Habi*do通信

【開催レポート】キャリア自律の時代 ー 組織 × 個人の「学ぶ力」「変わる力」トークライブ 人の力で業績を伸ばす~心理的資本セミナーVol.14

昨今、キャリア自律が叫ばれている背景には、「人生100年時代」の到来を見据えた様々な状況の変化があります。従来のようにみんなと同じレールに乗っていればよかった時代から、個人も組織も答えのないチャレンジをしながら、多様な働き方やキャリアを構築し、ともに成長し続けていく必要性が高まっています。

とは言え、そういった変化の必要性は感じながらも、そう簡単には変われないと感じている人が多いのではないでしょうか。どうせ無理・・・そんな諦め層の人材を成長させ、組織を変えることはできるのか?人や組織が本当に「変わる」ことができるのか?キャリア自律の時代に個人が「学ぶ」意味とは?

今回の「心理的資本セミナー」では、『「終身知創」終身雇用から終身知創~常に学び続ける新しい生き方~』の執筆者である名久井康宏氏と上野正之氏の2名をお招きして、個人が学び続ける意味と、組織力を高めるための組織開発事例をご紹介いただきながら、どうすれば真にイキイキと幸福な組織・人材づくりができるのか?「学ぶ力」と「変わる力」をどうすれば引き出すことができるのか?本音で議論しました。

パネラー紹介

  • 名久井 康宏 氏(画面右上)
    綿半ホールディングス株式会社 経営戦略室
  • 上野 正之 氏(画面下)
    JFEスチール株式会社 組織人事部 制度企画室長/ダイバーシティ推進室長
  • 石見一女(画面左上)※モデレータ
    株式会社Be&Do 代表取締役

はじめに

石見
石見
今日は「終身知創」の著者のお二人をお招きしています。この本は多摩大学の徳岡幸一郎先生のご指導を受けた方で出版されたということです。実務家の方がまとめていらっしゃるので非常に実感を持って読めるのが私自身とてもおもしろかったですし、現場を知っている方だから書けるものだなというのを感じました。
今日はぜひ書きながら感じたこと見えてきたことなども率直に教えていただきたいなと思います。まずは、お二人に自己紹介と、この本で執筆された内容の概要について教えていただければと思います。
名久井
名久井
はじめまして、綿半ホールディングス株式会社の名久井と申します。仕事としては、経営戦略室ということろで組織開発や人材育成を横断的にやっていますが、今日お話する内容は、個人として研究してきたことなので、所属企業とは全く関係ないということは最初にお断りしておきます。
本の内容で1番伝えたいところは「ミドル世代の学び直し」です。学び直しましょうって言われたときに「わかっちゃいるけど」っていうのがあると思うんです。このキーワードを聞くと僕は結構燃えるんですね。この「わかっちゃいるけど」っていうところを掘り下げました。
具体的には2点ありまして、まずキャリアオーナーシップーこれはキャリア観とも言われますが、このキャリアオーナーシップを持っていても学び直し行動には繋がらないということです。「意識してます」「気合いだ」という精神論では学び直しは続けられないということを生々しく書きました。
で、これだけだとあまりに寂しい話になるので、じゃどうしたらいいの?というのも統計的に計算して2つ阻害要因を見つけました。その中で、個人と組織、またはコミュニティができることを考えていった方が、学び直しをコストからインベストメント(投資)としてと捉えられるのではないかなと思っております。
石見
石見
ありがとうございました。ぜひコミュニティの話を突っ込んで聞きたいなと思っております。では上野さん、よろしくお願いします。
上野
上野
みなさんこんにちは。上野と申します。私は、JFEスチールで人事関係の仕事をしております。今回の本では、製鉄所で働く人がよりやりがいや働きがいを持てるような組織にするにはどうすればいいんだろう?と、あの手この手を使って働きかけをしてきた組織開発の手法、実践の経緯と、その背景になる理論などもまとめました。
本の中で伝えたかったのは、the日本企業という古い歴史のある製造現場であっても、何か働きかけをすれば個人も組織も変わっていくんだよということです。それと、組織開発の実践事例がなかなか表に出てこないので、「組織を良くしていきたい!」と思っていらっしゃる方の参考になればという思いもあって、結構生々しく書かせていただきました。これがすべて正解だとは思っておりませんが、この本を読んで何か掴んで活かしていただけたらなと思っております。
石見
石見
上野さんが仰ったように「組織開発をやっています」という声はちょこちょこ伺うんですが、それで何か形になったものを示せるかというと、みなさん口を濁されるというのが今の状態じゃないかなと思っています。そんな中で上野さんがまとめられたものを見ると、なるほどこういうやり方をやればいいのかとか、こういうところで検証していけばいいのかとか、すごくわかりやすいのでぜひ組織開発で悩んでいらっしゃる方にはお読みいただけるとたくさんヒントがあるのかなと思っております。
というところで、まずお二人に質問なのですが、この「終身知創の時代」を出版された背景や想いをお聞きしたいのですが、名久井さん、何がきっかけでこれができたのでしょうか?
名久井
名久井
大きなきっかけは、2017年から2019年まで行っていた多摩大学大学院で書いた修士論文が元になっております。書いた内容が価値のあるものだと信じていたので色んな人に伝えれられないかなということで本にすることになりました。
石見
石見
その論文のテーマに「学び直し」を選ばれた理由は何か想いがあるんでしょうか?
名久井
名久井
実は10年以上前からの強い想いがありまして。社会人になって、みんなが学ばなくちゃって言うけれど、でも実際学んでいる人、学び続けている人ってどれくらいなんだろう?学び続けるための力って何なんだろう?って、いろんな方々と対話をしてきていたんですね。
僕にとっては学び続けるっていうのはとても自然なことなのですが、僕がただ好きで学んでいるだけなんだろうか?学び続けるのは本当に効果がないのか?ということを探索しようと思って書き始めました。
石見
石見
なるほど。たしかに学びは大事だと言いますし、学びたいという欲求はあるとみなさん言いますが、じゃあアクションしているのか?と言うと、なかなかそうではないというのはなぜなんだろうって、実務家ならではの視点ですね。また後ほど教えてください。
では上野さん、この本を執筆された背景や想いをお聞かせください。
上野
上野
はい、背景は先ほど名久井さんがおっしゃってくださったように、卒業生の中で声をかけていただいたというのが入り口なんですが、自分が取り組んできた体験を形にして、読まれた方が少しでも勇気とか参考になったらいいなという想いで、何か実践の知恵を形にできればいいなという想いで書きました。

