Habi*do通信

【開催レポート】Wellbeingや心理的資本は、どう経営に役に立つのか?人の力で業績を伸ばす~心理的資本セミナーVol.11

昨今、経営者や人事担当者の間でにわかに注目が集まっている「Wellbeing」や「幸福学」。いずれもポジティブ心理学の流れを受けたものですが、「心理的資本」もそのうちの1つ。
とは言え、イメージが先行している感も否めず、具体的なアクションや成果に繋がっているのか懐疑的な見方もあります。なぜ今、人のポジティビティに注目が集まっているのか?Wellbeingや幸福学、心理的資本を、確実に経営的な成果に繋げていくには何が必要なのか?

今回の「心理的資本セミナー」では、どうすれば真にイキイキと幸福な組織・人材づくりができるのか?研究者、実務者、経営者の3者の視点から本音で議論しました。

パネラー紹介

  • 開本浩矢 氏(画面左下)
    大阪大学 大学院経済学研究科 教授・兵庫県立大学 名誉教授(経営学博士)
  • 難波 猛 氏(画面右下)
    マンパワーグループ株式会社 ライトマネジメント事業部 シニアコンサルタント
  • 石見一女(画面右上)
    株式会社Be&Do 代表取締役
  • 橋本豊輝(画面左上)※モデレーター
    株式会社Be&Do 取締役/COO

はじめに

橋本
橋本
はじめに今日のテーマの概観をお話させていただきます。
人と組織のイキイキってなんだろう?っていうことを考えたときに、例えば、健康であることも大事ですが、それだけでは十分ではないですよね。今、幸福学という考え方も登場して、個人の幸福感がパフォーマンスに影響するという研究結果も出てきています。ウェルビーイング経営というものを目にすることも増えてきていますが、ただ幸福感を上げるだけではパフォーマンスを上げるのは難しいことは明白ではないでしょうか。
今日はその鍵となる「心理的資本」というものについて、短い時間ではありますが、皆さんと深堀りしながらディスカッションしていきたいなと思っています。

橋本
橋本
まずは登壇者の方お一人ずつから、インスピレーショントークをお願いしたいと思います。

インスピレーショントーク

開本
開本
まず私から「心理的資本」についてお話したいと思います。
そもそも企業や組織にとって人を雇う目的というのは、人が成果を生み出す本質なんだと考えるのが一般的です。これまで、経営学では、人はヒューマンキャピタル(人的資本)つまり、知識やスキルやノウハウ、学歴などを持ってるから成果を生み出せるんだ、というのが最も初期に出てきた考え方です。
次に、社会関係資本という概念が出てきました。人はネットワークで成果を出す、つまりどれだけの人と知識や情報を交換できる関係性を持っているか?が、成果を生み出す最も重要な要素なんだという考え方です。
本日のテーマになっている「心理的資本」は、その次に出てきた考え方です。心理的資本とは、ポジティブな心理的エネルギーで、実際に行動を生み出す意欲や意識みたいなものです。どれだけ人がスキルやネットワークを持っていようがそれを実際に使おうとしなければ、究極的には成果やパフォーマンスは出ないです。パフォーマンスを出すためには、「やってみよう」という意欲、つまり心理的資本が高くないとダメだ、ということでです。
じゃぁ具体的に心理的資本はどのように測定するのか?が問われるわけですが、現状では、エフィカシー、ホープ、オプティミズム、レジリエンスの4つの要素で構成されているというのが定説です。これらの頭文字を取って「HERO」と言ったりします。この4要素は、ちゃんと裏付ける理論がある、定量化できる、開発・強化ができる(研修で高められる)、行動変容や業績に影響する、という特徴によって定義されています。

