人材不足がさけばれるなか、一般的に取り上げられやすい生産性の定義「1人あたりの労働生産性」を追求し続けることは、よほどの業務改善や無駄削減をしない限り、労働者ひとりひとりの負担が増え続けることになってしまいます。
1人あたりの生産性を追い求める限りは、残業してでも少しでも長い時間労働して生産活動をすることでカバーをしてしまうでしょう。
働き方改革で労働時間削減を進めるならば、並行して業務改善だけではなく企業風土改革を進めていく必要があるかもしれません。
だらだらと長時間働くことや、無駄だらけでストレスをためながら働くという状況は、ただただ生産性を落とし続ける負のスパイラスに陥ってしまい、最後には心身を壊してしまいかねません。
「時間あたりの労働生産性」を追求することの重要性
健康的にパフォーマンス高く働くためには「時間あたりの労働生産性」を追求することが重要ではないでしょうか。似てるようで、「一人あたりの労働生産性」という捉え方と「時間あたりの労働生産性」の捉え方は大きく異なります。
日本生産性本部は20日、経済協力開発機構(OECD)のデータに基づく2016年の日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は前の年から1.2%上昇し46.0ドルだったと発表した。上昇は7年連続。名目国内総生産(GDP)の上昇と平均労働時間の減少が寄与したという。
ただ、OECD加盟35カ国の中の順位は20位と前回と同じで、主要先進7カ国の中ではデータ取得が可能な1970年以降最下位が続いている。順位低迷の背景として、企業の製品やサービスの付加価値が価格上昇につながっていないことや、長時間営業の店舗の存在などを挙げている。
店舗の長時間労働が人材不足で成り立たなくなりつつあります。商品やサービスの付加価値を高め、単位時間あたりの生産性向上に取り組み始めている企業が業績を伸ばし始めています。
企業としてのスタンスを明確にして、首尾一貫した取り組みを職場で実行していくことが求められるでしょう。そうすることで、従業員ひとりひとりの働き方にも好影響を及ぼすのではないでしょうか。
従業員ひとりひとりが「時間あたりの労働生産性」にこだわり成果を出していく意識と行動が徹底できれば、継続的な成長も期待できます。
改善プロセスや成果そのものを評価していくことが重要
どんなにがんばっても1日あたりの時間を24時間以上に増やすことはできません。しかしながら、時間あたりの仕事の密度のようなものや、質そのものは工夫や研鑽次第でいくらでも高めていくことができるものではないでしょうか。
従業員の自律と主体性を引き出す「働き方改革」フォーラムでの、経営学者の加護野忠男氏のコメントに集約されていますが、企業としても働く一個人としてもこのことをしっかりと考えていかなければいけないタイミングにきていると思います。
何をもって生産性を見るのかということなんです。去年の年末に関西生産性本部が派遣したヨーロッパの発表を聞いたんです。彼らの発表によると、ヨーロッパの企業の生産性指標と日本企業の生産性指標はよく似ているけど微妙に違う。日本企業の生産性指標は1人当たりいくらです。ヨーロッパ企業の生産性指標は1時間当たりいくらです。
日本の1人当たりで考えると、長時間働くという形でアウトプットを上げる、生産性上げるという行動になってしまうが、ヨーロッパのように時間あたりの生産性を考えると、時間を増やさないで付加価値を上げる方向へ考えることになる。
私はそのとおりだと思っています。ROEより良い指標だと思いますので、ぜひ皆さん会社に帰って、わが社の1人1時間当たり生産性がどのぐらいになるかと。
時間あたりの生産性を高めていこうと思えば、同じ業務をやるとしても、付加価値をどのように工夫して高めるかという視点や、時間あたりの成果を得るためにどのように効率をあげることができるかや、無駄の削減はできないかという視点でアプローチすることになります。
この積み重ねを個人だけではなく、組織的に継続的に行っていくことが事業成長につながります。そして、長時間働くことよりも改善プロセスや成果そのものを評価していくことが重要になるでしょう。