Habi*do通信

【開催レポート】従業員のWellbeingを高める具体的な組織開発事例に触れる!~心理的資本セミナーVol.2

従業員のWellbeingを高める具体的な組織開発事例に触れる

テレワークという働き方の選択肢が急速に注目を集め拡がることになると同時に、様々な組織内のコミュニケーションやマネジメントの課題が顕在化することになりました。そんな中、会社と個人の関係性や、組織づくりの在り方にも変化を感じる方の声も聞かれます。

先行きが不透明な時代であることは疑う余地がありません。そんな中、戦略ありきではなく組織変革への柔軟性・人材のパフォーマンス発揮を促すマネジメントが企業の競争優位性をつくるといわれます。その中では多様な人材の活躍(女性・シニアなど)もダイバーシティ&インクルージョンを形骸化させることなく、人材ひとりひとりが自律して成長していくような仕掛けも重要な位置づけになるでしょう。

学識者の視点から『ウェルビーイング経営の考え方と進め方:健康経営の新展開』(労働新聞社)などの著書を持ち、経営学・組織行動論の視点から「ワーク・エンゲージメント」や「ジョブ・クラフティング」に関する研究を専門とされている武蔵大学森永雄太教授と、実務家の視点からD&I推進・働き方改革の現場施策である『いきワク活動(組織開発)の文化風土化』を豊田通商グループに展開をされている豊通ヒューマンリソース株式会社人材開発部長の池内貴由氏をお迎えしオンラインイベントにて徹底議論しました!当日の内容を簡単にダイジェストでご紹介いたします。

テレワーク時代の従業員のWellbeingを高めるには

森永雄太氏
武蔵大学経済学部経営学科教授

なぜ今ウェルビーイングなのか

ひとつは人生100年時代の到来ということで、寿命が延びてきた中で長く活力を保って前向きに働ける人生の在り方を本気で考える必要に迫られてきたということ。

一方で、もっと前向きに組織の変革をすすめるエンジンとして従業員のポジティブなエネルギーに注目し、活用する企業が現れてきたとも感じています。

学術の領域でもストレスやウェルビーイングについての研究が増えてきて注目が高まっています。

ウェルビーイング経営とは

仕事領域におけるウェルビーイングには、仕事に対する前向きな気持ちを高めていくワークエンゲージメントという考え方や、心理的健康職場といういくつかの要素で捉えていこうという考え方があります。

従業員のウェルビーイングを高めるためには、まず病気でないということが確保されたうえで、仕事に対する前向きな気持ちに結び付いていることが大切です。そしてさらに仕事だけではなく、自分が所属しているグループや部門といったコミュニティに対するポジティブな感情が伴っていることが必要であると考えています。

この一体感をすべての従業員が持てるように、トップマネジメントとしても人事施策としても、従業員側からも働きかけることで、相互作用にて高まっていくものだと考えています。

ウェルビーイング経営を推進する人事の取組

様々な組織の取組を連携させていくことがとても大事です。人材開発や安全衛生、ダイバーシティ&インクルージョン、評価や報酬、組織開発といった取組を分断させず、一貫させることが必要なのではないかと考えています。

豊田通商グループの組織開発『いきワク活動』の取組み

池内貴由
豊通ヒューマンリソース株式会社 人材開発部長

経営戦略としてのDiversity&Inclusionと働き方改革

当社ではD&Iを経営戦略の一つと位置づけており、多様な人材が活き活き働く職場・チームで成果を出す職場を目指しています。

具体的には

  1. 現場施策(組織開発)
  2. 全社施策(有給取得推進やリモートワーク推進など)
  3. 制度・仕組み整備(フレックス勤務やシニア再雇用など)

といった3軸の働き方改革を通して実現させようとしています。いきワク活動はこの中の1つ目の現場施策(組織開発)に該当します。

いきワク活動の概要

いきワク活動とは、目指す姿と現状のギャップを埋めるための「各職場が、持続的生産性の高い組織へ自ら考えシフトする活動」のことで、室・グループ単位で定期的に話し合いながらD&Iの考え方である①ありたい姿の共有、②全員で意見を出し合う、③違う価値観を受け止める、④合意形成というルールに沿って、安心安全な場、関係性をつくるべく問題解決プロセスを進めてきました。

実際の取組テーマの考え方については個人でもチームでもよく、実行しやすい「業務」より、なるべく「風土や意識」に注目していただきながら、何をやってもいいですよと幅を広げて設定してもらいました。

