会社は、単一のノウハウだけでは回りません。だからこそ、個人ごとに得意領域があり、うまくできる人に評価が集まるのは当然なのですが…。
「その仕事は〇〇さんじゃないと分かりませんね…」
「○○さんの意見を聞かないと、判断できないですね…」なんて言葉が多く飛び交っているようなら、注意が必要かもしれません。
今回は、テレワークやオンラインシステムの導入拡大が避けられない現代における、ナレッジマネジメントについて解説いたします。
あたふたの原因は、業務の属人化
「その仕事は○○さんじゃないと分からない」を引き起こしているのは、業務の「属人化」。業務の進め方や進捗状況などの詳細を、担当者しか把握していない状態を指します。
担当者以外には「なにを・どうのように・どのくらい」したかという業務の詳細が見えなければ、もはやブラックボックス状態。担当者がサクサク回しているうちはいいのですが、担当者が突発的に休んだり、退職したときに問題は表面化します。突如として現れる得体の知れない業務に、チームがあたふたした経験、皆さんもおありですよね?
逆に業務の流れやノウハウがしっかり管理されており、誰もが同じように仕事できる状態は、業務の「平準化」といわれています。
属人化のデメリット
属人化には多くのデメリットがあります。
・仕事が遅くなる
担当者がいなければ、業務遂行が不可能に。また、一部の社員の業務負担だけが極端に大きくなり、そこが業務フローのボトルネックとなる可能性もあります。
・ミスを隠蔽しやすい
属人化は他人の監視が行き届かない環境を作り上げてしまいます。ミスが発生しても気づきにくく、また、担当者がミスを隠蔽しやすい環境も生み出します。会社の不祥事につながりかねません。
・業務品質が低下する
ミスが発覚しにくいため、ミスを出発点としたさまざまな改善が行われません。また、新たなアイディアややり方も生み出されることはないでしょう。
ナレッジマネジメントが求められている背景
「終身雇用制度」も崩壊し、もはや転職も当たり前の今の日本では、「人に依存した仕組み」は非常に危険です。昔のように、ベテラン社員が若手へ知識やノウハウを口伝えで継承することも難しくなってきました。
リモートワークの浸透も属人化を避けたい理由ひとつです。オンラインでも指示や進捗確認をスムーズにするため、属人化とは真逆の「業務の見える化」や「透明性」が重視されるようになってきています。
その他、企業合併などの体制変化や働く人の多様化で起こりがちな、コンセプト共有や引継ぎなどのコミュニケーションコストを下げるためにも、ナレッジマネジメントは注目を集めています。
これからは、人に依存しない仕組み構築が必須です。
業務の「平準化」ができた組織から、一抜けで成果が出やすい時代ともいえるでしょう。
平準化に必要なのは、ナレッジマネジメント
ナレッジマネジメントは、社員個人が持っている知識(=ナレッジ)を会社全体で共有し、新たなイノベーションを生み出し、全体的な生産性を向上させることを目的としています。
ナレッジマネジメントの導入で、以下が実現できます。
・業務が改善され、生産性が向上する
日々の情報の蓄積があれば、業務改善と効率化が進みます。情報収集の時間が減り、その分を他の業務に活用できれば、生産性向上も期待できます。
・教育体制が整う
ノウハウが共有されているから、新入社員や若手社員の教育がスムーズ。研修にかけるコストを抑えることができます。
・社員のスキルアップ
優秀な社員の経験や知識・ノウハウを共有できます。その情報を読み込み習得することで、組織全体のスキルアップにつながります。
また業務の平準化ができている組織では、さまざまな施策の効果が出やすい特徴を持ちます。ナレッジマネジメントの導入は、企業価値を高めるかもしれません。
組織が持つ知識には2つある
ナレッジマネジメントに着手する前に、会社に蓄積される知識には2つの種類があることを知っておいてください。
・暗黙知
はっきりと言葉にできない、知識やノウハウ。いわゆる「長年の勘」と表現されるもの。
