Habi*do通信

ポスト・コロナで成長する組織とは!?オンラインミートアップ開催レポート

2020年4月22日の緊急事態宣言下で登壇者・参加者ともに自宅から参加するミートアップ形式のイベントを実施しました。本記事は興味深い大放談トークをまとめたレポートとなります。

ポストコロナで成長する組織とは?

新型コロナの影響でテレワークをはじめられた方も多いのではないでしょうか。

働き方改革が、この新型コロナの影響で想定以上のスピードで変わっていっています。そしてコロナはこれまでの組織マネジメントの在り方まで変えてしまうのではないか…。

ということで、そんな思いを感じているであろう方々とオンラインディスカッションをしてみたい、緊急事態宣言直後に緊急企画を立ち上げ、Home to Home方式のオンラインイベントを実施しました。

イベントでは、これからの働き方や組織の在り方、人材マネジメントについてのヒントになる貴重な話題が数多く登場しました。

本レポートはパネラーの方々から率直な本音や、これからの展望が数多く聞かれたディスカッションを書き起こしました。

パネラーの皆さん

藤間 美樹
profile藤間 美樹参天製薬株式会社 理事 人事本部
1985年神戸大学卒業。同年藤沢薬品工業(現アステラス製薬)に入社、営業、労働組合、人事、事業企画を経験。人事部では米国駐在を含め主に海外人事を担当。2005年にバイエルメディカルに人事総務部長として入社。2007年に武田薬品工業に入社し、本社部門の戦略的人事ビジネスパートナーをグローバルに統括するグローバルHRBPコーポレートヘッドなどを歴任。2018年7月に参天製薬に人材組織開発本部副本部長として入社し、2019年4月に執行役員人事本部長、2020年4月より現職。参天製薬のグローバル化を推進。M&Aは米国と欧州の海外案件を中心に10件以上経験し、米国駐在は3回、計6年となる。グローバル化の流れを日米欧の3大拠点で経験し、グローバルに通用する経営に資する戦略人事を探究。人と組織の活性化研究会「APO研」メンバー。
寺嶋 浩美
profile寺嶋 浩美フジッコ株式会社 執行役員 人事総務部長
神戸大学農学部卒。フジッコ株式会社商品開発部に入社し、おまめさん、おかず畑、塩昆布など多数の商品開発に携わる。営業企画、マーケティング、広告宣伝等を経験し、2006年より、通信販売事業部にて、商品開発、広告販促全般を担当。通信販売事業部長、マーケティング部長を経て2020年4月より現職。
奥田 和広
profile奥田 和広株式会社タバネル 代表取締役
一橋大学卒業。上場ファッションメーカー、化粧品メーカー、組織コンサルティング企業(UFJ総合研究所、識学)などを経験。取締役として最大170人のマネジメントに携わる。自らのマネジメントとコンサルティング経験に基づき、株式会社タバネルを設立する。OKRの導入、運用のコンサルティングを中心に組織コンサルティング、企業研修を行う。著書に『本気でゴールを達成したい人とチームのためのOKR』
開本 浩矢
profile開本 浩矢大阪大学大学院経済学研究科経営学教授、兵庫県立大学名誉教授
専門はクリエイティビティ・マネジメント、組織行動論、人的資源管理論。著書『クリエイティビティ・マネジメント』『入門組織行動論(第2版)』『研究開発の組織行動』等。直近では2020年6月に『こころの資本~心理的資本とその展開』を翻訳出版している。

モデレーター

石見 一女
profile石見 一女株式会社Be&Do 代表取締役CEO
武庫川女子大学文学部卒業後、1985年に25歳でセールスプロモーション系人材派遣会社を創立。1994年に組織・人材活性化コンサルティング会社を共同経営で設立し数十社の組織活性化コンサルティングを行う。1998年から組織論の第一人者である加護野忠男先生、キャリア論の第一人者である金井壽宏先生のご指導を得て「人と組織の活性化研究会(APO研究会)」を設立。2011年に株式会社Be&Doを設立。 【講演、著作物】「なぜあの人は『イキイキ』としているのか」第1章30歳はきちんと落ち込め執筆 (2006年,プレジデント社)、「R&D部門の“働き方改革”とその進め方」第9章,第3節 イノベーションを生む人材マネジメントの体的手法執筆(2018年,技術情報協会)そのほか、寄稿、執筆

ポスト・コロナで成長する組織とは?(前編)

REMOでミートアップスタート!

