベーションをどのように維持するか
テレワーク下では従業員の動きを細かく把握することが難しく、「何をしたらいいのかわからない」という従業員が出てくる可能性があります。これを防ぐため、会社の方針や個人の希望に紐づいた目標を設定しましょう。従業員ひとりひとりが、「この会社で働くこと」の意義を持てる環境構築が大切です。
3. 従業員の健康問題にどう対応するか
テレワーク下での従業員の健康管理で、企業が一番懸念すべきは孤独感です。上司と定期的にオンライン上でミーティングを開き、従業員が相談しやすい環境を整えましょう。そうすることで上司は部下の仕事面を含めた現状把握ができるようになります。また、オンオフの切り替えが難しくなるため、始業と終業にしっかりメリハリをつける工夫を行いましょう。
コロナが収束すれば、働き方は元に戻るか?
上記のような対応は、古い体質の残る企業にとっては億劫なことかと思います。しかし「そのうちコロナが収束する、今の不便は一時的なものだろう」という考えはとても危険です。その理由は、コロナのニュースでよく耳にした「不要不急」というフレーズに表れています。
「不要不急の外出は避けるように」。もう何千回と耳にしましたが、この「不要不急」は「外出」だけでなく、仕事にも当てはめて考えられていくのではないでしょうか?
コロナは、「その出社は本当に必要?」「この会議は?」「あの出張は?」と、改めて仕事の優先順位やその必要性の有無を問うてきました。そして「古い慣習や働き方に縛られなくても、仕事は進む」という価値観を一気に広めました。
おそらく、コロナが収束しても、この新しい価値観はなくならないでしょう。「あって当たり前」の選択肢のひとつとして、新しい働き方は残り続けると思われます。つまり、テレワークを含む新しい働き方への柔軟な対応は、全企業に求められているということです。
働き方改革はビフォアコロナからあったもの
新しい働き方は、コロナを発端とするものではありません。まったく普及する様子がなかったとはいえ、「働き方改革」という言葉は、数年前から取り沙汰されていました。実際に厚生労働省が「働き方改革」の定義を発表したのは2019年。そうです、コロナよりも前なのです。
たまたまコロナで加速しただけで、「新しいマネジメント」は、いつの時代でも必要とされているものです。コロナが、本質的なマネジメントの重要性を浮き彫りにしたともいえます。
「昔はこうだった」「うちの会社では無理だ」など、固定概念に縛られていてはいけません。従来の社風や仕事のやり方を見つめ直す、ポジティブな機会として考えてください。変化の追い風をうまく使えば、あなたの会社でも新しい働き方の定着は可能です。
真のマネジメントに向けた変革を
コロナによる働き方の変化は、わたしたちに「働くって何だろう」と問いかける、いいきっかけでもあったはずです。自分はどんなスタイルで働きたいのか、どれくらい自律できるのか、会社とどう関わっていくか…。社会不安と目まぐるしい変化の中で、誰しもが自分のワークスタイルと向き合ったことと思います。
だからこそ、企業側の大胆な働き方改革が、現場に定着しやすい時期です。マネージャーと呼ばれる立場の皆さんは、「コロナだから仕方がない」ではなく、アフターコロナでも通用するマネジメントとは何か、自分はマネジメントを今後どうしていくのかを見つめ直してみてください。
もし「変えたいけど、なかなか難しくて」と思っていた施策があるなら、今が断行のチャンスではないでしょうか。その施策が、アフターコロナのチームによい影響を与える可能性は、十分にあるでしょう。真のマネジメントとは、未来を見据えた「行動」を指しているのです。