Habi*do通信

これからの組織マネジメントのカギはミドル層 ~トップの意識変革が、ミドルアップダウン型経営を成功させる~

企業業績が良い会社でも、ミドル層を対象に早期退職者を募集している…というニュースを目にしたことはありませんか?

儲かっている会社なのに、どうして?と思うかも知れませんが、業績が良いからこそ資金があるうちに退職金を支払い、余剰人員を整理するという意図があります。年齢が高い層には、どうしても人件費がかかりますから、経営改革の一環で人員整理をしているのです。

いま盛んなのは、いわゆるバブル入社組を減らし、今後主戦力になる若手社員へ投資するという流れ。整理される方はたまったものではありませんが、これからの組織を見据えて準備を始めている企業と、手をこまねいて人件費をうまく使いこなせていない企業では、どちらが時代に対応できるのかは明白ですよね。

ミーティング

しかしこれは、ネガティブな話だけではありません。そんな厳しい状況の中、会社に残ったミドル層には、より一層の活躍が期待されています。

今後入社してくる若い世代を引っ張っていくのは、経営層ではなく、ミドル層。
そのため、ミドルアップダウン型経営に注目が集まっています。

しかし、「ミドルトップダウン」型経営の導入には、まずはトップの意識改革が必要です。それを忘れると、せっかく残ったミドル層をも、失ってしまうことになりかねません。

組織経営が重視される背景

ご存知の通り、ビジネスを取り巻く時代環境の変化はこれからも激しくなるばかりです。
この変化が緩まることは、当面はないと考えてよいでしょう。

しかしビジネスの現場で、その変化を悠長に眺めているわけにはいきません。ビジネスサイクルが短くなった今、長期サイクルは展望が狂いやすく、会社の舵取りが難しくなってきたからです。

変化

実際、
「半年先が見えない」
「予定通りにいかない」
「細かい方針や計画が役に立たなくない」
「今までうまく行っていた方法が通用しなくなってきた」
という課題に、うっすら気が付き、危機感を抱いている人は多いはずです。

つい最近まで、ビジネス上で大切な資源は「ヒト・モノ・カネ」だといわれてきました。しかし、それが「知識」へと変化し始めています。そのため、会社間での知識の共有に目が向けられつつあります。

時代の先を読んでいる企業では、シェアを争ってきた競争相手とも手を組み、パートナーとして共生しようというパートナーシップの概念が生まれています。どちらかが勝ち残るのではなく、共に生き残ろうという視点でビジネスが動いているのです。

そこで課題となるのは、経営層と現場の「つながり」。
いくら経営者が「新時代に向けて」「共生の姿勢を」と声をあげても、現場への浸透には時間がかかりますし、今まで培ってきたやり方を急に変えることはできません。

では、経営層・本社サイドにより、新たな仕組みやシステムが導入されたとき、現場でのスムーズな展開を指示し管理するのは、誰でしょうか。
そのときこそ、会社のことをよく知る「ミドル層の管理者」が、組織マネジメントをすべきなのです!

ミドルアップダウン型経営の考え方

ミドルアップダウン

私たちに馴染みがあるのは、上位下達の「トップダウン型経営」です。
経営判断が早いというメリットがありますが、現場の指揮能力を高めたり、モチベーションの維持向上にはつながりにくいといえるでしょう。

真逆の方針に「ボトムアップ型」があります。これは、現場が考えたことを行使する権利が与えられているため、現場力が身に付きますし、モチベーションは維持しやすいでしょう。しかし企業全体の方向性や将来展望を見失いやすいというデメリットがります。また、それぞれの判断にかかる時間に差が出るため、すり合わせに時間がかかるのも課題です。

ミドルアップダウンは、このふたつの型の「いいとこ取り」。つまり、ミドル層が調整役となり、会社の舵取りとして重要な役割を果たすようにする方法です。

ミドルアップダウンの目的は、トップの考えと現場の状況を、双方へ的確に伝え、会社の新しい方針や動きを徹底的にマネジメントすることです。それこそが、中間管理職であるミドルに今後求められる、「経営への関わり」なのです。

ミドルアップダウン型経営を導入するための3つのポイント

ミドルアップダウンを導入する際の3つのポイントをみていきましょう。

1 経営目標の設定と、周知

今までのように、トップが細かい方針や計画を立てて下に降ろし、「この通りにやれ」はNG。
現場がミッションに沿った考えを持たないと、本質的な行動はできません。「なぜこの業務を行うのか」への理解と納得が必要です。これを現場に伝えるのが、ミドルの役割です。

