Habi*do通信

【開催レポート】コロナ禍を経験した今、あらためて人材育成の価値を問う!~心理的資本セミナーvol.6

コロナ禍を経験した今、あらためて人材育成の価値を問う!

新型コロナの流行は、先行きが見通せない時代であることを知らしめることになりました。
まさしく変革待ったなしの中、イノベーションを生む組織人材をどうマネジメントしていくかが喫緊の経営課題になってきています。またコロナ禍で個人の働き方も大きな変化が起こるなか、ひとりひとりの自律がますます求められます。
予測が困難な不確実性の高い時代(VUCAの時代)に成長し輝く組織・人材にはどのような要素が求められるか。実現するために何ができるのか。変革の時代に求められる人材の育成とはどのようなものか?

そこで、今回の「心理的資本セミナー」では、「コロナ禍を経験した今、あらためて人材育成の価値を問う!」をテーマにトークセッションをLIVE配信いたしました。ゲストは、最先端の経営理論の研究者であり著書『世界標準の経営理論』でも知られる早稲田大学大学院経営管理研究科の入山章栄先生、ITベンチャーを東証一部上場まで財務・組織づくりの中核を担ってこられた株式会社CARTA HOLDINGSの取締役CFOの永岡英則さん、経営者として人材育成に積極的に取り組まれLGBTQ支援の活動をはじめ多様な人材を活かすダイバーシティ推進を行ってこられたアクサ生命保険株式会社の代表取締役社長兼CEO安渕聖司さんの御三方。

大盛況だった当日の内容をダイジェストでご紹介します!

パネラープロフィール

パネリストの皆さん

  • 安渕聖司氏(画面右上)
    アクサ生命保険株式会社 代表取締役社長兼 CEO
  • 永岡英則氏(画面左下)
    株式会社CARTA HOLDINGS 取締役CFO
  • 入山章栄氏(画面右下)
    早稲田大学大学院経営管理研究科
    早稲田大学ビジネススクール 教授
  • 石見一女(画面左上)※モデレーター
    株式会社Be&Do 代表取締役 CEO

パネリストによる自己紹介

安渕
安渕
私はCEOという役職に就いていますが、大きく5つやることがあると思っています。その1番目がやはり”人材育成”なんですね。2番目は戦略を作ること、3番目は戦略を実行して結果を出すこと、4番目は会社のブランディング、最後は基盤ということで高い倫理性を持つことです。やはり”人”が一番大事ということです。
永岡
永岡
ベンチャー企業の立ち上げ期の、なかなか人が採用できない・育成できないというところから、いろいろ過程はありましたが、現在は規模としては1500人くらいの組織で様々なタイプの人がいるなかで、どうやって事業運営・組織運営をするのか日々格闘しています。
入山
入山
私は基本ただの学者ですが、幸いにしていろいろな経緯で、様々な業界、大企業から地方の中小企業、ベンチャー企業まで、いろいろな企業さまとのお付き合いがあるのが特徴です。複数の企業の役員をしていたり、経営者の方からご相談を受けたりするなどして、ご縁をいただいているのが有難いと思っています。
いろいろなものを見聞きするなかで、結果としてやはり肝となるのは”人”です。日本の会社で1番大事なのは経営者ですが、敢えてファンクションに分けると「人事」を見直す、あり方を考えるというのはものすごく重要です。しかし、意外と各社さんやっていないですよね。

この1年の大きな変化をどう見る?求める人材は変わったのか?