ミドルの学び直しはなぜ起こらない?

石見
石見
では、名久井さんのテーマのことをお聞きしていきたいのですが、ミドルの学び直しへの投資意欲が低いことについて、いろんな仮説を丁寧に検証されていますが、名久井さんが「なぜこの人たちは学び直ししないんだろう」と感じられたのは何だったんでしょうか?
名久井
名久井
まず、この本で取り上げた「学び直しの場」は、国際比較をしようと思って「大学院」としています。ミドル世代の学びへの投資意欲については低くはないと思います。ただ本当に投資をするかどうかと言う点では色々モヤモヤした気持ちがあるのかなぁと思っております。
よく上がる声は、「時間がない」「お金がない」「俺の世代はそうじゃない」「業種はそんなに変化が早くない」といった答えです。他には、学生時代の学習スタイルです。今まで受身で学習してきたから大人になってもそれが続いていくんだと言う方もいらっしゃいました。そういった声から仮説モデルを作りました。
大きく分けると、学生時代の学習スタイルが大人になっての大学院での学び直しに影響を与えているのかという問題と、社会人になってからのキャリアオーナーシップの2つです。キャリアオーナーシップという考え方は今広がってきていますが、プロティアンキャリアやバウンダレスキャリアーこれは、境界線を超えるという意味なんですが、そういうキャリアオーナーシップを持っていたら、人は学ぶのか?ということを確かめたいと思いました。
また、学ぶのか?という一歩手前に、行動経済学の研究から阻害要因が2つありそうだということがわかりました。学び直しに対して阻害要因が働いているかかどうか?という先行研究はあまり見つからなかったので、実際にキャリアオーナーシップと阻害要因、実際に学び直したのか?を一気に聞いてみました。
石見
石見
先端的な研究だったわけですね。結果、キャリアオーナーシップとは関係があったんですか?
名久井
名久井
当初僕は、キャリアオーナーシップを持っていたら阻害要因があったとしても、それを乗り越えて学び直すだろうと考えていたんですね。ですが、キャリアオーナーシップを持っていても、2つの阻害要因どちらかに邪魔をされて学び直し行動が起こらないということが統計調査でわかりました。
だからこそ、冒頭でお話しましたが「精神論ではダメよ」ということなんですね。人事や周りの人が、学び直しは大事だと言って働きかけたとしても、世代にとって発達段階があって阻害するものがあるんだということです。
石見
石見
そうすると、学び直すきっかけを自分のでどのように見つけられるか?がすごく大事ですね。
上野さんにお聞きしたいのですが、周りの方で大学院とか、大学院まで行かなくても独自の独自の学びの場を持っていらっしゃる方って多いんでしょうか?
上野
上野
私の実感値としては多くないんじゃないかなと思います。ただ何か一歩踏み出さなきゃと思っている方はとても多いとは思います。最初にどの一歩を踏み出したらいいのか、そこに悩まれているのかなという方は多いですね。
その最初の一歩をはコミュニティでもいいし、大学院や、NPOで何かやってみるとか、副業やってみるとか色んなものがあると思うんですが、その手前のところで足踏みされている方が多いかなと思います。

