Habi*do通信

労働先進国『ドイツ』から得る~働き方改革を進めるヒント~

2018年6月29日、参院本議会で「働き方改革関連法案」が可決・成立しました。


長時間労働を是正するため、時間外労働時間の規制は「原則月45時間、年360時間」と定めています。
繁忙期に配慮し、上限は年間で計720時間、単月では100時間未満に規定。連続する2か月から6か月のいずれの期間の平均も80時間が上限となります。
違反した企業には罰則を科すなど、時間外労働の上限規制や、正社員と非正規の不合理な待遇差を解消する「同一労働同一賃金」、高収入の一部専門職を労働時間の規制から外す「脱時間給制度(高度プロフェッショナル制度)」の導入を柱としています。

少子高齢化の進行と生産労働人口の減少。多くの企業が働き手不足を課題としています。働き手1人当たりの生産性を向上させるとともに、女性や高齢者の就労を進めるなど働き方の多様化を認めなければ、労働力不足で社会の存続・維持自体が難しくなってしまいます。
今回の「働き方改革関連法案」はこういった背景からの可決・成立です。

ドイツは『労働先進国』と言われており、労働時間が短く、もちろん残業は少なく休日出勤もありません。 どうしてこのようなことが可能なのでしょうか。
働き方改革を進めていく上でのヒントをドイツの働き方から得ていきます。

『労働先進国』ドイツと日本の違い

日本の面積は377,915平方キロメートル。ドイツは357,022平方キロメートル。日本とドイツは面積がほぼ同じです。

「マイスター」という言葉を耳にしたことがある方、多いのではないでしょうか。ドイツではその職種の技能と理論を完全にマスターしたという試験に合格した人のみに付与される社会的地位の高い称号です。こういった伝統的にモノづくりにこだわる職人気質が根付いています。また、メルセデス・ベンツやBMWといった高級車、ライカなどの精密機械等高い科学技術を誇っています。
産業構造、また規則やルールをしっかり守るといった気質の面でも日本とドイツには似ているところが多いようです。

ドイツの労働時間

しかし、労働時間でみるとドイツと日本とは大きく異なります。

世界の労働時間 国別ランキング・推移

経済協力開発機構(OECD)の統計によると、日本では就業者1人当たりの1年間の平均労働時間が1713時間(2016年)。これに対し、ドイツは1363時間と約25%も短く、日本よりも年間で350時間も短いという結果になりました。

なぜドイツはこんなにも労働時間が短いのでしょうか。
ドイツの労働法による厳しい規制があります。ドイツの企業は、管理職ではない社員を1日当たり10時間を超えて働かせることを法律で禁じています。また6カ月間の平均で1日8時間超の労働も禁止しています。
1日10時間を超える労働を組織的に行わせていた企業に対しては、最高1万5,000ユーロ(約195万円)の罰金を科しています。企業は罰金を科された場合、長時間労働を行わせていた課の管理職にポケットマネーから罰金を払わせます。
メディアが長時間労働の事実を報じると、企業のイメージを損なうことにつながります。ワークライフバランスを重視、家族との時間、プライベートの時間を大切にするドイツ人たちからは敬遠され、そうした会社には優秀な人材は集まらなくなります。

ドイツの有給休暇

有給消化日数

エクスペディア・ジャパンの調査によると、日本の有休消化率は2年連続の50%。ドイツは30日支給と支給日数も多く消化率は100%となっています。

ドイツでは1963年に施行された「最低限の休暇に関する法律」において、全ての労働者は1年間に最低24日間の有給休暇を取る権利があるとされています。
ドイツでは、有給休暇の取得は労働者の当然の権利です。「取らなければならないもの」、つまり社員の義務として位置づけている企業も少なくありません。

エクスペディア・ジャパンの調査によると、日本人が休みを取らない理由の1位は「緊急時のために取っておく」という結果。日本人は病気をした場合に有給休暇から取得することが多く、そのために有給休暇を使わずに取っておく人が多いことが伺えます。

一方ドイツでは、病欠日数は有給休暇から差し引かれることはなく、別途最高6週間まで病休が与えられます。病気やケガで働けなくなった場合、医師に「就労不能証明書」を書いてもらい、それを上司や人事部、健康保険組合などに提出します。
ドイツでは有休と病欠は厳密に区別されています。

時間当たり労働生産性の違い

労働時間が短い、有給休暇取得が多い、この状態でどうやって経済・会社は成り立っているのでしょうか。

実は、ドイツの生産性が日本よりも高いからなのです。

時間当たり労働生産性

公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2017 年版」によると2016年ドイツの労働時間あたりのGDP(国内総生産)は70.4ドル、対する日本は46.0ドル。約1.5倍、24.4ドルもの差があります。
ドイツは日本よりも年間で350時間・約25%も短い労働時間の中でも高い水準のGDPを維持、効率よく働いているのです。

ドイツにおける働き方

日本人の多くは有給休暇の取得に二の足を踏むことが多いのではないでしょうか。
有給休暇を取得することに対し「罪悪感がある」と考える日本人の割合は6割以上にものぼり、世界で最も多い結果です(エクスペディア・ジャパン調査)。

ドイツでは仕事が終わっていようと終わってなかろうと、社員は有給休暇を取り、消化することが当たり前です。日本のように、有給休暇を申請すること自体に遠慮したり、消化することに罪悪感を感じるような雰囲気はありません。

では労働時間が短い・長期休暇取得が当たり前といった環境の元、仕事を、そして会社をまわしていくためにどういったことをしているのでしょうか。

仕事は皆で共有するもの

各々は業務の内容をメンバー誰もが見られるように共有ファイルに保管。長期休暇中そのままでよいものはそのままに、急を要する場合には他メンバーがそのファイルを見ながら対応します。たとえ終えていない業務があったとしても、 それが売上に直接つながる急なものでない限りは、休むことを上司命令としても出されてしまいます。

また、業務を個人で担当するのではなく2人から3人以上でチームを組み担当させる事も多いようです。仕事内容をそのチーム内で共有し誰もが対応できるようにしています。

もちろん取引先の会社でも有給休暇取得が当たり前。担当者が不在で他のメンバーの対応でも怒ることはなく、たとえ担当者不在で時間を要することになっても待つといった姿勢をもっています。

効率化に関して一人一人が考え、実行すること

ドイツ人はとにかく早く帰宅したいという意識をもち仕事に取り組んでいます。つまり、仕事の効率を重視しているのです。効率化も含めた提案を上司にするのが当たり前。そしてそれが受け入れられることで評価ともなります。

定時で仕事を終わらせ帰ることが評価になります。逆に、夜遅くまで残る働き方では評価が下がってしまいます。
そして上司は部下が時間通りに帰れるようにマネジメントすることが仕事です。部下の仕事が終わらないことは上司の責任です。

まとめ

組織や上司が環境を整えることはもちろんですが、メンバー一人一人が自分自身をマネジメントする能力を養うことが大切です。
自分がやるべきタスクを把握し、計画をたて時間を区切り無駄をなくすこと。また、ワークライフバランスを保つことで身体精神ともにいい状態で生産性高く仕事に取り組むことを目指すことは大切です。

仕事の時間は仕事に精いっぱい集中して効率的に取り組む、プライベートを大切にその時間を精いっぱい楽しむ。
ードイツを参考にしながら、今後の働き方、今後の企業としての在り方を考えてみるといいかもしれません。