「ロートグループ総合経営ビジョン2030」の中で「Connect for Well-being」を掲げ、さまざまな事業分野でイノベーションを推進しているロート製薬様。
以前より自律した人材の育成を進めてこられていましたが、不確実性が高く予測が難しい社会状況を見据え、よりいっそうの社員のキャリア自律とWellbeingを支援するために、Be&Doが提供をする心理的資本を高めコア人材育成をするCareerGoals1on1(キャリアゴールズワンオンワン)の導入を開始されました。
「石垣」を組むように組織を作る
―この度は、弊社のCareerGoals1on1サービスを導入いただき、ありがとうございます!ずっと以前から、貴社は従業員の方のキャリア自律を非常に大切にしてこられていますよね。その理由ってどんなところにあるのでしょうか?
ロート製薬は、昔から一人ひとりを「ちゃんと見る」ということを大切にしている会社だなと思っています。
少し人材・組織作りについて話をしたいのですが、日本のこれまでの時代の組織作りって「ブロック塀」みたいに積み上げていく方式だったんじゃないかと思うんですね。例えばブロックが一つ抜けると、そこに似た経験を持つブロックをそこにはめる。一つ一つの形が違うと困るから新入社員をみんなブロックの形に育成していく、そんな教育制度にもなっていたんじゃないでしょうか。
でも私たちは、変化に柔軟に対応してイノベーションを生み出すためには「石垣」を組むように組織を作る必要があるんじゃないかと思っています。同じ形のものを積み上げたブロック塀と、多様な形をした石を自在に組み合わせて作られた多少隙間のある石垣と、どっちが強いの?って言ったら、石垣ですよね。弊社は社員一人一人の個性を尊重し、活かしていくということに他なりません。
でもこの石垣型でやろうとすると、経営陣や人事は一人ひとりをよく知らないとダメなんですよね。一人ひとりの自己申告をしっかり読み込んでやりたいことを知ったり、現場に出向いていって直接顔を見て話をしたり、そういう日常的な関わりを継続していくことが必要です。それを当社では会長自らやっていて、今でもほとんど社員全員のことを把握しています。手間はかかるけれども、そうした石垣型の人事・組織作りがこれからの多様な時代には必要じゃないかなとロート製薬では考えています。
キャリア自律っていうのは、個人の成長の根源だと思うんです。自分の人生に責任を持ち、絵を描く。自分の人生を豊かなものにするのは、誰かの役に立つとかそういった目標を持ってやっていくという自律がすごく大切です。組織と個人が、隷属とか従属ではなく対等に近い関係でいるというのがすごく大事じゃないかなと思います。
従業員が自律していく仕掛けや場作り
―2016年には、社外にも活躍の場を持つことを認める、いわゆる副業制度をスタートされました。積極的に会社が従業員の「やりたいこと」を認めて応援していくという新しい働き方に多方面から注目が集まりましたね。
はい。ロート製薬には、いわゆる副業ができる「社外チャレンジワーク」と、社内の複数の部署を担当できる「社内ダブルジョブ」という二つの制度があります。これは会社からの「倍速で成長するためにどんな支援が必要ですか?」という問いに対して、若手社員のプロジェクトから「ダブルジョブを認めてほしい」という声が出てきたのが発端です。通常だと、例えば35歳になるまでに、異動などがあってもせいぜい経験できるのは3部署くらいですからね、もっといろんな経験をして倍速で成長したい!という社員の声がスタートだったんです。
実際、社外チャレンジワークや、社内ダブルジョブをしている人は本業への貢献意欲も高く、さらにその人のいる組織は組織活性度が高いということがあります。個人に成長意欲があって、お互いに認め合って応援し合える組織になっている、という両方の要素が必要だということですが、こうした意欲ある人たちが企業を引っ張ってくれているんですよね。
さらに副業制度が始まって何が変わったか?というと、年に1回の自己申告の記入量が3~5倍になったんですよ。「私もチャンスがあったら何をしたいだろう?」ってみんなが考え始めたということだと思います。自分も興味のあることを見つけてチャレンジするぞ!という思考で20代を送るのと、ただ与えられる仕事をこなそうという思考でいるのとでは、見る世界が全然違ってきますよね。成長の差も明らかだと思います。僕ら人事の仕事っていうのは、従業員に「自律しろ!」って言うことではなくて、従業員が自律していく仕掛けや場を作っていくことなんですよね。
持続性のある企業の成長のカギは人
―2030年ビジョンに「Connect for Wellbeing」を掲げてWellbeing経営に取り組んでいらっしゃいますが、昨今の社会環境の変化なども踏まえて、人材育成について、どんなことを感じていらっしゃいますか?
