部下とのPDCAセッションで働き方改革を実現しよう – Habi*do

部下とのPDCAセッションで働き方改革を実現しよう

エンゲージメント基礎知識

組織の成果を高めるためには?

もうみなさんお分かりの通り、働き方改革の一丁目一番地は組織の生産性の向上です。日本生産性本部の調査によれば、日本の労働生産性はOECD加盟35カ国中20位だそうです(2016年)*1。経営者から一般の社員に至るまで、みんながなんとか生産性を高めて働き方改革を実現したいと願っているのに、なぜ日本はこんな体たらくなのでしょうか。

無駄な業務をやめようとか、IT化を進めて業務効率化を図ろうだとか、さまざまなアイデアがあり、試されています。それはある程度の成果を上げているはずですが、残念ながら十分な結果につながっていないことを突きつけられるデータです。このように労働生産性で他国の後塵を拝しているのは、わたしたちが組織の生産性に関する重要な要素を見落としているからではないでしょうか。

組織の成果を高めるためには“関係の質”に注目をすること

マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム博士は、組織の成果を高めるためには、まず①関係の質を高めることで、②思考の質が高まり、③行動の質に変化が生まれ、④結果の質が高くなり、それによってさらに①関係の質が良くなるという「組織の成功循環モデル”A Core Theory of Success”」*2を提唱しました。つまり、組織の生産性を高めるためには、①関係の質②思考の質③行動の質にアプローチしなくてはいけないのです。

ダニエルキム

こうしたアプローチを職場で実現するためのアイデアとして、リーダーがチームメンバーひとりひとりと週一回の1on1ミーティングを実施する企業が現れ始めています。よく知られている例はYahoo!です。社長から新入社員に至るまで、直属の部下全員と週一回の1on1ミーティングを実施することで、部下の目標達成支援と成長支援を行っています。この1on1ミーティングは部下のための時間であり、部下が自分で考えて結論を出す支援を上司が行う場です。上司が指示をしたり、自分の武勇伝を語る時間ではありません。*3

こうした取り組みの背景には、社員という存在に対する認識の変化があります。「社員に指示した仕事をちゃんとやってもらう」のではなく、「社員は本来自発的で、自分の仕事を前に進めようとしている。社員がいい仕事をできるように、上司はそれを支援する」という捉え方です*4。管理するのではなく、支援するのです。そうした認識の中で行われる1on1ミーティングは、社員から見れば、自分がよりよい仕事をするために上司が支援してくれる時間です。そのため、上司への信頼感が醸成され①関係の質が高まると同時に、話しながら思考を深めるため②思考の質も高まるのです。

こうした一対一の部下との対話にPDCAのマネジメントサイクルを埋め込むと、③行動の質まで支援することが可能になります。週一回30分間のセッションを繰り返すことで、部下の仕事のPDCAが回るように支援するのです。

毎回のセッションは必ず、「で、次のセッションまでに何をするんですか?」という質問で次までの行動を決めて終わります(PLAN)。それは部下自身がセッションの中で話しながらで考えて決めた行動ですから、実行に移される可能性は高まります(DO)。そして次のセッションは、「実行してみてどうでしたか?」という質問で始まります。やろうと思ったことができたのか、そもそも何らかの障害があってできなかったのか、あるいは想定以上に行動することができたのか。それを話しながら振り返る場になります(CHECK)。その上で次の行動の質を高めるために、「なにがそうした良い(良くない)結果を生んだんでしょうか?」「よりよい成果につなげるためにはなにが重要でしょうか?」と問いかけます(ACTION)。そして、最後の質問はもちろん「で、次のセッションまでに何をするんですか?」です(PLAN)。

対話によるPDCA

つまり、セッションは部下が自分の仕事について、CHECK-ACTION-PLANを話す場であり、それによって日常のDOの質を高めるというサイクルが確立されるわけです。このサイクルが本当に組織の生産性にプラスの影響を及ぼすのかどうか、弊社は「部下マネジメント塾」という3ヶ月のプログラムとして作り込み、複数の企業から集まった6人のリーダーたちに試してみました。やってみると、受講したリーダーがPDCAを念頭に部下と毎週セッションを重ねることで、次のような様々な効果が生まれました。

・最初は身構えていた部下が、なんでも話していいんだと認識するようになり、ちょっとした気がかりや困っていることを話してくれた。その結果「もっと早く言ってれたらこんなことにならなかったのに」ということがなくなった。
・部下がどんな気持ちで仕事に取り組んでいるのかわかった。もっと早く汲み取ってあげればよかった。
・何度か繰り返していると、部下の方から「セッションやってくれませんか?」とリクエストされるようになった。セッションを受ける価値を感じているようだ。
・部下がセッションの会話のしかたを真似てお客さまと話した結果、新たなニーズが見つかり受注につながった。
・仕事の効率が上がると同時に部門間のチームワークが良くなり、結果として残業が削減できた。

部下によって当然難易度の差はあるのですが、セッションがうまくいけばいくほど部下の生産性は上がります。セッションをきっかけに上司と部下がなんでも話せるインフラが確立されますから、セッション以外の時間でも気軽に報告・連絡・相談が行われるようになります。目の前の仕事の処理については日常のちょっとした報告・連絡・相談で、成長課題や緊急ではないけれど重要な少し深く考えたいテーマについてはセッションで話す、という状態ができあがります。

面白いことに、上司と部下が一対一で良い関係を築いていくと、チーム全体の関係がよくなっていきます。職場のミーティングの雰囲気がよくなり前向きに結論が出るようになり、部下同士の日常のやり取りも気軽に行われるようになります。

組織の生産性を高めて働き方改革を実現するためには、部下一人ひとりのPDCAサイクルが回るためのセッションを週一回定期的に実施することが鍵です。ただし、これは継続的な取り組みであるがゆえに、考え方を理解さえすればすぐできるようになるというものではありません。やってみてうまくいったりうまくいかなかったりという経験をもとに、次のセッションにチャレンジするという繰り返しの中で確立していくものです。たやすい話ではありませんが、すべての上司の方々が自分のチームで実現できた日には、日本の労働生産性は世界のトップクラスになっているはずです。

参考文献
*1 “労働生産性の国際比較2017年版” 日本生産性本部 https://www.jpc-net.jp/intl_comparison/intl_comparison_2017_press.pdf
*2 “Organizing for Learning” Daniel H Kim (Pegasus Communications, Inc.)
*3 “ヤフーの1on1” 本間浩輔
*4 “マネジャーの最も大切な仕事”テレサ・アマピールほか

株式会社オフィス・アニバーサリー代表取締役社長/経済産業省登録 中小企業診断士
京都大学教育学部卒業。住友金属工業株式会社に入社し、人事・調達・海外技術支援営業等に従事。その後、プラウドフットジャパン株式会社でコンサルタントとして、顧客企業のマネジメント層の行動の変化定着化を実現。企業再生・不動産投資ベンチャーのリサ・パートナーズ株式会社で人事責任者を経て、日本のコーチングの草分けである株式会社コーチ・エィに入社。2012年独立。2014年 株式会社オフィス・アニバーサリーを設立。上司と部下のタテの関係、上司同士、部下同士のヨコの関係を好転させることで組織の成果を高めるプロジェクトに多数取り組んでいる。

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