開本
開本
実際に、これまでのアメリカを中心とした研究によって、業績の10%〜20%は心理的資本で説明できるんじゃないか、2時間の研修(心理的資本介入)によって2%向上できるんじゃないか、というエビデンスが出てきたりしています。
このように心理的資本が今注目を浴びるようになってきた背景としては、
・難しい変化の激しい時代になったので、柔軟に自律的に学んで成長していく人材が求められているという社会的背景
・これまでネガティブな側面ばかりが注目されがちだった心理学においても、心のポジティブな側面の研究に注目していくという流れがあること
・厚生労働省の「労働経済白書(令和元年版)」でも、働きがい(ワークエンゲージメント)を促進する要因として大事だと認識されている
・2015年~2016年頃からサスティナブルキャリアという概念が出てきている。人生100年時代では、キャリアは単に稼ぐ手段ではなくウェルビーイングをキャリアのゴールに置くべきじゃないか?と捉えなおす考え方が出てきた。
といったことがあります。


開本
開本
とは言っても、これから心理的資本が広まっていくには乗り越えなければならない壁がたくさんあります。
・心理的資本をどう測定するか?について、日本(東アジア)の文化に適切な尺度がまだないということ。
・どのように心理的資本を開発すればいいかという経験値がまだまだ十分ではないということ。
・そもそもの文化の違いの問題。特に自己観(一人一人が自分をどのような存在だと考えるのか)によって、心理的資本の考え方って随分変わります。謙遜や謙虚であることが尊ばれる価値観がまだまだ残っている日本の文化や社会の中で、心理的資本をどのように捉えていったらいいのか?というのも課題です。

難波
難波
私からは実務的な立場として、特に「ミドルシニアの活性化」についてお話したいと思います。
まず自己紹介ですが、マンパワーグループは人材の総合サービスの会社です。その中で私はキャリア開発やアウトプレイスメント、再就職の支援などキャリア開発の取り組みをしております。特に、ミドルシニアのキャリアデザインや、リストラクチャリングなどの結構シビアなコンサルをしています。本としては『「働かないおじさん問題」のトリセツ』などがありますが、心理的資本が小さくなってしまっているようなミドルシニアをどうすれば活性化できるのか?というテーマを今日お話したいと思っています。
今回、ミドルシニアの活性化をテーマにあげたのはなぜか?というと、この問題は社会的にも注目度が高く、ここ2年くらいクローズアップされているテーマだからです。特に大企業では50代とか、団塊ジュニアと言われる年代のボリュームがすごく多くて、この人たちがイキイキと働いていなかったり、新しいDX化などについていけないと組織全体が不活性になってしまう、ということが言われています。
解決するために、何をすればいいのか?今日は考えていることを3つお伝えしたいと思います。
まずは、ミドルシニアの方の活性化やパフォーマンスを上げて自律的に行動していく、ということを考えたときに、自分が「何をしたいのか」「どうありたいのか」という、自分なりの「Will」を一回掘り起こしていただく必要があるかなと考えております。
Will(やりたいこと)、Must(やらなければいけないこと)、Can(出来ること)の3つがきれいに重なっていると、ハイパフォーマーでウェルビーイングで心理的資本が高い状態、と言えるかと思います。やりたいことが周りからも求められていて自分ができる状態、ということです。
ただ実際にミドルシニアの方やパフォーマンスが出ない方に書いていただくと、これがいろんな形で離れちゃうんですね。いろんなケースがありますが、特にミドルシニアの方に圧倒的に多いのがこれです。Willが小さい(画像 右中央)。

難波
難波
まずは、ミドルシニアの方の活性化やパフォーマンスを上げて自律的に行動していく、ということを考えたときに、自分が「何をしたいのか」「どうありたいのか」という、自分なりの「Will」を一回掘り起こしていただく必要があるかなと考えております。
Will(やりたいこと)、Must(やらなければいけないこと)、Can(出来ること)の3つがきれいに重なっていると、ハイパフォーマーでウェルビーイングで心理的資本が高い状態、と言えるかと思います。やりたいことが周りからも求められていて自分ができる状態、ということです。
ただ実際にミドルシニアの方やパフォーマンスが出ない方に書いていただくと、これがいろんな形で離れちゃうんですね。いろんなケースがありますが、特にミドルシニアの方に圧倒的に多いのがこれです。Willが小さい(画像 右中央)。