石見
石見
今日のテーマは「ポスト・コロナで成長する組織とは」。
新型コロナのパンデミックが始まって、みなさんいろんなことが急激に変わっていったのではないかと思います。
私たちも自宅でテレワークをしています。
本来なら今年オリンピックが開かれる予定だったので、東京都から旗を振って「開催されるタイミングではテレワークで」と言っていましたが、それでも無理だろうなと思っていましたが、この緊急事態で、一気にテレワークができる環境に移行していきましたね。
これまで自分たちが常識だと思っていたことが随分変わってきています。今日は参加者の皆さんといろんな意見を出しながら議論していきたいなと思っています。ぜひ本音で喋っていただければと思います。
では藤間さんから自己紹介をしていただきながら、最近ご自身の周りで起こっていることをお話しいただければと思います。
藤間
藤間
弊社は2月の中旬からテレワークをやってますので、もう約2か月になります。最初は慣れていないのでオフィスでやる環境を再現しようとしてたんですけど、それをしてると、まさに今回のテーマで「コロナ後の組織がどうなるか」という意味で、ただ戻るだけになってしまうので、それではだめだろうと。このコロナによるテレワークとか従来のことができない状況でいろんな組織運営をやっています。
すると今まで、不備なんだけどなんとかこなせていたことが、こなせないことで課題が見えてきました。これからは、その課題に対応できる会社や組織と、終わったらもとに戻ってしまう組織で差が出てくるんじゃないか、そんな風に思っています。
開本
開本
私はみなさんと違って大学にいるので、周りに起こった変化としては違った趣があるかもしれません。今日の日経新聞で、高校生の単位認定で対面授業が原則だという文科省のえらいコメントがでてましたが、大学は、いきなり3月からオンラインで授業を進めてくださいという形になりました。大学の中で最もオンラインではやりにくいとされていた教授会ですらオンラインを使ってやり始めているので、やればできるんだなと。これまでできない理由を挙げていた人たちも、手のひらを返したようにやっているので、何でもできないと言いたがるのは、日本の組織の悪い癖かもしれません。
今回、外圧があると一気に変わるんだなという意味ではいいことだったんじゃないかなと思っています。文科省ですら変わってきているので、僕たち大学の人間も柔軟に、むしろ前向きにいかないといけないなと思っています。
寺嶋
寺嶋
食品企業なので工場は稼働しています。しかもスーパーで買い物をされる方が非常に多くなっているので、私どもは非常に忙しくて、各工場勤務者はいつもどおり働いていただいています。一方で、商品開発やマーケティング、事務業務的なものは、在宅勤務しています。
在宅の場合、人によってずいぶん働き方や成果の出しぶりが違っています。スムーズにWEBツールを使える人はどんどん自分で会議を主催したりコミュニケーションしていくんですが、なかなかそこがおぼつかない人は2週間くらいかかってやっと連絡が取りあえる状態だったり。ここまで劇的に変わることはこれまでなかったなと思っております。
奥田
奥田
私は組織マネジメントとかOKRという目標管理手法のコンサルティングをさせていただいております。ですので皆さまと少し違ってクライアント様、お付き合いのある企業様でどんなことが起こっているのかということをお話しさせていただきたいと思っています。
今、自発的に改善を進めていけるチームと、なかなか適応できないチームの差っていうのがでてきてるんじゃないかなと。ちょっとしたコミュニケーションもそうですし、会議の開き方もそうです。雑談をどんどん取り入れましょうよというところもあれば、まだタスク管理に終始してしまってるところとか、そのあたりが大きな差になってきている。
会社にいたら許可や承認をとって進めていた文化から、在宅でどう工夫していくかという状況になり、奇しくも自発性とか自律性の差が可視化される状況になってきているのではないかな、と感じています。
石見
石見
こういう環境に即座に適応できる人なのか、適応が難しい人なのか、あるいは適応できる組織なのか否かっていうのが、こういう状態では非常にはっきりとしてきたんじゃないかなと思います。
先ほど開本先生も日本の組織は外圧がないとね、みたいなことをおっしゃったと思いますが、こういう変化は組織や人の思考にどういう影響を及ぼすものだと思われますか?
藤間
藤間
みなさん変化というのは嫌がりますよね。ただここは意識の問題が大きいと思うんです。昨日やってたことをやっていては会社が伸びるわけないと思ってる人と、お給料もらってこの仕事してたらいいんだっていう意識の人、今までのやり方で成功したから変えたくない、という人など、意識をどこに持っているかでかなり違ってくるのかなと思います。
だけどチャレンジを繰り返して乗り切った経験のある人や、志の高い人、そういうちゃんとしたリーダーが引っ張っていくことが必要じゃないかなと思います。そうでないと組織共倒れになりそうですし、組織がコロナ後どうなるか?の分岐かもしれません。
開本
開本
藤間さんの意見にすごく賛成です。今回のコロナを、震災と同じだとかサブプライムローンのショックよりも影響が大きいんじゃないかとかいろいろ言われていますが、よくよく考えてみると、感染してる人を除けば特に生命の危険でもないですし、インフラが壊れているわけでもないし、結構平常と変わらない部分ってたくさんあると思うんですよね。
変わった部分だけにフォーカスを当てて悲観をするのか、それとも変わっていない現状の部分を活かして今後新たな機会を探索するという楽観主義でいくのかが、結局一番大きな差になってきていると思います。
藤間さんがリーダーの役割の話をされたとおり、企業のトップがこういうときに今回の状況を楽観的に捉えられるかどうか?っていうのが、組織全体がうまく乗り切れるかどうかに、すごく大事だという気がします。
石見
石見
おっしゃるとおり、トップの判断や腹の括り方がすごく大きく影響しますよね。結局テレワークができるできないとか、そういうことも腹の括り方で実はどうにでも考えられるかなとも思います。
開本
開本
そうなんです。こういうとき、えてしてトップは、結構ネガティブに腹をくくりがちなんですよね。絶体絶命みたいに。そうではなくて、トップが今できることに目を向けて腹をくくると、部下は、本人はそう思えていなくてもトップの考えに引っ張られるところもある。トップがネガティブに腹をくくってしまうことによって、部下までも、別のやり方があるはずなのにその方法を考える心のゆとりを失ってしまうのは怖いですね。
寺嶋
寺嶋
トップや役員がいかにコミュニケーションを取って同じ方向でメッセージを出すか?っていうのがすごく大事だなと思っています。
当社の場合はトップがまず人命優先であると明言しました。要するに社員ひとりも傷つけたくないんだという話を第一にして、当初は全然できる体制はなかったものの、とにかく在宅しなさい、来ちゃいかん!という感じになっているんですね。ただし一方で、ライフラインである食品の供給が止まると社会不安になるので、食品企業の従業者として食品の供給はしっかりやろうと。
食品の供給をしっかりやることと従業員の安全性の両方を、いかに一緒にやるのかということをみんなで考えようということで、ライフラインの供給に従事する社員は本当に必死にやっていますし、そうでない社員は後方支援をやりながら、限りなく在宅率を上げて政府の8割減らす目標に協力するんだという意識でやっています。