学び直しにおけるコミュニティの活用、「お試し越境」について

石見
石見
確かに、学びたいけど学び方がわからないとか、大学院に行くのは時間もお金もかかるので覚悟がいるような気がします。その一歩手前の学びの場、学びを引き寄せる場があればもっともっと広がるのかなという気がするのですが、名久井さんが冒頭でコミュニティの話をされていたのはこの辺のことでしょうか?
名久井
名久井
コミュニティって広い概念なので、例えば所属する組織でも仕事じゃない関係性もあると思うんですよね。そういうのが大切じゃないかなと思っています。先ほど石見さんも何を学んだらいいのかとか、学び方の話をされていましたが、ラーナビリティっていう言葉もあって、学ぶっていうのは実は能力なんですよ。
そこをコミュニティに紐づけてシミュレーションで計算したんですけど、誰と学ぶかということの方が、実は何を学ぶかよりも大切だっていうことがわかったんです。石見さんや上野さんがおっしゃてたように、キーワードは「お試し越境」なんですよね。お試しで越境すると考えると、いろいろな会社やボランティア、NPOやNGOに参画してみるとかいろんなことがあると思うんです。
その中の出会いのなかで、知らないことがわかったり、いろんなことが生まれてくる。そうすると、学ぶのは実は手段だということに気づいて、学んだ先の目的を持てるようになるんじゃないかなと思っています。
石見
石見
「おためし越境」すごくおもしろい視点ですし、今は会社の中でも他の業務も兼業しようとか、そういうことも学びの一歩になるかもしれないですよね。
あと、この本の中で「ミドル世代は一人でキャリアを考えてはいけない」とも書かれているのが興味深いのですが、なぜミドルは一人で考えたらダメなんでしょうか?
名久井
名久井
1つはダグラスホールという方が言ってるんですね。プロティアンキャリアについて1976年に本を書いている人ですが、2002年の本の中にプロティアンキャリアは大切だが一人で進めていくには難しいと書かれている部分があるんです。
そこから僕が考えたのが、一人で学べないのであれば誰かと繋がればいいってことです。一人で考えると自分の世界になるのでコンフォートゾーンというか自分の認知の中にとどまってしまうので、やはり外に出ることで新しい化学反応があると思うんですよね。ですのでやはり人との対話はすごく大切だと考えています。
石見
石見
なるほど、キャリアって誰かに自分の能力に対してフィードバックがあることで客観的に見られる気がするんですが、ミドルになるとフィードバックを受ける局面ってなかなか少ないですよね。上野さんどうですか?
上野
上野
そうですね。たしかにミドルになると機会は少ないですね。今は365度評価など下からのフィードバックをもらいますが、いずれにしても結局組織の中のフィードバックなので、名久井さんのおっしゃっていた越境だとかコンフォートゾーンから出る一歩にはなるのかはちょっと疑問ですね。

成果の出る組織開発の進め方とは?

