昨今注目を集める「メタ認知」。「メタ認知」を考慮した研修や教育を実施する企業も増えており、仕事力をあげる重要な力の一つとして捉えられています。
今回はメタ認知とはそもそもどういったものなのか、昨今注目を集める理由、メタ認知そして心理的資本が高い人に見られる特徴や高め方についてもご紹介します。
メタ認知とは
メタ認知の「メタ」とはギリシャ語に由来しており「高次の」「超」という意味。「高次な認知」、つまり「認知を認知する」 (cognition about cognition) もしくは「知っていることを知っている」(knowing about knowing) というように訳されます。
客観的な視点で、知覚・情動・記憶・思考などの認知活動を認知する行動のことをいいます。
メタ認知とはアメリカの心理学者であるジョン・H・フラベル氏によって提唱されました。教育学や脳科学の分野で使われていましたが、近年ビジネスにおいても重要なスキルであると注目を集めるようになりました。
メタ認知の具体例とは
具体的に「メタ認知」とはどういうことでしょう。
「上司が厳しい。きっと嫌われているに違いない」
「同僚が冷たい。信頼を得られていないのだろうか」
自分の意図と反した人の態度や対応。自身や自身の行動が評価されていないと不安になりがちです。そういった不安を抱えたままでは、仕事に対するやる気も下がる一方です。
現状を抜け出し、不安を解消し、状況を好転させるにはどうすればいいでしょう。相手に自身の悪いところを聞くといったことも可能です。しかし、誰に対してもこの方法がとれるわけでもなく、また周囲に短絡的と思われかねません。自分自身の視点や考え方が正しかったのかを検証し、改善することから取り組む、これがメタ認知です。
自分が得意なことそして不得意なことを的確に認識。その上で「自分ができないことに対してどうするか」という問いに対して自分で答えを出します。
この能力が高い人ほど、仕事や勉強の能力が高くなるといわれています。
なぜ昨今メタ認知が注目を集めるのか
将来を予測するのが困難な状態であるVUCAの時代。変化が激しく複雑な今、変化を察知し、柔軟に対応していくためには、メタ認知が重要視されています。
これまで誰も経験したことが無いことが日常に溢れる昨今。答えが誰も分からない・答えが一つであるとも限らない場合、これまでと異なる視点や考え方が必要に。周囲の状況の感知、また情報に対する感じ方、情報収集の方法がこれまで通りでは、変化を見落としてしまうかもしれません。
慣例にとらわれず新たなアイディアを生み出すには、相互の多様化と多様性の尊重が必要です。
多様性を尊重、互いの違いを理解していくうえでも、自身の認知に偏りがないかを自分自身で意識することが求められているのです。
また、周囲の変化そして多様な価値観や視点に対する自身の認知をメタ認知することで、新しい発想や気づき、解を導くことへと繋げることができます。メタ認知を行うことで、自身の学習そして成長へと繋がるのです。
メタ認知が高い人とは
自分自身を客観視できるため、自分の得意なこと・不得意なことを適切に評価、自身で把握することができます。そのため、得意なことを伸ばす、短所を克服するといったことに取り組むこともできます。また、自分よりも周囲のメンバーの方がこの仕事に向いているといった判断をすることができます。
仕事上でミスをしてしまう、トラブルが起こるといった場合でも、なぜこういったことが起こったのか同じ間違いを犯さないためにはどうすればいいのかといったことを考える内省を行うことができ、今後のリスク回避にも繋げることができます。
多種多様な思考や価値観を受け入れることができ、多様な価値観を理解してメンバーを包容できる人のため、チームやプロジェクトを率いる立場に適しています。
メタ認知の能力が高い人は、客観的に物事を見ることができます。そのため自身と周囲との適度な距離感を図ることができます。周囲の人にとっても程よい距離感のチームワークで働きやすく、円滑な人間関係を築いて業務を進めることが可能です。また、自分らしさ、求められる役割といったことの自覚もできています。
