Habi*do通信

面白くないことも面白がることができれば、すべてが楽しくなる。~石川善樹さん

石川善樹さん

TREE(Try・Reflesh・Enjoy・Encourage)をテーマにしたインタビュー企画。今回は予防医学研究者の石川善樹さんにインタビュー。

石川 善樹
profile石川 善樹予防医学研究者。医学博士。株式会社Campus for H 共同創業者。1981年広島生まれ。
東京大学医学部健康科学科卒業後、米国ハーバード大学公衆衛生大学院修了、自治医科大学で医学(博士)取得。
「人がより良く生きるとは何か」をテーマとした学際的研究に従事。専門分野は、行動科学、計算創造学、マーケティング、データ解析等。講演や、雑誌、テレビへの出演も多数。NHK「NEWS WEB」第3期ネットナビゲーター。著書に「疲れない脳をつくる生活習慣(プレジデント社)」「最後のダイエット」「友達の数で寿命はきまる」(ともにマガジンハウス社)「健康学習のすすめ」(日本ヘルスサイエンスセンター)がある。

Try:拠点を複数もつことで、世界を広げ、もっとクリエイティブに。

――挑戦していることはなんですか?

拠点を複数持とうと考えています。それは移動距離=クリエイティビティと思ったからです。

石見さんも東京と関西を行き来することで、いろんなクリエイティブがうまれていると思うんです。僕もそうしようかなと思って。具体的には福岡とスペインに拠点を持とうかなと思っています。

――なぜ福岡とスペインなんですか?

そこに住んでみて、まったくの0から始めるとすれば自分はどうするんだろうと思ったからです。福岡に縁は全然ないです。知り合いはいるが、そこには頼らずに、0の状態で福岡空港に着いたときに、いったいどうするんだろうかと考えるとワクワクします。

でも結局、人のご縁なので、じゃ誰と仲良くなったらいいんだと考えたら、同世代の求心力のある人と仲良くなっていなけばいけないし、また僕はまだ30代なので、上の人に引っ張り上げてもらわないとどうしようもないところもあります。そんな人と仲良くなるにはどうしたらいいかな、と。そんな人はどこにいるのだろう、とか。中州のキャバクラにいってるのかな、とか。ってことは、そこでボーイとして働くといいのかなとか。わかんないですけど(笑)

自分のことを理解してもらうことが自己紹介の目的なんだろうか?

――自分を試そうと?

自分は東京にいて、いろんな業界の人に認知してもらうのに、ずいぶん遠回りしたなと思っているのです。たとえばこの2年間、いろんな業界の人に合うようになって、「自己紹介」って何だろうと考えるようになりました。というのは他の業界の人に専門の話をしても、「ふーん」で終わってしまうことばかりだったからです。
石川さん、何しているんですか?と聞かれて、説明しても10秒ぐらいで飽きた顔されているのがわかります(苦笑)

そもそも自己紹介ってなんなんだ?と改めて考えたのですが、よくよく自分と向き合ってみると、僕は自己紹介のときに「自分のことを理解してもらいたい」というくだらない欲望があったことに気付いたんです。でも、自分のことを理解してもらうことが自己紹介の目的なんだろうか?とさらに考えたんです。

色々考えたのですが、結論としては、出会った方がほかの人に、「石川さんって面白いよ!」と言ってもらえてはじめて自己紹介は成功したといえるなと思ったんです。

それをゴールに置くと、自分のことを理解してもらわなくてもいいのではと考えはじめました。むしろ理解してもらわないほうが、「石川さんってどんな人なのかな?」と想像力を掻き立てられるので、むしろお得なんじゃないかと。

さらにいうと、自己紹介の目的は何かということに、これまで30数年生きてきて一度も考えたことがなかったことに気付き愕然としたんです。そんなことすら考えずに、いったい自分は何を考えてきたんだろうかと。

僕はこの2年間で数えたら2500人の人に会っていました。それだけ会うと、鍛えられたなというのがありますね。でも東京での経験が、果たして福岡で通じるのかとか。スペインとか。そもそもスペイン語しゃべれないんで。とりあえず行こうと(笑)

自分が全く通用しないところのほうががんばると思っているので。ドMなんですかね。(笑)

――枠を外したいということなのでしょうか?

そうかもしれませんね。最近はどうしても気が合う人が周りに増えてきたので、僕は勘違いはしないと思うんですけど、偏りそうだなと。

――成長のためのステップ?

たとえば海外の先生などと話していると、考えつくして話をしているのに、そもそもその前提が日本的だと言われたりするんです。自分が立っている前提には、案外気づきにくいのかもしれません。

Refresh:パソコンを持ち歩くことをやめると開放された!

