数年前から話題になっている「Z世代」を知っていますか?
「Z世代」とは、1990年後半頃から2010年頃に生まれた世代のこと。現在では、全世界の人口の約3分の1をも占めており、少子高齢化のすすむ日本では、これからの消費を担う世代として注目を集めています。企業にとっては、「顧客」でありながらなおかつ「働き手」ともなる存在です。企業がこの世代をよく知ることは、避けて通れません。
ではその「Z世代」、どのような特徴を持っているのでしょうか。
Z世代を理解するキーワードは、「チル」
TVやネットなどで、「チルする」というフレーズを耳にしたことはないですか?「チル」とは英語のスラングの「chill out」の略で、日本語では「まったりする」という意味。Z世代が最も大切にしている価値観です。
・近所のカフェでチルってる
・部屋で映画でも見ながらチルしない?
のように使います。
イメージしにくければ、「自分のペースで居心地のよい時間を過ごす」ことや「自分時間を楽しむ」ことを思い浮かべてください。Z世代は「自分らしく」あることに非常に価値を感じています。
Z世代を理解しよう!
それ以外のZ世代特有の特徴を、いくつかご紹介しましょう。
1. ソーシャルネイティブである
気がつけば、スマホやSNSが日常にあるのは当たり前。だからSNSでの自己発信に抵抗がありません。情報収集にはSNSを使い、もはや「ググる」は古く、「タグる」のが当たり前になっています。「タグる」とは、SNS上に投稿された#(ハッシュタグ)で検索をかけ、商品やモノについて調べる行動のこと。ちなみにZ世代はガラケーを使ったことのない世代です。
2.ダイバーシティを重視する
デジタルデバイスを使うことに長けており、ネットでの情報収集が得意なZ世代。世界中のあらゆる価値観にアクセスしています。そんな中で育ったため、ダイバーシティを認め、個性の尊重を重視する傾向が強いです。
3.プライバシーに配慮する
個人から芸能人、企業にいたるまで、さまざまな炎上事例を見ながら育ってきたZ世代は、プライバシーの保護にはとても敏感です。そのためSNSの投稿をオープンにせず、ごく身近な範囲で、限られた時間のみ閲覧できるようにしたがります。
4.キャリアや経済に保守的
Z世代はリーマンショックや、親世代の終身雇用制度の崩壊などを間近で見て育ちました。だから経済には保守的です。物心ついたころから「サブスクリプション」が身近で、自分の「モノ」として「所有」したいという欲求もさほどありません。また、さまざまな価値観に触れているので「出世」=「幸せ」とは考えておらず、キャリア志向が弱い傾向にあります。
5.ブランド品よりも自分らしいものを好む
Z世代は人と同じように見られることを嫌がります。「みんなが持っている」より、個性的でユニークなものや、あまり人が持っていない数量限定の商品などを好みます。選択基準は、ブランド名ではなく「自分らしさ」です。
Z世代と「働き方」
上記のような特徴を持つZ世代は、こと「仕事」においても新しい価値観を持っています。
Z世代の仕事とプライベート
仕事と私生活を柔軟に連動させ、双方の充実を求めるスタイルを「ワーク・ライフ・インテグレ―ション」と呼びます。仕事は仕事、と割り切ってきた世代より、生き方をより統合的に見ているといえるでしょう。そのため副業やパラレルキャリア、スラッシュキャリアなどに関心を持ち、実行への心理ハードルも低いといえます。ただし勢いや野望で行うことはあまりありません。収入の不安定さや将来については、慎重さを持っています。
Z世代の企業へのロイヤリティ
人生の中でキャリアチェンジをすることを厭いません。人生100年時代や定年延長などのニュースを聞いて育ち、「同じ場所にとどまるのではなく、途中でペースや道を変えながら、長距離を走っていく」という意識があるため、企業へのロイヤリティは「低い」とみなされがちです。
Z世代の人間関係
会ったことのない人とも、オンラインやSNSで簡単に繋がれるのが当たり前の世代。自分が知りたいことや困っていることは、「答えを持っているか不確実な上司」より、スマホのアプリに聞いてしまいます。Z世代が困ったことを相談する相手は、社内ではありません。
Z世代へのアプローチと、マネジメント方法は?
