Habi*do通信

企業におけるシニア活用 実態とは

みなさん、日本は「超高齢社会」であるということ、ご存知でしょうか。日本は高齢者の総人口に対する割合が世界で最も高く、かつてどの国も経験したことない高齢社会を現在歩んでいるのです。
各データを見ながら、世界一の高齢先進国日本における「企業のシニア活用」について考えていきます。

高齢就業者は年々増加

シニア活用

人生100年時代と言われる今。2019年日本人の平均寿命は女性87.45歳、男性81.41歳となり、女性は7年連続、男性が8年連続で過去最高を更新しました。
(厚生労働省/令和元年簡易生命表参照)

2013年の改正高年齢者雇用安定法により、希望者が65歳まで働けるようになりました。また、2021年4月1日施行の改正高年齢者雇用安定法では従業員の70歳までの就労確保を努力義務とする規定が盛り込まれています。
高齢者が自身の暮らしを支えるため、自身のために働き続ける選択をすることはもちろんあるでしょう。ただし高齢者の選択に任せるだけでなく、企業としても少子高齢化進展、労働力人口の減少に対し、高年齢労働者の活用を積極的に進めていく必要があります。

高齢者の就業数データ

2019年の高齢者の就業者数(※)は、2004年以降、16年連続で前年に比べ増加し、892万人と過去最多となっています。
※就業者とは、月末1週間に収入を伴う仕事を1時間以上した者、又は月末1週間に仕事を休んでいた者のこと
総務省統計局データ参照)

働きたいと思ってるシニア層も多い

「働けるうちは働きたい」と思っている

内閣府が2014年に実施した「高齢者の日常生活に関する意識調査」では、仕事をしている60歳以上の人のうち42%が「働けるうちはいつまでも働きたい」と回答。「70歳くらいまで」「75歳くらいまで」「80歳くらいまで」と合計すれば、約8割の人が高齢期にも高い就業意欲を持っていることが分かりました。
高齢者の日常生活に関する意識調査参照)

生活意識の状況をみると、生活意識が「苦しい」(「大変苦しい」と「やや苦しい」の合計)とする世帯の割合は、高齢者世帯では55.1%となっています。(厚生労働省/平成30年国民生活基礎調査の概況参照)
また、現在就労しているシニア(60~69歳の男女)400人に対し、働いている理由を聞くともっとも多かった回答は「現在の生活のためにお金が必要だから」(51.3%)でした。(株式会社アデコ/働くシニアの意識とシニアの雇用に関する調査参照)

2019年日本人の平均寿命は女性87.45歳、男性81.41歳。65歳で仕事を辞めるといった選択ではなく、生活のために働くといった選択肢を選ぶ・選びたいシニアは増えているようです。

しかし企業はシニア層の採用に積極的ではない

シニア層採用 約7割が積極的ではない

シニア層採用への積極性を聞くと、正社員、パート・アルバイト、契約社員・派遣社員といったその他いずれの雇用形態についても、積極的との回答は約3割となりました。以前に比べ積極的な企業が若干増えているものの、シニア層の就業意欲の高さに対して、企業側は採用に積極的ではない現状が見て取れます。
(株式会社リクルートジョブズ ジョブズリサーチセンター/シニア層の就業実態・意識調査2018参照)

シニア層活用を進めている企業は成果を感じている

実際シニア層を受け入れている企業ではどうなのでしょうか。

シニア層を雇用したことで生まれた成果 上位5つ

シニア層を雇用したことで生まれた成果について聞くと、「適切な業務配分ができるようになった」23.0%、「業務効率、生産性の向上」20.2%、「従業員の定着による人件費の削減」18.6%などが上位に挙がりました。
自由記述の回答からは、シニア層のもつ様々な経験や知識が役立っているという声や経験に基づいたサポートやアドバイスをしてもらえる、あるいは業務の生産性が上がった、人材不足が解消したという声もありました。さらに、社内の雰囲気が良くなったという回答もみられました。
(株式会社リクルートジョブズジョブズリサーチセンター/シニア層の就業実態・意識調査2018参照)

シニアの活用ができている企業では、労働力の不足を補うだけでなく、それ以上の成果を実感しているようです。

高齢者人口の割合が世界一位である日本

2020年の高齢者の総人口に占める割合

日本の総人口(2020年9月15日現在推計)は、12586万人。前年に比べ29万人減少している一方、65歳以上の高齢者人口は、3617万人と、前年(3587万人)に比べ30万人増加し、過去最多となりました。
高齢者の総人口に占める割合を比較すると、日本の28.4%が最も高く、次いでイタリア(23.0%)、ポルトガル(22.4%)、フィンランド(22.1%)などと続きます。(総務省統計局データ参照)
各国とも上昇傾向となっているものの、日本の高齢者人口の割合は、もっとも高いのです。

人手不足はより深刻に

2030年、人手は644万人不足する

2018年10月に出されたパーソル総合研究所と中央大学の研究発表によると、2030年時点で7073万人の労働需要に対し、6429万人の労働供給しか見込めず、「644万人の人手不足」に陥るとされています。(パーソル総合研究所/労働市場の未来推計 2030参照)

女性の活躍を推進する、AIやロボットを用いた効率化を進め生産性を向上する、外国人労働者の雇用を進める、といった策も必要です。日本の高齢者の総人口に占める割合をみれば、シニアの活用に関しても真剣にかつ早急に取り組まなくてはいけない課題である、ということがみえてきます。

シニア活用のための体制整備が必要

労働力を活用するためには、受け入れる企業側の体制を整備する必要があります。

65歳以降に仕事をする場合、希望する労働時間

65 歳以降に仕事をする場合、希望する労働時間は、41.5%がフルタイム、64.1%が時短勤務を希望しています。(独立行政法人労働政策研究・研修機構 /60代の雇用・生活調査(2019年)参照)
フレックスタイムや短時間勤務といった労働時間を柔軟に設定できるよう整備し、労働時間の短縮や体調、私生活との調和が図られるよう企業側が制度として整えていくことが大切です。

労働環境改善に取り組む体制作りも重要です。2020年3月16日、厚生労働省は「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(エイジフレンドリーガイドライン)を公表しました。シニア層が安心して安全に仕事に取り組めるよう、環境を整えることはもちろん教育も行っていかなくてはなりません。
また、エイジフレンドリー補助金が創設されています。エイジフレンドリー補助金は、⾼齢者が安⼼して安全に働くことができるよう、中小企業事業者による職場環境の改善等の安全衛生対策の実施に対し補助を行うもの。高年齢労働者の就労環境を改善するために使った経費の1/2を補助します。上限額: 100万円(消費税を含む)。(厚生労働省/エイジフレンドリー補助金ついて参照)こういった補助金をうまく利用し、職場環境の改善を進めていくことが大切です。


シニアの高い就業意欲と経験や技能を活かすためには、企業側の意識転換が必要となります。シニアのモチベーションや生産性を高めるような働き方や職場環境の整備。これらはシニア層だけでなく社員全体の働きやすさや生産性に繋がる取り組みである、ということを忘れてはいけません。