石見
石見
コロナ禍で会社組織のなかで目立っているテーマとして、在宅ワークの拡大、オンライン化、対面でのOJTが困難に、副業の加速といったところが挙げられるなか、タナベ経営さんが出されている「新型コロナウィルスの影響で求める人材像や採用基準が変化している」という調査結果もあります。そして「イノベーション」に対する経営者の皆さまの関心が高まってきているというところから、課題認識を持って今回のテーマとさせていただいています。ゲスト皆さまから見ても、変化はありましたでしょうか?
安渕
安渕
変化といえば、在宅勤務つまりWork from homeですが、実態はWork at homeですね。仕事が家庭に侵入してきた。逆も然りで、家庭が遠慮せずに仕事に侵入してきたという状態です。タイミングが悪いときに宅配が届いたり、大事なプレゼン中になぜか愛犬が吠えていたりするといったことが起こるわけです。つまり職場と家庭が融合してしまったので、新しいミックスを考えていかなければならない。しかし、今までのOJT、Off-JTのような従来のフレームワークで考えると、上手くいってる上手くいっていないの話になります。場所も、時間も、ひょっとしたら人や仕事も選べるようになるなかで、どうやって仕事をするのか。このあたりの変化を、まずはフレームから考える必要があるなと思っています。
2020年に入社した新入社員との対話の時間が今日の午前中にあったのですが、トレーニングに不満はなく、オンラインで勉強できたと言うんです。極端な人では出社した日が1日でも、今仕事ができていると言います。意外に新入社員は、オンラインでも学べると思っているということが分かりました。
入山
入山
私の周りでよく耳にするお話では、新入社員のオンボーディングで苦労している、課題に感じているという企業が多いです。
安渕
安渕
既に出来上がっている人間関係のところに新入社員がリモートで入っていくことの難しさを話す人もいました。ただ感心したのが、オンラインでもこまめにチャットを活用して、上司やメンバーと連絡をとりながら信頼関係を作ってきた!と言う新入社員もいることです。与えられた環境のなかでできることをやるという改善活動はもうすでに起きている。立ち止まらず、その世代なりの工夫をしているようです。
永岡
永岡
昨年2月に、出社しないでください!という日が何の準備もなく突然きたんです。やってみると、当社はデジタル化がかなり進んでいたので、何の問題もなくリモートワークができました。ただ、新卒で入った人たちは、仕事ってどうやったらいいかも分からないなかで、いきなりリモートワークと言われても、これはかなり難しかったです。
メンターをアサインして、デジタルでかなりの部分はできましたが、やはり人間関係の構築は相当難易度が高い。例えば、直接仕事でやりとりは少ないけど同じチームの人との関係性など、オフィスにいれば出来ていた人間関係が作れていない。これは短期的には問題にならないけど、チームで仕事をする価値が生まれていないということが将来的にはあるんだろうなと。
リアルとオンラインをハイブリッドで使う組織運営みたいなものを今考えているところです。
入山
入山
人材の在り方や求める人材像は、私は変わっていないと思います。日本の会社が10~20年先として思い描いていたこうあるべきだという姿が、一気に目の前にきました。ある意味強制的に進んだということだと思うんです。
“管理職の在り方”についてですが、管理職はこれから「ファシリテーター」にならなければならないと、ユニリーバの島田由香さんが言っています。私もこれは本当にそうだと、コロナ前から賛同しているのですが、多様な人がいないとイノベーションは生まれません。つまり多様な人が必要です。それだけではなく、多様であることの価値を生かすには、その人たちが意見を出せる環境にしないといけません。多様な意見を引き出すファシリテーション能力が求められるわけです。これはコロナ前から変わってません。そして、コロナ禍になってオンライン会議が増えましたが、オンライン会議には絶対ファシリテーションが必要ですよね。良いオンライン会議には名ファシリテーターがいます。でもファシリテーションはコロナ前から元々必要だったんですよ。
コロナはとても大変なことですが、変化が乏しかった日本にとって大きな変革のチャンスでもあります。

リアルかオンラインか?ベストミックスは?

