Habi*do通信

人材育成に欠かせない「オンボーディング」について考えよう

オンボーディング。オンボーディングは教育プログラムのひとつで、新しく組織に入った社員がすぐに活躍できるようにサポートを進めることを意味します。

「新人研修を言い換えているだけでしょう」
「オンボーディングなら昔からやっているよ」
という方、少し待って下さい!
新人研修やOJTの意味合いとしてこのオンボーディングという言葉を使ってしまいがちですが、実は正確な解釈ではありません。

ではオンボーディングとは一体何者なのでしょうか。
正しい知識を得ることで、効果的な人材育成につながり、取り組む社員の定着率向上にもつながります。
今回は、このオンボーディングについて深掘りしていきましょう。

そもそもオンボーディングって?

オンボーディング(on-boarding)とは、新卒や中途の新入社員を対象に個々が業務で必要となる知識や技術を提供したり、会社やチームにいち早くなじめるようサポートしたりといった一連の取り組みを指します。

乗組員

アメリカでは新入社員を「乗組員」に例えて、「Welcome on board!(乗ってくれてありがとう!)」という言葉をかけるそうです。この言葉が語源となり、国内でオンボーディングという言葉が広がりました。

Google、メルカリ等の採用でもオンボーディングを活用しており、人事業界で注目を集めています。

国内で行われている新人研修やOJTとの違いは、情報や価値観の共有にフォーカスしている点です。ビジネスマナーや営業のキホンといったフォーマルな研修ではなく、その企業の雰囲気や人間関係、社員がどのようなビジョンを持って仕事に当たっているのかを知る目的に行われます。

例えば「人間関係が薄れがちなリモートでランチ会や歓迎会を開く」「LINEで専用の相談窓口を設ける」などです。

こうして見るとオンボーディングは仕事のテクニックやノウハウよりもむしろ、人のつながりに焦点を絞っていることがわかります。また社員の働きやすい環境を整えるだけでなく、生産性向上や離職防止といったメリットもあります。

オンボーディングを最大限活用するためのメソッド

オンボーディングを活用する際に意識しておくことが「現場任せにしない」ということです。教育係が真似させる、集団で定期的な研修を行うというものではありません。

「新入社員のことは受け入れ部署に」「新入社員本人の自主性に任せた」という丸投げ体制では、指導者のモチベーションが上がらず、受ける側も「やらされている感」が拭えないままで終わってしまいます。

そのためオンボーディングは、場当たり的ではなく組織として体系立ったオンボーディングを設計し、初期の従業員体験の質を一定以上に保つことが大切です。しっかり組み立てられたオンボーディングに親しんだ社員は、今後会社で活躍できる可能性を秘めています。

「何を目指して何をすべきなのか」「3か月後はどういったアウトプットが行われるべきであるか」といった期待値や企業としての方針を構造化してプログラムとして組み、目指す姿を指し示しながら働きかけることこそオンボーディングの本懐なのです。

オンボーディングの組み立てに役立つ「ゲーミフィケーション」

オンボーディングの魅力、それは「楽しさ」を組み込める点にあります。何から始めれば良いかわからない場合はゲーミフィケーションを活用してみましょう。

ゲーミフィケーションはシンプルに言えばゲーム化のことです。そのまんま・・・ですが、皆さんゲームは大好きですよね。「ゲームなんて興味ない」という人でも、通勤電車に揺られる中スマートフォンの画面に夢中になっていることが多いのではないでしょうか。

ただしゲーミフィケーションも丸投げはNG。組織が無関心なのは「レベルアップの仕方も伝えずに、ボスを倒してきてください」と言っているのと同義です。正しくルールを理解させた上で取り組んでもらうようにすれば、楽しさを感じて自ら取り組み出し、やがて習慣化されていきます。

ゲーミフィケーションの語源

「ゲームに使われている構造を、別の分野で応用すること」をゲーミフィケーションといいます。ゲーム化を意味する「Gamify(ゲーミファイ)」という単語が語源となり作られた言葉です。

ゲーミフィケーションのメリット

ゲーミフィケーション

ゲーミフィケーションのメリットは、何と言っても目標が決めやすいところです。目標達成のためのクエストを設定するだけで、受ける側はどんな行動をすれば良いのか、なぜこの作業をしているのかが明確化されます。

また、楽しいのでモチベーション高く取り組めます。夢中になって取り組んでいるゲーミフィケーションの積み重ねが、やがて生産性向上に結び付くこともあるのです。

オンラインでオンボーディングを活用するときのポイント

今では社会情勢の変化によりリモートワークが主流となりました。オンボーディングは、ポイントを押さえればリモートでも十分に活用できます。ポイントは3つです。

オンライン環境を整える

オンライン実施は、まず環境整備がマストです。オンラインでもオンボーディングが進められるようなツールの導入が大前提となるでしょう。

期間を設ける

期間を区切って、いつまでにどのレベルのことをこなしてほしいか、期待しているかを明示することが大切です。中途採用でスキルや経験値がある場合でも、入社直後はその企業でどのように成果を出せばいいか手探りの状態からスタートします。企業の雰囲気が掴みにくいリモートであればなおさらでしょう。

目標設定と評価を行う

オンボーディングに対して目標設定や評価を行うことも大切です。これは新入社員だけでなく、受け入れる部署のメンバーや管理職、そしてメンターにも当てはまります。

新入社員のサポートは自分の業務時間を削って対応することも時には必要です。目標が定まっておらず評価につながらないものであれば、オンボーディングは上手くいきません。

まとめ:オンボーディング成功のカギは組織の一体感と楽しさ

上司と部下

オンボーディングは本人や現場任せにするのではなく、企業として環境や制度を整えることが必要です。

特にリモート環境ではコミュニケーションに対する課題を抱える人が多く、新入社員はそれを相談しづらいという難点があります。楽しみながら業務に取りかかることができれば組織に馴染み、即戦力として高いパフォーマンスを発揮してくれるでしょう。

新時代の教育スタイルとして「オンボーディング×ゲーミフィケーション」の取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。