難波
難波
やりたいことがないとか、そもそもやりたいことなんて考えずに20年きちゃったよ、という人がすごく多いので、これを一回考えていただくというのがポイントだと考えています。
その上で、次は上司の方々の関わりで、部下の「内発的な動機付け」をするということです。指示命令という形での動機付けはこれから難しくなっていきます。右肩上がりの経済成長ってもう見込めないじゃないですか。経済的な報酬や社会的報酬(肩書)だけで動機付けが難しくなっていく時代に、心の報酬、つまり仕事が面白いとかやりがいとかを報酬にして、ちゃんと上司の方がコミュニケーションできる状態にしていくといことが必要だろうと考えています。
今までは「マネジメントスキル」が大事だと言われていました。でもこれからは、ただ管理監督するマネジメントはシステムツールに代替されて必要なくなっていくと言われています。一方で大事になってくるのは、自分の頭で考えるとか自律的に行動するといった「モチベートスキル(自分を動機づける)」というスキルです。
先ほど開本先生がサスティナブルキャリアというお話もされていましたが、今年の4月から70歳までの就業機会の努力義務化も始まりますし、70歳まで自分を燃やし続けないといけないわけです。そこには心理的資本みたいなものもすごく重要ですし、周りに対して動機づけていくスキルが大切になってくると思っています。

難波
難波
最後に、人事も上司も双方に知っておいてほしいこととしては、「フロー状態を創る」ということです。フロー状態とは、ポジティブ心理学で言われている非常に幸福度や集中度が高い状態のことです。心のエネルギーが自分がやりたいことにちゃんと向かっている状態を創れると、パフォーマンスは自然と上がっていきます。どうすればそれが創れるか?と言うと、これにはロジックがあります。
努力しなくてもできることは「コンフォートゾーン」、どうしてもできそうにないことは「パニックゾーン」、そして努力したらできることが「ストレッチゾーン」。このストレッチゾーンに自分を置くことができたり、上司や人事がここにその人を置くことができると、人は幸福度が上がったり集中度が上がったりすると言われています。ウェルビーイングな状態にあると、こういうストレッチゾーンでフロー状態を創りやすいのではないか、と私自身は考えています。
ミドルシニアが活性化するためには、本人がちゃんと考える機会を作る、そして、上司が動機づけを1on1などでやっていく、それと人事がキャリア研修や人事制度などで支援していく、ということが有効だと考えております。

石見
石見
お二方が非常に素晴らしい話をしてくださったので、私からは簡単に弊社の紹介と心理的資本とのかかわりをご紹介します。25歳で起業して、その後、人と組織のイキイキについて20年以上、APO研という組織を作って研究をしています。当社Be&Doは、「私たちのアイディアと技術で世界の人をイキイキさせよう」というのがミッションです。
なぜ私がこんなに「組織や個人のイキイキ」にこだわるのか?ですが、一人ひとりがイキイキしたらすごく生産性が上がるんですよね。非生産的コストということに企業は目を向けてもらいたいなと思うんですが、20%の人が賃金と成果が見合っていないというデータがあります。これって能力の問題だけではないと私は思っていて、人はやりがいがあるとパワフルに行動しますよね。個人のイキイキを高めることが組織の生産性に絶対影響するはずですし、それが当社のサービスの根幹になっています。
そういう探索の一つとして、2016年にウェルビーイングをテーマに、従業員の心身の健康を支援したら業績に関係するのか?という研究を、神戸大学とAPO研で共同研究としてやりました。当社のサービスを用いた健康活動を企業でやっていただいて、その影響を武蔵大学の森永先生に分析をしていただきました。そうすると、モチベーションや組織コミットメントなどの従業員ウェルビーイングが上がったり、業績に関連する項目でも有意な効果が確認できたんですね。
一人ひとりのイキイキと業績との関係をもっと学術的にも、と考えていたところに開本先生から「心理的資本」を教えていただいたんです。そこから当社で「心理的資本」のデータを集めておりまして、少し比較ができるところまでようやくできてきています。


石見
石見
ここで興味深いのは、総じて役職者の方が一般社員よりも心理的資本が高いという傾向です。つまり、現場でのイキイキをどう高めていくのか?が業績においては重要ということなので、当社では心理的資本を高めるいろんなサービスをご用意しています。ぜひここから皆さんでディスカッションできればと思います。