2 評価

半年先の見通しが立ちにくいのは、会社も個人も同様です。そのため、短期間の数字や結果だけを見て、相手を評価するのはNGでしょう。
評価軸を、行動のプロセスに移しましょう。部下が、「なぜそうしたか?」を探り、上司自身が理解していかなければ、正当な評価ができない時代です。

3 行動

コンピテンシーに着目し、行動特性を活かしましょう。
根気よく「目標➡行動➡結果➡評価」のサイクルを回す必要があります。

人は、たった1回の説明でものごとを理解し、行動するわけではありません。
たとえビジョンに納得しても、新しい行動にすぐ移れる部下は少ないでしょう。

人間には、いつも通りの行動をするという特性があります。
現場のミドル層には、新しい行動が習慣化するまで、目的をもってチーム全体をまとめる力が求められています。

とはいえ、そもそもミドル層がうまく機能していないチームもあるでしょう。
では、そのミドル層を自発的に動かし、主体性を引き出すにはどうすればよいのでしょうか。

経営層はミドルマネジメント層の現状を把握するべき!

まず、あなたの会社の現状はどうでしょう。
業務プロセス改革、新システム導入、働き方改革、コンプライアンスに関することが、トップダウンで展開されているのがほとんどだと推測されます。

たとえ現場全員で「推進しよう!」と取り組んでいても、責任はすべて管理職が負います。課内で成績が出ないと、各個人の評価が下がるのはもちろん、管理職は管理責任を問われてしまいますよね。「上が決めたから」に従うリスクは、ミドル層にとって無視できないほど大きいものです。

フラット化

また、効率化を狙ってピラミッド型組織からフラット化した結果、管理人数が拡大し、各個人の状況把握が困難になってしまった…という課題も多いはず。

組織のフラット化は、メリットもある反面、デメリットも大きいのが事実です。役職を廃止した結果、部下・後輩の管理・育成を担う立場の人が減るなら、誰が育成責任を負うのでしょうか?
そして、部下の成長に向き合う機会のないミドルマネジャーは、どうやって経験を積んでいくのでしょうか?

経験を積むべき立場も、状況も用意されていないミドル層が、いきなり管理職になり大勢の部下を持つのは大変なことです。戸惑いは当然ですし、そもそもすべてを管理はできません。

プレイングマネジャーが増え、マネジメントだけに集中できるミドル層は減少傾向にあります。そんな状態で「ミドルアップダウンの導入だ!」と叫んだところで、うまくいくはずはありません。

経営層がまずすべきは、会社を下支えしているミドル層の「現状把握」。どこまで任せられるか?十分な意識はあるか?成長の環境が整っているか?などを、リアルに確認することなのです。

その行動が、会社の課題解決の糸口を見つけ、ミドルアップダウンの価値をつくり出すのです。

まとめ・経営層こそ振り返りを

上司と部下

本来のミドルアップダウン型で、管理職が求められるのは、「トップの目線と現場の社員の意識の結節点」としての立場。しかしトップの目線と現場の社員の意識の差は大きいため、どうしてもジレンマが生まれてしまいます。あまりに現場とトップの乖離があると、離職率が上がりやすくなり、定着してもモチベーションの問題が出てくるでしょう。

そして、ミドル層もトップの間の意識差にも、注意が必要です。価値基準がブレていると、たとえば部下への目標設定が甘くなり、達成しやすい評価基準を持つことになりかねません。逆もしかりです。トップがなかなか現場を理解してくれない…という問題も生まれるでしょう。

そこで、ミドルである中間管理職がトップや経営層に実感を持たせ、トップダウン型が機能しなくなっている状況の改善に動けるのが、理想の組織です。

まずは、経営層が率先して、トップダウン型の意識から脱却してみてください。
そのうえで、ミドルアップダウン型を成功させるために必要なことを整理していきましょう。ミドル層に「明日から、ミドルトップダウン型だ!」と押し付けるのは、今までのトップダウンとなんら変わらないからです。

会社の舵取りは、これからもトップマネジメント層です、そこに変わりはありません。その舵取りをうまく進めるために、現場が任せられて、客観的に意見をしてくれるミドル層がうまく機能していたら、会社はきっとスムーズに進んでいけるでしょう。