Habi*do通信

チャットコミュニケーションでの議論を禁止すべき3つの理由

チャットに限らず、Eメールやメッセージングアプリ、SNS全般にも共通するテキストコミュニケーション。
IT企業を中心に、このサイトをご覧の皆さんのお勤めの会社ではお使いになられているのではないでしょうか。

Slack(スラック)や、Chatwork(チャットワーク)、GoogleChat(グーグルチャット)、MicrosoftTeams(マイクロソフトチームス)などなど、企業内外で利用するコミュニケーションツールも多様に存在します。このあと触れるチャットコミュニケーションにおける注意点や対策は企業内・仕事でのやりとりに限らず共通することかもしれません。ただし企業では業績を高めるための生産性が追求されるため、より課題の深刻さは大きいものでしょう。

自然災害やパンデミック時のBCP(事業継続計画)の実行のためにもテレワークでも生産性を落とさずに業務を遂行する環境づくりが企業において急務です。
また、多様な人材に継続的に活躍してもらうためにも重要なコミュニケーションインフラとなっていくことは間違いありません。

特に即時性の高いチャットやメッセージングツールの場合は、その利便性から利用する頻度は高くなりやすいものです。それゆえに連絡手段として、とても優れています。

しかしながら便利さと引き換えに、新たな課題が発生をしているのではないでしょうか。

3つの大きな損失があります。チャットでの議論を禁止すべき理由です。

パソコンの画面を見ながら憂鬱そうな女性

チャットコミュニケーションにおける三大損失!

チャットやメッセージングツールを使うことで、各段に情報の伝達を楽に行うことができるようになりました。
モバイル端末にインストールしたアプリにも通知され、いつどこにいても確認と対応が可能という面や、ツールによっては未既読を判別できるなど、とにかく「伝達」に優れています。
ビジネスメールにつきものの「お世話になります~」「お疲れ様です~」から始まる決まり文句のようなものも必要ないケースがほとんどです。

ある面では、業務効率化につながり、情報伝達速度も高まり、生産性向上につながっているようにも思えます。
一方で手軽に情報伝達をできるために頼りすぎてしまい、以下のような問題が身近に起こってはいないでしょうか?

①長文の応酬議論による大きな時間的損失

テキストコミュニケーション全般に言えることかもしれません。
本来、意図を正確に伝えるための文字情報ですが、相談や議論の過程をすべて文字情報え行ってしまうと思わぬ時間的・心理的な損失を生んでいる可能性があります。

例えば長文の応酬が続くスレッド(話題)にありがちなこと。

  • 正しく論理的に伝えようと文面を考える時間
  • 相手からの文面を読んで理解するためにかかる時間
  • 途中からその前後文脈を理解しようと改めて最初から読む第三者の時間
  • そしてその応酬が続くことで倍々ゲームで増えてゆく消費される時間

このような時間的損失が生まれているかもしれません。

また認識しておきたいのは、時間に対する感覚も実は人それぞれだということ。
「ちょっと聞きたい」「ちょっと確認したい」というようなことすら、文字のやりとりだと意外と時間がかかることもあります。

②誤解を生みやすい文字情報による議論で心理的損失

副次的には心理的な負担にもつながりかねません。

主語述語の欠落や、文脈の祖語があれば、前提条件が変わってしまうこともあります。そのため、確認をせずに進めると議論はあらぬ方向に進むことすら!
思ったように意図が伝わらず、結果として関係がこじれてしまうことも。

さらにこれが社内のオープンスチャットでの議論の場合、第三者にも同様に心理的な損失が生まれている可能性もあります。
いわゆる炎上状態(職場のチャットではめったにないと思いますが)になると、その損失は計り知れません。

また好みにもよりますが、入力中のアイコンがなかなか消えず、ヤキモキするということはせっかちな人ならありえます。加えて既読スルーや未読スルーにもヤキモキ…。
即レスを期待する人と、後回しで対応する場合とでお互いの思い違いも発生します。

もはやヤキモキしっぱなしです。

一時的に返事をして相手を安心させるなどの配慮は必要かもしれません。
しかし実は業務を中断して返事をするとすれば、電話とあまり変わらないのです。

③組織の分断による組織力低下と見えない損失

クローズなチャットやダイレクトメッセージやでのネガティブな不平不満や噂話もよくありません。
マイナスのやり取りが続き連鎖することで、組織の「心理的安全性」は相応に下がっていきます。

あれを言ってはだめ、やってはだめという萎縮が拡がりかねません。

このマイナスの連鎖は、想像以上に組織のシナジーが低下→生産性低下につながります。

人間は機械ではありません。
心理的にポジティブな状態をつくることを組織として考えていかなければ、思わぬ落とし穴にはまります。

組織内の人間関係、社会関係資本の大幅な損失につながりかなせん。

チャットツールでのコミュニケーション

チャットコミュニケーションに起こりがちな課題対策

ではこれまで取り上げたような課題にどのような具体的な対策があるでしょうか。
いくつか私の考える代表的なものをピックアップします。

長文でのやりとりは避ける

そもそもの話です!長文になりそうな案件は、チャットでのやりとりを切り上げましょう。
チャットでの連絡は何らかの意思表示やちょっとした報告、必要事項の最小限の連絡にとどめることが無難です。

