最近、少しずつ認知されていている「リカレント教育」についてご存知でしょうか。
「リカレント教育」とは、基礎的な教育を終えて社会人になった後に、自身のキャリアのために学び直しをして、さらにそのキャリアに活かしていくことです。
もとはスウェーデンの経済学者レーン氏が1968年に最初に提唱した概念で、同国の文部大臣オロフ・パルメがヨーロッパにおける国際会議で言及したことで注目をされるようになったため、実は50年近く前から存在する概念です。
「リカレント教育」とは、経済協力開発機構(OECD)が1970年代に提唱した生涯教育の一形態で、フォーマルな学校教育を終えて社会の諸活動に従事してからも、個人の必要に応じて教育機関に戻り、繰り返し再教育を受けられる、循環・反復型の教育システムを指します。リカレント(recurrent)は、反復・循環・回帰の意味で、日本語では回帰教育、循環教育と訳されます。教育制度はもとより、労働関連政策や企業の雇用慣行なども併せて再編し、教育機関での学びとそれ以外の労働を主とする諸活動とを、個人が生涯を通じて交互に行えるように、社会体制を改革するのが「リカレント教育」の目指す戦略的構想です。ー日本の人事部より
つまり簡単にいえば、ひとりひとりが学び続けることが必要となり、それを支援する社会的な環境も整備していくことを目指しているものです。
リカレント教育が注目され始めている背景とは
安倍首相が「人づくり革命、生産性革命」を両輪で行う必要性を訴え、政府としても推進しています。(日本経済新聞2017年11月1日参照)
人生100年時代といわれるなか、人口は減少傾向にあります。高度経済成長期と異なり、1つの会社で勤め上げ老後を楽しむというようなことが難しくなってきており、求められる人生設計も多様化(せざるをえない)しています。
言葉を選ばずにいえば「レールに沿って目標を目指せば生涯安泰」ということがなくなったということです。
第四次産業革命時代とも呼ばれ、AIやIoTの進化により、様々な仕事の効率化が進んでいます。言い方を変えれば、これまでと同じような働き方では通用しない領域が生れつつあるということです。そしてこれまで以上に生産性を企業も働く個人も追及していかなければならない状況が訪れているのです。
日本の生産年齢人口(15歳~64歳)の中位推計では、2015年に7700万人ですが、2065年には4500万人まで減少します。約5分の3にまで減るのです。
日本の人口は、いま毎年40万人近く減少していっていることもご存知でしょうか。国内の中規模な都市の人口が毎年いなくなるというのは、労働力の減少もさることながら、消費・生産を伴う経済活動そのものが危機的状況に陥り始めているのかもしれません。
大人の学びとは?
では社会人になってからの学びとはどのようなものでしょう。
経済産業省の人材室が「人材力強化研究会」を立ち上げ、人生100年時代の大人の学びについて検討を進めています。そこでまとめられたものは、
- Reflection(ふりかえり)と体験総量
~出向、副業、インターン、リカレント教育 - タフ・アサインメント
- 学び続ける力、“learn how to learn”
- 外の世界とつながる力、大学改革
などがあげられていました。
教育機関や、教育を受けるその他の機会も大切ですが、実際に働いている現場そのもの・企業組織における学びも需要になるということです。
そのために、キャリアの棚卸しを行い、日々の体験についてリフレクション(ふりかえり)を行い、主体的に自分自身のキャリアについて考え続けていかなければならないのです。
言うがやすしですが、実際にはどうしたらよいかわからないというもの。何から手をつけたらいいのかといえば、大切なことはやはり「基礎」です。
例えば、新しい技術について基本的な知識があるかないかで全く異なります。
基礎的な知識があれば、それはどんな風に使えるものなのか、何に役立つものなのかも想像することができます。
逆に応用的なことを、机上でいくら学んでも、実際に現場で働くと、思ってもみないようなことが多々起こります。その通りにはいかないことがしばしば起こります。
そういった意味では「リベラルアーツ(一般教養)」を広く意識的に学んでいくことは、基礎として大切になるでしょう。応用については、実際の現場での「経験とふりかえり」の繰り返しを行いながら、身に着けていくもの。
ビジネス環境の変化が激しく、一つの仕事で一生食べていけるというものは、ほんの一握りになるでしょう。多様な知識やスキルの基礎を身に着けておくということは、個人として生き残っていくためにも、とても重要なことになりそうです。
何事も好奇心をもって、やってみよう!学んでみよう!という「トライ」の気持ちを持ち続けたいところです!