昨今の新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、在宅勤務、リモートワークにシフトせざるを得ない状況に多くの企業がなりました。IT環境、Web会議ツールをどうするか?などの問題が当初はありましたが、時間を経て徐々に解消されつつあります。
しかしながら、リモートワークでの上司と部下の間でコミュニケーションはまだまだ大きな問題として残っています。
「テレワークと人事評価に関する調査(株式会社あしたのチーム)」によると、管理職がリモートワークでの部下に対する不安では「生産性が下がっているのではないか」「報連相をすべき時にできないのではないか」、「仕事をサボっているのではないか」が上位となっています。
このような状況下で上司と部下はどのようなコミュニケーションをとれば良いのでしょうか?
過剰な監視、管理は逆効果
オフィスでは部下がいつも自分の目が届く範囲で仕事をしていたので、リモートワークで部下の姿が見えないことに不安を感じてしまうのは当然かもしれません。そこで、社員を自分の監視下において、細かく管理しようと考えてしまう上司も少なくありません。ちゃんと席についているか?見えないところでサボっていないか?などの対策として、監視ツールを利用する企業もあると聞きます。
しかしながら、上司が本来見るべきものは何でしょうか?部下が席に座っている姿でも、長時間のPC作業でもありません。また部下の立場に立てば、常に監視されていることは息苦しいでしょう。それどころか、上司から自分は信頼されていないと感じざるを得ないでしょう。上司が自分のことを信頼していないと、もちろん部下も上司を信頼しません。部下を過剰に監視、管理しても信頼関係が崩れ、結果として仕事の成果は上がりません。
成果に向かうコミュニケーション
リモートワークかどうかに限らず、部下とのコミュニケーションの目的は何かを考えてみましょう。一言でいえば、部下が成長して成果を出すことにつきます。決して監視をしたり、細かい管理をすることではありません。
部下が成果を出すためにコミュニケーションで重要なことが3つあります。
1つ目は、「目指す成果、目標について、部下に迷いや誤解をなくす」ことです。目標が上司と部下で正しく共有認識できれば、細かくプロセスを管理することなく部下に任せることができます。リモートワークでは口頭での確認だけでなく、議事録などの書面に残しておくことが有効です。
ただ、部下に任せたとしても、途中で迷いや不安が部下に生じることがあります。そこで、2つ目は「目標を目指す部下の不安、悩みを拾い上げる」ことです。仕事の進捗だけでなく、体調や精神面での悩みも拾い上げましょう。オフィスでは表情、態度で分かる点も多いですが、リモートワークでは把握しづらいので、上司から積極的に1on1ミーティングなどを活用して確認しましょう。
3つ目は「気軽な雑談を意識的にする」ことです。部下に「悩み、不安があるときは、いつでも相談するように」といくら伝えても実際はなかなかできないものです。オフィスであれば、上司が手が空いているか?機嫌は良いか?などを見て、部下は相談できますが、リモートワークでは難しくなります。そこで、手軽かつ有効になる方法が雑談です。雑談を日常的にしていることで、気軽に相談ができるようになります。また雑談から新たなアイデアが生まれることもあります。雑談をする時間を意識的に取る、チャットツールに雑談ルームをつくる、などの工夫をしてみてください。
チームで積極的に話す機会をつくる
リモートワークで希薄になるコミュニケーションは、上司と部下の間だけではありません。上司を含めたチームメンバー同士のコミュニケーションが少なくなります。
メンバー同士の助け合い、励まし合いはもちろん、雑談や挨拶すら希薄になりがちです。リモートワークでは、オフィスと異なり物理的には一人ぼっちで寂しく感じる部分があります。お互いの体調や表情をうかがい知ることも難しいです。だからこそ、メンバー同士が相互に承認することで、全員がチームの一員と意識できる機会が大切です。実際に使ってもらいたいおすすめの方法をご紹介していきます。
まずは、朝会です。物理的に朝出社するときと同様に朝のあいさつもかねて、朝会をすることがおすすめです。朝会では、できるだけ全員顔を合わせて今日の予定や連絡事項を共有します。短い時間で良いので、仕事に関わらずポジティブな近況報告をするのも良いでしょう。
そして、次におすすめしたいのが、ウィン・セッションです。直訳すれば、勝利の会になります。週の終わりに各自ができたこと、よかったたことを発表し、お互いに承認、称賛します。相互の承認が高まるだけでなく、ポジティブな情報共有が促進されます。大切なことはこの場ではポジティブな雰囲気を全員が保つルールを決めておくことです。この場で責任追及などネガティブな発言をすると、素直な発表が期待できなくなってしまいます。
また、定期的にチームの仕事の進め方を全員で振り返ることも大切です。そこでKPT(ケプト)と呼ばれるチームで振り返る方法をご紹介します。「Keep:続けたいこと、良いこと」、「Problem:問題点、やめたいこと」、「Try:新たに取り組みたいこと、挑戦したいこと」を全員で話し合います。まず、Keep、Problemを全員が考えて、書き出したうえで共有します。共有後にTryを各自で考え共有し、実際に取り組むことを決めます。KPTをすることで、全メンバーをチームに巻き込むことがきます
高頻度&短時間で密なコミュニケーションを
リモートワークでは、オフィスとは違い表情、態度などの非言語情報が読み取ることはできません。コミュニケーションのスキルや手法をリモートワークに合わせることも大切ですが、なにより質より量を心がけてください。
いくらコミュニケーションのスキルが高くても一回のコミュニケーションでできることは限られています。また、不透明な状況下で最初に全てを決めて伝えることも不可能です。こまめにコミュニケーションを取ることで、相互理解や信頼関係が深まります。高頻度でコミュニケーションを取るためには、一回あたりの時間を短くすることが大切です。
リモートワークであっても、上司も部下も同じチームの仲間です。密なコミュニケーションで、ベクトルを合わせていきましょう。