Habi*do通信

OKRがうまくいかない理由~組織力を高め成長スピードを上げるためには~

海外の成長企業で活発に採用され、日本企業でも導入され始めているOKR。
OKRを採用することで社員の意欲を高めながら急成長を遂げられると期待してOKRを導入したものの…なかなかうまくいかないと感じている企業は多いようです。
OKRが上手くいかない理由は何であるのか、OKRを採用する上での注意点等を考えていきます。

OKRがうまくいかない企業は多い

OKR

企業の経営者や人事担当者の方々に求める人材像を尋ねれば、「自ら考え積極的に新しいことを提案できる人」、「失敗を恐れずチャンレンジ精神が旺盛な人」という答えが往々にしてかえってくるのではないでしょうか。新卒採用場面でよく聞かれるステレオタイプ・紋切り型ともいえる回答ですが、それだけ企業が求めている、足りていない人材であるともいえるのでしょう。

不確実性の高い経営環境においては、柔軟に考え課題を解決することが必要。さまざまな経験を積み、視野を広げ、柔軟な発想につなげていくことは年齢を問わず求められています。
自らチャレンジする柔軟な発想を持つ人材。これらの人材でイノベーションを起こし、企業の成長そして業績を向上させたい、ということが企業の本音かと思います。

高い目標やイノベーションにチャレンジし続けるイノベーション人材を育成したい・組織を作りたいとする企業から注目を集めている目標管理のフレームワークが「OKR」です。
OKRが組織全体でうまく機能すると、企業全体の目標達成にむけ、全組織・全従業員の能力を集中させることが可能となります。
チームにおける目標と業務のつながりを全員で意識し、社内のベクトルを合わせることが可能となり、一丸となって成長できる組織へと変革していきます。

組織変革への期待をもって実際にOKRを導入したものの、うまく浸透できない、続かない、失敗してしまうケースは多いようです。
OKRを導入したからといって必ずしもうまく機能するとは限らないのです。

日本的なカルチャーの企業においてOKRの定着は難しい

ルーフショットとムーンショット

OKRではムーンショット(月に届くほどのショット)とよばれる非常にチャレンジングな目標を目指すことが現場に求められます。OKRとはチャレンジするカルチャーづくりであり、チャレンジが推奨されないような企業での定着は難しくなります。

日本企業の多くに、不確実なチャレンジがしにくいカルチャーが存在しています。
失敗を回避する傾向が過度に強く、リスクを取ってチャレンジできる環境、失敗を許容し、挑戦する人を受け入れる文化・土壌が少ないのです。競争意識が低く、チャレンジして目立つよりも、組織内で波風を立てないことを優先する雰囲気もあるのではないでしょうか。
日本においては、転職、仕事での意思決定などでも「失敗したらマイナス。新しいことをすることはリスク。挑戦はしない。」といった感覚も強くあることからもこれらの文化が根強いことが垣間見えます。

社員のトップダウンを待つ姿勢、指示待ちの意識。目標は上から降ってくるものであり、それを期待している「待ち」の状態であれば、OKRはうまく機能しなくなります。
日本的なカルチャーがある企業にOKRを導入するのは難易度が高い、といえるのです。

新たな仕組みを定着させることは難しい

OKR

さらに、OKRは組織全体を通じて行う目標管理なので、基本的には組織全体に導入しないと効果が発揮しづらいものです。会社のOKRに部署のOKRが直結するように考えるのが特徴でもあるため、結果的に社員のOKRも連動することになります。そのため、「なぜ、OKRを導入するのか」「導入した先にはどんな未来があるのか」をメンバー全員が理解・納得し組織を構築するためのインフラとして整備していくことが大切です。

OKRだけに限らず、新たな仕組みを組織に定着させるために大切なことは本気で運用するということです。
業績評価などでも起きうることですが、ただ導入されるだけでは、日々業務で忙しい中では、マネジメント層だけでなく現場社員においても運用は負担としか感じられなくなるのです。

OKR以外のタックマンモデルや7Sといったほかのフレームワークと同様に、導入当初はうまく機能しないことや混乱も想定されます。また、組織のフェーズや事業環境によっても状況は変わっていきます。常に自社に合わせた形でアップデートしていくことを前提で取り組む必要があるのです。
OKRは状況に合わせてアップデートが可能なもので、モニタリングをする中で、目標が計画通りであれば継続を行い、計画通りでなければ見直しをかけることが特徴です。
長期的な視点で継続し、全体で議論しながら変化させていくことが定着に大事なことだといえます。

