Habi*do通信

企業で柔軟に立ち回れる「キャリア・アダプタビリティ」の考え方

「キャリア・アダプタビリティ」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。

終身雇用が崩壊して働き方が大きく変化している今、一人ひとりがこのキャリア・アダプタビリティを高める必要があると言われています。

目まぐるしく変化する現代には欠かせない概念です。今回は、キャリア・アダプタビリティについてお話したいと思います。

心理的資本セミナーVol.16

キャリア・アダプタビリティとは

そもそもキャリア・アダプタビリティとはどういったものなのでしょうか。

「キャリア・アダプタビリティ」とは、個人のキャリアにおいて、変化の必要性が生じたときにその変化を受け入れ、適応できる能力のことをいいます。
これはキャリア研究者の一人であるドナルド・E・スーパー氏が初めに提示し、その後マーク・L・サビカスが構築した概念です。

マーク・L・サビカスは「キャリア構築理論」を唱え、そのなかの重要概念の一つとしてこのキャリア・アダプタビリティを挙げています。
参考:【キャリア・アダプタビリティ/日本の人事部】

変化の大きな昨今、その変化に対応できる能力は個人にとっても企業にとっても、非常に大きな意味を持ちます。

キャリア・アダプタビリティの理解を助ける「4C」

概念と言えば難しいと感じるかもしれませんが、4つのCを見ていけば、キャリア・アダプタビリティをより身近に感じられるでしょう。
サビカスの理論では適応能力のある人の条件として、以下の「4C」を満たすことが必要だと定義づけられています。

4C

1. Concern(関心)

4つのうち最も重要な要素が、Concern(関心)で、簡潔に言えば「未来を考える」ということです。
変化に対応するには、何よりも自分のキャリアについて関心を持っておかなければいけません。
一人ひとり将来のキャリアについて明確な答えは用意されていませんが、「自分はどうなりたいのか?」という自分自身への問いかけが重要だと言われています。

2. Control(統制)

次にControl(統制)です。自分のキャリアを自分でコントロールする力を指します。
もちろん自身のキャリアには企業、組織の環境などが深く関わるので「キャリア発達についてコントロール」をしなさいと言われても全てをコントールすることはできないでしょう。
ある程度の外的な要素は許容しながらもキャリア構築の責任は自分にあると考え、できる範囲で柔軟に立ち回ることが大切です。

3. Curiosity(好奇心)

Curiosity(好奇心)は他のキャリア理論でも度々取り上げられる要素で、好奇心を持ちキャリアに関する環境を模索するものです。
また好奇心を持っていれば、情報や人脈といった資本を引き寄せます。
義務感対応するのではなく、あくまでも自然な好奇心に沿わせて資本づくりを習慣化させることが大切です。

4. Confidence(自信)

4つ目がConfidence(自信)です。
困難なことでも果敢にチャレンジできる感覚を持っている状態を指しています。自信を持てば、変化する環境の中でも自身のキャリアを発達させていくことが可能です。
自信は日々身の回りで起こる問題を解決することで得られます。


以上の4Cに関する態度や能力を育める人は、「キャリア・アプタビリティが高い人」と言えるでしょう。

キャリア・アダプタビリティでは、「キャリアの成功」を大企業に就職したり組織の中で昇進したりすることだけに注力するのでなく、「自分にとっての成功は何か」という視点で自分自身が定義することが重要です。
また、継続的に学習しキャリアを刷新し続けていく姿勢も求められています。

なぜキャリア・アダプタビリティが必要なのか

「会社の求められている仕事はキッチリやっているから大丈夫!」という人も、今後はこのキャリア・アダプタビリティを高める必要があります。終身雇用・年功序列の崩壊、新卒一括採用の廃止により個々のキャリア自律の重要性が増しています。これからはキャリアパスを会社から与えられるのを待つのではなく、自分が考えてキャリア開発を行いましょう。

いくら会社の仕事をこなせていると言っても、自分自身でキャリアを築ける人材でなければ、気づいたころには会社から居場所がなくなっていた…なんてこともあるかもしれません。

会社員であっても変化に応じて柔軟にキャリアを変えていく力、つまり「キャリア・アダプタビリティ」が必要なのです。

キャリア・アダプタビリティが高いとどうなるのか

それぞれのキャリア

本人の希望かどうかに関わらず、新しい仕事に前向きに取り組む心構えが大切です。
環境の変化を成長のきっかけとしてキャリアを構築していける人材は、組織力を持続的に高める上で必要不可欠でしょう。

社員のキャリア・アダプタビリティが向上すれば、役割転換や異動といったトランジション(キャリアの転換期)に直面しても、上手く乗り切って組織で長く活躍できる人材の確保が可能です。

またキャリア・アダプタビリティが高い社員は自信に満ち溢れてパフォーマンスが向上します。
生き生きと働き、周囲からの信頼を集められる社員が一人でもいれば組織力も高まるでしょう。

個人・企業でできるキャリア・アダプタビリティの高め方

難しそうなキャリア・アダプタビリティ、でも実は個人・企業の両方で高めていくことができます。
今回は3つの方法を紹介しましょう。

1.キャリアについて考える

個人でキャリア・アダプタビリティを高めるには、まずキャリアについて考えましょう。
これは4Cで紹介した「Concern(関心)」や「Control(統制)」、「Confidence(自信)」に関係する部分です。

具体的には次のようなことを考えてみましょう。

  •  自分はどのようなキャリアの方向性に進みたいのか?
  •  新しい仕事を任されたとき、自身にどのようなことが起きたか?
  •  仕事を通じて面白いと感じたことは何があるか?
  •  自分の今後のキャリア目標は何か?

まずは漠然とでも良いので、自分自身のキャリアについて振り返ってみて今後のキャリアに関する見通しを立てていきましょう。

個人で高める方法の一つではありますが、企業側が支援に回ることでより効果的な振り返りができます。

2.スキル、知識習得する

キャリアを実現させるために習得すべきスキルや必要な経験、それを叶えるための行動には何があるかを考えましょう。

ただし企業側が提供するスキル向上の機会だけに頼るのでは、従来の組織づくりとなんら変わりありません。
キャリア・アダプタビリティは自律的な視点が大切で、自らが積極的にスキルや知識の習得を目指すことが重要です。

3.キャリアマップの整備

企業ができる取り組みとしてはキャリアマップの整備があります。
キャリアマップは、従業員に対してキャリア形成の道筋を示すため用いられている厚生労働省推奨のフレームワークです。
設定されている各レベルの習熟の目安となる標準年数が一目で分かるようになります。

これにより目標が明確になり、キャリアアップの方向性を定義づけできるでしょう。
キャリアマップでは、業務別、ポジション別に整備するのがポイントです。

まとめ:誰のものでもない!「キャリア」は自分で築いていくもの

目まぐるしく変化する現代、優秀な人材を確保するためには環境の変化に対応できるように自分でキャリアパスを考えられる仕組みづくりが大切です。

しかしながら、具体的にキャリアパスといっても何をどうすれば良いのかわからず行動に移せない方も多いかもしれません。

キャリア・アダプタビリティは、個々のキャリアパスを考えるためのヒントとなりうる概念と言えるでしょう。
個人はもちろん企業としてもキャリア・アダプタビリティについて情報共有をし、実際の行動に移してみましょう。