Habi*do通信

今注目の「ワーク・エンゲイジメント」 向上のために企業は何をすべき?

ワーク・エンゲイジメントは、ユトレヒト大学 シャウフェリ教授によって提唱された、職場におけるウェルビーイング (心身的・社会的に幸福な状態) を捉える用語です。
一般に「熱意・没頭・活力が揃った状態であり、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態」であることと定義されています。

一方でワーク・エンゲイジメントと似た言葉に、ボストン大学のウィリアム・カーン教授が提唱した「従業員エンゲイジメント」があります。
従業員エンゲイジメントは明確な定義づけがされていないもので、従業員の仕事に対する満足感や会社への愛着心、待遇に関する満足度、経営者への共感度など多様な意味で用いられています。

ワーク・エンゲイジメントは主にアメリカ企業で用いられていた概念ですが、国内でも価値観の多様化や組織と個人の関係性の変化などによって徐々に注目されるようになりました。
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ワーク・エンゲイジメントがどうして重要か

ほめあう認め合うなぜ企業でワーク・エンゲイジメントが注目されているのか、その重要性についてご紹介します。

要因1:生産性を高める

ワーク・エンゲイジメントは企業の生産性を高める要因です。

実際に個人の労働生産性向上していると感じている従業員が多いほど、ワーク・エンゲイジメントが高いというデータがあります。
人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について/厚生労働省 参照)

要因2:人材の離職率を下げる

ワーク・エンゲイジメントが高いほど企業への定着率が安定し、低い場合は離職率が高くなる傾向にあります。

従業員が辞めなければ企業は採用や教育にかけるコストを最低限に抑えられるので、人材の定着率は特に重要です。

かつて新入社員の離職率を表す表現として7・5・3(しちごさん)と言われていました。
これは就職して3年以内に中卒の7割、高卒の5割、大卒の3割が離職するというものです。最近でも大卒者の3割という状況は変わっていません。
新規学卒者の離職状況/厚生労働省 参照)

人手不足がうたわれる企業が多い中、新入社員に長く勤めてもらうためにはワーク・エンゲイジメントを高められるかどうかがポイントです。

「新入社員が入社後すぐ離職してしまう」という悩みを持つ企業は、ワーク・エンゲイジメントのスコアについて見直す必要があります。

ワーク・エンゲイジメントを決める要素とは

会社におけるワーク・エンゲイジメントは個人資源と仕事の資源の二つの要素によって決定します。

個人の資源

個人の資源は本人の内的資源のこと。個人のモチベーションを高めるために必要な要素で、楽観性や自尊心、自己効力感などがそれに該当します。心理的ストレスを軽減したりモチベーションをアップさせたりするための原動力となる存在です。

「個人の資源」という言葉から従業員自身の問題と思われがちです。しかし個々の資源を充実させるため、企業による取り組みが欠かせません。

企業として研修や情報発信のほか、定期的に面談等を行い従業員のセルフケアやセルフマネジメントを促す必要があります。

厚生労働省では個人資源を培うための「ジョブ・クラフティング」研修プログラムを推奨しています。ジョブ・クラフティングは、上司や同僚とコミュニケーションの機会を増やす、短期的・中期的な段階で目標を設定する方法を学び、従業員の活力向上を目指す研修プログラムです。

仕事の資源

仕事の資源は組織内の要因のこと。上司や同僚からの承認や信頼関係、組織の価値観への共感などがこれに該当します。いずれも充実することで、動機づけの向上やストレス低下につながるのです。

この仕事の資源の活用できる環境づくりがワーク・エンゲイジメントを高める重要なカギとなります。

ワーク・エンゲイジメントを高めよう

仕事の資源を増やしワーク・エンゲイジメントを高めるために組織チームが意識したい項目をご紹介しましょう。今勤めている会社では、どこまで取り組めているのかをチェックしてみてはいかがでしょうか。

1.職務

一つ目に大切なことが職務について。個人に十分な裁量を与えて仕事にやりがいを持たせているかを確認してみましょう。古い体制の企業は部下に仕事を任せることをおそれ、管理しすぎるマネジメントをしがちです。しかしこれはワーク・エンゲイジメントの観点からすれば誤りと言えるでしょう。

チャレンジ精神を尊重しまずはやってもらう。管理者は従業員が最大限の力を発揮できるようにサポートに徹することが大切です。

2.自己成長

従業員に成長機会があるか、フィードバックを与えられているかを考えてみましょう。組織として体系的なスキルアップのための道筋を用意しておけばワーク・エンゲイジメントが高まり個々に自己啓発を促せます。

自分から学ぶ姿勢を持ってもらうことが企業活動においては重要です。

3.支援

上司・同僚から職務上や自己成長に関する支援が受けられているかをチェックしましょう。
個人の処理能力の限界を超えた仕事量になっている場合は上司や同僚のバックアップが必要です。

仕事が多くてもストレスを回避する機会があるなら、より高いハードルに挑戦しようという意欲が従業員に芽生えます。

4.人間関係・健康

上司・同僚とどれくらい良好な人間関係を築けているのかを確認しましょう。人間関係の構築にはこまめなコミュニケーションが求められます。定期的に面談をして、相談しやすい環境づくりを徹底して社員を孤立させないことです。

職務面やメンタル面においても、苦しい時に助けてほしいと言える風通しの良い職場環境の整備が求められます。

5.承認

部下の努力・成果に対して承認して、本人に伝わっているのかをチェックしましょう。
努力・成果を認められることにより、新たな仕事に取り組む意欲が生まれるからです。

「見ている人は見ているんだ」という考え方を押し付けるのではなく、褒めるときは直接本人に伝えるようにしましょう。

研修や診断を、積極的に活用しよう

社員のモチベーションアップのためには、お互いを知るための対話やディスカッション、研修といった手段があります。また企業によっては、組織の活力を計るためのエンゲイジメント診断を行っているところもあります。

Habi*do(ハビドゥ)の心理的資本診断では組織の現状を把握することが可能。個人・仕事の資源を活用するときの参考になります。各種組織エンゲイジメント診断と同様に、組織への適用力を推し量ることが可能です。ぜひ無料診断をお申し込みください。
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とはいえ何から始めればわからないという人は従業員への声かけから始めてみましょう。ワーク・エンゲイジメントを高めるためには、日ごろからコミュニケーションのとれる環境を作ることも非常に重要です。

できるところから取り組みを進め、組織全体でワーク・エンゲイジメントに意識を向けることが求められています。