メタ認知の能力が高い人と心理的資本が高い人には共通点があります。
メタ認知が高い人と心理的資本が高い人に見られる共通点とは~高める方法とは~
メタ認知の能力が高い人は、客観的に自身を捉えることができます。そのため、今後どうしていきたいか、どうありたいか、またどの程度の目標であれば達成が可能かといったことも認識することができます。
心理的資本でいう「Hope(意志と経路の力)」が高いということができるのです。このHopeとは、自分がどのような時に嬉しい、貢献できたと感じるのか、またどういったことが好きで、何に取り組んでいるときに達成感を感じるか等、自分自身のことを知り、向き合うことで磨かれていくものです。
同様に、メタ認知の能力が高ければ、自分の強みや弱みを客観的に認めることができます。これは「Resilience(乗り越える力)」につながります。
トラブルや問題が起こった場合にも、自身の特性を客観的に認識できており、トラブルや問題に対して行動、感情、心身の状態などを自身で調整しながら対処することができます。
客観的に自分の特性を知ること、そしてリスクを想定してどのように対応するか考えることで磨かれていきます。
また、メタ認知の能力が高い人は、起こった出来事に対して自分がどう考えているかということも客観的に捉えることができます。うまくいったことだけでなく、失敗したと思うことに対しても、違った視点から肯定的に捉え直すできる人は「Optimism(柔軟な楽観力)」が高いともいえます。
実際に起こった事柄や現実に存在する事柄は事実。そこに横たわる事実がひとつであったとしても、物事の解釈は無限にあり、どれを選ぶかはその人次第です。そのことを理解し、意識できるように日々内省を繰り返すことも、メタ認知の能力と心理的資本を高めるトレーニングとなります。
メタ認知を高めていくメリット
メタ認知には、肯定的なメタ認知と否定的なメタ認知といった2つの働きがあります。
肯定的なメタ認知。自身を客観的に把握し自身の働きを考える際に、そのメタ認知が問題解決や学習に対して友好的に働きます。
否定的なメタ認知。前向きな意を阻害してしまい、物事に対する嫌悪や不安という意識が生まれます。
振り返りを行った後に、今までの自身の行動をプラスに捉えることができれば肯定的なメタ認知、逆にネガティブに捉えると否定的なメタ認知となります。
メタ認知を高めるトレーニングを行うことで、思考を性格だからと諦めることなく、肯定的なメタ認知を能力の向上へと繋げることができます。
肯定的なメタ認知能力を身に付けると、業務に関する課題や困難に前向きに取り組むことができるようになるだけでなく、困難を解決する力や戦略策定力が向上します。
多様性を活かすことが不可欠となっている昨今、その違いを認め、ギャップを埋めるためのコミュニケーションが求められています。
相手との「違い」についての認知ができ、それらを埋めるための最適な方法を見出すことができます。メタ認知能力が身についていることで多様な物の見方ができるようになり物事を柔軟に受け止められるように。排除や非難といった方向には向かわず、コミュニケーションが円滑化します。
互いに違いを認められる環境を整えることに繋がり、新しいアイディアが生まれてビジネスチャンスが到来します。またコミュニケーション円滑に進み仕事の生産性がアップするといったことにも繋がります。
まとめ:「組織づくり」につながるメタ認知
メタ認知を意識することで、行うことの目的、今の取り組みや仕事、今後の成長等への意味を探求、見つけることが可能となります。
メタ認知そして心理的資本どちらも高めていくことが可能です。自立・協働・創造といった力をもつ人材育成へと繋がります。
新入社員や若手社員だけでなく、部下との関係を築く適切なコミュニケーションが求められる中堅、ベテラン層においてもメタ認知能力の向上が求められます。
どのように「メタ認知力」を育成するか。より良い組織づくりには 従業員一人ひとりのメタ認知能力の育成は必須ともいえるでしょう。
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