Habi*do通信

深刻化する「ヒューマンエラー」~原因と対策とは~

ヒューマンエラーを完全になくすことは難しいといえます。
しかしヒューマンエラーによる事故やトラブル発生を減らすことはできます。

人間とはミスや間違いをおかしてしまう生き物なのです。とはいえそれを放置しておけば、より重大な災害や被害、深刻な事態をもたらしかねません。
また、一人ひとりのミスは小さいものでも積み重なることで、気づかないうちに取り返しのつかない事態を引き起こします。

安全、安定かつ効率的な職場環境を維持するため、多大な損失、社会的信用の失墜をもたらさないため、お客様や従業員を危険にさらしてしまわないためにも真摯な取り組みが必要となります。

ヒューマンエラーはなぜ深刻なのでしょうか

ヒューマンエラー。
建設業に限らず、医療や製造業・・・全業種、全場面においてどこでも発生します。また、被害が大きくなる傾向が高く、重大な事故やエラーにつながってしまいます。
そもそも人間が起点となっているため、防ぎにくく減らないものです。人間のエラー発生確率はゼロにはなりません。

販売管理、在庫管理、財務管理、購買管理、生産管理を担う基幹システム。本来であれば、直感的に操作がしやすく、簡単に使えることが重要です。複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存の基幹システムから抜け出せていない組織運営や経営の課題といったものが、ヒューマンエラーの起因となり表に出てきてしまうことも。

金魚

ヒューマンエラー。
誰にでも引き起こす可能性があります。
米マイクロソフトのカナダの研究チームが2015年5月に発表したデータによると人々の集中力持続時間 はたった『8秒』。金魚の集中力は9秒で、人間の集中力はそれ以下となります。
また、ひとつの事物に集中しながらも周りに意識が払える力である「注意力」。
大阪大学・人間科学部の臼井伸之介教授は、どれほど集中力を維持できるか調べる「クロックテスト」という実験を行っています。2時間ずっと時計のような装置を見つめ、針が2秒分ジャンプするのを見つけると手元のスイッチを押すというもの。30分くらい経つと急に見落としが増えてしまう。これを注意の“30分効果”と言います。
決して疲れが引き起こしているのではなく、長く同じことをしていると心理的飽和状態に陥ってしまう。つまり、飽きてきてしまうのです。

人間の集中力・注意力には限界があり、疲労や錯覚などでヒューマンエラーを起こす可能性があるのです。若手、ベテラン関係なく、どの人であってもヒューマンエラーを起こしかねない、のです。

ヒューマンエラーが主役に

ひと昔前までは、強風や津波のような予想外の自然現象といった未知現象や機械や装置の故障といったところが、事故やトラブルの原因とされていました。
しかし昨今、あらゆる機械や装置は進化をし続けています。
自動車の自動運転、外食業界での調理ロボット、定型業務や事務作業を効率化するRPA(Robotic Process Automation /ロボティック・プロセス・オートメーショといった存在。機械自身がすべてを機械自身で行ってくれるように時代は変化してきました。

頭抱える

とはいえその機械のスイッチを入れるのも、メンテナンスをするのも人間であることに変わりがありません。道具・ 機械やシステムは進化を続けています。ボタン一つ押すだけで、危険もなく最終工程まで仕上がっていく。
逆に言えば、人は作業に関与することもなく、道具や機械に触れることも慣れることも少なくなっている、ということです。
自動化で物事の多くが進んでしまっている分、人間側がミスをしたときに、波及効果により単純なヒューマンエラーとは異なり被害が大きくなる傾向にあるのです。

また現場の管理職には、自動化や機械化により、以前よりも増して生産性向上が求められています。生産性を重視するあまりに、こまめにコミュニケーションを取ることを怠ってしまったり、巡回をして現場を回り直接危険を目にする時間が減ってしまう、ということも起こります。日頃からコミュニケーションを良くとること、はヒューマンエラーを未然に防ぐことに繋がります。
安全を守ることと生産性を向上させること、バランスをとることが必要です。

安全文化を創る ~縦割り組織の弊害~

ある問題が存在しています。しかし同じ問題であるのにそれぞれがバラバラに見ている状態だとしたら問題は解決される、でしょうか。

経営側はリスクや投資や採算について考えている。人事としては社員教育に問題があると考えている。現場では現場自体の改善や生産性の改良について考えている。設計では安全設計について考えている。
同じ問題が存在し認識しているとしても、問題の捉え方はいろいろあるのです。

仕事を進めていくには必ず複数の機能部門の協力を必要とします。営業企画・研究開発・製品設計・生産技術・購買・マーケティング・物流・・等々。
単に「案件のバケツリレー」でこなされている、のであれば問題の根本的な解決には結びつきません。予算についても、スケジュールについても、誰も本当の意味でのコントロールをしていない状況が続いてしまいます。

問題を多面的に考えるー縦割りの弊害

多面

具体的に考えてみましょう。
あなたの会社概要パンフレット。
連絡先のメールアドレスが誤って印刷されていました。

・やり直そう。メールアドレスだけでなく電話番号や住所も併記しよう。
・間違ったメールアドレスで届くようにしよう。
・発注の際の二重チェックを必ずするように。
・致命的でないならばそのままでいいのでは。

同じ物事であったとしても問題の捉え方の解は多岐に渡ります。
部署ごとの縦割り構造で成り立っている会社組織は多く存在します。部署の利害関係が存在し、問題を共有したり、ともに解決することがないケースが多く見られます。
最良の解決方法は他者が持っている可能性があるのにもかかわらず、一つの捉え方が解を決定してしまうのです。

部署を越えて問題を解決するための「タスクフォース制度」

そこで昨今注目されているのが、「タスクフォース」による問題解決です。

アメリカ海軍には、タスクフォースという任務(Task/タスク)遂行のために編成される部隊があります。ビジネスにおいても、課題は複雑化し迅速な対応が求められており、このタスクフォースの思想が重要となってきます。

チーム

各部署から課題解決への適任者や専門家を集め、短期的に課題遂行のためのチームを作成します。異なる部門や立場にあるメンバー、さまざまな視点を持っています。多様な視点で議論を進めることができます。

先の具体例にあったように、会社概要パンフレットの連絡先が誤って印刷されていた場合。
現場では「連絡先のメールアドレスがそもそも使われていない」と思っていたことを印刷担当の部署が初めて知ったり、そもそもパンフレット自体が必要なく、増刷をする必要性はなかったといったことも明確になってきます。部署の壁を超えた連携でこそ見つかる、解が出る場合があります。

ヒューマンエラーは当事者本⼈の不注意など、個人の問題として考えられることが多くあります。表面に見える人的な部分ではなく本来の原因を探ること。また、特定の狭い領域だけで防止策を求めるのではなく、最も有効な策を得る努力をし続けなくてはなりません。


ミス(エラー)を犯した人を叱る、安全第一を唱えるだけでは改善されるものではありません。表に出てきている人の要因にばかり注目するのではなく、どこに原因があるのかを深掘りし、それを踏まえて仕組みや環境づくりを進めていく。エラーを減らしていくことが大切です。

人間はミスをしてしまいます。ヒューマンエラーを完全になくすことは不可能です。
しかしヒューマンエラーをごくわずかにまで減らすことは可能です。自動化や機械化が進み、生産性向上が求められている今。改めて、「ヒューマンエラー」について目を向けることが重要です。

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