「なぜ自分だけがこんなに忙しいのか」
「自分は頑張っているのに、会社は認めてくれない」
日本の中間管理職の方々は、組織成果を得るために自分の仕事の成果だけでなく、部下の仕事の支援や教育等といったことも求められます。また、現場の状況を分析して経営陣に正確に伝えるといった役割も担っています。これら多くの役割を担うプレイングマネージャーであるがゆえに、仕事に忙殺されているのが現状です。
今回はプレイングマネージャーとはそもそもどういったものなのか、海外の状況、そしてプレイングマネージャーの不満・解決策についてもご紹介します。
プレイングマネージャーとは
プレイヤーとしての業務を行いつつも、管理職としてのマネジメント業務を行う。両方の業務を担う立場の人を「プレイングマネージャー」といいます。一方、管理職は部署やチームの目標のみに注力しており、売上に貢献する現場のプレイヤーとしての役割は担っていません。
2006年にヤクルトスワローズ選手兼任監督だった古田敦也氏が、「代打オレ」と自ら代打に出るときに球審に告げた言葉が有名ですが、野球で言う選手兼任監督のことです。
社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなるVUCAの時代。また新型コロナウイルスの影響でより環境の変化が一気に進みました。消費者・顧客のニーズ変化がはやく、それらに対応するためには現場で顧客と接し、そこで得る情報を集約。またそれらに迅速に対応することができるか否か、企業に求められています。プレイングマネージャーのように現場に近く、迅速に情報を収集、現場の対応へと変えていく力の重要性が増しているのです。
海外ではどうなのか
2019年にリクルートワークス研究所が行った調査によると、国内の87.4%のマネージャーがプレイングマネージャー(参照:プレイングマネジャーの時代/リクルートワークス研究所)。
海外企業では管理職において、プレイングマネージャーはほとんどいません。
日本は日本的雇用習慣を守り続け、ゼネラリストの養成を続けてきました。海外では管理職はまさにスペシャリスト(専門職)です。日本では、新卒社員を総合職として雇用し、ジョブローテーション等で企業内での様々な経験を積むといった積み重ねや連続性が求められています。社内や業界の知識を持つマルチプレイヤー。ただし、マルチプレイヤーは器用になるため、一歩間違えると中途半端になってしまう恐れがあります。
一方で海外においては転職をすることは当たり前であり、多くの企業を渡り歩くようなプロ経営者も存在しています。管理職はMBAの知識があり、現場の社員をモチベートし、能力や知恵を最大化する仕組みづくりにたけています。
また、海外では管理職になると、給料が大幅に上がる、時間のコントロールが容易になる、権限を与えられ大きな仕事を動かすことができ、キャリアアップになる、といった利点があり、管理職になりたがらない人はいないようです。
プレイングマネージャーの仕事内容
プレイングマネージャーにはどういったことが求められているのでしょうか。
個人成果に直結する業務の遂行・達成
プレイングマネージャーは、ひとりのプレイヤーとして、売上や個人目標を達成しなくてはなりません。売り上げだけでなく、顧客数、行動内容といった成果を数字で表すことが求められます。
チームの目標達成のための計画策定、実施、分析
個人の成績だけなく、チーム全体の成績もプレイングマネージャーの評価の一つです。チームとしての目標が達成されるよう計画の策定、そしてその計画に沿って動けるよう支援することが求められます。
企業の方針や経営計画に沿ってそれぞれの部下に合わせて達成すべき目標を設定。高いモチベーションを維持できるよう働きかけます。また、進捗管理も重要です。
メンバー・部下の指導・育成
育成そして指導も、プレイングマネージャーの大切な仕事です。
育成においてもいつまでにどういった能力を、どの程度にまで高めるかといった計画を立てることが大切。マネージャーが一方的に定めるわけでなく、部下と対話の場を持ちながら、個人のキャリアプランや将来のビジョンに沿った目標、行動を決めていく必要があります。育成と指導によりひとりひとりの力が上がるだけでなく、チームとしての力も向上。成果へと繋がります。
現場と上層部の橋渡し
プレイングマネージャーは、経営者と社員の橋渡し役を担う重要な立場でもあります。
役員などの経営層に対しては、進捗情報や現場の状況を報告。また一方で、経営層の意志や戦略を現場に伝達するといったことも求められています。
経営層の視点と現場の視点、両方を併せ持つことが求められており、お互いの主張を伝え、現場での実行に移していかなくてなりません。
プレイングマネージャーの不満、解決法
これだけ多くの仕事をこなしているプレイングマネージャー。不満も多く抱えているようです。どういったことに不満をもち、どういった解決法があるでしょうか。企業としてプレイングマネージャーをどのようにサポートするか考えることが求められています。
1.適切な評価を得られない
チームの目標が達成できていなくとも、個人として優秀な成果を出している場合もあります。逆に、チームの目標が達成できていても、個人としての成果が振るわないといったこともあるでしょう。
多方面から成果をみて、正しい評価を行う必要があります。また結果を見た上で、マネージャー、プレイヤーとして、比重をどのように置くかといった見直しを随時行うことも大切です。
また、部下の育成を全てプレイングマネージャーに任せることも問題です。人材育成は本来会社全体で行うべきものです。プレイングマネージャーだけに押し付けるのではなく、人事部主体となり、職場での実践(OJT)以外の教育の場も積極的に設けていくことも手段のひとつです。
とはいえ、最も人が育つのは現場の経験や人との関わりの中だと思います。現場のマネージャー(もちろんメンバーも)を助ける施策やツール活用の推進を経営課題のひとつとして取り組むことをおすすめします。
2.オーバーワークになりやすい
マネージャー、プレイヤーの両方の責任を持ち、動くということはそれだけ時間が必要となります。成果を求め動く責任感の強い人であるほど、オーバーワークになりやすい傾向があります。オーバーワークの状態が続くと、業績が悪くなったり、身体や心にも影響が出てきます。
重要度と緊急度を加味したこまめなスケジュール管理も重要となります。
また、働き方の見直しも行いましょう。キャパオーバーとなる前に仕事量を適切に調整、他メンバーに振り分けるといったことが必要です。実務よりもマネジメントにかける時間を取れるように調整を行います。
テレワークや直行直帰というように、時間の節約が可能、負担を軽減する整備も必要でしょう。
まとめ:ロールモデルが必要
プレイングマネージャーの多くは様々な課題、不満を持っています。
かつて管理職になることは、多くのビジネスパーソンの目標でした。しかし昨今では、管理職の業務を担いたくない、出世や昇進をしたくないと思う人たちが増えてきています。
これらの人たちの気持ちを動かすためにも、イキイキと働く、ロールモデルとなるマネージャーの存在が必要となるでしょう。
誰もが経験をしたことが無いことが起こる先が読めない時代、そんな時代に適したマネジメントには正解が無いのかもしれません。だからこそ、新たなロールモデルが必要になるのではいでしょうか。
プレイングマネージャーが抱えている課題を解決するための対策が求められています。