Habi*do通信

「誰かがやってくれるだろう」からの脱却!~自立性・当事者意識を高める~

自分一人がやらなくても誰かがやってくれる。
そもそも組織やチームとは、一人では事業全てができないからこそ、それぞれが分担し助け合い大きな成果へとつなげるためにあるのです。

最近は40代・50代でも増えてきているとされる、与えられた仕事はこなすが言われたこと以上の仕事は行わないタイプの「ぶらさがり社員」。集団が大きくなればなるほど、自分一人がやらなくても大きな影響はないと思う人が出てきてしまいがちです。

人手不足・労働力不足の昨今、「誰かがやるだろう」という感覚が与える周囲への影響は大きいものでしょう。それどころか、周囲や若手社員の不満へともつながり、チームとして組織としての成果は望めなくなってしまいます。

どうすれば一人ひとりが自立的に、やらされ感なく仕事に取り組めるようになるのでしょうか。

自立性 当事者意識を高めるには

ドイツの心理学者 マクシミリアン・リンゲルマンが提唱した『リンゲルマン効果』。みなさんご存知でしょうか。

綱引き
リンゲルマン効果は、フランスの心理学者リンゲルマンが、綱引きを用いた実験で発見したものです。リンゲルマンの実験は、「実験対象者の集団に綱引きをさせ、集団の一人当たりの働き具合を測る」というものでした。

結果は、以下の通りです。
1人で網を引いているとき……100%の力で引く
2人で網を引いているとき……1人あたり、期待値の93%の力しか出ていなかった
3人で網を引いているとき……1人あたり、期待値の85%の力しか出ていなかった
そして最終的には、8人で綱引きをしているときには、1人49%の力しか出していないことがわかりました。

メンバーの人数が増えるほど、1人あたりの貢献度は大幅に低下する。早く作業を終わらせたければ、人数を増やしたほうがいいと思いがちですが、実はそうではないことが明らかになったのです。

では集団の中でも一人ひとりが当事者意識を持ち、指示待ち社員をなくすには、何が必要なのか。具体的にみていきます。

当事者意識を高めるには 現場力

人から言われるのではなく自らがやらないといけないと思えること、この意識を持てるか持てないか。
個人の意識問題だと捉えるのは誤りです。

数的なものばかりをみる定量的な成果を追っかける。上からの指示・命令で仕事を行う。
⇒ 結果として業績は上がる かもしれませんが、やらされ感が発生し、自主性はないと言えます。
コミュニケーションや共有、協働を重視する。
⇒ 成果が上がるまでには時間がかかるかもしれませんが、仕事への関りを実感でき、自主性につながるでしょう。

教えるという名目での、指示や命令。スピードや成果を求めた上からの言われるがままの仕事。これを続けていては現場力の向上はなく、自主的な行動は発生しません。指示待ち、受け身のままとなってしまいます。

経営層や管理職、チームのリーダーは現場が自主的に考え行動することを支援、そしてそれに伴走することこそが大事なのです。

指示待ちを抜け出すには 目標

「主体的に動きなさい」といくらいってもその人の行動は変わらないでしょう。
大切なのは意識でなく行動を伴う変化です。

仕事の意義や自身の置かれている、必要とされている役割について、メンバーひとりひとりは理解しているでしょうか。
上司やリーダーがコミュニケーションをしっかりとり、一人ひとりのメンバー側の想いや目標を知り、そして仕事に対する意義や役割に対する理解を高める。そのうえで、共に日々の行動レベルでの目標を立てることです。目標を立てるだけでなく、都度振り返り、フィードバックも必要となります。
意識だけでは人は変われません。行動から変化を起こし、それを支えることが大切です。

一人ひとりのちからを発揮するには 応援

チームメンバーの自発性を生み出すには、安心や信頼関係といった土台の構築も必要です。
応援し支える風土が重要です。
チアガール
2015年にNHK Eテレで放送された「大心理学実験」でもリンゲルマンと同様の実験が行われました。
ボディビルダー(5人)においてもサッカー部員(5人)においても、やはり人数が増えるほど一人当たりの貢献力が減るという結果でした。
その後、ボディビルダーのチームをチアリーダーが応援。5人でも1人の時と同等の力で綱を引くといった結果になりました。
また、サッカー部員のチームに対しては、特定の一人だけの名前を呼んで応援。その応援された一人だけは手抜きをせず力を出すも、ほかの部員はさらに手を抜くという結果になったのです。
応援により社会的手抜きが消えるということが分かったと同時に、特定の一人だけを応援することは周囲の力を発揮させなくすることも分かったのです。

仕事においても上司やリーダーはもちろん、周囲のメンバーからの応援し合うことが、集団の中でも一人ひとりが実力を発揮し続けることにつながるのです。

仕事の責任や意義を理解する、行動レベルでの目標を定める。
仕事を進める上で、困ったときはすぐにいうことができ、お互いに応援し合える環境や風土がある。
一人ひとりが自立的に、やらされ感なく仕事をすすめていくために必要です。