様々な組織の課題について聞くことがありますが、その中でも大きなテーマの一つとして管理職の存在があります。世の中の変化のスピードは早く、過去の成功体験がそのまま部下へのアドバイスとして活きるとも限りません。それだけではなく「部下の行動や結果を管理する」ような文字通りの管理するだけの管理職は活躍の場は限られてきています。
しかも、中間管理職と言われる通り、現場の部下と、経営層や上長との間に挟まれて大変な存在として扱われがち。そんなイメージが先行してか、管理職になりたくない人材も増えていると聞きます。そこで、今回は本コラムにて改めて現場のマネジメントで求められていることは何かに焦点を当てながら、その価値を見つめなおしたいと思います。
時々、話題にあがりますが「管理職」という表現自体が誤解を招きますし、今求められていることいそぐわなくなってきていると感じます。以下、本コラムでは「マネジメント職」と言い改めたいと思います。
目次
決して管理や評価が主ではない
先日公開した以下のコラムでも触れられていましたが、国内のマネージャーのうち9割近くが「プレイングマネージャー」ということもありますが、負担も大きく、それぞれに役割については葛藤があるように思います。
ある経営者の方とディスカッションをした時に、1人あたりがマネジメントできる人数は限られているという話が出ました。この話題は実は様々な場面で、同じ意見が出ますし、私も同感です。
およそ皆さんの意見を統合すると1人のマネジメント職が「マネジメント」できるメンバーの数は5人~6人までが良いところだという話です。(もし役職の無いフラットな組織をつくるとしても、人材育成を現場で行うような役割を持つ人をうまく配置することが必要になるでしょう)
数十人~数百人を同時にマネジメントしている、という強者も稀にいますが、もちろんどこまでマネジメントしているかによっても異なります。よくよく聞くと、チェックしたり、結果を評価しているという話だったりもします。それだと、どちらかというと管理に近いのかなというのが私の印象です。(中には本当に何百人のことを把握して、1人1人のことを見ている超人的な方もいらっしゃいますが!)
本来のマネジメントは、ひとりひとりのパフォーマンスの最大化・チームとしての成果の最大化を図っていくことが主目的ですし、その中で様々に目標達成支援や行動支援、そして育成視点での指導や助言を行ったり、組織の目指すミッションや戦略や市場環境・組織状況を加味しながらチームとしてとるべき戦術をとっていくなど多岐にわたります。そう考えるとマネジメント職の果たす役割、責務はとても重要であることが分かります。そして捉え方によっては、とても面白味のあるものです。
ちょっと乱暴ですが「評価は後からついてくる」として、いったん自己の評価のことは置いておくくらいの方が、マネジメントすることを前向きに捉えられるかもしれませんね!
今マネジメント職に求められていること
では、チームとしての成果を最大化するために、どのようなことができるでしょうか。
自分の腹決めをすること
1つ目には、まずはマネジメント職である自分自身の意志がどこにあるのか、自分軸を明確にすることではないでしょうか。
「会社の方針を伝えるための伝書鳩」ではないはずですよね。会社や所属組織の方針があったとして、自分はどうしたいのか、どんなチームにしたいのか、チームとしてどんな目標を目指したいのかが無ければ、メンバーを突き動かすような熱意を感じられず、士気も上がらないのではないでしょうか。
何かしら志があって、今の職場に来たはずです。とはいっても、そんな志なんてもともと無い…ということもありますよね。大げさでなくとも、自分が何のために仕事をしているのかをふりかえってみるのもひとつの方法です。
メンバーを知り理解すること
2つ目には、今度はメンバーひとりひとりのことを知ることです。何が好きで、何が得意で、何が苦手と思っているのか。自分はチームの中でどんな働きをしたいと思っているのか。もっと突っ込めば、どんな貢献を世の中(社会、会社、地域、家族など)に対してしたいと思っているのか。会社やチームの目指す方向に対してどう思っているのか。
普段、業務の確認だけしていないでしょうか。その人自身についてどこまで知っていますか?その人について知らずに、チーム(もっと言えば会社として)の成果を最大化をするための適材適所の最適配置も難しいように感じます。
モチベートすること
3つ目に、モチベーションを刺激していくことです。自律的に自己完結でモチベーション高く行動を続けられる人ばかりではありません。では、どうやって刺激していくのか。
様々な方法はありますが、これだけはやってほしいと思うのは「メンバーひとりひとりを主人公にするような働きかけ」を行っていくことです。そのためには2つ目に先ほどあげたようにひとりひとりと向きうことが前提で、メンバーがどんなときにイキイキするか、嬉しいとか、充実感とか、達成感を得られるか見極めることも重要です。そして日常の業務の中で、その人の良いところ(弱みも裏返せば強み)や良い行動を見つけるような習慣をマネジメント職が持つことです。
そしてそれぞれの「在りたい姿」「こうしたいという想い」に向かって進んでいるという実感をメンバー本人たちが得られるようにフィードバックを行っていくことです。時には厳しいフィードバックも行いつつです。こうしたコミュニケーションの積み重ねが、人材育成につながるのではないでしょうか。
育成する視点を常に持つこと
最終的には、ひとりひとりが自律的に目標達成や課題解決を目指して行動を起こし続け試行錯誤できるような人材として育つようなマネジメントを目指してほしいです。
マネジメント職として関わったメンバーが成長し、別のチームに異動したとしても活躍していくことは嬉しいものではないでしょうか。
本来のマネジメントの役割に立ち戻る
取り上げた今求められているマネジメント職の役割は、ほんの一部に過ぎないですが、メンバーを支援していくことや、チームワークを向上させることの比重が大きくなっていくことは間違いないと思います。
行動経済成長期や、バブル期、ITバブルといった景気が良い時、市場が拡大する時などには、とにかく行動量が大事で、お手本通りにしっかり動けば成果もついてくるように一般的に言われた時代には管理型の”管理職”が果たす役割は重要だったのかもしれません。もちろん現在でもビジネスモデルや市場環境によっては、管理型の管理職が重要なケースも大いにあります。
と、ここまで「管理職」の役割が変化していくという話題を展開してきましたが、よくよく考えると本来的な「マネジメント」が果たす役割に組織から求められる役割の優先度・比重が戻ってきているというのが正しいように思います。何も本来のマネジメントは変わっていないのです。
P・F・ドラッカー氏によるとマネジメントには大きく3つの役割があるとされています。
①自らの組織に特有の使命を果たす。マネジメントは、組織に特有の使命、すなわちそれぞれの目的を果たすために存在する。
②仕事を通じて働く人たちを生かす。現代社会においては、組織こそ、一人ひとりの人間にとって、生計の資、社会的な地位、コミュニティとの絆を手にし、自己実現を図る手段である。当然、働く人を生かすことが重要な意味を持つ。
③自らが社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題について貢献する。マネジメントには、自らの組織が社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題の解決に貢献する役割がある。
マネジメント-基本と原則(P・F・ドラッカー著)より抜粋
マネジメントの定義は諸説ありますが、ドラッカー氏のものを引用しました。
組織の目的を果たすため。人を生かすため。そして社会問題の解決に貢献するため。
組織の目指すミッションやヴィジョンをしっかり認識し、自身の意志とすり合わせを行っていく必要があるでしょう。その時に、どのように社会問題に貢献したいか考える機会を持つことが大切です。直接的でなくとも、間接的にでも良いのだと思います。そして人を生かすために、ひとりひとりについてよく知ったうえでその人らしさを発揮し活躍することを促すための支援を行い続けることなのではないでしょうか。
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