Habi*do通信

やる気は、やり始めることによって起こる~ニューロサイエンスの視点でやる気と生産性を考える

どんな目標を立てましたか?

年末年始や、月末月初。何かを新たに始めようと目標を立てる方も多いはず。

「よしやるぞ!」と目標を立てることで“やる気”が高まったと感じるという経験はありませんか?
これは実はやる気があるから目標を立てたのではなくて、“目標を立てる”という行為をしたことでやる気が高まっているのかもしれません。

でもそのあと、何も行動しなければ、どんどんやる気が減退してしまう。
このような経験も少なからず経験された方はいらっしゃるはず。

どんな小さなことでもいいので、目標に向かって行動をすることで“やる気”は高まっていくのです。

やる気は、やり始めることによって起こる

例えば、笑ったとき、“楽しいから笑った”と感じますが、実は逆で、“笑った顔になったから楽しい”と感じているのです。実験で、笑顔に似た表情をつくるだけで楽しい気分になることもわかっています。
脳にある入力(感情や感覚)と出力(行動)では、出力のほうが重要だと言えます。ですから、やる気にかにしても同じです。やる気が出たからやるというよりも、やり始めたからやる気が出るのです。面倒だなと思っても、やり始めることが大事。家事だけでなく、仕事も勉強も同じです。やり始めたら次第に気分が乗ってくるはずです。
「何ごとも始めた時点で、もう半分終わったようなもの」と言われているのですよ。

太陽笑顔fufufu 2018Winter Vol.31 「脳があなたを悩ませる!困ったときの、脳科学。」より

脳の健康や老化について研究をされ、神経生理学を専門にされている脳研究者、東京大学の池谷裕二先生によると、脳科学的にも研究で明らかになっているそうです。

医学的側面だけではなく、人材開発・人材育成・学習の分野でも脳科学(≒神経科学)の分野は近年注目を集めています。世界的な人材開発・組織開発会議のATDでも数多くのセッションが設けられています。脳科学・神経科学がいかにパフォーマンスに影響するのかという視点で研究され、単なる根性論や気合や感覚的なものではなくしっかりとしたエビデンス(証拠)が科学的に解明されているのです。

ひとりひとりが「やってみよう!」と、まずは行動をしてみることで自然とモチベーションが高まります。これらは、心理学的な視点でも既に相関がとれていることなのです。

モチベーションは行動変容につながらない。自己効力感はつながる。

監修:大阪大学大学院経済学研究科 開本浩矢教授

目標を達成するためには、行動変容を起こし、良い行動を習慣化させることが大きな鍵を握ります。モチベーション(≒やる気)が高いということは行動変容にはつながりません。様々な調査研究がされていますが、相関がとれないそうです。

一方で自己効力感(Self-Efficacy)が高まることで行動変容につながるということは、調査研究で相関が確認されています。

自己効力感を高めるために、最も効果的な要素が「達成体験」なのです。それはどんな小さなことでもよいのです。達成体験を積むことで「自分にもできそうだ」「私ならできる」という自己効力感が高まり、行動につながります。つまり結果として「モチベーション(≒やる気)」が高まるというように見えるのです。

脳科学・神経科学(ニューロサイエンス)は職場のチームの生産性にも

心理的安全性の高い職場とは?

脳科学・神経科学に基づくテクノロジー活用もすでに始まっています。そして日常の職場にも実はその波が知らず知らずのうちに入っているかもしれません。

近年ますます「ニューロサイエンス」に関する研究が盛んになってきたことで、脳機能と人間が行動する環境との間に、有意な相互関係が存在するという証拠が多数提示されています。自然な脳機能の活動を支援する体制を組織として整えることによって、企業活動がうまくいくことは明らかです。そうすることで最終的に売上が増し、健康が増し、パフォーマンスが向上します。(中略)労働環境を考えたときに、人間的に振る舞える場所にする必要があります。生産性を向上させる最も確実な環境は、労働者自身が積極的で安全でリラックスしていると感じる場所です。そのためにも、ふさわしい環境を構築するとともに現状がどうなっているのかを知らなければなりません。従業員一人ひとりの脳がどんなふうに機能しているのか、どんな思考プロセスなのか、何がパフォーマンスを向上する原動力になっているのかを測定、把握することが第一のステップとなります。

「学習する能力」を科学する「ニューロサイエンス(神経科学)」とは ~脳の学び方を知り、職場のパフォーマンスを高める(日本の人事部)

Neuro-Link社創設者、CEO アンドレ・バーミューレン氏のインタビューによれば、1人1人のパフォーマンスだけではなく、職場全体のパフォーマンスにも大きく関わるものと伝えています。

彼のインタビューからわかることは、Googleが社内で実施したチームの生産性に関する実証研究(プロジェクトアリストテレス)にてわかったハイパフォーマンスチームの共通点「心理的安全性(PsycologicalSafty)」が高いチームという結果もうなずける話です。

1人1人がパフォーマンスを高くする行動変容をとげるには、前述の達成体験だけではなく、周囲の同僚や仲間のがんばりを目にすることによる「代理体験(あの人ががんばっているなら私もがんばろう)」や、「言語的説得(あなたならできるよ、すごいね、よくやっているねというような声がけ)」や、「生理的情緒的高揚(ドキドキわくわくするような感覚)」も効果的だと言われています。

つまりチームや仲間の存在はとても重要なのです。そのような場や環境づくり、関係性づくりをするということは、企業経営においても、マネジメント上でとても重要な課題になるでしょう。