ヒューマンエラーをなくすには~新幹線のぞみの事故事例より読み解く~ | Habi*do(ハビドゥ)

ヒューマンエラーをなくすには~新幹線のぞみの事故事例より読み解く~

安全管理

山陽新幹線博多発東京行き「のぞみ34号」で2017年12月、台車が破断寸前の亀裂がある状態で走り続けた。

あと3センチで破断するおそれがあり、もしも走行中に破断すれば、脱線など大きな事故に至った可能性があった。
新幹線における重大インシデント。
(※インシデント:ISO22300によると「中断・阻害、損失、緊急事態、危機になり得るまたはそれらを引き起こし得る状況」を指す)

高い安全性を誇る高速鉄道として世界にその名を誇ってきた日本の新幹線。安全性の崩壊。
このインシデントにヒューマンエラーが関与していることをご存じだろうか。

ヒューマンエラーによる事故や不具合を未然に防ぐために必要なことを、この新幹線におけるインシデントを事例として見ていく。

暗黙知の標準化

この事件で問題となったこと。1つ目はなぜ台車枠に亀裂が発生したのか。

この問題を引き起こしたのは、台車枠の底面と「軸バネ座」と呼ばれる別の部品とを接合する工程にあった。
鉄道車両の台車枠製造の責任を担う班長の人為的なミス、現場力への過信、に原因がある。

外注品の台車枠は厚さ8mmの鋼板をロの字型に折り曲げたもの。折り曲げの精度が甘く、底面に歪みが生じ、軸バネ座をすき間なくぴったりと取り付けることができない。歪みをなくして平らにする必要性がでてきた。班長が選んだのは台車枠を『削る』という方法であった。

台車枠は車両走行上、極めて重要な部材。削るという行為は絶対に行ってはならない。しかし、例外として溶接部分の周辺については0.5mmまでなら削ってもよいという業界基準が認められている。班長はこの基準を拡大解釈して部下に底面を削るよう指示した。しかし、部下は業界基準など知らず、最大で3.3mmも削ってしまっていた。仕上がりを班長が確認しなかったため、基準超えの事実は見過ごされてしまった。
班長
班長や部下にもともと問題があったのだろうか。
この班長は40人の部下を率いて新幹線・在来線合わせて何百台もの台車を造っている。「しっかりした人物」と評判も高かったそうだ。事故が起きたN700系は量産初期のもので、生産工程上やりにくい部分もあったそうだが、設計部門へ設計変更を依頼することはコストにも納期にも繋がる。班長なりに創意工夫をし他部門へ頼ることなくやり終えた、そう思っていたのかもしれない。

人とはそもそも安全でありたいという欲求を持っている。正しい判断、期待された行動に沿って動こうとしている。
しかし、こうしなければ間に合わないといった現場でのプレッシャー、こうせざるを得ないという状況に陥っている現場は多いのではないだろうか。安全を優先させる現場管理が難しくなっている現状がある。
また、出来上がったあとも諸々の検査もあったはずだが、一様にここを削ってないだろうという認識の上で行われていた検査であった。この認識はJRも同様である。

暗黙知をいかに標準化するか。たとえ標準化がなされていたとしても作業者が創意工夫を行うことによって新たに暗黙知が発生する可能性もあり得る。標準化は継続して行うべきものであることを分かっておかなくてはならない。
標準化に完成、完璧はない。標準に誤りが含まれている可能性はある。標準の背景、理由を理解し、不適当な標準があれば、改善提案する意識で作業する。
守れるように評価する仕組み(チェックリスト等)を設けることも必要となってくる。

人間とはミスをする生き物である。完璧な人間はいない。そもそもこのことを分かった上で「安全」に対して取り組む必要がある。

自立そして相互啓発の重要性

この事件で問題となったこと。2つ目は異常を知りながらなぜ運転を続けたのかということである。
異音や異臭の連絡を受けて乗り込んだ車両保守担当者と、列車を止める最終的な決定を行う東京指令所の指令員が運転停止の判断を互いに相手任せにしていた、ことに原因がある。

車両保守の担当者は、音が気になったことから、指令員に対して、「床下を点検したいんだけど」と話した。指令員の「走行に支障はあるのか」という問いかけに対して、いったんは「そこまではいかないと思う」と答えている。しかしその後に、「安全をとって新大阪で床下をやろうか」と点検を行う駅を指定し提案をしている。ところが、この際に指令員は受話器を耳から離して隣の指令員と話をしていて、聞いていなかったという。

指令員は「そこまではいかないと思う」という言葉から「走行に支障はない」と認識し、「危険性があれば、担当者がそのように伝えてくると思っていた」と話している。一方、車両保守担当者は、「どこで点検を行うのか(指令員が)調整してくれていると思っていた」としている。

指令員と保守担当、双方ともに、停止させる必要が本当にあれば相手が言ってくるだろう、お互いが判断を相手任せにしていた。

安全文化の発展段階

安全文化の発展段階(4段階)はご存知だろうか。
安全文化の発展段階
1.反応型(何かが起きてから動く)
2.依存型(指示されたことだけ)
3.自立型(自分の領域は完璧)
4.相互啓発型(仲間に対する働きかけ)
相互啓発型の職場は、安全のみならず、業績まで改善されたというデータも存在している。

この場合、異音・異臭等を感じた時の措置基準の明確化とともに、自分の領域から踏み出して、仲間に対する働きかけが必要であったとも言える。

自立・自律的な「安全・安心」創造、そして部門・職種の違いや職制上の関係を問わず、相互に意見を交わしあうことを普段から行えている職場であることが重要である。

まとめ:いかに早く検知するか

異常状態を放置すると、事故に成り、災害に至る。

不安全な状態(ハードウエア要因)+ヒューマンエラー、故意といった不安全な行動(人間的要因)=災害(アクシデント)
異常状態を放置すると事故に成り災害に至る
また、ヒューマンエラーは「事故の原因ではなく人間的な行動の結果」であるという認識を改めて持つ。人間がかかわっている限りヒューマンエラーはゼロとはならない認識を持つことが重要である。

ハードウエア要因、人間的要因共にいかに異常を早く検知するか。基準の相違の見直し、相互依存・関係性の確保ーJRの事故から学び、現場に活かしていきたい。

ヒューマンエラーを減らすには

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