コロナの前あたりから、AIの時代が来るとか、DXが…とかいろいろ言われていましたが、「やっぱり人だ」ということを強く感じています。当たり前の話なんですが、人工知能が何かしてくれるわけじゃなくて、そうした技術を生み、活用できる優秀な人がいる企業が結局発展していくわけですよね。その前の東日本大震災もですが、想定外の連続で未来は読めないという不確実性を考えると、「やっぱり人だ」という結論になるわけです。
従来のように一生懸命計画立てて、きっちり目標管理して予実管理をして…というのは、ある程度未来が予測可能という前提で成り立っているもので、その時代には効率よく従業員の生産性を上げてもらうのが大事だったのだと思います。でもこれからは予測不可能なんだという前提に立つと、会社だけに縛られずに、社会の一員として意識で考えられる社員をたくさん抱えることの方が重要です。
個人の成長の集積が会社の成長ですから、持続性のある企業の成長を考えれば、従業員一人ひとりのやりたいことや社会の役に立ちたいという意思と、会社が目指しているものが合致して仕事に没頭できる会社にしていくということです。だからこそ、従業員のWellbeingと企業が向き合わないといけない時代になってきたっていうことだと思います。
Connect for Wellbeingっていう言葉に込めているのは、とにかく繋がりを作っていきましょう、あなたには繋がりのブリッジ役をしてほしいから、もっと外の世界を見て、仲間を大事にして、そういう仕掛けを一緒にやりましょうっていうことでもあります。
スキルを身に着ける研修ももちろんいいのですが、社員の創造性とか繋がりを大事にして、そこからイノベーションが生まれるような環境とか風土づくりとかにこそ、企業は取り組まないといけないんじゃないかと思います。まだ売上と利益だけに目が向いている企業も多いですが、賢明な企業は「人が資本なんだ」と、気づき始めてるんじゃないでしょうか。
社内では支援しきれない「個人のキャリアと向き合うこと」
―今回、CareerGoals1on1をご導入いただいた背景にも、その「人が資本なんだ」というお考えがあったということなのですね。
そうです。これまでの会社は、これやれば給料上げるよ、そうすればモチベーション上がるでしょみたいなことをしてきたけれども、「幸福度」というような軸で考えてみると、正反対のことをやってきたのかもしれないなという反省も感じます。会社が思い通りに社員を教育訓練するのではなく、社員が自分で選択できるいろんな選択肢を会社が準備するという方向になっていかざるを得ないだろうなと思いますね。ある意味副業なんて100%その人の主体性ですからね、そういう従業員が主体性を持てるような仕組みを試行錯誤しながら作ってきています。
でも、もっと細かく一人ひとりを見ていくと、みんな人生の中でいろんなものと向き合って生きているし、個人個人違うわけですよ。いろんな多様性があるなかで、会社の中だけでは個人のキャリアと向き合うっていうことが支援しきれないんです。このCareerGoals1on1で、その社内ではできない支援ができるんですよね。社内では、なかなかプライベートな情報は聞きづらいですし、でも、プライベートも含めてのその人の人生、キャリアですから、そこをこうして第三者であるBe&Doにサポートしてもらうというのは非常に重要だと思っています。
さいごに
―今後の人づくり・組織づくりについて、どんな展望をお持ちですか?
これまで新入社員の研修は、1ヶ月集合研修を実施して5月に配属してOJTをするという流れだったんですが、コロナなどでつながりが分断されがちなことを受けて、今年からは研修期間を約11ヶ月にしたんです。本人の経験分野に関連のないところも含めて3つの部門に3か月ずつ短期配属して、いろんなことをやってもらうという形にしました。社内の「繋がり」を増やすためでもあります。社内で仲間を作るということ、そして新人の新鮮な視点から何か一つ役に立ってくるという体験をしてもらう。そういう繋がりを大事にしながら、将来この会社を支えてくれる人たちを育てていくという風に研修の仕方一つも変えていっています。
そうやって社内でできる仕掛けはどんどんやっていきますが、社内ではできない隙間の部分をCareerGoals1on1でサポートしてもらうことで、そこには会社の知り得ない個人の素晴らしい情報の宝庫があるはずなんですよね。そこから見えてくるアドバイスなどをBe&Doからフィードバックしてもらいつつ、連携してもっともっとWellbeingな組織を目指していきたいですね。
―河崎さん、ありがとうございました!