Habi*do通信

withコロナ時代の新入社員のオンボーディングに本当に必要なのは研修?それとも・・・?

企業経営者の皆さま、人事部門の方々はコロナ禍で働き方の変化への対応に追われる状況になられているかと思います。そんな中、新入社員のフォローアップは気が付くと優先順位が下がっているかもしれません。

筆者は新卒採用からオンボーディングまで6年間担当していましたが、インターンシップの主流化によって新卒採用が年中行事となり、オンボーディングを見直すまでの時間とパワーが無くなり、つい例年通りか少しアップデート!で済ませてしまっていました。今年の状況なら尚更、ここに掛ける時間とパワーがなくなってしまっているのでは、、、と想像する次第です。

ただ、本当にそれで良いのでしょうか?

思い描いていた社会人のスタートとは違った2020年春


コロナ禍で入社した新入社員たちが今置かれている状況は、昨年までとは大きく違います。
社会人初日を飾るはずだった入社式は中止や延期、あるいはオンライン開催へ、社会人へと意識変革しビジネス基礎を学ぶはずだった新入社員導入研修も中止や在宅オンライン受講に。一緒のタイミングで社会人になったはずだった友人同士、4月から出社する人、とりあえず自宅待機だと言われ緊急事態宣言が明けてやっと出社できた人、5月には本配属された人など業界や企業ごとに異なるスタートになっています。

自分はこの会社を選んで正解だったんだろうか?

ベテランの方々からすると、長いビジネスマン人生のなかでこの数ヶ月がどうだったかなんてことは、大したことではないようにお感じになるかもしれません。しかし、新入社員にとってこの数ヶ月のインパクトは大きいです。

ご存知の通り2020年入社の新入社員は、いわゆる「売り手市場」のなかで就職活動をした世代。複数社から内定が出て選べる立場だったからこそ、自分の選択が正解だったのかが気になってしまうのです。「自分の選択は自分で正解にするんだ」そういう気持ちで入社することが正しい。きっと新入社員もそれはわかっています。

しかし、これだけ世の中の状況が大きく変化し、企業ごとで対応がバラバラになると、自社と友人の選んだ会社を見比べて、ちょっと疑問を感じてしまったり、、、楽しそうに仕事をしている友人を羨んでしまったり、、、どうしてもいろいろな感情が例年以上に生まれてきます。

せっかく入社した新入社員、企業にとっては資産となるはずの人材を離職させてしまうのは勿体ない。今こそ、新入社員定着・活躍促進のためのオンボーディングを見直すべきタイミングです。

まずは新入社員が持つ背景を理解するところから

近年の新入社員は、次のような社会環境・教育環境で育ってきています。

  • ネットの普及により、探せばすぐにベストな情報が手に入る。
  • 学校では厳しい指導を受けたり、強制されることが減少している。
  • 個性が尊重され、自分は自分、相手は相手と考える。競争はしない。
  • 危険は排除され、安全な用意された環境のなかで活動する。
  • 面白いツールやコンテンツに囲まれて楽しい時間が過ごせる上に、予想外の場面に出くわすことは少ない。

つまり、今のVUCA的環境で直面しやすい困難(解がない・失敗・意に沿わない・不確実)を自分で何とかする経験が積みにくい環境で育っています。失敗することや否定されることを過度に恐れてチャレンジできず、結果的に受け身で自分基準の行動をとる傾向にあります。勿論、一括りにすることはできませんが、若手社員の顔を思い浮かべてみると心当たりがあるのではないでしょうか。

コロナ禍で入社したことによる影響と本音

コロナ禍でなくとも落ち込みやすい入社後2・3ヶ月~半年頃、新入社員の本音はというと、

「新入社員導入研修も動画で見るばかりで、ちゃんと社会人としての基礎が身に付いたのか不安なまま。なのに配属されてOJTが始まってしまった。やっていけるんだろうか」
「正式に配属された!やっと仕事ができる!と思ったのにテレワーク継続中で全然教えてもらえない。質問は自分からって教わったけど、遠慮してなかなか聞けない」
「上司や先輩社員がコロナへの対応にかかりっきり、自分はまともな仕事ができていないし、成長できていないな。何のためにここに入社したんだっけ・・・」
「職場の人たちはいい人たちだけど、テレワークでは仕事上のやりとりだけで雑談も少ないし、とても悩みの相談なんてできない。職場の人ってもっと仲間って感じがするもんだと思ってた」
「よく同期と助け合うって先輩たちから聞いてたけど、ソーシャルディスタンスのこともあるし、なかなか同期とも話せないな~」

不安や悩みの中身は違えど、『イキイキ』している状態とは言い難いことは共通しています

新入社員のフォローアップの常識を疑え!?本当に必要なのは『効力感』を高める支援!