アップデートを前提にしているところが、米国IT企業やベンチャー企業などの変化が速い業界から高い評価を受けている理由の一つです。とはいえ、 OKRに複雑化し運用工数をかけることはOKRの本位とは異なります。
「OKRを導入したことでどう変わったのか」「イノベーティブな行動が増えたか」といったOKRを導入した目的を振り返りながら、アップデートを続けていくことが必要です。

OKRはトップダウンやボトムアップ、ミックス型が存在する

OKR

OKRプロセスでは、ボトムアップを中心に進め、トップダウンは少なくするという印象が大きいかと思いますが、OKRはトップダウン、ボトムアップどちらでも設計することが可能です。
ちなみに、データ分析を基に考えられた人事施策についてGoogle(グーグル)が他の組織と一緒に共有し推進しようとする取り組みであるGoogle re:Work(リワーク)のサイトには、「OKR は、トップダウンとボトムアップ双方の提案が組み合わさることで高い効果が期待できます。」と記されており、トップダウンとボトムアップのミックス型を推奨しています。

OKRは、まず組織単位の目標 (Objectives) を設定するところからスタートします。何を実現したいのか、どういう成果を出したいのか、会社全体としてどこに向かいたいのか、それらを考えた上で決定します。全社をあげて取り組んだ結果、達成度が60~70%程度となる挑戦的でわかりやすいシンプルな目標を設定することが大切です。
目標を設定したら、その目標を実現するために必要な成果(Key Results)を洗い出します。定量的な成果を2~5個程度設定し、各部署や部門に分配します。

トップダウン、ボトムアップ、ミックスの違い

トップダウン型であれば、まず、経営陣で会社目標、目標達成のための達成指標を設定し、四半期ごとにチームごとの目標に落とします。次にマネージャーがチームメンバーの目標を、1人あたり2〜4つ程度決める、といった形になります。

ボトムアップ型であれば、全社員、もしくは部門ごとに会社全体の目標を提出。提出された目標の中から経営陣が目標を選択しそれに紐づく達成指標を設定する、といった形がとれるでしょう。

ミックス型であれば、チームに目標を割り当てた後に、達成指標はボトムアップでマネージャーに設定してもらいます。

どの方法がよいかは企業や状況によって異なる

トップダウン、ボトムアップ、ミックス型、どの方法が最適であるかは、企業の文化や成熟度によっても変わってきます。また外部環境や経営状況によっても最適なパターンは変わるため、経営層がどの方法をとるか見極めていく必要があります。

差し迫った経営課題があり、それを解決することが最優先である場合には、トップダウン型を選択することも考えられます。一方で業績が好調となり、組織の硬直化が見られた場合には、組織に柔軟性を持たせるために、トップダウンだけでなくボトムアップ、また両サイドからのアプローチが必要になるでしょう。
会社や従業員のニーズの変化に沿いながら、トップダウンとボトムアップの比率を半分にするといった選択もできます。

企業はそれぞれ

他社が行って成功していたとしても、そのOKRの形が自社に最適とは限りません。どういった手法が今の組織にあうのかしっかりと選択し自社にあった形に変えていくことが求められます。
また、どの形式を選択したとしても、導入する背景や、実施する上での心構えなどを事前に設計し、組織の隅々まで浸透させていく必要があるのです。

組織の進化に終わりはない

フレームワーク

OKRだけに限らず、組織にフレームワークを導入する際には、そもそもの目的や課題が明確でなければ、効果を実感するどころか導入さえおぼつかない状況になってしまいます。

新たなフレームワークの導入は組織に変化をもたらします。その変化は、抵抗や混乱を発生することに繋がるかもしれません。しかしそれらを乗り越えうまく運用できれば、期待していた以上の組織変化に繋がるはずです。

OKRは大きな目標に向かってチャレンジすることで、チーム一人ひとりの能力を加速度的に成長させるフレームワークです。高い目標に対し経営陣も従業員も一丸となって取り組み、変化を恐れないチャレンジングな企業文化を醸成します。
OKRの基本的な目的を忘れず、都度アップデートしながら運用していくことが望まれます。たとえ現状うまく回っていたとしても、今後はさらなる変化が必要になるかもしれません。
時代の流れによって、組織のあり方も変化していきます。組織の進化に終わりはない、のです。