人材育成、人材の定着、部下の指導…管理職ともなると、とにかく「人」の課題に悩まされます。特にミドル層以上のリーダーたちは、「いまどきの若者にどう接すればいいか」が分からず、困る場面も多いでしょう。
そんなリーダーたちに問いたいのですが、あなたの部下とのコミュニケーションの取り方、そもそも合っていると言い切れるでしょうか。
何となく受け入れられてない雰囲気を察したうえでの、うわべだけの会話、多くないですか?
世間話はするけど、部下からプライベートは話してくれない…なんてこと、ありませんか?
部下が配属された最初のころに、何かまずい言動で「ひんしゅく」を買ってしまっていれば、それは致命傷。いまどきの若者の本音は結構辛辣です。良い機会があれば、あっさり転職してしまうし、上司が思うほど会社組織に執着はありません。
そこで今回は、若い部下との付き合い方に悩むリーダーに向け、「上司力」についてご紹介していきましょう。
多忙という言い訳は無用!リーダーに必須な『上司力』
少子高齢社会の到来、雇用形態の多様化、ビジネスのグローバル化などなど…変化し続ける時代の中で、“多様な人材がイキイキと活躍できる組織の開発”が急務となっています。同時に、年上部下やゆとり世代など、さまざまな世代や雇用形態、価値観を持つ部下を束ねる「上司力」の重要性も、ますます高まっています。
部下と同じ仕事をしていては、管理者とは呼べません。部下を理解し、信頼し、任せられる仕事は任せ、そこで生まれた時間で、業務の課題解決や経営層の補佐など、さらに重要な仕事に着手できなければ、リーダーとしての存在感は薄れてしまうでしょう。
しかし「プレイングマネージャー」という言葉があるように、現場にも出つつマネジメント業務をこなしているリーダーたちはとにかく多忙。日々の業務に精いっぱいで、自分の「上司力」を磨く時間が取れない…というのが現状ではないでしょうか。
上司力は、日々の業務の中で磨くことができます。わざわざセミナーに行ったり、本を読む必要はありません。
部下の本音とは?
業務の中で上司力を磨くには、自分自身の前に「部下」に注目してみることをおすすめします。ポイントをお伝えしますので、できることから実践してみてはどうでしょうか。
① いまどき部下には、理由を示す
ありがちなのは、『いいからやれ』という命令。しかしいまどきの部下は、自分が動くことでの付加価値や、なぜその仕事をするのかの、理由を求めてきます。良くも悪くも、そのストーリーに納得しないと動きません。
これからは、その業務で生まれる部下自身のメリットをしっかり伝えてみましょう。
理不尽な命令口調で、「つべこべいわずやれ」「さっさとやれ」と伝えるような、上司本位のやり方はもう通じません。さらに、部下からうがった見方をされると、「上司が上役に取り入るために、自分たち部下に仕事を押し付けているのではないか!?」なんて思われてしまうでしょう。
不満は口にせず、黙ったまま退職代行を使って辞める若者がいる時代です。そこまでではなくても、ある日突然辞表を提出し、「有休消化しまーす!」と権利主張をされるかも知れません。日々の業務の中で、いまより少し丁寧なコミュニケーションを取ってみましょう。
② やってはいけないポイントを知る
上司力の低いリーダーは、自分の行動がマイナスになっているとは自分では気が付かないものです。しかし部下たちは鋭く感じ取っています。
・比較しない
「昔はこうだった~」「俺の若いころは~」という前時代の話をされても、部下としては「時代が違う!」としか思えません。今、同じ時間を過ごす以上、昔話で心を動かせるとは思わず、同じ目線で会話を。
・うわべで話さない
うわべだけの言葉は、相手にも伝わってしまいます。部下の観察不足は、部下に「仕事の成果にも興味がないんだろう」と思わせ、手を抜かれる可能性も出てきます。心身の不調や、会話の内容などを観察するのも、上司の仕事。部下の様子に興味を持ち、適当な返事はしないことが大切です。
・若手のやる気をなくす言葉を使わない
わざとではなくても、「この仕事向いてないな~」や「やる気ある?」というセリフは禁句です。たとえ冗談であっても、相手をけなし、モチベーションを下げる言葉は使ってはいけません。言った上司は覚えていなくても、言われた部下は、その言葉を絶対に忘れないからです。
自分から積極的に自律した部下を育てる
さきほどの「やってはいけないポイント」を理解したら、次は具体的に部下にかかわっていきましょう。
① やる気にさせる
部下に深く考えさせ、やるべきことや問題に気付かせ、部下から提案が出るような環境をつくります。
その内容はお互いに共有し、相互理解を深め、そして行動へ具体化する仕掛けをつくれたら、チームはうまく回るようになっているはずです。
② 「考える」チャンスを与える
「やり方を示したほうが早い」と、何でも指示を出す上司がいます。しかしそれは、部下を単なるコマとして扱っており、部下のスキルも、自分の上司力も上がりません。
また、あなたのやり方がベストだったのは昔の話。もし部下が忠実に再現したとしても、最高で従来通りの成果しか得られませんし、新しい手法やアイデアは生まれません。部下を信じているなら、相手の答えを待つのも上司の務めです。
上司から具体的な指示がもらえない部下は、必然的に、常に自身で考えるというルーティーンになります。それを繰り返せば、自分で考えて答えを出す習慣が身に付きます。上司はそのサポート役に回るべきでしょう。
③ 欠点の克服ではなく、長所を伸ばす!
部下それぞれの「強み」を活かし、組織における「役割分担」の全体像をどうデザインしていくかが、上司にとって大変重要な仕事となります。できないことを叱責し、苦手分野にコツコツ取り組ませるだけでは、業務の効率も下がってしまいます。
それよりも、得意分野でとことん集中させてみるといった方針の方が、業績アップにつながるのではないでしょうか。部下の才能を見つけ、育てる力こそが、「上司力」といえるのです。
できる管理者は仕事の任せ方がうまい
上司力の高い人は、部下への権限委譲が得意です。
うまく権限を委譲して仕事を任せられるリーダーは、
1)部下に任せる仕事を示し、その理由を言う
2)部下に任せる範囲を明確に言う
3)部下に任せる能力があることを理解させる
4)部下の意見を聞く
という4つのポイントを網羅して、仕事を上手にコントロールしています。
部下を信じる以上、上司には覚悟も必要。初めての業務であれば、うまくいかないのが当たり前ですし、最終的に責任は上司にあります。しかし失敗を怖がっていては、部下育成などできません。権限委譲は、会社の規約などもあり、すぐには難しいかも知れません。しかし部下に仕事を任せ、責任を負える人を、「上司」と呼ぶのです。
まとめ:上司力はマネジメントを行うものの必須の能力
「うちの部下たちが、もっと自律・自立してくれたら…」と嘆いているうちは、あなたの「上司力」はまだまだ。
昭和時代のような、テンプレートな上司像を求める部下は、もういません。
責任を負い、最終の決裁権は持ちつつも、部下に権限を下ろし、任せ、成長させる。
そして、褒めるとこはガッツリ褒める。
そんな上司であれば、これからの若者だって、ちゃんとついてきます。
部下に、「ここは自分が成長できる組織だ」と認識してもらうこと。それができたら、離職率だって下がるはずです。居心地の良い会社、上司力の高いリーダーがいれば、誰だって組織に貢献しようと頑張るものですから。
上司が部下を育て、活かし、さらに一緒に学び成長する。
その姿勢を持つ人が、真の「上司力」の高い人なのです。