Habi*do通信

組織改善・離職防止をもたらすエンゲージメントとは~背景や高め方について~

エンゲージメント。世界中の企業が、企業の業績を上げるためにエンゲージメントの向上に取り組んでいます。

向上
しかし日本においては、エンゲージメントへの投資ができていない企業が大半です。
効果を数字として表しにくい、短期的に効果がにつながりにくく、費用対効果が見えにくい分野。人材の定着、売り上げや利益に効果があると捉えにくく、投資が遅れてしまいがちです。しかし実際に欧米の企業では、サービス、売上、品質、安全性、定着・欠勤、収入・利益・株主へのリターンとエンゲージメントの関係は研究され実証されています。

モノへの投資とは違い、システムを構築するまで・効果を実感できるまで時間がかかり、一筋縄ではいきません。しかし遅かれ早かれ、着手しなければチームとして組織としての存在は難しくなるでしょう。だからこそ少しずつの変化を可視化し継続していくことが重要となるのです。

日本におけるエンゲージメントの歴史・背景 とは

日本はトップダウンを良しとし、ピラミッド型の階層組織、上下関係があり命令系統があるのが当然な時代を過ごしてきました。

しかし、現在では雇用形態の多様化、労働者は売り手市場となり年功序列の上下関係は崩壊しつつあります。日本企業が柱としていた終身雇用制度は崩壊。労働者が会社を選ぶ時代となり、組織のフラット化が進んでいます。

愛社精神
高度経済成長を支えたとも言われる「愛社精神」。
エンゲージメントとの混同が起きやすい愛社精神はロイヤルティ(loyalty)と分類され、エンゲージメントは異なるものです。

高度経済成長の時代は右肩上がりで企業業績が向上、会社に守ってもらっている(終身雇用)、会社があるからこそ自分があると思える時代でした。経営者側にも労働者側、双方にメリットがあり、労働者側が経営者側に権利を主張することはあり得ない状況でした。
しかし現在は、自身がいくら今の会社に一生勤めたいと思っていても、会社がいつ倒産するか分からない厳しい時代です。会社に守られ作られる自分ではなく、自らで自分の将来像を描いていかなくてはならない、と思うようになるのは当たり前のことです。

ロイヤルティには主従関係、上下関係があり、エンゲージメントには主従関係、上下関係はなく、企業と従業員は対等な関係を作るという違いがあります。
社員から会社への一方通行ではなく、社員と会社が“お互いに成長できる”という関係性が重要です。

欧米のエンゲージメントは高いが日本は低い その理由とは

米ギャラップ社が全世界1300万人のビジネスパーソンを調査。
この調査によると、日本企業はエンゲージメントの高い「熱意あふれる社員」の割合が6%で、米国の32%と比べて大幅に低く、調査した139カ国中132位と最下位レベルでした。(2017年発表)
歯車
会社は従業員が働きやすい施策・職場環境を提供。従業員は会社に貢献していく。「エンゲージメント」が成り立っている関係とは従業員と会社が対等であるということです。
エンゲージメントとは歯車のかみ合いといった意味もあります。自分がやっている仕事がたった1つの歯車でも、その歯車が自分ひとりでは動かせない大きなものを動かす一部だと思えるとき、人と組織がうまく兼ね合い高いパフォーマンスがもたらされることになります。

なぜ日本以外の国ではエンゲージメントが高い社員が多く存在するのでしょうか。
欧米では年俸の高い人ほど転職するのが普通で、転職回数もたいていはポジティブに評価されます。
人材としての成長にしたがってより良い待遇条件を目指すのはもちろんのこと、自分自身が市場で需要のある人材でありつづけるためにも、よりスキルアップできる環境を求めて、”自分のために”転職するという考え方が根付いています。

また仕事以外のプライベートでも同じような考え方が存在しています。欧米では離婚率が高く、我慢するよりも別れる選択をする傾向にあります。離婚したくなければそのために努力することが必要です。
会社と個人との関係も同じ。お互いにほれ合い、相手のためにつくそうとする関係。
好き同士だから一緒にいることができ、相手のためを思って自分で考えて相手のために動くことができるのです。

何となく惰性で働いている、時間が過ぎるのをただただ待つ社員の存在は必要ありません。逆に、エンゲージメントは高いが転職意欲の高い社員であればキャリアアップや技術向上のために会社側も策を練るのです。
関係を維持するために会社はラブコールを発信し続け好かれる努力を続けるし、社員もラブコールに応える努力をする。お互いの努力をする関係が欧米では成り立っているのです。

一方的ではなくお互いに認め合い高め合う努力がなされているからこそ、エンゲージメントが高い状況が創り出されることがよく分かります。

エンゲージメントを高めるためには 3つのポイント

現在は、多様な働き方が可能になり、雇用の流動化、採用費の高騰、離職率の高まりも進んでいます。
採用難の時代だからこそ、社員がずっと同じ会社で働き続けたいと思えるような、定着率の高い会社を目指すことが大前提となっています。そして個人と組織、どちらもを成長を加速させるそういった取り組みが必要となってきます。