パネルディスカッション

ー「働かないおじさん」と心理的資本ー

橋本
橋本
まず、難波さんの提示いただいた「働かないおじさん問題」、やはりそこは心理的資本と関係しているのかなと感じたのですが、開本先生どう思われましたか?
開本
開本
まったく同感です。心理的資本が高ければ「働かない」に状態にはならないと思います。
難波
難波
自分のホープがあって、そこにエフィカシーできそうだと感じていて、オプティミズムで楽しく仕事ができていて、レジリエンスで変化に対しても柔軟に対応できていて、、、それでもうまくいかないということであれば、Willが自社にはまっていないという可能性はあるかもしれないですが、「働かない」ということはないですよね。
チャットで今、「Willが自社にない場合は社外に求めるしかないですが、一方でシニアの転職は難しいのが定説だと思います。エイジズムが壁なのでしょうか?」とご質問をいただきましたが、同じところに長くいるほど、変化への柔軟性が落ちてしまうということはありますね。そういうレジリエンスの高め方っていうのはあるんでしょうか?
開本
開本
先に、ホープの要素について話をしたいんですが、ホープにはゴールとして何を目指すかというWillと、そこに至る手段Wayというのがあるんですよね。どっちも高めなきゃいけないし、どちらかが補完できるという関係でもあります。社内にWillに該当する仕事がなかったとしてもWayで補うこともできるので、すぐに転職というよりもできることを探せるのではないかなというのはあります。
レジリエンスにはストレッチゾーンで頑張ってきた過去の蓄積も大事なので、今までほったらかしにしてたのに、急に今「シニアのおじさん頑張れ」というのも酷な話で、レジリエンスが低いことを今責めても、とは思いますね。
石見
石見
難波さんのお話を、まさしくホープとエフィカシーだなと思いながら伺っていました。Willも大事なんですが、Wayも実はとても大事で、硬直的なキャリアの積み方をされてきた人は、道が一本しかないと思ってしまわれてるんですよね。一本しかないと思っていると、その道でうまくいかなかったときの落ち込みも激しいですし、常に道はたくさんあるということを知っていただきたいなと思います。
今は多様な働き方が認められている時代ですから、特に若い人にこそ、いろんな可能性や道筋がたくさんあることに気づけるようご支援ができるといいですね。ただ、既にできあがっちゃった人たちというのは、すごく難しいなぁと思いながらお聞きしていたんですが、ちょうどQ&Aにも似たようなご質問が来ていますね。難波さん、ヒントはありますか?
”ミドルシニアの活性化は大きな課題だと思います。会社としてはスキルをあげるための機会を提供したりしていますが、「今さら」「このままでいい」という意識の人たちを、どう前向きにさせたらいいのかが難しいです。”
難波
難波
実は私は、ここは必ずしもポジティブではなくネガティブ心理学のアプローチを取っていまして、「今さら」という人には「別に構いませんよ」って言っちゃうんですよ。よく企業からこういう人たちがにっちもさっちもいかなくて、外部からフォローアップしてくれという依頼をいただくんです。そうすると、大手企業の50代の方とか「今更やっても出世しないしさ・・」とか「新しいこととか頑張るのしんどいよ」みたいなことが出てきます。私は「それだったらそれでもいいと思いますよ」って言うんです。ただその代わり、「会社から降格されたり場合によっては解雇されたりしても文句は言えないってことを理解した上で、どっちか決めればいいんじゃないですか」って言うんです。ある意味、そこで安住できる、それで大丈夫と思ってしまうのが、日本企業の怖さかなと思います。
橋本
橋本
そいった方を奮起させるには、ある意味のトリガーが必要なんでしょうね。そういう方のWillを探すアプローチってあるのでしょうか?
難波
難波
ありたい姿のWillだけではなく、どうしても失いたくないとか、絶対なりたくない姿を問うことですね。例えば家族を路頭に迷わせたくないとか、ネガティブなんだけど本人にとって本当に失いたくないものがあるなら、そのために頑張ってみませんか?っていうことを言ったりしますね。
開本
開本
それも「家族を守りたい」と言い換えるとポジティブになりますね。必ずしもネガティブだからWillに繋がらないわけではないんです。何がその人にとってHappyなのかはそれぞれですし、これまでの出世してバリバリ働いてというのを正解にすると苦しくなりますが、これからは様々な正解があるというのが本当の意味でのダイバーシティですし、その人の本当に大事なコアな部分とWillをうまくつなぎ合わせると、もう少し前向きなエネルギーが出てくるのかなと思います。
エフィカシーも、これまで僕たち昭和の世代は特に、うまくいったことを「俺の成果だ」とアピールすることはポジティブに捉えられなかったので、自分のエフィカシーに気づくチャンスが少なかったですよね。それを掘り起こしてあげることで、高めていくことができます。
またレジリエンスを高める要因として「アセット(資産)」という言葉が出てくるんですが、自分の強みですよね、そこに目を向けて「何ができるのか?」という強みを見ることが心理的資本を高めるプロセスにつながるんじゃないかなと思っています。
難波
難波
今、先生のお話されていたことって、ミドルシニアの人と話していると本当によく出てきます。どちらかと言うと減点主義で、100%できて当たり前という中で生きてきて、エフィカシーをあまり感じないようにしちゃっているように思います。
開本
開本
そうなんですよね。うまくいったことや成功は、「皆さんのおかげです」とか「ビジネスチャンスに恵まれました」とか言う割には、失敗すると「自分のせいだ」と考えてしまう。これをしないのがオプティミズムなんですよね。
今のコロナ禍でもそうなんですが、一人一人の努力でうまくいかなかったことについては「忘れる」ことがオプティミズムなんです。でもこれも、日本の社会や組織では「成功するまでがんばれ」という風潮なので、心理的資本が高まっていかないのかなという気もします。