トップから最初にメッセージが明確にあったので、優先順位は常にその順番で考えるということができました。この2週間ほど毎朝9時半からWEBミーティングで役員層と各部門長が入る会議体があり、そこで通常の意思決定とは全く違うスピードでいろんなことを決めていくという体制になっています。そういう意味でも、トップというのは非常に重要だと思いますね。
石見
石見
そういうふうにトップが判断をされて、すっと体制が取れていらっしゃるのが素晴らしいですよね。藤間さんのところも2月からテレワークをされているということですが、規模の大きな会社なので、それなりにいろいろ決定事項があったのではないですか?
藤間
藤間
弊社は早かったですね。毎週月曜日の朝、会長、社長と本社部門の本部長が集まって1時間会議をしているのですが、そこの議論で2月からテレワークを始めようということになりました。コロナはまず武漢で始まりましたが、弊社は中国も大きな拠点の一つで工場もありますので、これは他人事でないし、大変なことになるだろうと判断したからです。そんなに早くにテレワークを開始したのには、2つの目的があります。ひとつは感染拡大防止は企業としての責任だ、参天はそれをやるんだということ。もう一つは、従業員と家族の安心を守るということ。
テレワークはダイバーシティの観点からも以前から推奨していて、昨年の夏にはいろんな制限を撤廃していたものの、週に1回テレワークくらいのペースでした。これを今回まずは一斉に一週間テレワークできるかのトライアルやりました。とにかくやろう、いろいろ課題が出てくるので、その課題をつぶしていこう、と進めてきて今に至ります。
今は毎週月曜のそのミーティングで、前半30分はコロナ危機対策委員会として、メンバーを広げてやっています。今の課題は、我々は製造業として生産を止めないために、世界中から材料を仕入れている供給のサプライチェーンは大丈夫なのかとか、そういった課題が今のテーマですね。
石見
石見
トップの意思決定のポジティビティってどういう風に考えたらいいんでしょう。みんな危機感がないわけではないんですよね。
開本
開本
先ほど藤間さんがおっしゃったように、まず始めてみようということですよね。始めるにあたって2つの点を目標として掲げてらっしゃいましたけど、感染を広げないというCSRの観点と、従業員の健康とか安全を守るというこの2点ですよね。
目標がすごく明確で、目標への熱意がきちんとあれば、とにかくやってみようということで1歩を踏み出せると思うんですよね。やり方はその後やってみていろいろ問題があれば修正しないといけないですし、参天さんだったらサプライチェーンの問題を考えるという。やる前からサプライチェーンの問題とか考えていたら、たぶんスタートできなくなって、今のような在宅勤務の形にはなってなかったかもしれません。
ゴールに対する熱意みたいなものと、そこに至るための手法をたくさん選択肢として考えてるっていうポジティビティ、HOPEとか希望という概念で説明するんですが、そういったものがあるかどうかというのはとても大きいと思います。
石見
石見
ポジティビティ=危機感がないということではないと。
開本
開本
危機感は下手するとネガティビティかもしれません。亀のように頭も手足もひっこめて、危機が去るのをひたすら待つというのは、むしろネガティビティに繋がってきますね。そういう危機感の持ち方っていうのはちょっと違うんじゃないかなと思いますね。
石見
石見
アンテナを張りつつ、それに対して合理的に、的確に、熱いハートを持って進めていくというのがポジティビティだと。奥田さん、こういう危機のときに目標の明確化というのは、より重要度が増してくると思うんですが、危機の時の目標、OKRのOというと、どういうことになるんでしょう
奥田
奥田
OKRで言うと、目標を立てる際に「ムーンショットが大事ですよ」とよく言いいますが、危機状況で現状の延長線を大きく上回るムーンショットレベルの目標を設定することは実はあまりよろしくないんです。危機的状況下を乗り切るために、どこが死守ラインなのか?絶対達成しなければいけないレベルを明確にして、まずはそこを目指すことが大切になります。そこからどう上増ししていこうか?というのが大事かなと。
それに加えて、先ほどおっしゃっていたように100点になるまで発進できないよという考え方だと危機とか変化のスピードに対応できないので、50点でもいいから始めてみて、改善していきましょうというのが危機とか変化への対応には大事です。まさしくイノベーションとか新製品開発でMVP(実用最小限の製品: minimum viable product)と言われる、最小限の機能でお客様の声を聞けるような商品を作りましょうといった考え方。本当に50点でもいいのでまずやってみて、そこから改善を繰り返しスピードを上げていくというのが、藤間さん寺嶋さんも仰っていたところかなと思います。
石見
石見
VUCAの時代、先が読めない予測不可能な時代と言われて久しいですが、ついに来ちゃったなというのが、このコロナで実感しています。先が本当に読めない中で、どんな組織が生き残るのか、どんな人が生き残るのか、どんな意思決定が大事なのか、それによって人事制度、評価するものも変わってくるんじゃないかとか、いろんなことを感じます。
ここからは皆さん自由に話していただければ。
藤間
藤間
「今までと同じことやって良し」と思ってる人はだめですよね。日々の仕事をやるときに、なんでこれするんだろう?とか、なんでやらなきゃいけないんだっけ?とか、そういうWHYの思考を常に持っていること。過去やってたことをずっとやってることが良いわけないのですが、言われた通り去年やってたとおりにやってたほうが楽だ、というのもあります。
しかも目標管理って、組織の今期の目標をブレイクダウンしてあなたの目標にするっていうことをしていると新しいことがないですよね。評価の仕組みの中に、新しいことをやるとか、何か自分の持ってる仕事の中に何でもいいから付加価値をつけるというような仕組みを持つ組織、要は意識の高い人だけではなくてみんなでできる仕組みや評価制度を作っていかないと絶対追いつかないと思います。
10人の組織から100人の組織、一人だけ考えているよりも、みんなが考えて、アイディアが100個でてくる。もちろん使い物にならないものが山ほど出ると思いますけど、一人の力よりもみんなの力をつけていく。とにかく「今のままでいいんだ」という考え方で安住する人はダメで、常に何かおかしいはずだという意識を持っている人が多くならないとダメなんじゃないかなと思いますね。
石見
石見
たしかにオンラインでミーティングをするようになると、アジェンダがあるかないかで生産性がずいぶん違うような気がしています。あらかじめちゃんと考えている人と、集まれば何か出てくるかなという人では、後者は今この状況ではしんどいなと感じています。
藤間
藤間
全く同感で、前から口酸っぱく言ってたんですけど、ようやくこれで、できるマネージャーできないマネージャー、できる社員できない社員が見えてきますね。みんなオフィスにいると、思いつきマネジメントができるんです。「あ、そうそうあれあれ」とか「おい君!」とか。それが今できないですよね。決められた時間で、せめて今週ふりかえってどうだったから来週どうする、とか、これがあるからこれはAさんにとか。ひとりひとりの役割を明確にするような形にしないとできていかないかなと。
