日本では、2007年に高齢化率が21%を超え、超高齢社会(※)に突入。
※超高齢社会というのは、高齢社会の状態からさらに高齢化が進み、高齢化率21%を超えた社会のことをいいます。
日本は急激なスピードで高齢化が進んでいます。労働力を確保するために、シニアの活用は不可欠となるでしょう。増大する社会保障費をカバーするため、シニアの就業を促進し、制度の支え手側に回ってもらう必要もあります。
とはいえシニア活用が進んでいない日本企業。その理由とは何なのか、今後どういった制度や支援が必要となってくるか、について考えていきます。
どの国よりも速いスピードで高齢化が進む日本
日本は世界のどの国も経験したことのない高齢社会を迎えています。我が国の総人口(2020年9月15日現在推計)は、前年に比べ29万人減少している一方、65歳以上の高齢者(以下「高齢者」といいます。)人口は、3617万人と、前年(3587万人)に比べ30万人増加し、過去最多となりました。
高齢者の総人口に占める割合を比較すると、我が国(日本)の28.4%が最も高く、次いでイタリア(23.0%)、ポルトガル(22.4%)、フィンランド(22.1%)などと続きます。
世界各国の高齢化率が、7%から14%になるまでに要した年数(倍加年数)を比較すると、フランスが115年、スウェーデンは85年、日本と同じように少子高齢化が問題となっているドイツにおいても40年かかっていました。日本は驚くことに、昭和45(1970)年に7%を超えると、その24年後の平成6(1994)年には14%に達してしまったのです。
シニアの雇用が進まないその理由
これだけ高齢社会となった今においても、シニアを雇用していない企業も依然として存在しています。
シニアを雇用していない企業の人事担当者200人に対し、理由を尋ねると、「シニア向けの仕事がない」が61.5%と最も多い理由として挙げられました。(株式会社アデコ/働くシニアの意識とシニアの雇用に関する調査より引用)
シニア雇用に積極的な企業が人手不足の解消や人材定着難航中の即戦力としてメリットを感じているのに対し、シニア雇用を行っていない企業は「シニアの雇用に際しては専用の仕事を用意する必要がある」という先入観を抱いていることがみえてきます。
シニア社員はベンチへと退き、別途準備された仕事にいそしむ。こういった判断を企業側が行っていることがうかがえます。本人の希望ならばともかくシニアを一括りにして別枠として考える意識、は見直していかなくてはなりません。
シニアの過去の実務経験を業務に活かせるようであれば発揮していく。そしてこれまでの経験だけを頼りにするのではなく、新たなことへのチャレンジも積極的に支えること、どの企業においても重要となってくるでしょう。
生涯現役 学びに終わりはない
シニア側も自分は一戦で働くのは難しい、そもそも働いていけないのでは、という思い込みがあるのではないでしょうか。
いい年になったのだから、と自分の可能性に制約をかけ、未経験の仕事に関してはやったことがないからできないと決めつけてしまう。シニアのアイディアや経験を活かしたサービスや商品づくりは、企業にもシニアパーソンにもメリットがあります。
私たちでは難なくのぼる階段、乗り越える隙間。簡単に開き運ぶのが簡単な袋。シニア層が使うときには不便、むしろ危険ということもあるでしょう。
高齢者にとって使いやすいもの、過ごしやすい環境、心地よいサービス。障害者にとっても子どもにとっても安心でき使いやすいものとなる可能性は高いのではないでしょうか。私たちは、日々の生活の中でたくさんのサービスや商品を購入し、用しています。みな一生消費者であり、サービス利用者なのです。
人材の多様性を理解し、競争優位の源泉として活用するダイバーシティマネジメント。女性や外国人を中心に考えがちですが、シニアの活きる土壌作りも重要となってきます。
人生100年時代。学ぶことに終わりはありません。生涯にわたって学習が必要なのです。小学生から大学生といった学ぶ時期、社会人となって働く時期、老後、といった3ステージで分けられる時代ではなくなってきています。学びながら働く、働きながら学ぶ、時代へと変わっているのです。実際に働いているとすべてが以前経験したとおりには進まず、学習せざるを得ないのです。働くことに伴って学ぶということが大切です。
当然、支援のあり方も変わらなくてはなりません。
シニアの本格的な活用が課題に
今までのようにシニアが少数である組織でなく、今後シニア社員が組織内の大半を占めるようになります。2040年には就業者に占める65歳以上の割合が2割近くになり「5人に1人が高齢社員」という時代を迎えます。シニア社員の本格的な活用が必須となるのです。
役割レベル、就業時間、評価、高齢者雇用継続給付の活用も考慮した柔軟な給与・賞与などの待遇条件といった人事制度の設定が課題となってくるでしょう。定年年齢を過ぎると部下がいなくなり、賃金が下がり、あまり重要でない職種へと変えられてしまう。このような状態のままで生産性が向上する、やる気が出るとは考えられません。
「何に対して賃金を払うか」経営ビジョンと連動した方向性を決定することが重要。生涯で賃金と貢献度が精算される仕組みにおいて通常描いていたS字カーブ、このカーブから脱し、役割、成果、貢献度に応じて賃金を払う形を構築しなくてはなりません。働く年齢を意識させない賃金報酬制度はシニアだけでなく従業員全てのモチベーションを維持する仕組みとなるはずです。
しかし、賃金ばかりに目的ややりがいを感じる人ばかりではありません。シニアとひと言でいっても、資質や能力、職務経験、健康状態、定年後の働き方に対する考え方や希望する職種、業務形態も一律ではないでしょう。
シニア人財の多様性に目を向け、一人ひとりとの対話の中で、仕事以外の生活でやりたいことや意欲や希望といったところもヒアリングを続けていく。定年後のキャリア観などを把握し、ふさわしい処遇の実現が求められています。
定年前の早い段階から定年後
シニアといっても、一人ひとり異なり、背景も技術も希望もそれぞれです。年齢で区切るのではなく、生き生きと働きたい、そう思う人たちをいかに活かすか、という発想を企業側が持たなくてはならないのではないでしょうか。性別や年齢に偏見や縛りがない、生涯現役社会の実現。そのためにもシニア層も働きやすい働ける環境づくりの整備が求められています。