パネリストの皆さん

安渕
安渕
今までリアルを乱用している状態だった。一人でやるべきことは何か、リアルでやるべきことは何か、オフィスの価値とは何かの再定義が必要です。私はリアルでやるべきことを社内で発信したんですが、そのうちの一つがチームビルディングです。そして新しい人を迎えたり新しいお客様に会ったりすること。それからやはりネゴシエーション。そして複数の利害関係の異なる部門の調整はリアルでやった方がいいと思う。このように切り分けていく必要がある。この変化に対応できる人材が昔から変わらない人材像です。変化に対応できる人が、新しいビジネスモデルを作ったりする。
永岡
永岡
さっき入山先生がおっしゃった、いろんな意見が出たり、ぶつけ合ったりすることって、名ファシリテーターがいない場合、ある意味、組織やメンバーの文化とか、人間関係の土壌みたいなものが必要だと思います。そういう土壌作りはオンラインで完結するのが難しいですよね。組織づくりをリアルを交えながらどうやっていくのかは、経営の未来のテーマになります。
入山
入山
リアルとデジタルの使い分けの議論はものすごく重要です。一つの視点として、デジタルは五感で分けて考えるといいと思います。まずデジタルはまだまだ進化するのでzoomを前提で考えてはいけません。
視覚・聴覚・味覚・触覚・嗅覚のなかで、デジタルに取られるものは当面は視覚と聴覚だけなんです。視覚と聴覚は益々デジタルで便利になる。逆に言うと、味覚・触覚・嗅覚は当面取られないので、味覚・触覚・嗅覚を含める五感で感じられる場がリアルの価値になる。オンライン飲み会は味覚を共有できないから、皆やめちゃうんですよね。
さっき皆さんがおっしゃった、ネゴシエーションとかチームビルディングとかって、視覚と聴覚だけじゃない。空気感を触覚で感じてる。そういうのが必要な部分は、リアルで残るだろうというのが一つの視点かなと思います。食べたり、熱気を感じたり。
石見
石見
働く場所、オフィスはエネルギーをもらえる場でないと人が集まる価値はないのかも知れません。
安渕
安渕
一つ結論が出せていないことがあって、それはこの時代における”チームのシナジー”についてです。要は、一人ひとりの成果の足し算よりもチームとしての方が大きな成果が出せるというのが、組織のミッションであり機能だったわけです。これからどうなっていくのか、考えていかなくてはいけないと思っています。
入山
入山
学術的に、答えは未だないんです。テクノロジーが進みすぎるので、これは現場で最適解を見つけていく他ないことの一つです。
永岡
永岡
オンラインでも、それぞれコミュニケーションをとってチームでワークしています。いわゆる野球型のミッション、それぞれの守備範囲が決まっていて綺麗に分散しているようなものは比較的問題なく進む。
一方でサッカー型のミッションになると、お互いが見えていない環境では難しくて直接会いたくなる、適応しきれていないシーンは見られます。
安渕
安渕
野球型だけど、その中にサッカー型の動きをする人、ある程度自由に落ちている球を拾いにいくような働き方をするような人も認める組織づくりができると面白いかもしれませんね。
入山
入山
経営学の話ですが、”トランザクティブメモリー”という考え方があります。組織の中で情報の共有化って重要なんですが、大事なのは全員が同じことを知っているということでなく、誰が何を知っているのか(=Who knows what)をシェアできていることです。加えて最近の研究は、実は全員が誰が何を知っているのかを覚えている必要はなく、いわゆるトランザクティブメモリー屋さんみたいな人がいて、その人に集約させた方がいいという話になっています。トランザクティブメモリー屋さんが社内を周回するんです。
昔はぶらぶらおじさんが日本の会社にはいました。何やっているか分からないけど、意外とその人が部署間のパイプ役になっていたりする。欧米ではそういうポジションを作って、しかもエリートを抜擢している。サッカー型のミッションをする上で、オンラインだからこそぶらぶらおじさんみたいな人がいた方がいいと思いました。

これから求められる人材は?発掘育成の方法は?

石見
石見
これからの時代の組織にあった、マネージャー像とは?どうやって生まれるのか?どうやって育成するのか?という疑問が湧いてきました。
入山
入山
僕から安渕さんや永岡さんに伺いたいのが、これからマネージする人って必要なのか?ということなんです。よく言う話でリーダーとマネージャーは違って、リードしたり、ファシリテートしたりする人は必要だけど、管理ってもうAIとかがやってくれる。ちょっと大胆な意見なんですけど、敢えてぶつけてみたいです。
永岡
永岡
デジタル化が進む中で、文字通り”管理”する人は要らないとまでは言いませんが、すごく少ないです。結局マネージャーは何をやっているかというと、人にもよるかと思いますが、まずは問いを投げる(問題意識)こと。これはある程度経験やスキルがあって、事業全体を見ていないと適切な問いが投げられません。ただし、答えは現場の人の方が良く知っていることがあります。そして意思決定。さらにメンバーのコンディションをキープする・クオリティを担保するために対話をする。
強いて言うとこの3つが、マネージャーの役割のような気がします。
安渕
安渕
私の思う管理職はある種のナビゲーターです。方向性をナビゲートし、その途中で時にコーチとなりメンターとなり、自分たちは何のために仕事をしているのか目的を示していける人。コロナ前から変わりませんが、今より重要になってきています。テレワークで1日5回も電話するといったリモートハラスメントともとられるような管理ではなく、ある意味エモーショナルな信頼関係を作っていくことがこれからの仕事です。

質疑応答

「決める」ことができるマネージャーが少ないと感じています。どうすれば育成・発掘できるでしょうか?