そうすると面白いんですけど、テレワークになって会議の参加メンバーが減りました。大勢だと議論しづらいじゃないですか。おのずと今まで10人だった会議が4人とか5人で成り立ってるんです。そこからはじかれた「いらない人」っていうのが見えてきています。会議を主催する人がアジェンダを示さなくとも、目的意識をもって「今度会議でこれ言わなきゃ」とか「私これを確認しよう」とか、常に今までこんな課題があったから次何をするということを意識してる人が会議に参加するということになる。会議メンバーの参加者を知るだけで人事評価できます。
石見
石見
それは、次の時代に突入した感じが見えますね。先の読めない時代、寺嶋さんどう思われますか?
寺嶋
寺嶋
本当にすごく共感してしまいました。「先の見えない状況でどういうことが必要か」ということについて考えたときに、たとえば植物の種子を今植えたとして、芽を出すものが100%ではないんですね。必ず次の時代に、例えば氷河期が来たときにも生き残れる種を子孫として残すために、100%の開花率ってどんな種子でもないんですね。そういうことを人間に当てはめると、個人も今やるべき仕事で85%の力を使って、それ以外に自分が本来やりたいことや、全く先が見えないけれどもやってみたいことに取り組むというのも大事だと思います。
すでに一部の会社さんが15%ルールとして、その15%の余力を会社が時間とお金を従業員に与えて、自分自身が鍛えられるような状態を従業員に作ってもらうような取り組みをされています。何が正解になるかわからない時代に、その15%が毎年積み重なっていくと、事業であったり研究であったりいろんな打ち手が出せる。そんな組織を作っておく必要があると思いました。
部下の顔を毎日見ないとわからないというような古い考え方の上司の方は、在宅せざるを得なくなると、否応なしに違うところで部下の様子を気遣わないといけなくなる。そんな視点の180度転換っていうのを、この15%の余力のところで一人一人に持たせたいなと思いました。
やっぱり従業員の中には、人の意見に同調するだけで会議に参加していた人や、その人自身の発案や考えで会社の事業にインパクトを与えられていない人が、この状況の中でたくさん見えてきたなという感じがします。会社に来ていただけの人はなかなかしんどい時代になっています。
石見
石見
やっぱり結構シビアな世界が広がっているように感じます。開本先生、クリエイティビティマネジメントがご専門なのでそのあたり教えていただけたらと思います。
開本
開本
その話の前に、寺嶋さんのお話で15%の余力の話で少し思い出したので話させてください。在宅勤務をすると、少なくとも通勤時間が削減できるので、自分で使える時間というのは必然的に増えるはずなんですけど、そういうときに本当の意味での自己啓発とか自己研鑽とかをやると、危機に陥った時に自分の手段というか引き出しが増えるわけで、それが最終的に自分の成長やレジリエンスにつながる気がするんですよ。
レジリエンスと言うと「折れない心」とか「危機に負けない」ということが協調されますが、むしろそれよりも、危機を乗り越えて危機の前の自分よりは一歩でも二歩でも先に進んでいる、成長しているというところが大事だと思います。今のように環境が変わった時こそ自分の引き出しを増やすための努力とかエネルギーをかけたらいいのかなと。そういう人たちがたくさんいる組織、自己啓発や自己研鑽をサポートする組織っていうのが、これから伸びていくし強いのかなという気がします。
開本
開本
次に、クリエイティビティの話がリクエストされたのでお話しますね。クリエイティビティって突き詰めると異縁連想という難しい言葉で言うんですが、遠くのものを組み合わせるということなんですよね。連想ゲームって、結構近いもの同士を組み合わせるんですけど、そうじゃなくってリモートアソシエイション、つまり離れた概念とか知識を結び付けて新たなものを生み出すというのがクリエイティビティだと捉えると、「こういう危機が来ました」「今まで在宅したことない人が在宅するようになりました」という大きな環境の変化は胃縁連想という意味では抜群の環境なんですよね。今まで見えてこなかった、こんな発想したことなかった、というようなアイデアが生まれる可能性があるので、この危機は有効なチャンスに活用できるんではなかろうかと思います。アイデアの種が生まれたものを、それをこういったツールを使って共有することで新たなビジネスに繋がったら一番いいんですよね。
開本
開本
それからこのツール(このセミナーで使用していたのは「Remo」)を見ていて思うんですけど、参加者の皆さんが同じ画面の大きさなんですよね。会議だと声の大きい人とか立場が上の人の方がなんとなく重要なイメージなんですけど、画面サイズが同じというのがいいと思います(笑)。それから、画面で同時に皆さんの顔が見えるので、さぼれないんですよね。大学のゼミだと抜群に効果あるんですけど、ゼミ生は下を向けないのでみんな真剣にディスカッションに入ろうとしますし、今まで発言しなかった子たちも画面に映ってると喋らないといけないようなプレッシャーを感じるのか、ディスカッションが活発になったりするので、こういうツールは逆に民主的な部分が出てくるのかなという意味でポジティブに捉えられる気がします。
石見
石見
こういう大変なときこそ、目標を持って進めていかなきゃいけないと思うんですが、こんな環境の中でどうやって実現していけばいいのでしょうか?
奥田
奥田
一つはリーダー(トップ)の言葉が大事かなと思います。これまでは、出世するマネージャーは、リーダーの言葉や、リーダーから与えられた目的・目標をロジックに分解して自分のタスクにしていくのが得意な人が出世していたと思うんです。でも、今のお話でもあるように、それだけではやはりダメで、「現場でこんなことがしたい」という自分の意見を出していけるようにならないといけないのかなと。
よく目標管理はトップダウン式かボトムアップ式か、と言いますが、私は二元論ではなくて両方ともなくてはいけないと思っています。今までは与えられた目的・目標を分解することで評価されていた人に、そうじゃなくなるということをしっかり示さなくてはならない。
もう一つは、目的・目標も今までは縦割りで自分の守備範囲だけ知っていればよかったんですが、タバコ部屋とか居酒屋とかで話してる中でお互い他部署どうしてるの?と話せていたものができなくなったので、ますます情報の透明性というか、他の人はこんなことを頑張ってるんだとか、こういうことがうまくいってるんだといった情報の透明性を高めていくと、それが切磋琢磨していくひとつの契機になるのかなと思います。
環境が変わりますので、一人一人が頑張るのも大事ですけど、やはりみんなで切磋琢磨して環境変化に対応していくような、目標だけでなくそういう対応が大事になっていくのかなと思います。
石見
石見
本当に情報の透明性って大事ですよね。離れちゃうと何が起こってるのかがわからない。いかにそれをフラットに伝えていくか、自分たちが伝えていけるかという能力も問われているんだろうなと感じます。
開本
開本
透明性のあるリーダーのことを、最近「オーセンティックリーダーシップ」という言葉で研究する人たちが増えてきています。もともとオーセンティックっていうのは、日本語で訳すと「本来性」とか「本来の自分と偽りがない状態」なんですが、そういうリーダーシップを作るのが、リーダーシップ開発で一番大事なんじゃないかという議論もあります。透明性という概念、それを正当性というか本来性というか、そういうのはこれから大事になると思います。
石見
石見
オーセンティックリーダーシップを身につけるためにはどうしたらいいんですか?
開本
開本