文化風土化に向けた浸透ステップ

2014年にトライアルで開始してから成功事例を集め、3年後に経営トップを巻き込んで人事・本部のもと250以上の全社全グループで導入を開始しました。

導入期の活動成果としては、アンケートで継続を希望した方が3分の2程度で、多くの社員が組織関係性や職場環境の変化を実感しており、有給取得率や残業時間も改善しました。

一方継続したくないと回答した理由には「やらされ感や強要への違和感」といった声も多く、自主的な取り組みへ方針を変更することにいたしました。

2019年度からは適応期へ進化し、これまでトップダウンだった活動から、自立的・自発的な取り組みへと変化させていきました。最終的には2025年を目標に、文化風土として定着させていきたいと思っています。

モチベーションは見える化・定量化しづらいものである為、個人・チーム・ハード・ソフトの4象限に分類した「いきワク度チェック」という指標を作成し、ビフォーアフターを可視化できるようにして取り組んでいます。

パネルディスカッション

石見
石見
いきワク活動で「持続的生産性が高い状態を目指そう」という考え方がありましたが、長期的に社員の皆さんを引っ張り上げていくのは相当難しいように思います。責任者としていかがでしたか。
池内
池内
最初に説明会をしたときは、「これをやって会社が儲かるのか」といった懐疑的な意見が多かったです。特に左脳系の方たちに、どうつながっていくのか理解していただくのが本当に大変でした。私含めたプロジェクトメンバー全員が、これはいいものなんだと信じて地道に伝えていきましたね。
森永
森永
リーダーの方にこういったソフトの部分を理解していただくことって難しいと思います。私からも、組織が向かっていこうとする方向と生きワク活動の関連性について何かフックになるものがあったのかどうかについて伺いたいです。
池内
池内
各組織で組織開発として現場でいろんな取り組みがボトムアップされている中で、当時の社長が「これをやるんだ」と言ってくれたことはひとつ大きかったと思います。もう一つは、「当社のグローバルビジョンを達成するためにやるんだ」というアプローチであったこともあります。ビジョンはすぐ達成できるものではありませんが、戦略にも落とし込まれているD&Iを重ねて、同じ方向なんだということで筋が通っていたのかなとは思っています。

参加者
参加者
「ありたい姿」の話し合いに2か月以上かけていたことが印象的でした。この時間は長いと感じていらっしゃいますか、それとも妥当でしょうか。
池内
池内
期間はあまり気にしていませんでした。1回の会議でぱっと決まる組織も、3~4か月かける組織もありました。みんなで納得いくまで議論するというのがこの活動のポイントでして、テーマも重要ですが、テーマを議論することによってお互いに理解をして腹落ちをしていく過程がとても重要で、そこでほぼ全てが決まるとおもっています。また、小さな成功体験も重要だと思います。簡単でみんなすぐできることから実行していって、次に展開していくような組織もありました。
参加者
参加者
定年後再雇用者の働き甲斐や活力について考えています。会社員として65歳までの5年間をどのように過ごせたら本人にとって幸せなんでしょうか。

森永
森永
60歳から5年間を延長戦と考えるとなかなか難しいような気もしますね。シニア活用といった文脈のときには60歳間近のときにアンケートをとることもありますが、それだと少し遅いのかなと思っています。例えば30代でのキャリア研修のときに、変化していくとは思いますが長期的なキャリアについて考えていただくということも一つなのかなと思っています。また、職場としてチームレベルではなく個人の能力を生かした仕事の最適化も目指す必要があるのかなと思います。

さいごに

池内
池内
突然コロナの時代に入りましたが、このいきワク活動のおかげで、各メンバーが疎遠になることなく良い形でソフトランディングできているのかなと思っています。小さな取り組みでもコツコツ続けていけば形になるのかなと思っています。今日はどうもありがとうございました。
森永
森永
ウィズコロナの時代、テレワークにはいろんな側面がありますが、基本的には一緒にいなくても、チームを意識しながらみんなが貢献できる働き方が望ましいと思っています。そういう意味では池内さんの実践されたように、チームの中で課題を見つけて、ハードだけではなくチームの状態や働く意欲まで解消していくことは非常に大事だと思います。制度だけでなくチーム内での豊かなコミュニケーションや支援関係を生み出すというのも非常に大事だと今日お話をお聴きしても改めて思いました。

※心理的資本®は開本浩矢氏および株式会社Be&Doの登録商標です