ー働く人のゴールが変わった?本当の豊かさへー

石見
石見
日本の風土とポジティブ心理学が相容れなかったところがあるのに、今、幸福学だとかウェルビーイングだとかポジティブ心理学が結構な勢いで広まっているのは、なぜなんでしょう。何か変化の兆しなんでしょうか?
開本
開本
僕はこれはシンプルに考えていて、ただ豊かになったんだと思います、経済的に。一定の経済的豊かさを超えると、それ以上報酬がアップしてもウェルビーイングは比例して上がらないので、経済的にもっとリッチになることよりも精神的な豊かさを求めるようになったのかなという気がします。働く人のゴールが変わってきているのだと思っています。
石見
石見
それはサスティナブルキャリアの話にも通じるのかなと思うのですが。
開本
開本
人生が長くなったというのもサスティナブルキャリアという流れになっているんだと思います。一生が学習の連続で、キャリア全体を見る視点も広くなってきているし、ゴールも経済的な豊かさだけじゃなく精神的な豊かさや、もちろん健康ということも含めてウェルビーイングがゴールとして大事になってきているんだと思います。
サスティナブルキャリアでは常に学び続ける、つまり成長すること、というのもすごく良いと思っています。学び続けることそのものがウェルビーイングだと思います。

ー「レジリエンス」は、折れない心じゃないー

石見
石見
今、心理的資本におけるレジリエンスの定義についてご質問が入っているのですが、先生教えていただいていいでしょうか。
開本
開本
はい、レジリエンスというと、よく「折れない心」と言われるので、ストレスにめげないようなイメージになりがちなんですが、心理的資本で言うところのレジリエンスはもう少し広くて、様々な原因でたとえ折れたとしても、さらにリカバーする、というところまでを指しています。なので、心理的資本では、折れること、失敗すること、挫折すること、は必ずしも悪いことじゃないんです。むしろそれによって次への成長ステップにつながると考えることもできます。
また、ストレスとは、思いがけず昇格したなどポジティブな心の反応にも当てはまります。レジリエンスの高い人は、ストレスのコントロールにも長けているけれども、決してストレスを感じないことではない。折れても良いんです、立ち上がりましょうということですね。
橋本
橋本
落ち込むこともあるけど、それまで以上に復活することということですね。
開本
開本
そうです、立ち上がる時にスキルや能力も役に立ちますし、上司や同僚や家族など周りのサポートというのも大事ですし、それをアセットとよんでいます。そういうアセットをたくさん持っている人ほど、レジリエンスが高い状態ということになります。
難波
難波
他にもたくさんご質問がきていますね。一つはスキルの可視化ということ、もう一つはシニアの解決策として制度を作った方がいいのか?というご質問。
これはキャリアデザインの視点からお話しますね。中高年の管理職の方は「部長やってました」とかって言うのですが、それだけだとバリューが見出しにくいので、一回可視化させる取り組みは有効だろうと思うんですよね。例えば、成功体験リストを作ってもらって、自分がどんなことでパフォーマンスを発揮してきたのか、どんな能力を使ってきたのかということを可視化することで、エフィカシーを感じてもらうのはひとつかなと思います。
