快適な職場環境づくりをすることは、労働安全衛生法により事業者の責務として義務づけられています。しかし、従業員一人ひとりが心がけや努力がなくては成りたたないものでもあります。
整理整頓。
整理整頓は安全そして快適な職場を作り出すだけでなく、品質向上、仕事のスピードアップ、生産性の向上、安全性の向上につながります。
整理・整頓の意義と効果的な進め方
第一に、基本である整理・整頓の意義と効果的な進め方について考えていきます。
整理・整頓の考え方・進め方
整理・整頓は、安全衛生の基本です。整理・整頓の徹底していない職場は、安全衛生の面でも徹底していないといっても言い過ぎではありません。
「整理」と「整頓」にはそれぞれ異なった意味があるのはご存知でしょうか。
(1)整理・整頓の考え方
・整理とは、必要な物と不要な物を区分し、不要な物を処分することである。
・整頓とは、必要な物の置き場所、置き方、並べ方を決め、使いやすく、わかりやすく整えて置くことである。
整理・整頓は、安全衛生の第一歩といわれるくらい大切なことです。
(2)整理・整頓の進め方
整理・整頓・清掃・清潔の4つの頭のSをとり、これらの活動を4S活動(運動)と言います。また、これにしつけを加え5S活動と称していることもあります。ここでいう「しつけ」とは4S「整理・整頓・清掃・清潔」を組織として継続的に習慣づけることです。
5Sの定義
では基本となる5Sとは何でしょう。
整理・・・要るものと要らないものに区分して、要らないものを処分する
整頓・・・要るものを所定の場所に、表示をしてきちんと置く
清掃・・・きれいに掃除する
清潔・・・いつ誰が見ても、誰が使っても、不快感を与えないようにきれいにしておく
しつけ・・・職場のルールや規律を守る
5Sとは、単に清掃を意味するものではないことがお分かりいただけるかと思います。
仕事に必要なものに焦点を絞り、仕事を行いやすくなるように整理・整頓することによって、職場の抱える課題を解決するための改善活動なのです。
整理整頓の悪い職場とその改善活動
整理整頓の悪い職場では、職場に不要物がたまり、片付かなくなります。
職場が狭くなり、ムリな姿勢になるなど不安全行動や従業員の健康を害する原因にもなります。
モノを置く場所、作業をする場所等々区別がはっきりしなくなると、職場が乱雑になり、不快感を与えることになります。
また、必要な物を探すのにムダな時間がかかります。
これらを改善するために行う活動は整理・整頓を身につける活動です。上司が先頭に立って働きかけ、模範を示すことが重要です。
また、職場全員の協力で職場の整理・整頓を進めていく必要があります。
基準例)
1.必要な物と不要な物の判断基準を示す。
2.整頓の仕方を決める。
3.担当する備品や会社の機器や設備に責任を持つ。
4.掃除当番は責任を持って掃除をする。
このように基準を明確にし、場所または物に対し責任者をはっきり決めることがポイントです。
また、定期的に“どのようにやっているか”をチェックし、必要により改善することを忘れてはいけません。
5S運動の進め方のポイント
では5S運動の進め方を具体的に順を追ってみていきます。
- 5S委員会の設置と職場リーダーの選任
- 5S運動開始の意識付け
- 5S点検チェックリストでの点検
まずは現状の診断から始めます。
問題点を摘出し改善するために5Sのチェックリストを作成します。自己点検、相互点検を行うのに効果的です。
5S点検の結果は点数化して評価し、活動の度合を明確にします。
しかし、大事なのは点数でなく、摘出した問題点を確実に改善する点にあることを忘れてはいけません。
- 大掃除でスタート
5Sへの関心を高めるのに有効です。 - 整理の推進
5Sの要・不要品基準を作り、不要品を職場毎に摘出します。摘出した不要品は、職場判断で廃棄、保管、転用などの処分方法を決めます。 - 整頓の推進
「必要なものがすぐ取り出せるように片づける」ことを狙いとします。「場所表示」「位置表示」「品目表示」などの表示を徹底します。 - 清掃の推進
清掃を通して、職場・仕事・設備に関心をもたせこれらを大切にする心と、改善行動を養う姿勢が大切です。
清掃は「災害ゼロ」「不良ゼロ」「故障ゼロ」の基礎づくりです。
毎日、毎週、毎月と段階的に、かつ掃除も仕事のうちとして、ルールをつくって全員で行うことが大切です。 - 5S運動の定着の推進
定着化が重要です。
年間予定表の公表、5Sコンクールの定期化、5Sニュースの定期発行といったイベントや褒賞を組み合わせることが有効です。
まとめ:5Sの習慣化が大切
工場や製造現場といった生産現場に限らず、「5S」を率先して実行すること。
無駄のない仕事ができ、従業員みんなが気持ちよく仕事ができる環境を整えることにつながります。
タイムマネジメントの実践が求められ生産性向上を重要視する昨今。身につけるべきスキルは『5Sの習慣化』にあるのかもしれません。