入社式が終わり、新入社員を迎えた方々も多いのではないでしょうか。
新入社員を迎える側は、「今年はどんな新入社員が入ってくるのだろう」と、楽しみにしている反面、世代間ギャップや職業観の違いがある中、不安も多いかと思います。
その不安を払拭し、新しい仲間として、頼れる後輩として一緒に仕事ができるよう、2019年の新入社員の傾向を知っておきましょう。
2019年新入社員はどんな世代?
2019年、平成最後の入社予定者の生まれ年は、4年制大学をストレートで卒業したと仮定すると、1996年もしくは1997年です。
そこに短期大学卒・高等学校卒を加えると、すべての卒年で90年代後半生まれに突入しており、高校卒だけで見ると、2000年代生まれの新入社員がほとんどを占めています。
ではこの90年代後半〜2000年に生まれた世代は、どのような教育を受けてきたのでしょうか。
この世代は、まさに「ゆとり教育」世代と「脱ゆとり教育」世代の中間にいます。
大学院卒と4年制大学卒はほぼ「ゆとり教育」から「脱ゆとり教育」の移行期間で、数学理科のみ脱ゆとり教育を受けた年代です。
つまり、「ゆとり世代」と次の「さとり世代」の混成部隊といえるでしょう。
「失われた10年」などといった景気の停滞を家庭でも感じており、チャレンジスピリットに溢れているとはいえず、安定志向で内向的です。しかし人より劣った生活は嫌がります。そのため努力はしますが、無茶はせず、「ある程度」で充足します。
またインターネット上のコミュニケーション能力が高く、実社会よりもSNSのほうが充実している…なんて新入社員もいるかもしれません。
SNSでの出会いに抵抗がなく、SNSと現実世界を切り離して考えないため、SNSを含めた世界が、新社会人にとっての実社会なのかもしれません。
他にも、以下のような特徴があります。
- チームや集団より自身のプライベートを優先しやすい
- 無理だと思うと、見切りをつけるのが早い
- ワークライフバランスをうまくとりたいと思っている
- 成長したい、と思う反面、安定と安心も欲しい
- 仕事をしたくないわけではなく、ガムシャラにではなく、効率よく働きたい
- 終業後は、友人との遊びや趣味に使いたい
もちろん全員がこうだとは限りません。しかし同じ世代の空気感の中で成長してきたということは、ある程度「似た価値観」を持っているでしょう。
指示を出されたことしかしない?その理由は?
2019年の新入社員と仕事をするときは、どのようなことに気を付けなくてはならないのでしょうか。
まず、「資料を作って」と頼んだとします。しかし指示通りのことはするけど、改善案を出したり、発展形態を考えてきたりはしないでしょう。なぜなら、言われてないからです。
基本的に、言葉を素直にとらえるタイプが多く、与えられた仕事は一生懸命こなします。
そのため、最初から「現行案はこれだけど、改善案も考えて」と指示を出すことで、問題なく解決します。
もちろんできないこともあります。しかし基本的な能力は高いのです。ただし最初はマメにフォローしてないと、叱られるのを恐れて報告をしなくなる可能性もあります。
進捗をさりげなく聞き出し、方向性の指示を出してください。
指導者や周囲が一生懸命に関わることで、育つポテンシャルは大きいため、最初が肝心です。
これは、適切な指示をすることで成長が見えやすい世代ともいえます。
悪く言えば、「コントロールしやすく」、よく言えば、「将来の姿が想像しやすい」のです。
関り次第で今後の成長が望める可能性が高い世代だといえます。
あとは上司の力量次第。難しいかもしれませんが、部下を育てることにはリアルな育成ゲーム的な面もあるため、面白みをもって取り組んでみてはいかがでしょうか。
デジタルネイティブの情報処理能力の高さを生かして
初めてもつ携帯電話が、フィーチャーフォンではなく、スマートフォンだったり、防犯用の子ども用携帯を親にもたされていたり、なにかとモバイルに親しんでいる世代。
そのため情報取得スピードが速く、テレビで特集する内容はもう古いと思っています。
調べるといえば、辞書ではなくインターネット検索が当たり前。わからないことはとりあえずググり、調べれば正解があると信じているため、違う可能性を思いつきにくいという難点があります。
それを否定してはいけません。調べればできるようになることを、きちんと知っている世代です。いろいろなことに挑戦させてみましょう。そして、他に正解はないのか考えさせる習慣をつけていきましょう。
ただし、フォローは必ず行うようにしましょう。
正解のないVUCAの時代。会社でイノベーションのきっかけはこの世代がもたらす可能性は高いです!
