上司と部下が、一対一で対話する1on1ミーティング。
シリコンバレーでは1on1ミーティングが当たり前に行われており、日本でも定着が進んできました。1on1ミーティングをテーマにした書籍も数多く出版され、ビジネス界隈ではもはや当たり前の言葉になりつつあります。
しかし、「取り入れてみたけど、意味がないのでは?」と感じている方が多いようです。ネットで検索すると、「1on1ミーティング 無駄 意味ない」というワードがたくさん見つかります。
今回の記事では、1on1ミーティングの必要性と、あり方について述べていきます。1on1ミーティングは本当に、無駄な時間なのでしょうか。
すでに導入している方も、これから導入を検討している方も、ぜひ一緒に考えてみてください。
目次
目的のない1on1は、確かに無駄
「1on1ミーティングなんかやっても時間の無駄だよ。そもそもなんでやる必要があるの?部下の気持ちとか全然知らないし…。いろいろ聞いて煙たがられるのも嫌だしな〜。」
こうした思いが強くなっている上司の方、いらっしゃるのではないでしょうか。この状況にある意味納得する部分もある、といった感想をお持ちの方も多いはず。
1on1ミーティングは時間がかかります。1人30分の設定であれば、部下の数×(かける)30分の時間がとられていく。実務もあるのに、そんな時間は無駄だと嘆く気持ちもよくわかります。
そういった疑問や不満を抱えながら、「決まったからやっている」のであれば、確かに意味はないでしょう。
無目的の状態で続けていては、上司にとっては時間の無駄でしかない。部下もなぜ呼ばれるのかわからない。そうして歯車がどんどん噛み合わなくなれば、会社全体への悪影響につながります。
しかし、1on1ミーティングを行う目的が明確であれば、必ず意味が生まれます。もし、チームにおける1on1ミーティングの目的が曖昧なら、まずはそこから考えていきましょう。
1on1ミーティングを行うメリット
「1on1ミーティングは意味ない、無駄」という声があるのは事実。とはいえ多くの企業が1on1ミーティングを取り入れているのは、効果的だったという成功事例があるからこそ。メリットを理解しておけば、取り組みやすくなります。ここでは3つのメリットについて見ていきましょう。
1.上司と部下の信頼関係構築
2.上司・部下の自己成長
3.会社の評価がわかる
1.上司と部下の信頼関係の構築
話をする機会が増えれば、徐々に信頼関係が築かれます。定期的な会話の中では、仕事だけでなくプライベートの話も出始めるでしょう。ちょっとしたことですが、上司と部下の絆が強くなれば、組織全体にもよい雰囲気が生まれていくはずです。
2.部下の自己成長
上司が的確なフィードバックを送れば、部下には自発的に行動する力が身につくはずです。ただし曖昧なフィードバックではマイナスに働くことも。上から目線の一方的なアドバイスでは、受け入れられない可能性もあるので注意しましょう。
3. 会社の評価がわかる
1on1ミーティングは、社員が自分たちの会社をどう見ているか、知ることができる場でもあります。
会社ビジョンの浸透度合いやロイヤルティーを測れたり、部下からの改善案が得られることもあるでしょう。会社を最も客観視できるのは、経営者や管理者ではなく社員です。会話から新しい気付きが生まれれば、現状理解や仕組みの見直しにも役立つはずです。
組織の課題は「病気」に似ています。病気の原因どころか、自分たちが“病”にかかっていることすら気付けない組織は、病んだまま。病気は早期発見・早期治療が一番です。1on1ミーティングは、「健康診断」と同じくらい、組織の健康維持に役立ちます。
1on1は部下のための時間と割り切ろう
ここでもう一度、1on1ミーティングの初期導入時の目的を思い出しましょう。
マネジメント活性化のためですか。それとも、とりあえず経営層が「やってみろ」といったからでしょうか。
