Habi*do通信

第4次産業革命の時代。マネジメントは変わる、はず。

第4次産業革命時代のマネジメントについて考える

【コラムTREE-MBO®第1回】

プロローグ

もし、ウチには人材がいない、と嘆いているのなら、ぜひ、これから始めるこのコラムの読者になってください。
※本コラムは解決策をお示しするのではありません。

今まさに起こっている第4次産業革命。この産業構造の変化に合わせて人材マネジメントにも変化が起こってきています。
第4次産業革命時代の人材マネジメントについて、読者のみなさんと課題を共有し、新しい人材マネジメントについて模索していくコラムにしたいと考えています。

このコラムの主たるテーマは「最小の人員で最大の効果を出す」です。しかし、人員を減らすというような合理化策ではありません。
ひとりひとりが自律的に目標に向かって行動することで生産性を高めることを目的としています。このテーマに対して「自己効力感と行動変容」「適性」「チームビルディング」「マネジメント」の観点でまとめていきたいと思います。

第4次産業革命とは?

人材がいないと嘆いているのなら、あなたは第4次産業革命に対応できていないのかもしれません。
こう切り出しても、第4次産業革命について、実感を持っている人は案外と少ないように感じます。

第4次産業革命とは、簡単に言えばビッグデータの時代です。
IoTなどと言われていますが、あらゆるモノとインターネットがつながることにより、さまざまな情報がビッグデータとして蓄積され、その情報を活用したAIや新たなサービスが生まれてきています。
機械が自分たちで考え、行動をする時代になるとも言えます。

こう書くと第4次産業革命が起こっていると理解いただけるでしょう。
しかし、自分の業務や自社の事業とは程遠く感じている人も多いのではないでしょうか。

 

ネットワーク、LoT、AI

これまでの産業革命でもそうであったように、産業革命が起こると組織構造が変化します。
第1次産業革命では、家内工業が工場化することで、マネジメントルールが生まれました。
第2次産業革命では、重厚長大型の企業が隆盛したことで、労働力として人員が大量に投入されました。
第3次産業革命では、単純な労働力は減少していきます。単純労働ではなく、コンピューターを使い、課題解決や新しい取り組みができる人材を求めるようになってきたのです。

そして第4次産業革命では、組織の在り方自体が大きく変化すると言われています。
これまでの時代では、経験や蓄積された知識を持つ人が、若年者より評価されてきました。
しかし、単に蓄積されただけの経験や知識はこれからAIがとって変わるでしょう。また、ビッグデータから、新しいサービスが生まれてくると、これまでの経験や知識そのものが意味をなさないこともあるでしょう。

このような状況では、かつてのヒエラルキー型の組織形態では、時代の変化に対応が難しくなってきます。
よりインタラクティブで自律的に動く組織体に変化することが求められます。
すでに自主管理型組織モデルとしてホラクラシーという組織モデルが出てきています。

この組織変化の流れは、すでにあなたの会社でも起こり始めているはずです。
なぜなら「人材がいない」と感じていることこそ、その変化の兆しなのです。

産業革命の系譜

「人材がいない」わけ

人を評価するとき、いったいどこを見て何を評価しているのでしょうか。

評価とは自分が期待する行動や成果に対するパフォーマンスを評して、「よい人材だ」「彼はまだまだだ」などと評価しているのです。そこで問題は何を「期待」しているのか、ということです。

上意下達を忠実に行ってさえおれば高い成果がでた時代はすでに遠い昔です。
第3次産業革命以降は時代の変化はますます激しく、市場は急激に変化しています。
高度情報化社会で、だれでも最新の情報を獲得できる時代になり、新しいものを創造することが可能になりました。
こんな状況で指示待ち族ばかりでは、企業は到底生き残れません。当然、期待する人材は、「目標を持ち、自律的に行動する人材」になります。

このことは、期待される側にとっても迷惑な変化です。
これまでは、上に覚えめでたければよかったのに、急に自分たちで考えて動けと言われるのですから。
そこで第3次産業革命後は、自律型人材への期待を現実の組織マネジメントに展開しきれずに、誤った成果主義の運用になったのではないかと筆者は推察しています。

誤った成果主義と筆者が指摘をするのは、成果とは、そのプロセスとして努力、協働、喜怒哀楽があった上で成り立ち、そのプロセスはひとりだけの力ではなし得ないはずなのに、「自己完結型で成果を出す」ことが評価されるという点です。

この「自己完結型の仕事」すなわち個人業績主義は、ひとりで成果にコミットすることが、「自律している人材」という誤解があったからではないでしょうか。

自律している人材とは?組織とは?

個人業績主義は、組織内のコミュニケーションを減らしてしまいました。結果的に、日本が得意としてきた「チームワーク」がなくなりました。
企業に勤める人のメンタルヘルスの病にり患する人が増えたことの要因に、職場のコミュニケーション不足が指摘されています。

個人業績主義の最も問題は生産性が著しく落ちるということです。ひとりで仕事を抱え込むことで、おのずと効率は悪くなり、結果的に長時間労働に陥ります。

また人には得手不得手があります。不得手なことまでひとりでやろうとすると当然、時間はかかります。こういった背景が、今の日本の生産性の低さにつながっているのではないでしょうか。

(資料:日本生産性本部 労働生産性国際比較)http://www.jpc-net.jp/intl_comparison/intl_comparison_2016.pdf

第3次産業革命の頃から、課題であった自律型人材への転換。
第4次産業革命の今、日本では、待ったなしになっています。

特に自律型人材の課題に加えて生産性向上も上げていかねくてはなりません。
理由は急激な労働人口の減少が追い打ちをかけているからです。

このような人材市場の環境、また社会・事業環境の変化では、本当の意味での自律型人材を確保しなければ、「人材がいない」というテーマは永遠に解決できません。

今、多くの企業の課題はイノベーションをいかに起こすかということです。

イノベーション

興味深いデータがあります。世界の時価総額TOP50(1992年と2016年)の比較です。

1992年時ではエクソンモービル、GE、NTT、金融系など第2次産業革命に隆盛した企業が並びますが、2016年ではアップル、アルファベット(グーグル)、マイクロソフトとIT系に代わってきています。
ところが日本はソフトバンクが加わったものの、1992年と2016年ではほとんど変わっていません。
(ファイナンシャルスターというwebサイトから引用:http://finance-gfp.com/?p=2042

このことは、いかに日本が第2次産業革命時から一向に変わっていないということの現れなのです。

これから日本の組織人材マネジメントは、急激に変わらなければ世界の後進国なってしまいます。

私はこの日本を救う人材マネジメントはチームと自主管理型組織だと思っています。
でもこの2つは本来、日本人が得意とするマネジメントだったのです。自主管理型組織も江戸時代の組織マネジメントもある意味でそうであったと思っています。

「人材がいない」を解決するために。そしてイノベーションを生む組織マネジメントのために、チームの時代について、考察をしていきます。

本コラムの続きは下記よりご覧いただけます。

デジタル社会こそ、人間の複雑性の理解が求められるー加護野忠男氏インタビュー(1)多様性の理解