それは難しいですね。わかりません。
石見
石見
その人のキャラクターによる部分も大きいんですかね。
開本
開本
いやたぶん、一番効いてくるのはポジティビティなんですよね。オーセンティックリーダーシップの開発、ALDっていう研究で出てくるのは、結局のところ、リーダーがポジティビティを持ってないとオーセンティックリーダーシップを発揮できないだろうという話につながっているんです。ポジティビティの育成=オーセンティックリーダーシップの育成のように、ずいぶん重なるんだろうなとは思っています。
石見
石見
話が少し変わりますが、今、営業がすごくやりにくいじゃないですか。うちのスタッフから聞いた話なんですが、ある会社で「コロナで売り上げが減少するから、もっとタッチポイントを増やさないといけない。だからこそ今、訪問営業に力を入れよう」と決断した会社があると聞いて、ずっこけてしまいました。こういう時代だからこそ何かアクションを起こさないといけないという発想までは良かったんですけど、やり方が昔のままなんですね。
この新しい環境変化に全然対応していない意思決定がなされてしまうという組織が、実際まだまだ多いんじゃないかなと思っていて、相当頭のパラダイムシフトをしていかないといけないんだろうなと思っています。
石見
石見
今回のこのミートアップで「Wellbeingが組織にどう影響をもたらすのか」ということをテーマにあげたんですが、先日の日経新聞に日本電産の永守さんが「これからは従業員の幸福、幸せを第一に考えていく経営をしなきゃならない」という言葉が掲載されていたんですね。私はこの50年間の自分を間違えていたと。単に利益追求するのではなくて、いかに幸せを探求するか、働き方も含めて変えていかなきゃならないと仰っていたのがすごく衝撃的でした。これからの組織のマネジメントも、自分の会社でどう貢献していくのかという経営の立場もそうですし、個人の立場としても、自分はどう生きていくのか、どう貢献していくのか、それが突きつけられている時代になったんじゃないかなと思ったんです。その辺りのところでざっくばらんにお話しいただければと思います。
藤間
藤間
私もその記事を読んで、今日のテーマにどう結びつくか考えたんですね。冒頭にもお話がありましたが、在宅になると、みんなが仕事やってるかどうかわからないっていうマネージャーがいますよね。ですが、どうやってみんなに仕事をさせるか?という発想自体が間違ってるんですよね。目の前に上司がいるからやるとか、まわりに仲間がいるから仕事しないとかっこ悪いから仕事してるとか、メンバーにそういうモチベーション状態にさせている組織が勝つわけないですよね。
そりゃ給料いっぱいもらえたほうが仕事もやる気になるかもしれないし、いい評価をもらえたら嬉しいかもしれないけど、ものすごくモチベーションが上がってイキイキと仕事ができた経験って、それは給料とかボーナスじゃなくて、何かやりがいだとか、そういうものだと思うんです。
私が若いころ営業をしていたとき、この親分を男にしたいという気持ちがあれば、給料とかボーナスとかそんなの関係なくもう一件行くわけですよ。この人と一緒に仕事をしたいんだとか。そういうモチベーションを持った従業員がいる組織が強いと思います。
先ほどの日本電産の話に戻ると、従業員のためを思っているリーダー、それが体現できた組織、それをまっとうに感受性高く受け取れる社員。いくらやっても響かない人も中にはいるんですけど、より多くの人が響く組織が強いと思います。
そして今、会社には出社できません、Face to Faceで見えません、となったときに、やれと言われた仕事が終わったときにプラスアルファ何かやろう!となるのか、終わったーとなってしまうのか。中間管理職の人も、上から言われたことをやってまあいいか、あいつやってるかどうかわからないし、となるのか、それともこれからのお客さんのことを思って何か考えようとしたり、リーダーやメンバーと一緒にナンバーワンのチームにするんだとかいうような思いを持つかどうかで違いが出る。そういう思いを持つ人の集まりは、たとえどこで仕事しようが、顔が見えようが見えまいが、変わらないと思うんですよね。
石見
石見
いろんなところで今、本質が見えてきますよね。
奥田
奥田
これから半径5m以内で一緒に働いているチームメンバーと、いかに会話とか自分自身を出せるかという部分も、すごく大事になってくるんじゃないかなと思います。チームの中で自分のことを出せるのか、周りの人が本当に今元気なのか、がんばってるのか、とか。協力し合おうって思えるような人がチームの中に何人いるかで大きく変わってくるんじゃないかなと思っています。リモートになって、チームの中で雑談をしないとか、タスクの話だけしてるという状態ではなく、血の通った会話をチームでできるということも必要なんじゃないかなと感じています。
開本
開本
お二人のお話に僕も共感なんですけど、突き詰めていうと、「性善説でメンバーを捉えられるか」ということだと思うんですよね。たぶん採用するときにはどの会社もその人と一緒に働きたいと思うからこそ採用してるはずなのに、入ったとたんに評価は性悪説みたいになる。
在宅だと仕事してないんじゃないか、さぼっちゃうんじゃないかという発想で見てしまう。そこに大きな矛盾があるので、性善説でいこうとトップが言わないといけない。自社の従業員に対してさぼってるだろうという発想で見る経営者なんて全然だめだと思うんですよね。
そもそも性善説でないとWellbeingなんて出てきようもないですし、Wellbeingがない状態でいい仕事をしろと言っても難しい。
今回在宅勤務で、ある意味成果主義が進むようなところも感じていて、見えるものがずいぶん変わってくるんですよね。これまでは対面だからこそ、仕事の成果じゃなくて態度とか印象でその人が仕事してるような気になって、それが人事考課になるようなおかしなところがありました。オンラインでやると誰がどんな仕事をしてるかっていうのがものすごくよく見えるようになるので、これまでなかなか成果主義がうまくいかなかった原因の一つである「評価がしづらい」というのが、別の意味で突破できるんじゃないかなと思います。成果主義にするのでも性善説が大事だと思います。
寺嶋
寺嶋
私のWellbeingについての考え方は、トップや会社の事業が目指しているものと、その従業員が自分の目指すものや自分が目標とする生き方なりとが合っていれば幸せを感じると思いますし、そうでなければやっぱりそうじゃないと。つまり、いかに一人一人が働く内発的動機を持って、本当に内発的に突き動かされる仕事をできるか、ということだと思うんです。
それは、一緒に仕事をする5m以内の人を幸せにできるかというミッションもあれば、こういう商品を作って供給していることに自分は誇りを感じているということもあれば、とにかく社長の考えが好きだということもあれば、この方をなんとか上のポジションまで引き上げるのを自分が下支えしたいという動機もあるかと思います。いずれにせよ、自分の中に内発的に起こるものが、いかに会社と繋がっているかを発見できるか?から、一人一人の自律が始まるんだろうなと。会社に就職するというんじゃなくて、自分が貢献できるジョブの方でどうやって組織に尽くせるかというのが、いよいよ日本にも来るんだなという感じがします。
石見
石見
日本型の等級制度がもう難しいと言われていたのに、それをなかなか打ち破れなかったんですけど、一気に進みますよね。ここで、オーディエンスの皆さんからご意見がチャットで入っているので読み上げさせていただきます。