石見
石見
では次に上野さんに聞いていきたいんですが、組織開発って本当に大変だと思うんですが、JFEスチールさんで組織開発のきっかけは何だったんですか?
上野
上野
もともとのきっかけは、当時私が人事課長に着任したときに、会社として働き方改革はやっていて、でも、結構傷んでいる職場が事実あったんですよね。いろいろやってきたけどなかなかうまくいかない、そんな相談を受けたときに、組織開発っていう手法があるのでちょっとお試しでやってみませんか?という感じでスモールスタートしました。1つの職場と私のいた人事部門の2つでスタートして、ある意味草の根的に始めたものなんです。うまくいかない課題があるなかで藁をも掴む感じで始めたのが、この「バインディングアプローチ」という手法でした。
石見
石見
組織開発をしようとすると戸惑う反応が出ることが多いかなと思うのですが、そこでやってみようとなったのは部門のトップの方のコミットが強かったのでしょうか?
上野
上野
幸いなことに私の上司であるその製鉄所の部長が、自身も色々思うことがあって何かやらなければいけないなと思われていたので、そういう意味では理解のある、問題を問題だと思っている人がトップにいました。
石見
石見
そこが大事ですよね。そこを束ねる方がこれをやらないとダメだぞという腹の括り方がないとうまくいかないと思いますね。
ここで名久井さんにもお聞きしたいのですが、いろんな組織を見られていて組織が変わる時って、一番どこが意欲を持たないと変わらないものでしょうか?
名久井
名久井
僕はミドルリーダーが鍵かなと感じています。役職がついてるかどうかは実はあまり関係ないかもしれません。そして大切なことは、イシューセリングという考え方があるんですが、イシューを誰にセリングするかという、誰と一緒にこの課題を仲間として解決したいか?っていうのが大切になると思っております。
石見
石見
上野さん、そういう意味ではイシューセリングがあったということですかね。
上野
上野
そういう意味では、私にもありましたし上司にもありました。その製鉄所を統括をしている役員にもあったし、それが全部繋がったんですね。トップ、ミドル、あとは最前線で働く人の中にもそういう方がいて、トップの変えたい仕組み、あとはボトムの力をどうやって合わせていくかっていうのがキモでした。問題だと思う人がどこにいるのかということと、まずは思っている人だけで始めるってとこですよね。

組織開発を成功に導く共通言語の作り方

石見
石見
この本の中に「ビジョンの問題 10の壁」っていうのが出てきて、それをまず整理されてからいろいろ紐解いていかれているのですが、ちょっと読み上げますね。・策定の壁・確信の壁・伝達の壁、これが導入のときですよね。次に問題になるが、・記憶の壁・仕事の壁・挑戦の壁・基準の壁・援助の壁・反省の壁、最後は信頼の壁。この10の壁をみなさんに共有した時はどんな感じでしたか?
上野
上野
10の壁の話をすると、みんな「あるある」「そうだよそうだよ」って言うんですね。やはり組織開発で大切なのは共通のストーリーを共有することがポイントかなと思います。そういう意味でもこの10の壁っていうのは共感するのでわかりやすいですね。
石見
石見
そういう共通のストーリーをみなさんで持ちながら取り組まれたのがバインディングアプローチってう新しい組織開発の手法だったわけですが、これについて教えてもらえますか?
上野
上野
多摩大学の荻阪哲雄先生が提唱されている考え方で、その先生にご指導いただきながら始めました。ともすれば組織開発って、変えようとするトップダウンでやることが多かったり、もしくは職場で問題だと思った方が草の根的に始めたりすると思うんですけど、そうではなくて、その両方のアプローチするということです。組織のトップとボトムが一緒に作ったビジョンをもとに組織をよくしていくためにみんなでやっていくという。なのでやらされじゃないんですね。そこはひとつ大きなポイントかなと思います。
石見
石見
本の中で「やらないことを決める」ってありましたが、それをな徹底するのってなかなか難しいじゃないですか。それはどういう形で進めていかれたんですか?
上野
上野
ビジョンを作るのと合わせて「やらない戦略」というのを作ります。やらないことを決めることで結果的にやることがでてくるんです。そこは相当な時間をかけて、長いところだと半年くらいかけますね。そのプロセスに関わるほぼ全員に関わってもらう策定なので、だからこそ自分のビジョン、自分の戦略になるし、腹落ちするまで関わっていきます。でも確かに「やらない戦略」は難しいです。
石見
石見
難しいですよね。でも、この「やらない戦略」をしっかりさせたことが、組織開発の共通の言語にもなったのかなと感じたんですが。
上野
上野
共通の言語にするために、クレドカードに近い形で、ビジョンと「やらない戦略」を書いたカードを作りました。それは、仕事の中でビジョンと「やらない戦略」を行動の基準にするためです。ついつい忘れてしまうので、人によってはPCの見る画面に貼っている人もいましたね。
石見
石見
そこまで徹底して意識づけできたということで8割成功ですよね。
上野
上野
はい。それができたところはうまくいきますし、逆にそのプロセスがうまくいかなかったところは進まなかったです。大きなビジョンと小ビジョンが作れたところはうまくいきましたね。結構、濃淡はありました。
石見
石見
組織開発の取り組みの成果はどうか?と聞くと、一様にみなさん口を濁されるというところがあって、何が成果かを示しにくいものだとは思うのですが、上野さんが思われる成果とはどんなものですか?
上野
上野
私が1番変わったと感じるのはそこの空気感ですね。心理的安全性が生まれている職場になっていくなかで業績も上がるし、退職率も下がるし、ストレスチェックの数値も下がるし、その相関はなかなか証明はできないんですけど、後から数字はついてきたりしますね。
石見
石見
それは組織開発を進めている人にとってはものすごく心強い話だと思います。みなさん、こんなことをしても数字は上がらないというような妙な圧力で途中でうやむやになってしまうっていうのが、組織開発がやりきれないところだと思うんですけど。
上野
上野
時間かかりますしね。激的なものではない漢方薬みたいなものなので、後戻りしたりもします。それはそういうもんだと思います。
石見
石見
今は成果もお話できるようになったと思うんですが、途中でへこたれそうになったことはありますか?
上野
上野
それは日々毎日ありましたね。まさに仰ったようになかなか結果が見えないとか時間がかかるということもあります。全体の方で一生懸命やっていても足元の方でうまくできていなかったり、じゃあそれはどうしてかって言うと、職場のリーダーである私がそういう働きをしていなかったということもありました。日々いろんな角度から、悩みながらやっていましたし、組織開発をしている方は悩みは尽きないんじゃないかなと思いますね。
石見
石見
そうですね。これが正解というものが明確ではないし、すぐに成果が出るものでもないので、そこは非常に悩まれると思うのですが、成果がある程度見えるところまで引っ張ってこられたというところが大きな成果ですよね。
上野
上野
やはりスモールステップがいいと思うんですよね。ともすると大きなところから始めちゃうんですが、これはやはりなかなかうまくいかない。スモールステップで実績を作って、時間をかけてやっていく方が仲間も増えます。
石見
石見
結局仲間作りですよね。そこに引き込んでやっていかないとうまくいかないでしょうね。