・形式知
明確な言葉や数字、図表で表現された知識。データなど。
ナレッジマネジメントでは、どちらの知識も蓄積の対象となります。「暗黙知」の共有は難しいとされており、「暗黙知」をいかに「形式知」に変換するかが、ナレッジマネジメントの要です。
ナレッジマネジメントの方法4つ
ナレッジマネジメントを進める方法には、大きく4つの方法があります。
【方法1】ベストプラクティス共有型
特にパフォーマンスの高い社員の知識やノウハウを「形式知」化し、共有して、組織全体の個人のスキルを底上げする方法です。たとえばトップ成績の営業社員の、顧客との付き合い方や契約の取り方などのセールス手法を分析。それをマニュアル化し、誰でも再現できるようにする方法などがあるでしょう。新人の早期戦力化も期待できます。
【方法2】顧客知識共有型
顧客からのクレーム内容、対応履歴をデータベース化し共有して、そこから顧客への最適な対応策を導き出す手法です。過去に発生したクレームやトラブル情報を共有しておけば、次に発生した際に素早い対応が可能になり、自分が経験したことのないパターンに遭遇した場合でも適切に対処できます。組織全体で顧客知識を共有すれば、部署による対応の差がなくなり、顧客満足度の向上も期待できるでしょう。
【方法3】経営資本戦略策定型
組織内の各々が所有している知識を分析し、経営戦略策定に役立てる手法です。これまでに発生したデータを分析し、戦略的かつ現実的な判断を下すことが目的です。管理するデータ量が多いため、DWH(データウェアハウス)やデータマイニングツールなどのツールを活用する場合が多いといえます。
【方法4】専門知識型
組織内外の専門知識をデータベース化し、すぐに検索、閲覧できるようにする手法です。たとえば情報システムなど社内外から問い合わせが多い部署では、専門知識を持った社員が対応に追われてしまうケースが多くあります。そのためよくある問い合わせをFAQとして公開し、本来の業務に専念できるようにするなどの方法があります。
ナレッジマネジメント 具体的には?
さまざまな方法があるナレッジマネジメント。
具体的にはどのように行えばいいのでしょうか?
1.オンラインファイルストレージによるドキュメントの共有
オンラインストレージとは、インターネット上に自由にデータを保存し共有するシステム。必要な情報を1箇所に蓄積することで情報の検索も容易になります。「Googleドライブ」「OneDrive」などが代表的なサービスです。
2.社内wiki
社内の情報やノウハウを蓄積・共有するため百科事典のようにまとめたもの。社内wikiは特別な知識がなくても使いやすく、情報の共有だけでなく、整理と更新の役割も持ち合わせます。
3.部門を超えた情報共有・活用
立場にかかわらず同じ会社の人たちが気軽に話し合う機会の設定。ITツールを使わず、共有したテーマに関し、自由にざっくばらんに話し合う場を設けている企業も多くあります。代表格として、本田技研工業株式会社が提唱する「ワイガヤ」は有名です。新しい価値や解決策を生み出すだけでなく、参加したメンバー同士のコミュニケーションが活発になるというメリットもあります。
4.定例的にミーティングを開催
「知識管理・伝承」を目的としたミーティング。週1回や月1回など定期的に開催することで、組織全体の風土となり、ノウハウが新しい人へ受け継がれていきます。
まとめ
ナレッジマネジメントのゴールは、単なる情報の共有ではありません。そのナレッジを活用し、会社の生産性を向上させることこそがナレッジマネジメントの目的です。部門を超えた情報の共有は、会社に新たな価値を生み出し、イノベーションへとつながる可能性を秘めています。その実現は簡単ではないかもしれませんが、ナレッジマネジメントにはそれだけの意味があります。
ナレッジの共有をもっと効率よく行うためには、ナレッジマネジメントツールの導入検討もおすすめです。多方面に眠る会社のナレッジを一か所にまとめ、未来のために活用してみてはいかがでしょうか。