ここで考えなくてはいけないことは人間はロボットではないということです。ロボットであれば、自身の頑張りに対する正当な評価(=金銭)を得ること、それだけで動き続けることができるかもしれません。しかし人間は感情とは切り離せない生き物です。そして、社会的動物である人間が生きる上で、あらゆる意味において他者の存在は必要不可欠なものです。
単に良好な関係を保てばいいというだけでなく、良好な関係を結んだ相手からの「期待」と「承認・褒賞」という具体的な行動が、私たちのエンゲージメントを上げるカギを握ります。

具体的には、①縦のつながり、②横のつながり、③レコグニション、これらを意識することがエンゲージメントを高めるうえで大切です。

1.縦の繋がり

社内に向けてコミュニケーションしていくブランディング手法である「インナーブランディング」。
商品やサービスを顧客に理解し手に取ってもらえる・利用してもらえるよう行うマーケティング(アウターブランディング)。アウターブランディングは外に向けての発信ですが、インナーブランディングでは、社員一人ひとりが会社や組織を理解し、同じ方向性を向けるように行う活動、となります。

案検討
会社のゴールと自身の仕事の結びつき、組織の中で自身がどう当てはまり、ゴールに沿ってどの位置でそのようにうごいているのか。一人ひとりが理解し、自分のものとして行動に反映して初めて、インナーブランディングの効果は表れてきます。

  • 社内報
  • 社員向けのサイトやSNS
  • 1on1ミーティング
  • 社内イベント・行事
  • アンケート
  • ポスター
  • クレドカード
  • ワークショップ・研修 等々

すぐに結果が出たり、成功を実感できるものばかりではありません。社内イベントや行事といった成果が見えやすい施策とうまく組み合わせながら長期的な取り組みが必要となります。成功した際は大きな効果をもたらします。

2.横の繋がり

チームワーク

チームワークという目に見えないものを高めていくこと、お互いを知ることは一朝一夕にできないものです。お互いに関心を持ち合い、相手のことを知ろう、相手の得意分野は何かを時間をかけて知ろうとする気持ちが必要です。

  • 社内SNSやツールの利用(コミュニティやディスカッションの場)
  • 社内学習会・研修
  • 部活動
  • 社内イベント・行事 等々

成果を創出する個人の能力・行動特性や価値観、仕事スタイルを単に個人のタスクの成果に繋げるだけでなく、他者のそして組織の成果へと繋げる動きが必要なのです。
互いに学び、教え合う。全ての従業員が、隣で働く人、同じ部屋で働く人と同じように一緒に働いている感覚が持てる状況。社員同士がお互いを理解し刺激し合う関係につながります。

先の見えないVUCA(Volatile, Uncertain, Complex, Ambiguous)の時代。互いの得意や知識を組み合わせ、チームでのコラボレーションが求められています。横のつながりは必要不可欠です。

3.レコグニション(recognition)

表彰

レコグニションとは「認識」あるいは「承認」と訳されます。賃金や賞与等の金銭報酬によるリワードとは異なります。

  • 永年勤続表彰
  • 業績表彰
  • 従業員表彰制度
  • ソーシャル・レコグニション 等々

実際、楽天リサーチ株式会社の調査によると、「仕事へのモチベーションが最も上がる瞬間はいつですか?」の問いに対して、23~26歳で「誰かに褒められた時」が第1位(28.8%)、27~29歳で第2位(22.0%)となっています。
やったことを周囲が承認してくれることで「自分ならやれる」「できそう」とそれ以降の行動に関してもポジティブな気持ちで取り組むことができます。
逆に言えば、自分のことを分かってくれない、認めてくれない同僚や上司、会社のためには力を発揮することはできないということです。
承認しあえる、信じあえるからこそ、期待を超えるパフォーマンスが引き出されるのです。

日本以外の国では、雇用の流動性が高く、アルバイトや社員をほめて伸ばす・認めることが根付いています。世界最大級のHRテクノロジーのイベントHRTechnology Conference&Expo においてはエンゲージメント&レコグニションブースへの企業出展が多く見られます。すでにツールを利用した取り組みが進んでいます。

ただ、「エンゲージメントを高めましょう」と声をかけても、うまくいくものではありません。
「より良い状態にしていくためには、何をどう変えていくべきか?」会社も社員も双方に同じ立場で考えていくことが必要です。
一足飛びにすぐに効果が見えることばかりではないかと思います。エンゲージメントを向上するのは、もちろんたやすいことではありません。まずは辛抱強くあること、そして地道に取り組んでいくことによって、最終的に素晴らしい環境・成果につながるのです。