質疑応答 ”身近に始められる学び直しとは?”

「身近に始められる学び直しってどんな例があるのでしょう?コストをあまりかけずにできる初歩的なことってありますか?」

名久井
名久井
僕は大学院に行くまでに10年ほど悩んだりしていましたが、コストっていうのは、財務的に見えるコストではなく、行動経済学で言うところの取引コスト、心理的なコストなんですよ。
そうした心理的な壁をどうやって超えたらいいかという質問に置き換えさせていただくなら、例えば何かの説明会に行ってみるのもいいですね。説明会って説明する方も伝えたいことをぎゅっと1時間にまとめてたりするので、そういう意味ではお試し越境だと思うんです。また、本を読むのも学び直しですし、学び直しの手段はたくさんあると思うんです。
上野
上野
わたしは名久井さんみたいに深く考えず大学院に行ってしまったんですが(笑)、やはりこの人いいなと思う人に近づいてみて、その人が何をしているのかモデリングしてみるとか、その人がしているワークショップやお手軽なコミュニティなど、何でもいいですが参加してみると、いいなと思う人の周りにはいい人がいっぱいいたりします。
ただ、一方で思うのは、時間や労力をかけないとリターンはないと思います
石見
石見
人を中心にきっかけを作るとすれば今のSNSとかもたくさん色んな場があるので、昔に比べると行動が起こしやすいですよね。そう考えると、名久井さんのご研究にもあったとおり、実は身近なところにきっかけがあるのにアクションを起こせないというのは自分で自分に鍵をかけてしまっているのかもしれません。
名久井
名久井
学び直しのコストでということではファミリーマネジメントというのが大切だなと思います。限られた時間を、大学院か家族か仕事かって振り分けるときに家族にとって負担にはなっていたと思うんです。だから家族にとても感謝しています。
その点でもキャリアとか学び直しを考えるときに、1年、2年で考えるのはやめましょうという話をしています。3年とか5年とか7年とか時間軸を想像して考えていくのがいいと思います。

最後に

石見
石見
では最後に、皆さんにお伝えしたいことを最後に一言ずつお願いします。
上野
上野
私も一歩踏み出してみたら、こういう場に呼んでいただけるようなこともありましたし、何かモヤモヤしていたら一歩踏み出してみると、いろいろいいこともあるんじゃないかなと思っています。僕ももっともっといい人生を豊かに送りたいと思ってますので、興味を持たれた方がいらっしゃいましたらFacebookもやってるので、メッセージなどいただけたらとても嬉しいです。
名久井
名久井
みなさん、ありがとうございました。顔を洗うとか、歯磨きみたいな感じで学び直していくのが当たり前になる社会を作りたいという思いでこの本を書きました。生きていればずっこけることもあると思うんですよ。ずっこけた時に学び直していると立ち上がれるし、いいじゃんと認められるような社会。その結果、ヒューマンリソースではなくてヒューマンキャピタルという言葉がもっともっと広がってほしいと思っています。そのために、学び直しコストに向き合うことは結構かっこいいよということを僕は伝えていきたいと思っています。本日はありがとうございました。