新入社員のフォローアップの定番といえば、人事主催の集合研修です。実施タイミングは入社半年後が多いでしょうか。半年間をふりかえって成長点と課題点に気づく、企業人としての意識・姿勢・行動の再確認、ビジネスマナーの再確認・ブラッシュアップ、同期との悩みの共有、今後の目標・行動計画を立てる、という内容で、これらを通してモチベーションアップを図ることを目的としています。
この研修もやらないよりは絶対やった方がよいのですが、ニューノーマルな生活様式では集合研修の実施そのものが危ぶまれます。またかねてから、人事主催では研修後の実践フォローが難しく、せっかく立てた目標・行動計画が絵にかいた餅になってしまいがちという課題もあります。そして最も気になるのは、モチベーションは一時的な感情に近く、移ろいやすいという点です。瞬間的なやる気にどれほどの意味があるのか・・・。
新入社員のフォローアップを見直すべき理由がこれだけあります。

持っていきたい方向性としては、これまでの『イキイキ』していない状態のフォローに留まらず、VUCA的環境で自律・自走できる人材へと成長させることです。そのためにはモチベーションではなく『自己効力感』を高めることに着目します!

『自己効力感』=「自分にならできそうだ」という行動につながる自信を醸成するには、次の4つの手段があります。

影響度は上から順に強いと言われています。
これら4つの手段は研修ではなかなか体験できないため、日常のマネジメントの取り入れていくことが必要です。取り入れていく方法として、まずは次の3つから始めることができます。

  1. 達成したい目標と行動を設定し、目標を明確化する
    ⇒目的や意味が腹落ちしないと動きたくない新入社員世代。組織の目標を明示し、個人の目標をマネージャーと新入社員が一緒に考える。ここが自走の第一歩です。
  2. プロセスを可視化して、メンバーで共有する
    ⇒他者から学びを得る代理体験のためには、プロセスが見えていることが必須。在宅勤務で失われがちな要素だからこそ、どんどん共有する。
  3. メンバー間の日々の承認を活発にするための仕掛けをする
    ⇒グループワークに慣れ親しんできた世代なので、他人と一緒にゴールを目指すことに価値を感じます。ポジティブなワークコミュニケーションを増やすための仕掛けをしましょう。大切なのは日々認め合うことです。

一般的に、今の若い人は熱量が足りないなんて言われますが、上記3つを満たして、自分にとって価値のある仕事だとちゃんと分かれば、意外なほどにエネルギッシュに動けます。マネジメント次第で『自己効力感』を高めてあげて、エネルギーを引き出すことはできるということです。

新入社員だからと言って甘やかさない!目標達成を支援するマネジメント

だからといって、新入社員を甘やかしたり、気を遣いすぎたりする必要はありません。一方でまだ何もできないだろうからと、まともに目標も持たせないのも良くありません。
新入社員のうちから自分で目標を立てて、目標達成のためのアクションを考えることを求めていきましょう。最初のうちは見当違いのことを言うかもしれませんが、明確に自組織の目標を伝えてあげることで個人の役割を見出すヒントとなり、擦り合ってくるのでご安心ください。

そして、マネージャーは目標達成の支援をすることに集中します。半年に一度の評価面談よりも、1ヶ月に一度の1on1ミーティングでプロセスの中で困っていることはないか、相談役となり、軌道修正をするためのアドバイスをしてあげることです。そして、ここでも日々の承認は鍵となります。目標達成して始めて認めるのではなく、当たり前と思えるような行動も、まだ成果になっていない頑張りも、認めてあげることが達成体験となるのです。

自律・自走できるまで、ひたすら支援!

結論:
新入社員のオンボーディングも日々の部下マネジメントも必要な要素は一緒だった!

これからは移ろいやすいモチベーションではなく、『自己効力感』のフォローをしていくことが肝となります!すでにお気づきかもしれませんが、『自己効力感』を高めるマネジメントは新入社員のためだけのものではなく、自律・自走できる組織づくりを目標とした部下マネジメントと同じ要素が詰まっています。
新入社員のオンボーディングを見直すことをきっかけとして、組織を強くするための第一歩が踏み出せそうです。