Z世代のマネジメントには、日本式の組織ピラミッドを前提とした指導ではなく、ロールモデルとして彼らに寄り添い、活躍をサポートしていくようなフォロワーシップが求められます。
グルーピングは禁止
前述の通り多様な価値観に触れて育っているので、個性や自分らしさを大切にしています。「若者」や「新卒」などと、カテゴリーでひとくくりにすることはNG。一方的な指示ではなく、個を見た対話が大切です。
そのため上司や先輩にはメンター的な接し方が求められます。個性を理解し、それぞれに適した機会を与えることが、Z世代のポテンシャルを引き出す方法です。1on1などのコミュニケーションで仕事の目的をきちんと伝えつつ、良かった点や改善点をしっかりフィードバックすると、Z世代は「この会社なら安心して働ける」と感じます。
現実を正しく理解し、信頼関係を築く
疑問点をすぐ検索する習慣が身に付いており、最新情報にアクセス可能なZ世代。疑わしいことや納得できないことは自分で調べて判断します。Z世代は、「世界は開かれている、会社だけが世界ではない」ということを先天的に知っています。だから現実を探す術を持ち合わせているのです。
そして、イメージよりも実際の品質、目先の利益よりも社会貢献や倫理観を重視します。彼らにとって収入は働くモチベーションにはなりません。「会社や上司の命令は絶対」という昔ながらの価値観も通用しません。マネジメント側も「うちの会社ではこうだから」と固執せずに現実を理解し、Z世代との信頼関係を築く必要があります。
対話を重視する
「べき論」に縛られないZ世代とは、ダイアログの対話が有効です。ダイアログとは意見をオープンにしつつ、主義主張や立場に固執せず、相互理解を深めるための会話です。答えは誰かが持っているわけではなく、会話の中から生み出されます。
このような「答えを皆で作る(見つける)」というコミュニケーションが当たり前になっているため、命令や規則で動いていた世代とは、価値観が大きく異なることを知っておきましょう。
プライベートへの価値観を大切にする
Z世代はプライベートを重視します。それはよくも悪くも個人主義ということ。いわゆる「飲みニケーション」はZ世代の最も嫌うものです。Z世代が「自分のプライベートを侵される」と思うようなコミュニケーションをとることはやめましょう。良かれと思ったことでも、場合によっては壁を作りかねません。
デジタルに強い側面を取り入れる
DXなどと騒がれてはいますが、近年の日本ではITの進化に対応できる人材が少ないことが課題とされています。Z世代は生粋のデジタル世代。また、これまでになかったスピードと量の情報の中で生きているZ世代は、効率性を重んじる傾向にあります。Z世代の持つデジタルを使いこなす力と効率的な考え方は、企業にとって貴重な戦力となるでしょう。
Z世代 に対応する準備を始めよう
1980年代に、今までとは価値観が違う若者を表す言葉として生まれた「新人類」。その「新人類」は今や、社会の中核を担う世代です。あなたの若い頃も「◯◯世代」と名付けられませんでしたか?世の中が変われば、それに伴い行動や考え方が変化するのは当たり前のこと。Z世代も同様です。
これからの組織には、今まで以上に「さまざまなバックグラウンドを持った人」が入ってきます。違う価値観を持つ人を尊重し、相手を理解しようとする『ダイバーシティ&インクルージョン』の発想を持てなければ、頭の固い会社として、若い世代から選んでもらえなくなるでしょう。
今後、社会の中核となるZ世代を理解することは、企業にとって必要なアップデートです。目まぐるしく変わりゆく社会に取り残されないためにも、「Z世代マネジメント」の準備を始めてみてはどうでしょうか?