安渕
安渕
そういった訓練をしてもらうことです。小さなプロジェクトから始めて、リソースやタイムフレーム決めてアサインしていくことを繰返します。それは社会貢献プロジェクトでもいい。
意外にぴったりなのは社内の引っ越しプロジェクトです。複数部門に渡って、利害の異なる者を調整しながら、工期と値段をマネージしながら、みんなの不満を最小限に抑えるという難しさがある。こういったものをやってもらうと、自分で全体を俯瞰しながら考える習慣ができます。
永岡
永岡
「決める」というのはどういうことかを教えてあげないと、自然発生的に出来るようになるものではないような気がします。決めてください!というスタンスの人に対して、どうしたいのか?と問いを投げ続けること、これは若いときから続けて土壌を作ることが必要です。
入山
入山
大手企業の人事の方々とも繋がりがありますが、次期経営者候補がいないという悩み多いです。経営者の仕事は「決める」こと。しかし、大手企業になると今まで決めていなかったり、日本の人事制度では40代以降でしか決める機会がなかったりします。まさに、上司の指示をこなせばそれが正解という世界です。
ビジネススクールで、絶対に教えられないことは「決める」ということ。意思決定は座学でどうにかなるものではなく、決め続けることしかありません。
永岡
永岡
私自身本当にラッキーだったのは、20代のうちからベンチャーを立ち上げるという経験のなかで、今から考えるとお粗末な意思決定を何度もしてきました。その体験の蓄積が、決める力になります。
安渕
安渕
大きな経営の話にせずに、日頃から自分のこの時間を何に使うのかを意識的に決めていくことです。そのためには少し先まで見てリソースを考える必要がある。毎日、決定→成功or失敗→決定を繰り返す。そうするとオーナーシップが生まれてきます。

ぶらぶらおじさんは必要だとわかりましたが、自然発生するものでしょうか?そして経営者はその存在をきちんと評価し認めるでしょうか?

入山
入山
欧米だとちゃんと役職があり、優秀な人をアサインします。基本的に出したくない情報を出させるにはリスペクトされていなきゃいけない。全員がそうとは言いませんが、いい経営者はけっこう社内をぶらぶらしている人が多いです。
永岡
永岡
ぶらぶら専門とまでいかなくとも、経理なら経理のファンクションを通じて、部門に横串を通すバックオフィスでありたいといつも考えています。
入山
入山
デジタルツールがたくさん入ってきて、意思決定のプロセスの透明化されるのが良いと思っています。これまで日本の会社は透明性がなかった。とある脳神経科学者の方が、これからの時代の信頼性というのは透明性だと言っています。デジタルで見えなくなるものもあるけど、会社の意思決定のプロセスを透明化して、透明だからこそ会社のことを信頼できるようになります。

さいごに

安渕
安渕
少し逆説的なお話をすると、デジタル化が進みますがリアルで行う対人的な仕事というのは、どこかでコアとして残ってくると思います。従ってこれからは、対人スキル、アドバイス力、コンサルティング力が会社として求められます。全部デジタルにいくのではなく、この辺りの差別化を図っていきたいと思っています。
永岡
永岡
デジタルでやってきたからこそ人間同士どうあるべきかもずっと考えてきました。リアルを新しいステージに持って行かなきゃいけないタイミングです。次年度に向けてブレイクスルーしたいです。
入山
入山
3名とも目指している方向や組織こうあったらいいなというのが、共感できる部分がほとんどだったこと、嬉しい発見でした。DX絡みの講演でもよく申し上げるのは、両利きの経営です。知の探索と知の深化。どちらもあって始めてイノベーションが生まれるのですが、一般的に企業は深化に偏りがちです。ただ、深化はデジタルで出来るんです。一方で、探索は遠くのものを幅広く見て、組み合わせて失敗とチャレンジをくりかえすことなので、機械学習ができない分野です。機械は失敗してもやる!ってことはできないから。
人間でしかできない知の探索にもっと人を振っていきましょう。しかも、これはけっこう楽しいんです。いろいろなものを見て、自分がやりたいことを肚落ちしながら、仲間とわいわいガヤガヤやっていく。とても人間らしい作業です。
石見
石見
本当に豊かな1時間を過ごさせていただきました。ありがとうございました。