Habi*do通信

キャリア自律とは?組織が知っておきたいキャリアの考え方や自律の進め方について

企業側からキャリアを与えることが難しくなってきました。「キャリア自律」が求められる状況に変化しています。

キャリア自律が注目されている、促進する仕組みが求められているのはなぜでしょうか。今回は、キャリア自律についてお話していきます。

時代とともに変化する「キャリア」の考え方

企業を取り巻く環境は不確実・不透明かつ複雑になっているのが現状です。これまでの終身雇用制度が薄れ企業と働く個人の関係性も変化するなか、働く人は企業に自分のキャリア形成を委ねることができなくなってきています。

また少子高齢化により人手不足が嘆かれているため、企業は生産性の向上が喫緊の課題です。これからはクリエイティビティやイノベーションの促進、多様な人材の活躍促進が求められていきます。「外部から優秀な人材を」という動きも見せています。

これからは自らのキャリアについて責任を持ち、主体的かつ能動的に自分自身のキャリア形成を行い続けなければいけません。
雇う側、雇われる側もキャリアについて見つめなおす時代に差し掛かっているのです。

キャリア自律を広げよう

そんな社会の変化で今求められるのが「キャリア自律」です。キャリア自律とは、キャリア形成を企業に委ねることなく、働く人自身が主体的にキャリア選択や能力開発を行うことを指します。

企業の生産性を高めるためにも、社員のキャリア自律のサポートが急務です。では社員へキャリア自律を促す手段は具体的に何があるのでしょうか。

研修

ひとつはキャリア開発研修です。キャリア自律を意識しながら、スキルを身につけていくことで自分の将来がイメージできるようになります。また社内・社外研修のほか、eラーニングやオンライン講座などといった学習支援制度を設けることでも社員のキャリア自律に向けた意識は育まれます。

さらに資格取得もキャリア自律の手段として有効です。各種手当をつければ、自ら学びたいというモチベーションにもつながります。(あくまできっかけを提供するという意味で)

副業の解禁も挙げられるでしょう。実際にキャリア自律を促すために副業をOKにしている企業も増えています。会社と異なる環境で仕事に取り組むことで、新たなキャリアが形成されるのです。

ここで取り上げたのは、ほんの一部です。

キャリア自律で社員は離職する?

離職

ここまでの話を聞いた経営者の方は「キャリア自律できている社員=どこでも通用する優秀な社員」というイメージを持ち「社員のキャリア自律を促すと離職につながってしまうのでは?」と不安になるかもしれません。

たしかにキャリア自律により自分の適性やキャリアが明るみになった社員は、他で活躍したいと言い急に退職届を持ってくることもあるかもしれません。

しかしキャリア自律の効果は主体性や意欲の向上、自己責任の自覚などが期待されるものです。キャリア自律が引き起こした離職…は肌感覚でしかなく、離職とは直接的な因果関係があるわけでは無いように思えます。

ここで離職だけでなく企業のコストについても考えてみましょう。

とある調査によれば、成果や貢献に比べて賃金が見合っていない社員が約2割というデータがあります。これは年収500万円の人が100人いる会社であれば、そのうち20人が成果と見合わない仕事をしているということです。年収ベースでみると1億円以上の損失をしていることになります。

その多くが内部労働市場への依存が強く内向的なミドル・シニア層で、彼らが企業の人件費を圧迫しているのです。言い換えるならば、辞めない意思はあるけど成果は上げられない、いわゆる「ぶら下がり」状態の社員…。

こうしてみると「うちの会社は離職率が低いから大丈夫だ」と手放しに喜ぶことはできないのではないでしょうか。

離職防止も大切ですがコスト意識も重要です。社員の離職を恐れず積極的にキャリア自律を促し、優秀な社員をどんどん輩出していくほうが、結果として息の長い経営を続けられるように思えます。

キャリア自律はコミットメントを促す

キャリア自律には生産性の向上やモチベーションアップがあります。なかでも知っておきたいのが「組織に対するコミットメントを促す効果がある」ということです。
株式会社ライフワークスの調査では、「キャリア自律の度合い」と「組織コミットメント(企業発展のための努力を惜しまない組織貢献)」の関係性が明らかになっています(出典:ライフワークス/キャリア自律調査)。
ここでいうコミットメントとは個人の組織に対する帰属意識を指します。組織コミットメントがあれば自分の満足感を追求しながら、仕事に対して主体的に取り組めるようになります。

またこれからの社会、保守的な企業よりも開放的にキャリア自律を促進している企業は魅力的に映ります。そのような企業なら、離職者が出ても出戻り社員を受け入れる風土を整えて戦力として再度採用することもできるでしょう。

辞めた社員を再び会社に戻すことに抵抗のある経営者もいるかもしれません。しかし一度社外に出て活躍した人材を再び迎え入れようするキャパシティのある企業のほうが、最終的に就職・転職市場において「選ばれる」可能性は高いのです。

コロナ禍によりキャリア自律の重要性は顕著に

新型コロナウイルス感染拡大の影響も、キャリア自律への注目を急激に後押ししています。リモートワークの導入で企業が従業員の働き方をコントロールしづらくなってきているからです。

オンラインでのやりとり

オンラインツールはやり取りできる情報量が限られるので、高いコミュニケーション能力を持つ社員が重宝されていくでしょう。また女性や若者はもちろん、高齢者や外国人など多様な人材が参画しやすい環境となりました。つまりリモート化により個々の能力がより目立つようになってきたのです。

会社で何となく仕事をやっているように見せていた社員は、徐々に化けの皮が剥がれ窓際へと追いやられていくのかもしれません。

元々キャリア自律は企業の成長に欠かせない要素でしたが、コロナ禍により今後より一層重要度が増す傾向にあります。

まとめ:今こそキャリア自律と真剣に向き合うタイミング

社会の変化が目まぐるしい今、積極的にキャリア自律を促す企業は生産性を高めるだけでなく、優秀な人材の獲得も進めていけます。

一方で「人手不足だからどうか辞めないで」と言い、ぶら下がり社員を量産している企業は今後衰退するでしょう。人に仕事をつけていたメンバーシップ型の考えは捨てて、キャリア研修やキャリア自律支援を行い社員が自発的に成長できるような環境を整えましょう。

今こそ雇う側、雇われる側もキャリア自律と真剣に向き合うタイミングです。