「ちょっと待てよ、自分はパソコンと向き合うために生きてるのか?」

複数拠点を持とうと考えたとき、まずミニ実験をしました。

原宿と渋谷にオフィスがあるんですが、2拠点であっても仕事できるだろうかとか。そこで、「そもそも自分はどういう動作を仕事とよんでいるんだろうか?」と考え始めると、多くの時間を占めてるのがパソコンだと気がつきました。

「ちょっと待てよ、自分はパソコンと向き合うために生きてるのか?」

・・・ちなみにこの話はすごく長くなるので省略しますが(笑)、結論としては、パソコンと自分とどっちが人生の主人公なのかを決める必要があるとなりました。明らかにパソコンではないと。その結果、パソコンを持ち歩くことをやめました。

すると手ぶらになったんです。手ぶらで移動できるのです。するとぐんぐん歩けるようになったし、自由になった。このまま、どこでもいけちゃうんじゃないのかって、とても開放された気分になりました。

とらわれていることに意外に気づかないんだな、と。パソコンがあると、あれしなきゃ、これしなきゃと思うじゃないですか。

これって宇宙人から見たら、パソコンと人間のどっちが主人かわからないんじゃないですか(笑)

Enjoy:面白くないことも面白がることができれば、すべてが楽しくなる。

――石川さんはなぜ予防医学をめざそうとされたのですか?

どうしてやっているかというと、父が医者で予防医学をやっています。歌舞伎役者の子が歌舞伎役者になるように、予防医学をやっていた父がいたからと自然にそうなったと思います。

ですので予防医学をめざした理由は特にはありません。僕は与えられた仕事は天職と思いこみやすい性格で、なんでも楽しめるんです。最初のきっかけはなんでもいい。

予防医学の研究も、いろんなテーマがあるんですが、最初はダイエットから始めました。ダイエットといっても、予防医学全体を見渡して、よし、これだなと思ってダイエットを始めたわけではなく、たまたまその時に、国の検証事業が始まったから、それに入れることになったので、じゃ、ダイエットをやるか、という感じなんです。

研究というと一見狭くて深いところに入っていくような感じですが、あるところでとんでもなく広い世界が開けるんです。本質にぶち当たると、そうすると面白くなってきました。そこまでいくまでには10年くらいかかりました。その分野独特の考え方とか発想とか、あるじゃないですか。その仕事の型を見つけるというのに
10年くらいかかったということなんです。型を見つけると、つぎにそこから個性を見つけていきます。「人はよりよく生きる」って何なんだと考え始めているのです。

世の中は面白いことと面白くないことの2つの事象しかないと思います。面白いことはすでにみんなやっている。てことは、面白くないことを面白がれたら、すべて楽しくなるじゃないですか。そしたら面白くないことを面白くするスキルを身に着けたらいいんじゃないか、と。

Encourage:グローバルなコミュニティをつくり新しい学問をつくる。

僕は研究者なので、新しい学問をつくれなければ生きている意味がないと日々思って生きています。新しい学問作るときに、じゃ新しい学問ってどうできるんだろうと。

やっぱりコミュニティなんですよね。グローバルなコミュニティをつくれるのかという。

拠点を複数持つという以外のもうひとつのチャレンジは、僕がつくりたい新しい分野の仲間を集めるっていうのを今年は頑張っています。コンピューテーショナル・ソーシャル・サイエンスという分野です。

ようするにビッグデータを道具として使いながら、人間とか、社会に対する理解を深める分野です。いろいろな専門分野の人が入ってきています。コンピュータ・サイエンティストとか、物理学者とか社会学者とか。心理学、教育学とか。

今の時代は知識の専門分化が進んでしまって、ひとりの学者が学べる範囲、カバーできる範囲がすごく狭くなってきています。狭い範囲をカバーするだけで精一杯になっているのでコラボするしかありません。

データが使えて、人間に興味があって、いい人(笑)。同世代の人。そんな人たちとのチームワークで新しい研究分野に挑戦していきたいです。

インタビューを終えて
新進気鋭の予防医学研究者として注目を集めている石川善樹さんですが、それに甘んじることなく、自分が知られてないところにあえて拠点を持とうとしているチャレンジ精神に感心しました。またなんでも面白がれるということは、それだけ、観察力や洞察力が高い証拠です。
石川さんのような次世代のホープが自分の能力をもっと高めたいと、うずうずしている様子がとても頼もしく、素晴らしい未来がやってきそうな期待あふれるインタビューでした。