長文になりかけたら「ちょっと話せませんか?」という勇気を。

それでも「メッセージしておいて」「メールで送って」と言われるケースもあるでしょう。その場合は「●●の件で相談があります」と伝えるか、相談内容を”箇条書き”で送ることをおすすめします。
相手も議論が必要だから直接話したほうがいいなと思うでしょう(心ある人なら)。またこれ自体が簡易的なアジェンダにもなるので一石二鳥です。

ショートミーティングをしてすり合わせる

上記に関連しますが、短い打ち合わせで意思疎通をはかることです。

相談や議論を行う場合、事前の議題共有をして意思決定は何らかの文字情報に頼らないコミュニケーションを行った方が無難です。
決定事項などを議事録で残すことは別の意味で重要かもしれませんが、それは別の話です。

事前の議題共有すらいらない「ちょっと聞きたい」みたいなことまでチャットメッセージで行うことで、余計な時間がかかることもあります。
できればFace to Face(対面)、難しければオンラインビデオ会議(Zoom、Skype、GoogleHangout、Wherebyなど)、それも難しければ電話をしてすり合わせをすること。

「時間のあるときに連絡ください」とメッセージを送っておくか、
チャットツールによってはステータス情報(取込中、話しかけていいよ、離席中、休憩中など)で状況を相手に可視化できるものもあります。

それによりできる限り直接話をするようにしましょう。
可能な限り「非言語情報」が含まれることで、相手の温度感もふまえながら話をすることができます。

“お互いの温度感”を共有しながら話すことは大切です。

ルールをつくる

ルールばかりになると窮屈かもしれませんが、少なくとも同期と非同期のコミュニケーションの役割明確化は必要でしょう。

少なくとも同期(同じ時間でやりとりする)が必要な場合は、チャット以外が望ましいでしょう。
非同期(タイムラグがある前提のやりとりをする)の場合は、グループウェア等の別の情報共有ツールでも良いでしょう。

例えば私たちの場合は、

  1. 対面
  2. オンラインビデオ会議
  3. 電話など音声通話
  4. オープンなスペースで相談事項を事前共有で後でやる

という優先順位で議論をしましょうと決めています。
また、利用するツールにも役割を明確に設けています。

  • チャットツール:連絡・確認事項など短いメッセージのみ、または緊急時の連絡網
  • Habi*do:日次業務報告、週報、その他共有したい報告事項、相談事項の議題、決定事項など
  • グループウェア:議事録・案件情報など

チャットはあくまで「連絡手段」と捉えると利便性と生産性を最大限に活かせそうです。

組織風土・文化を根本から変えていく

直接声をかけづらい組織風土・文化が根付いているとすれば、根本から意識と行動を変えていかなければ、便利なツールを導入しても生産性向上は期待できません。

私たちが考える理想の職場は「気軽な業務上の雑談をできる」「対面で真剣に意見を言い合い議論できる」「お互いに反対意見を認め寛容になれる(一緒により良い結論を目指して建設的に対応できる)」という職場だと考えます。

ボトムアップで現場から変えていくことは、かなり骨の折れる取り組みになってしまいます。会社として従業員同士の関係性づくりやコミュニケーションを大切にしたいのであれば、経営層→ミドル層→現場の順に発信し自ら体現していくことが必要ではないでしょうか。リーダーが率先して体現し影響力を発揮していかなければ、簡単には組織は変わりません。

一般的に変化を嫌う人が多いかもしれません。リーダーの決断と、幹部や管理職・担当部門に推進役が必要になるのではないでしょうか。

対面でのミーティング

まとめ

中には対面のコミュニケーションが苦手な人もいるでしょう。
ただ、文字情報によるコミュニケーションは本来のコミュニケーションの「補完的」な位置づけと捉えたほうが、結果として円滑なコミュニケーションをとれるものです。

チャットによるコミュニケーションの弊害として原因として大きいのは、温度感が伝わりづらい(冷たくなってしまう)ことで、相手がどのような表情や姿勢で対応しているのかが視覚情報として入りづらい。
そのため「傾聴」の姿勢が相手に伝わりづらく、双方が論理によるやりとりになります。

ビジネスを進める上で、論理的であることは重要です。
しかしながら、人を動かすには「感情」はとても大切な要素になります。

オフィス勤務で近くにいても、メールやチャットでやりとりすると起こりうる課題です。
つい文字情報によるコミュニケーションに頼りたくなるのは、邪魔をしてはいけない雰囲気、社内が静かで声かけしづらいなどの組織風土も原因かもしれません。

組織文化や風土が生産性に大きく影響し関連していることがよくわかります。

テレワークでの業務推進が今後ますます”当たり前”になってきます。
本ブログで取り上げた課題はますます大きくなってしまうかもしれません。

組織づくり、マネジメントは”オンラインコミュニケーション”を前提としたノウハウが必須になりそうです。