会社に奉仕という概念はないが、個人主義だけでもない
会社に奉仕するということはないけど、やりがいは大切にしています。そのため、成長を見込めない仕事を続けることを嫌がります。
また、給与や有休を取る自由が確保されていないと、あっさり辞めます。
売り手市場で就職活動をしてきたので、離職に対する恐怖心は少なめだからです。
決して成果主義ではありませんが、正しく評価はされたいとも思っているため、同期と比べて評価に不満があると、離職につながりやすくなるでしょう。
しかし将来展望はしっかりしています。そのため、給料がずっと上がらない、仕事内容が変わらずスキルアップにつながらないとなると、同じ会社には定着しない傾向がありそうです。
ワークライフバランスを理解し、安易な転職を防ぐ
転職サイトに登録しなくても、SNSでよい条件のオファーがきて、すぐに転職できるご時世です。
雇用側としては怖いですよね。しかし、今の仕事にある程度満足していれば、オファーは受けないでしょう。リスクを恐れる世代でもあるため、急激な変化は望んでいません。
とはいえ、たとえば残業が多い職場の場合、「上司はなぜ、仕事量の振り分けの改善や、増員をしないの?」と疑問を持ち、ある日いきなり辞職届を提出する…という行動を起こす可能性もあります。
上司からみると突発的に思えますが、実は計画的に転職先が決まっていたり、失業手当を計算していたりと、リスクを最小限に抑えて行動に移しているため、留意や翻意は難しいそうです。
安易な転職を防ぐためにも、新入社員のワークライフバランスを意識する必要があります。
会社主導の面談では解決ができない
世代間ギャップを何とか埋めて、新入社員を戦力にするために、会社側もさまざまな努力をしていることでしょう。
たとえば研修や親睦会。たとえば、定期的な面談や1on1ミーティング。
それらは決して不要ではありません。しかし、コミュニケーションの土台が築かれていないまま行われる会社主導の面談では、相互理解はなかなか進みません。
また入社前後は、新入社員に対するサポートが手厚くても、いつの間にかそれらが少なくなり、彼ら・彼女らが一番悩む時期に、適切に手を差し伸べることができない可能性もあります。
そうなってしまうと、アッという間に、仕事へのモチベーションが下がり、士気の低下や離職を招いてしまいます。
違いを知り、お互いに認め合おう
そのようなことになる前に、新入社員を「一個人」として、知り、認めることが必要です。
相手を知ることを監視や束縛ではないかと感じるのは、上司世代。
個性や自分を大切にする世代にとっては、「知って、認める」ことが大切なのです。
これはSNSで「いいね!」を付けあう世代ならではの感覚で、承認欲求は高いといえるでしょう。
ちょっとしたことでも褒め、認めましょう。
「言わなくても認めている」と思っているのは、上司であるご自身だけです。
言葉にするだけで、新入社員が定着してくれれば、育成の苦労も報われませんか?
毎日の会話が、会社のコミュニケーションを変える
世代間での価値観の違い、生活の違い・・・さまざまな違いがあるのは当たり前です。
まずは、違いを認めることから始めましょう。違いが新たなイノベーションをもたらすこともあります。
「何を考えているか分からない」「どう対応していいか分からない」ではなく、気持ちに寄り添って、お互いの理解を深めることに注力してください。
そして、もっと会話を重視しましょう。
上司から部下への「指示」では、仕事はうまく回らない時代です。
世代間のギャップを埋めるのではなく、新しい価値観をのぞいてみよう、体感してみようという感覚で会話をし、新しい価値観の新入社員と認め合いましょう。
新入社員だって、面白い話は大好きです、いつも同じ話や自慢話ではいけませんが、バブル真最中のエピソードなどは、「ホントにあった話?別世界!」と面白がってくれることもあります。
そこで質問に答えたり、ちょっとした雑談をすることで、新入社員の性質が見えてくるはずです。
まとめ
人材不足が続いているこの時代、若手社員の定着や戦力化は、大きな経営課題。
すでに新入社員を迎える側も、相当な努力や工夫をしているといったところも多いかとは思います。
問題なのは、その工夫を「自分の価値観」の中で行ってしまうことです。それでは、今の世代に合った工夫とはいえません。
何よりも「会話」を重視し、コミュニケーションの見える化を行いましょう。
若い世代に限らず、違う価値観を認め合うことは、チームで仕事をするときに必ず必要になります。