【タレントマネジメント研究がご専門のM先生より】
タレントマネジメントの観点では、リモートワークなどを定量的にはかる管理型組織のタレントマネジメントを活用する組織と、自律的に従業員を信じて育成、啓発するスタイルでコミュニケーションを重視するタレントマネジメントをとる組織に分かれそうな気がします。

 

【人材育成系コンサルティング会社役員のTさん】
社会全体に同じ危機が起きてリーダーの質が見える化してきたように思います。リーダーシップについての理解が社会全体で深まるのではないか、部下がリーダーを選ぶ時代になってきた。

開本
開本
リーダーの見える化が進むとともに、組織のありようも同時に見える化が進むと思います。

休憩をはさみ後半はテーブルディスカッションに移行しました。それぞれのテーブルで議論を行い発表を行いました。

ポストコロナで成長する組織とは?(後編)

石見
石見
みなさんテーブルディスカッションどうでしたか?発表をお願いします。
Mさん
Mさん
興味深い話がいろいろ出ました。大手企業でも、管理職がどうマネジメントしたらいいのか非常に戸惑っておられて、むしろタスク管理というか介入が激しくなっているというお話がありました。ちゃんと仕事してるのか?と管理に走ってしまっているというような事例や、まだまだ産業構造上リモートに対応できないところが多くて、「名ばかり在宅」になっているところも多いとのこと。
ポストコロナを考える上では、コロナがいつまで続くのか?によっても、きっとポストコロナの状況は違うだろうねという話も出ました。比較的早くに収束すると、元に戻そうとする保守層が比較的強いかもしれない。一方で、1年とか、ある程度影響が長引くようだったら逆にそれが普通になるので、これが大きな変換点となって、いろんな新しい価値観が定着していくじゃないかという話がありました。
ある程度は、従来のスタイルに戻していく方向性もあると思いますが、とはいえ元のままではない価値観が大きく影響していくので、そこをきちんと踏まえて、環境変化にどうバランスをとって考えていく組織なのか?によって、大きく違ってくるんじゃないかなと、そんな議論がありました。
Iさん
Iさん
私から皆さんに質問をしました。トップが社員ひとりひとりの本音を聞き出すのは大変で、話をしても本音を話してくれない人がたくさんいると思うので、そこを聞き出すにはどうしたらいいのかということと、もう一つは、逆にプライベートを出したくない人が一定数いるなかで、社員のプライベートに会社が入り込んでくることへの辛さみたいな声も出てきていて、家で会社の人とオンラインで飲まなきゃいけないとか、働く側として本音を会社にさらけ出さなきゃいけないのか?という素朴な疑問があって。その二つの質問をして、主に開本先生からお答えいただきました。
まずトップがぶれないことが大事であるということ。社員に本音を話せと言っておきながら、実はトップが本音を言ってないと社員からは見透かされてしまうので、まずトップが本音を言い、ぶれないこと。
そしてこれがとても印象的だったんですが、トップが騙される覚悟を持つということ。つまり多少さぼってもいいじゃないか、多少騙されても私は本音を喋るよというような姿勢の持ち方が、エンゲージメントを高める元になるんじゃないかなというお話は非常に納得しました。
それから、働く側の姿勢としては、今までワークライフバランスという言葉が「何時から何時まで働いて」という時間の話ばっかりだったのが、これから時間じゃなくて心の持ちようであるとか、本当の意味でワークライフバランスというものを考えていく時代に入ったので、自分はどう会社と関わってどういう貢献をして、何を受け取るのかというのを、今こそ本当に考えなきゃいけないというお話も、本当にそうだなと思いました。
そういう意味では、今のトップ側の姿勢と、働く側のワークライフバランスがうまく両方から成功すれば新しい働き方が実現するのかもしれないと感じました。
開本
開本
僕のとりとめのない話をまとめていただきありがとうございます(笑)
Aさん
Aさん
私は働き方系のコンサルをしているんですが、視点が脳科学的な、認知的なところを見ているんですね。結論から言うと、外的要因とかの変動に対して非常に柔軟に受け入れて、適切な処理をすることができる人が多ければ多いほど、その組織は成長するんじゃないかと思っています。
もともと生き物はネガティブな要素の情報に非常に反応しやすいんですね。生き残っていかなきゃいけないというのを根底に持っているので、ネガティブな要因というのは非常に重要な課題になっています。こうしたネガティブな状況になったとき、いかに一人ひとりが広い視点で好奇心を持ってその状況を受け入れて、判断して、解決していこうという内発的なものが生まれるのかっていうのは非常に大事になっています。
もう一方で、その事象がなぜか?を考えていく力も非常に大事です。例えばトップが対策を出したことに対して受け止める力も非常に大事な部分じゃないかなと。トップと働いている人達がうまくチューニングできるようなアプローチをして、好奇心をうまく生かせるような組織がキモになるんじゃないかという議論になりました。
石見
石見
非常に幅広い意見が出てきましたね。
一番最初のチームからは、具体的なものとして、今リアルに起こっている課題のお話をされました。すごく気になったのは、どう評価していいのかわからないのでタスク管理的なものを強化する流れになっているという話と、名ばかり在宅になっているという実態の話です。こういうところって本質的な議論をしていかないとだめなんじゃないかなと思います。
2つ目のチームは開本先生が入られて議論をサポートされましたが、トップの騙される覚悟っていうのは、先ほどのタスク管理の話と裏表みたいな話のようで、これも非常に興味深いですね。
最後のチームは、Aさんが脳科学を研究されていることもあって、ネガティブなもの、危機感に対する反応ということが生物の生きるベースになっているという中でも、好奇心を持っている組織がこの時代を乗り切れるんじゃないかというお話でした。