多くの場合、1on1ミーティングの導入目的は、「部下の自己成長」にあります。日本で「1on1ミーティングの先駆け」として知られるヤフー株式会社は、1on1ミーティングを「部下のための時間」として割り切って活用しているようです。つまり、1on1ミーティングは上司からのアドバイスを与える時間ではなく、部下の仕事状況や悩み、将来どうなりたいかなど、話をしっかりと聞く時間だと定義しているのです。
あなたの会社の1on1ミーティングに目的が定まっていないなら、まずは「部下のための時間」と定義づけるところからスタートするのもいいと思います。部下の成長は、組織にとっての成長です。部下が成長すれば、中間層も負けないようにと頑張り、その結果、会社全体の活性化につながるはずだからです。
そのフィードバック、1on1ミーティングに必要ですか
「1on1ミーティングで、部下が自己成長してくれるなら、そんな楽なことはない」
そう思う上司の方、1on1ミーティングを部下のために使えているか、まずは振り返りましょう。
自己成長には、自ら考え、自分なりの答えを見つける力が必要です。上司からの「こうしたらいいんじゃない?」「もっとこうやればうまくいくのに」といったアドバイスから生まれるものではありません。
「じゃあフィードバックはしなくていいの?話を聞くだけでは、何の解決にもならないのでは?」と思われたかもしれませんが、そもそもフィードバックとは、上司がアドバイスを伝えることではありません。主観的に決めつけず、見たまま・聞いたまま・感じたままを伝えることがフィードバックです。
そして、伝え方でその印象は大きく変わります。
フィードバックについては下記の記事で詳しく解説しているので、そちらも参考にしてみてください。
その1on1ミーティング、1to1ミーティングになっていませんか
1on1ミーティングと似て非なるものに、「1to1ミーティング」があります。これは上司が部下の仕事の進捗を知るためや、部下の働きを評価するために行われるミーティングです。内容は主に、仕事の情報交換や情報共有になります。
1on1ミーティングがしたいはずなのに、中身は1to1ミーティングになっている…という失敗事例をよく聞きます。部下の話より、上司の質問に部下が答える。そこに上司がアドバイスをするという、「上司のための時間」になっていては、1on1ミーティングの意味は損なわれます。
時間が無駄になるだけではなく、部下との対立が生まれる可能性もあります。部下からすればそれは「望んでいないミーティング」。望んでもいないのに定期的に上司からあれこれ指摘されるのは嫌ですよね。
もし、そのようなミーティングに心当たりがあるなら、もう一度目的に立ち返って考えてみてください。目的を見失わなければ、おのずとミーティング内容は改善できるはずです。
1on1ミーティング 会話の相手は、上司に限らなくていい
「どうしても、この部下とはウマが合わない」「2人だと話しづらい」といった声が部下から上がっている場合。直属の上司ではなく、他部門の人と組み合わせるのも1つの方法です。
ソフトウェアを提供するロゴスウェア株式会社が取り組んでいる1on1ミーティングは、「いつでも、誰とでも、何についてでも、1対1で話し合える」という仕組みになっています。普段は、直属の上司と1on1ミーティングしますが、時には社長や他部門のマネージャーと話す機会もあるようです。
上司と部下の関係改善から手を付けなくてはいけない状況。まずは上司以外でも話せる環境を作る、目線を変える方法を検討することも大切。最も重要なのは、現場にとって負担にならず、部下のモチベーションを下げずに行うこと、です。
まとめ:1on1ミーティングを無駄にしないために
すでに1on1ミーティングを会社で取り入れている方は、今一度自分たちの1on1ミーティングについて見直してみてください。
3回、5回と経験を積み重ねていけば、上司・部下の両サイドから改善案や「やってよかった」という声が出始めるはず。そして部下のほとんどからネガティブな声しか上がってこないのであれば、その1on1ミーティングは、目的を見失っていると考えられるでしょう。
上司にとっても、部下にとっても貴重な時間です。1on1ミーティングを、組織の活性化に十分に役立てられるよう、工夫をしてみてはいかがでしょうか。