2020年、「働く」の現場は、変化の波に飲み込まれました。個人の価値観が変容し、転職する人も増えているそうです。これはコロナ騒ぎがおさまっても、続く風潮だと考えられます。
さて、ここで生まれるのが、
「人材が流動化しているのに、人材育成に力を入れる必要があるのか?」
という疑問です。
経営者や管理者の方にとって、育成コストは大きなお悩みのはず。すぐに転職するような人材にコストをかけたくない、という気持ちは当然でしょう。しかし、本当に育成をストップさせてしまったらどうなるでしょうか…。コストは抑えられても、組織が崩壊してしまうかもしれません。
「既存の育成施策を継続するか」「どうせ流出するなら、育成をやめるか」
これは組織として大きな選択肢。あなたの一存では、なかなか決められませんよね?
そこで今回は、「今後求められる人材育成」について考えていきたいと思います。優秀な人材を確保したい、転職ありきの若者をどう育成していいか分からない…とお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
なぜ今、人材育成が必要なのか?
なぜ今、人材育成が必要なのでしょうか。
その大きな理由に、私たちを取り巻く「外部環境の変化」があります。
「終身雇用制度・年功序列制度の崩壊」「少子高齢化社会による労働人口の減少」「働き方改革」「ニューノーマルの働き方」など、挙げればきりがないほど、企業の環境は日々急速に変化し続けています。
なかでも、労働人口の減少はどの企業もが危険視する問題です。今後も労働人口が減少していくのであれば、現在所属するメンバーのスキルアップが、会社の業績を左右するでしょう。
「優秀な中途採用の社員が颯爽と入社してきて、会社を救う」なんてストーリーが夢であることは、管理職の立場にいればわかるはず。だからこそ、既存メンバーのスキルアップが叶うような育成を行う必要があるのです。
人材が流動するからこそ…
人材が流動するからこそ…
冒頭に、人材の流出について書きました。
「人材が流動化しているから、人材育成に力を入れなくていい」という考えはNGです。
人材の流動化が進むからこそ、人材育成に力を入れなくてはならないのです。
外部環境の変化によって、働き手ひとりひとりの価値観も多様なものとなりました。自分の好きなスタイルで働く、自分に合った環境を選ぶ人が増えています。
こうした価値観は、「1つの会社で働くのが当たり前」とされてきた世代の人たちにはまだ受け入れ難いかもしれません。しかし、2020年の20代・30代にとっては、それが当たり前です。転職がリスクではなくなり、優秀な人材であればこそ、「自分が成長できる場所」「自分の居心地のよい場所」で働きたいという強い思いを持っています。
人材育成に力を入れていない会社は優秀な人材からは見放され、モチベーションの低い人材だけがズルズル残ります。自分から動こうとしない、自ら考えない、向上心がない人材だけを抱えた組織は、徐々に衰えていくでしょう。
必要性は分かったけど…
必要性は分かったけど…。
人材育成の必要性は、わかっている。
問題は、そこにコストと時間をかけて「効果があるか」なんだよ…
そうお考えでしょうか。
よく分かりますが、一番よくないのは、中途半端な、だましだましの「今まで通り」の育成を行うことです。なぜなら、現場の人たちは、世の中の変化を肌で感じているからです。このままではいけない、変化に太刀打ちできない、スキルもリソースも足りない…社員はそう感じています。
経営者や管理者の「今までのやり方でまだ大丈夫じゃないか?」「新しい施策の導入は、効果もわからないし、手間もかかるだろう」という気持ちは、透け透けです。
もし、人材育成を考える立場・部署の仕事が、古い仕組みを維持し、起きたトラブルへの対応ばかりになっているのであれば…それこそ、人材育成どころか、育成すべき若い世代はどんどん離れていっているでしょう。
人材育成に力を入れない企業に起こる問題
人材育成に力を入れない会社は、2つの大きな問題に直面します。
1. 競争力の低下
環境への対応が必要だと気付いた企業は、人材育成に力を注いでいきます。人材マネジメントを多角的に捉え、社員一人一人の幸福度を高めるような施策を導入する企業も増えるでしょう。
ライバル企業がどんどん成長していく中で、自社だけが時代の流れに逆行したままならどうなるでしょうか。優秀な人材は離れていき、競争力が低下することは明らかです。
2. 採用率の低下
個人の価値観の多様化にともない、「会社が社員を選ぶ」のではなく、「社員が会社を選ぶ」時代になっていきます。つまり、会社としての魅力がなければ、採用力が弱くなるということです。
特に優秀な人材が求めるのは、「自己成長できる」会社です。となれば人材育成に力を入れている企業に人気が集まるでしょう。
過去の栄光があっても、2021年で競争力・採用力が弱い企業は、瀕死のライオンです。力を回復させるためにも、コストが…などと弱腰にならず、人材育成に力を注ぐべきです。
研修だけじゃない。求められる人材育成とは
では、2021年に求められる人材育成とはどのようなものでしょうか。
一般的な人材育成の手段には、研修や職場内でのOJT、OFF-JTなどがあります。
「それくらいはもう取り入れている」という企業も多いのではないでしょうか。
しかし研修やOJTは、どうしても形だけの人材育成になりがちです。課題ありきで、目の前のマイナスを埋める目的の研修に意味はなく、受ける社員も「上司にいわれたから、面倒だけど研修会場に向かう…」という意識であれば、効果は薄いでしょう。また、業務を少しでも早く覚えるためのOJT。これもよくありがちですが、それはあくまで通常業務を少し早く覚えるための短期的な手段です。業務を覚えてしまえば、その取り組みに価値はありません。
これからの人材育成を考えるうえで最も大切なのは、将来に向けた視点です。その社員が、10年後も「この会社で働きたい」と思えるには?成長につれて、最大限に価値を発揮してもらうには?育成施策を打つ側が、少し遠い未来に意識を向けることが大切ではないでしょうか。
社員と一緒に、未来を見据えてみる
たとえば「数日間現場リーダーを体験してもらう」という方法があります。
リーダー体験を通じて、部下との連携方法や、どうすればチームが回るのかを身をもって知ることができれば、業務への取り組み方が改善されます。業務が自分事になり、積極性も芽生えるかもしれません。
さらには、「いつかリーダーになりたい」という気持ちがめばえ、仕事に前向きに取り組める可能性もあります。
このように、人材育成では将来的な視点を持つことが重要です。社員にどんな存在になってほしいのか、どんなスキルを身につけてほしいのか、具体的なイメージを持って考えてみてください。そうすれば、研修やOJTといった形だけの「名ばかり人材育成」から脱却できるはずです。
そして、成長すべきは社員だけではありません。この大変革の時代を生き抜くためには、組織自体にも成長が求められます。人材育成は、組織育成と同じ意味を持つのです。
まとめ:人材育成に力を入れよう
会社にとって、「人」は何にも変えがたい財産です。
しかし、社員たちが「仕事がつまらない…」「この職場じゃ成長できない」と思っていれば、その財産は眠ったまま。おとなしく眠っていればまだいい方で、見切りを付けて「さっさと転職する」社員や、「給料が出るなら、波風立てず、適当に過ごそう」というマイナス因子な社員も生まれてしまうでしょう。
財産を活かすも、眠らすも、会社次第。
「今のままで、組織としての将来はあるのか?」「自分のすべきことは何か?」と、問いかけてみましょう。もし、見て見ぬふりをしているのであれば、2021年の組織崩壊の責任の一端は、今のあなたかもしれませんよ。