オンラインミートアップの様子

開本
開本
スクリーンをシェアする機能をつかって自分の結論をシェアしますね。
こういうことがコロナの前と後で随分変わってくるだろうということで、3つのポイントを書いてみました。
1つはポジティビティ(心理的資本)の話ですね。
2番目が本当の意味での成果主義。根付くかもなという気がしているので。
最後は組織と個人の関係をもう少し見直す機会になるのかなと思っています。
物理的に職場から離れることで見えてくるものってたくさんあると思います。これまでワークライフバランスって結構議論されてきたと思うんですが、いま一つ本質的には変わっていないような気がします。今回初めて強制的にでも在宅勤務になると、自分の人生において何が一番大事なのか、なにがWellbeingを決めるものなのか?っていうのが、よりはっきり見えてくると思うんですよね。そこで初めてワークライフバランスの目的は何か?っていうことも考えるでしょうし、自分の仕事と家庭のオンオフをきちんと切り替えないといけないような状況ができてきたと思います。
従業員の側から組織が選ばれるようになるかもしれないという意味で、心理的契約を更新しなきゃいけない。だから結構これから終身雇用って厳しくなるのかなって思いますね。
この3つを僕としては今回のテーマとしては僕なりの結論にしたいなと思って作ってきました。一番上のビフォー・コロナ(B.C.)からアフター・コロナ(A.C.)というのが一番ポイントですね。それが一番言いたかったことです笑

