Habi*do通信

SDGsの目標でもある「働きがい」を、 具体的に考えてみる

日本では、「働くこと」がつらい労働のように受け止められ、ネガティブな話題で語られることが少なくありません。しかし本来、社会にかかわり、価値を生み出して自分の報酬を得ることは、もっとポジティブであっていいはずです。

その志は、SDGsの目標にも掲げられています。
働きがいも 経済成長も SDGs「働きがいも 経済成長も」と述べられ、「包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する」と記載されています。

ここで注目したいのは「働きがい」という言葉です。一見ポジティブに聞こえますが、具体的にどのような状態を指すのか、どうすれば実現できるのかがまだ見えにくいですよね。

SDGsにより注目を集め、これから成長を目指す企業が取り組むべき「働きがい」。その言葉をより具体化し、イメージできるように解説してみました。

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働きがいを、どう説明する?

「働きがい」とは、ずばり、自分の意思で仕事に前向きに取り組めることができる状態ではないでしょうか。働きがいがあれば、従業員は自分の仕事に誇りを持ち、イキイキと熱心に働けるはずです。

気を付けたいのは、「働きがい」は個人が感じる気持ちだということ。
だから「働きがい」に明確な定義はありませんが、これから人事にかかわっていく方は、そのニュアンスを理解し、従業員に理解してもらえるよう言語化できることも求められます。

働きがいと働きやすさ その違いは?

「働きがい」と似た言葉に、「働きやすさ」があります。
この2つに違いはあるのでしょうか?

「働きやすさ」は、安心して快適に働ける職場環境、労働時間や休暇の取りやすさ、ワークライフラバンスの充実など、どちらかというと環境や制度に寄った言葉です。働きやすさは定着率によい影響を与えるとされています。

つまり「働きがい」は内的な要因、「働きやすさ」は外的な要因の影響が大きいといえます。

働きがい(内側要因の影響が大きい)

「仕事が楽しい」「自分の成長を感じる」など、自分の興味や関心から生まれてきます。
「ワークエンゲージメント」とも呼ばれる、活力、熱心、夢中さなどに現れ、働きがいの測定指標で測ることができます。ワークエンゲージメントが満たされていないと、ストレス、疲労感改善、労働生産性、顧客満足度などパフォーマンスに影響を与えます。

働きやすさ(外側要因の影響が大きい)

「職場環境が健康的」「制度が整っていて休みを取りやすい」など、企業の魅力や制度から生まれてきます。「働きがい」には明確な定義はありませんが、「働きやすさ」は多くの人にとって共通する内容なので、制度やルールで整えることが可能です。

働きがいと働きやすさは、どちらも重要

この2つは、どちらか一方があれば大丈夫というものではなく、従業員が働く上でどちらも大切なものです。
あなたの会社には、両方が揃っていますか?残念ながら不完全な組織もあるかもしれませんね。それぞれのパターンを見てみましょう。

「働きがい」はあるが「働きやすさ」がないパターン

「働きやすさ」がないと、どんなに「働きがい」を感じていようと、どこかのタイミングで働くことができなくなります。たとえば仕事環境の安全が守られていない、最低限の制度がないなどです。最終的には離職されてしまうこともあるでしょう。

「働きやすさ」はあるが「働きがい」がないパターン

環境としては整っていても、仕事の目的がはっきりせず、ぬるま湯のような状態です。「出社すればお給料がもらえる、でも面白くない」という職場では、従業員の自律性はなくなり、生産性は低下します。

「働きがい」も「働きやすさ」もないパターン

離職が多発する可能性が大きいことは言わずもがな。いわゆるブラックな状態です。従業員の心身に影響を与えるだけではなく、経営悪化も招いてしまいます。

企業が「働きやすさ」を整えると、「働きがい」にも良い影響を与えます。「働きやすさ」は「働きがい」の要因の一部だからです。

「働きがい」の効果

令和元年、厚生労働省が発表した「労働経済白書」では、「働きがい」の実態が数値化されています。その調査には次のような傾向がありました。

1.「働きがい」が高いと企業の業績が向上する

働きがいを感じる従業員は企業に対し「もっと貢献したい」という気持ちが生まれ、自律的に業務に取り組むようになります。モチベーションが高い状態になり、業務の生産性が上がります。

2.「働きがい」が高いと従業員の離職率が低下する

働きがいを感じる従業員ほど、「今の企業で働き続けたい」と思っています。従業員の定着率が高まります。

3.「働きがい」が高いと新入社員の定着率が向上する

若者の最初の就職先を離職した理由の第1位は、「仕事が自分に合わなかったため」。「働きがい」を感じる従業員であれば、「仕事が自分に合わない」という理由の離職はないでしょう。

ほかにも、「従業員の仕事に対する意欲が高まる」や「企業の顧客満足度が上昇する」など、企業と従業員、双方にとって良い傾向があることが認められました。

これらのことから、「働きがい」を高めることは単なる従業員の心理的な問題にとどまらず、企業にとってものメリットも非常に大きいものであることがわかります。

「働きがい」のために企業ができること

では、従業員が「働きがい」を感じるために企業ができることは何でしょうか。

成長実感を持たせるために、企業の進む道を示す

まずは組織のビジョンを共有してみてください。企業方針や目的が明確であれば、ひとりひとりの業務の目的も明確になります。目的への共感は、高い「働きがい」を生み出します。

成長実感を持たせるために、適切な目標設定を行う

個別目標をクリアしていけば、成長実感が生まれ、高い「働きがい」へとつながります。簡単に達成できる目標では、成長を感じることができませんのでご注意を。少しだけ「挑戦」が必要な目標を設定するようにしましょう。逆に高すぎる目標は、ストレスを生みワーカホリックに陥る可能性があります。ワーカホリックを認める企業風土になっていないか、マネージャーの立場の方は定期的に客観視してください。

日々のコミュニケーションを密にとる

「働きがい」はそれぞれ個人が感じる価値観。どう感じているかは人によって変わります。職場の「働きがい」を高めるためにも、個人の不安や不満などを聞くことのできる環境を整えましょう。
具体的な行動の重要性や意義を示し、行動した直後に褒めることも有効です。そのためにも業務のフィードバックは頻繁に行い、設定した目標が適切かどうかをこまめに確認してみてください。

しっかりしたキャリア展望

今担当している仕事の意味や重要性について、将来を見据え、部下と話す機会を持ちましょう。キャリア展望が定まると、「自分の能力は期待されている」という実感を持てるようになり、業務に対する「やる気」と「働きがい」が高まります。

生産性を高めるために必要なのは「働きがい」

働きがい現代では「働くこと」の意味が多様化していますが、企業の成長には人材の定着は欠かせません。

私たちは「生産性を高めたい」とよく口にしますが、より少ない投資で、これまで同様もしくはそれ以上の利益を得るためには、従業員の力を活用する以外にありません。そのためには会社側の雇用管理だけではなく、マネジメントに対する意識向上と、実際の施策運用の両軸が必要になってきます。

「上司にいわれたから仕方なく働きます」という従業員が、いい結果を出せていた時代は終わりに向かっています。次の時代に価値を生み出すためにも、働きがいを感じられる、働きやすい職場をつくってみませんか?