現代は「VUCAの時代」といわれます。
「VUCA」とは「Volatility(激動)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(不透明性)」の頭文字をつなげた造語。簡単にいうと、「現代社会は予測不可能で先が見えない」ということです。
意外かも知れませんが、この「VUCA」という言葉は、コロナ以前から存在し、使われてきました。
わたしたちの生活はコロナで大きく変わりました。その変化があまりに大きすぎて、「昔はよかった…」という感傷に浸りがちですが、コロナ以前も今と同様に「今までのやり方ではダメ。変わらなくてはいけない」といわれていたのです。
その警鐘になかなか気付かず、「そのうち変えないといけないな…」など、のんきに構えていたコロナ前のわたしたち。しかし2021年は、いよいよこの「VUCA」に真剣に向き合う必要がありそうです。
避けて通れない!ダイバーシティとDX
「VUCA」の背景には、競争のグローバル化やIT技術の発達、少子高齢化による労働人口の減少などがあげられます。そこにコロナが加わり、予測不可能性が一気に上がりました。
環境変化に対応できない企業が時代に取り残されてしまうのは、いつの時代も必至のこと。コロナがあろうがなかろうが、変わらない真理でもあります。
変化への対応方法はさまざまありますが、取り急ぎ考えたいのがダイバーシティとDXです。
これからの企業に必要なもの|ダイバーシティ
ダイバーシティとは、「多様性」という意味の英語です。企業においては「多様な人材を登用し、それぞれの能力を活かすことで、組織の競争力を高める」という文脈で使われます。
ダイバーシティは、これからの企業には必要不可欠なものだといわれます。
それには3つの理由があります。
理由1.求められるビジネスモデルが時代とともに変化
新商品を開発し利益を得るというビジネスモデルは、もはや通用しなくなってきました。求められているのは、既存のものを組み合わせ、そこに新たな価値を見出して世に届ける力です。
理由2.市場で通用する競争力をつけるため
市場がグローバル化してきており、どこでも通用する競争力が企業には欠かせません。
理由3.イノベーション創出の速度が速くなっている
顧客ニーズの多様化だけではなく、技術革新もスピードアップしています。それに伴い、イノベーション創出にもスピードが求められるようになってきました。
上記に危機感を覚え、いち早くダイバーシティに取り組んだ企業は、アフターコロナで生き残るための基盤が整えられるはず。「古きよき企業体質」を大切に守り続けることに、疑問を持ってみる必要がありそうです。
これからの企業に必要なもの|DX
DXとは「デジタルトランスフォーメーション」を指します。「ITの活用を通じて、組織を変革し、競争優位性を確立すること」を意味します。
気を付けたいのは、DXは単なる業務のIT化とは違うということです。「紙で保管していた書類を、データ化しました」というのは、IT化ではありますが、DXではありません。
DXとは、IT活用によって新しい価値を生み、IT技術ありきでビジネスに変革をもたらすことを指しています。たとえば、次のものがDX化の具体例だと聞けば、イメージしやすいでしょうか。
・キャッシュレス決済(支払いを効率化)
・書類の電子化(手続きを簡略化)
・オンライン会議(離れた場所での仕事を可能に)
どれも、単なる「書類の電子化」の枠を超え、わたしたちの生活に新しい価値を与えています。DXとは「IT技術ありきで、生活や仕事を変化させるビジネスモデルを創出するため」の概念だと理解ください。
DX化は顧客にはよりよいサービスを、企業にはより高い生産性を提供します。考えてみれば、サブスクリプションの映画配信サービスや、フリマアプリは、わたしたちの行動様式や購買フローを大きく変化させました。すでに多くの企業が、DXによって新ビジネスを世に出し、世界中の人が知らずのうちにDXの恩恵を受けています。その流れに乗り遅れては、いけません。
ダイバーシティもDXも、必要なものは「人」
「ダイバーシティ」と「DX」、導入するだけならば、さほど難しくはないかもしれません。しかし、それを組織として推進し、現場に定着させるとなると話が違います。
よく聞くのは、「DXを考えて大規模なシステム導入を行ったが、うまく運用できていない」という課題です。
しかし、本当に変わりたい、成功させたいと思うのであれば、重視すべきはシステムではなく「人」ではないでしょうか。
【ダイバーシティに必要な人材】
・会社の方針を正しく理解している
・他者との違いを受け入れることができる
・自分の強みを発揮できる
【DX化に必要な人材】
・デジタルに明るい
・現状に感謝しつつも、満足はしない
・自らが新しいものを生み出す
・業務以外のことにも積極的に取り組む
「ダイバーシティ」や「DX」の成功には、華々しいキャリアを持った人材や、より高度な技術を持った人材を思い浮かべがちです。しかしそれ以上に重要なのはマインドセットです。知識や技術よりも、前向きなマインドセットを持っているかどうかが大きな役割を果たします。
優秀な人材とは、どんな人材?
結局のところ、企業が生き残れるかどうかは、「優秀な人材がいるかどうか」に尽きるでしょう。
もう少し具体的に、優秀な人材像を読み解いていきましょう。
ダイバーシティとDXに必要な人材には、共通の特徴があります。それは、自由で新しい発想を持ち、長期的な視野で自らのアイデアを実行できる「自律型人材」であるということです。
自律型人材は、アイデアの具現化はもちろん、テレワークなどの新しいワークスタイルでも着実に成果を残します。また自発的な行動ができるため、チームの巻き込みや、社内外との関係構築もスムーズに行えます。
ダイバーシティ力が強い自律型人材なら、これまでと違う価値観を持つ社員、たとえば外国人社員や、時短・フルリモートワークの社員などが加わっても、その環境をよりよく整え、生産性を上げることができるでしょう。
DXに強い自律型人材なら、既存の事業とITをうまく組み合わせ、これまでになかった価値を生み出すでしょう。数年後には、そのアイデアが主力商品となっているかも知れません。
人材育成は、経営の大きな柱
どれだけ多くの「自律型人材」を育成できるかが、これからの企業の生き残り戦略の要になるでしょう。
もはや人材育成は人事部だけの範疇ではありません。経営戦略の柱として、企業全体でとりくむ最重要課題です。「人」は経営資源。そのひとりひとりを最大限に活用することが、個人と企業がともに成長できる環境構築の基礎となるはずです。
あなたの会社には、多様な人材が活躍し、自律型人材が育つような土壌が備わっていますか?
名前だけのダイバーシティやDXにとらわれず、足元を固めてみてはいかがでしょうか。
人材育成は経営戦略のツール
人材育成は、経営戦略を具現化するツールでもあります。どんなに能力のある人材がいても、正しく育成し、正しく活用できなければ意味がありません。
現在の評価制度はどうなっていますか?
もし、古い体質の人間だけが評価されるような内容であれば、ダイバーシティやDXはなかなか進まないでしょう。それどころか、優秀な人材がどんどん社外に流れていってしまうかも知れません。
まずは社内に目を向け、ひとりひとりが活躍できる下地を整えましょう。そして、これから求める人材像を明確にして、眠っている才能を引き出す仕組みをつくりましょう。
その下地ができれば、採用戦略もうまく回り始めます。会社を支えているのは「人」。経営者やマネージャーがそれを理解できていれば、会社に新しい風を吹き込むことは、可能なはずです。