BCからACへ。ポジティビティ、成果主義、心理的契約の更新

石見
石見
藤間さん、これから人事評価制度が変わってくるんじゃないかというお話ですが、何かご意見ありますか?
藤間
藤間
日本は生産性等でものすごく海外に負けてるじゃないですか。昔はJAPAN as NO.1と言われていたのに。たぶんこれは、できる人に大事な仕事を任せるという極めて基本的なことができていないからじゃないかと思うんです。それは、誰ができる人か?という評価を、本当は成果主義でやろうとしたんですがなかなか日本の性質でそこに移れなくて、能力も見よう、プロセスも見よう、っていうことを口実に、なんとなく年功序列的なものを守ってきた。となると本当の成果以外のところで評価できる仕組みになっていました。それが今までのBeforeコロナですよね。
それが、オフィスに出ないことで成果がわかりやすくなった。厳しいけれども誰が会社に貢献したのか?というのがわかる世界になってきて、みんながわかるように誰もが測れる指標で競争しあって、大事な仕事はこの人に、大事なポジションはこの人に、となっていくでしょう。ただ日本人のメンタリティが急に変わるわけはないとも思うので、あまりにも急な変化だとついていけずに抵抗勢力が出てきて、わかっちゃいるけど戻ってしまう、となる可能性も高いですね。
結局afterコロナで諸外国がどんどん進む中で、日本がさらに負けるようなことにならないかなというのが心配です。だから、厳しい成果主義にはいくんだけど、性善説に立ちながら、騙される勇気とか気概というか寛容な心をリーダーが持つことですね。厳しいなかでも、皆との交流を深めるいろいろツールなど、新しく出てくるテクノロジーをうまく活用しながらやっていく。それとうまく合わせて変革をちゃんとやっていける組織、うまく引っ張っていけるリーダーと、きっちり高い志を持ってついていくメンバーのセットが大事かなと思いますね。
石見
石見
これから評価のあり方とか活かし方が変わってくるかなという話ですが、寺嶋さんいかがでしょうか?
寺嶋
寺嶋
これまでトップが参加する会議では、上位者の反応に、みなさんがある程度配慮しながら、自分自身の本音を出せずにきた部分があったかと思うんです。でもWeb会議などのフラットなミーティングですと、そんなこともなくなり、その分野で一番研鑽を重ねてきた人が適切な発言をして、それをみんながしっかり聴くということができています。この仕事の専門家であるこの人が発言したからには、そうしようという意思決定がなされるようになってきているんです。
そういう意味では、ダイバーシティも一気に進むんじゃないかと思います。これまでだったら組織の中で3つか4つくらい仕事ができる人が処遇されやすかったと思うんですが、何か一つでも特化したものがあれば、しっかりと会社にも貢献できるんじゃないかと。それぞれに才能やいいところがあるはずなので、そういうところをより見出していき、全員参加でそれぞれの強みを持ち出し合って組織をバージョンアップしていくことができたらいいなと妄想していますね。
奥田
奥田
藤間さんが仰っていた、「測れる指標が大事だよ」というお話に付け加えてお話させていただくと、測れる指標を生み出せるということと、絞れるということ、の二つが大事になってくると思います。生み出せるというのは、これまでどおりの指標をただ追いかけるのが本当にいいのか?自分がやるべきことは何なのか?ということを考えたときには違う指標で見ることが大事になってくるはずということです。
もう一つの絞るということでは、このコロナの状況の中で、「やっといた方がいいですよね」とか「やったふりしてました」というような仕事は排除されていっている、つまり、絞りこむってことが大事ですよね。指標においても、あれもこれも大事、ではなくて、本当にやらないといけない、社会の情勢に役立つとか顧客の声に役立つような指標をきっちり絞り込めるということが今後大事になってくるのかなと思います。それによって「やったふり」の指標ではない評価が大事になってくるかなと思います。
石見
石見
開本先生の資料の「心理的契約」という言葉がちょっと気になったんですが、私の中ではもともと「株式会社地球」みたいな考え方があるんです。今までの日本では、転職というのは、だいぶゆるやかになったともののまだまだネガティブな印象がありますが、今、うちの組織にとって向いている仕事ができる人、できない人というのが見えてくる時代になった時には、「株式会社地球」と考えると、単なる部署移動なわけです。より適材適所というか、自分を活かす場所に、個人も自分の自主的な選択権で異動もできるし、会社も明確にこういうポリシーでこういう人と一緒にやりたいというメッセージを出してやっていくことができるんじゃないかと思っているんです。そうすると、組織の中に縛られず、まさしく心理的契約で、どこと自分が契約してやっていくのかということが、もっと自由になってくるんじゃないかなと思ったりします。
開本
開本
そういうことを考えると「株式会社地球」というよりも、そもそも組織に所属するという概念そのものが必要なくなるかもわかりませんよね。仕事ごとにつながっておけば、箱として、ハードウェアとしての組織の存在そのものも必要なくなるかもしれない。
心理的契約というのは、つい組織と個人の契約関係を考えてしまいますが、組織の形とか存在そのものがもっと変わってくるかもしれないし、全てがバーチャルな組織になるかもしれない。
一方で全員が自営業、フリーランスになる厳しい世界なので、雇用の保証の問題とか社会制度との整合性というのは考えないとだめなんですが、そういう意味では、藤間さんのおっしゃってる「厳しいようでもある成果主義」が浸透すると、新たな働き方というのが出てくるのかなという気がします。そうなると大学の先生なんて一番やばいですけど。もっとYouTubeで上手に講義をする先生いっぱいいるので。そうならないように頑張ります(笑)。ジョブ型雇用という言葉がありますが、ジョブがすごく見えるようになってきますよね。
石見
石見
会場からご質問がきています。
Iさん
Iさん
今の「株式会社地球」の話とか、全員フリーランスとか、将来的に「昔会社っていうのがあったらしいね」という時代が来るかもしれないんですが、今すでに副業だけじゃなくて、複数の会社に属する人も出始めているので、そうすると会社としてのまとまりばかりを考えていられなくなりますよね。そうしたケースが今回のコロナで一気に加速するんじゃないかと思うのですが、そういう複数に属して働く働き方に関して何かご意見を伺えますか?
寺嶋
寺嶋
当社では、就業規則上は、副業は会社に届け出たらやってもいいというような、厚生労働省がモデルで出しているものをそのまま採用していますけれども、実際にはなかなかいないのが現状です。農家を兼業している人とか自営の親を土日は手伝っているとか、そういうもとからの人は届け出してもらっていないので、副業として届け出をしている人は、ちょっとした先生を土日にやっている人くらいですね。今後加速させていかないといけないなと思っています。
開本
開本
そういうときに雇用保険とか労災とかカバーできる範囲って、例えば本業の勤務先が副業まで全部カバーしたろというような太っ腹の話にはなかなかならないですよね。それくらい太っ腹じゃないと副業なんてなかなか進展しないと思います。
クリエイティビティの話に戻るんですけど、異縁連想は変わった経験をしていないと出てこないという意味では、変な副業することってクリエイティビティを促進するにはいいことだと思うんですよね。だとすると、組織としても副業をする従業員の心理的安全を高めるためにももうちょっと柔軟な制度ができたらいいなとも思います。
藤間
藤間
私は副業で刺激を受けることはとってもいいことだと思うんですね。ただその大前提として、本業において短時間で仕事をこなせる能力が求められると思うんですよ。あっぷあっぷ(という言葉はよくないですけど)の状態ではなく、少なくとも残業ゼロでこなせてる人はよほど仕事ができるか組織がうまく回っているかなので。それがうまくできたら非常にプラスかなと。
ベテランの方で、今の仕事が本来のご本人の得意分野とは違っていて会社の中ではなかなか輝けないんですけど、輝きを取り戻すために外の団体で副業というよりはボランティアに近いような形で活動して、そこで今までの経験を発揮して、自分としての個人のキャリアやモチベーションを保っている方がいます。会社にとってはどこまでプラスなのかはわかりませんが、ご本人にとっては人生のやりがいが出ていることなのかなと思います。
お友達の中には、いくつもの仕事をフリーランスという形でしている方もいます。もともと大きな会社で頑張った方ですが、今は一人で複数の会社を立ち上げて、メインのところは週に3日コミットして、あとの2日は自分でというような。そういう方の生き方を見ていると、それはそれでイキイキしていらっしゃるなと思います。
奥田
奥田
副業にいく手前で、今回のコロナで企業どうしのナレッジシェアは結構進んだと思います。リモートワークでこんな工夫していますとか、実はマスクこんなふうに作れますとか。今まで「オープンイノベーションが大事ですよ」って言われていながら、なかなか実用的なことを生み出せる結果はできてなかったと思うんですが、企業間でコラボしたりオープンイノベーションっていうのが、これを契機に進むんじゃないかなと思いますね。副業は大きな波という意味では、その次の段階かなと思います。
石見
石見
今回本当に緊急開催でしたが、こんな感じで気が向いたらまた不定期開催するかもしれませんので、またその時はみなさん参加いただければと思います。本日はありがとうございました。

まとめ

アフターセッション中

緊急開催で2020年4月に実施したオンラインミートアップは短い時間ながら白熱の展開となり、「ポスト・コロナ(アフター・コロナ)」の組織づくりや、働き方に関する様々なキーワードが展開されることになりました。

まとめとしてグラフィックレコードをご覧ください。

ポストコロナで成長する組織とは?前半グラフィックレコーディング

ポストコロナで成長する組織とは?後半グラフィックレコーディング

変化が大きく激しい時代です。
ひとりひとりが働き方と向き合うことと、変化に適応した組織づくりが改めて重要であることを再認識させられた議論でした。

登壇いただいたみなさん、ご参加いただいたみなさん、ありがとうございました。