次に制度の話ですが、早期退職とか転職とか異動とか、最近だと社内副業や社外副業などパラレルキャリアの制度を設ける会社も出てきていますが、制度はないよりあった方がいい、というのは大前提だと思います。本人の自律性という意味でも「自分で選ぶことができる」のが制度として担保されているのはいいことだと思います。
ただ、制度はあっても運用でうまくいっていないケースは多くて、それは、本人に考える機会が与えられていないとか、上司や人事が本人のキャリアに本質的に興味がなくて「どうせこの人はダメだろう」と決めつけていると、制度をポジティブに活用しようとはしないので、使う側のマインドセットは大事かなと思います。

ーモチベートする具体的な手法ー

橋本
橋本
やはり1時間だと話しきれない深いテーマだなと改めて思いましたが、最後に「モチベートするということについて具体的な手法を教え欲しいです」というご質問が来ているので、そのあたりも踏まえつつ、お一人ずつメッセージをいただけたらと思います。
難波
難波
「モチベートする」には何をすればいいか?お伝えします。今からこのチャット欄に今日気づいたこと、何でもいいので1メッセージ入れてください。これが「モチベートする」コツだと思っています。つまりアウトプットすることがとても大事で、開本先生がおっしゃっていたとおり、人生100年時代に学び続ける、変わり続けることが大前提となるなかで、学ぶだけじゃなくてそれをアウトプットする癖をつけることが社会関係資本という意味でもすごく大事です。他の人の学びを見ることで周りの人も動機付けされます。
石見
石見
難波さんのご指摘のとおり、「ふりかえり」というを私たちもとても大事にしています。毎日小さなふりかえりをしてメンバーと共有していく。そしてメンバーはそれに対してちゃんと「よかったね」というポジティブフィードバックをしていくことで、自然と代理体験も生まれて成長もしていくので、エフィカシーを高める取り組みだと思っています。
ただ見ていると、自分のことを公開するのが苦手な人たちがすごく多くて、そこはまず対話をして心理的安全性の高い場づくりをしていくことが大切なのかなと思います。
それと、Q&Aに質問がきていた「そもそもやる気がない人に企業がお金をかけて支援することは必要なのか?」ということについてですが、やはりいろんな開発の機会を提供するのは大事じゃないかなと思っています。人材は限られていますし、ますます人手不足にもなっていきますし、そういった中で、心理的資本を高めることで業績の向上支援というのは非常に価値のあることかなと思います。
開本
開本
先ほど、難波さんが仰った「アウトプットする」ということなんですが、周りの人は、アウトプットに対してどれだけポジティブに反応できるかというのがすごく大事です。最近「心理的安全性」という言葉を聞くことが多くなっていると思いますが、せっかくアウトプットしたのに、それにシニカル(皮肉的)に反応しちゃうというのが、良くない職場ですね。ポジティブなフィードバックがないとアウトプットがエフィカシーにつながっていかないかなと思います。
先ほど石見さんがおっしゃったとおり、これからどんどん人は足りなくなります。やる気のない人にどこまで手間暇かけるんだという問題もありますが、そういう人たちももともとやる気がなかったわけじゃない。組織としてもケアをすることが本当の意味で人的資本を高めることになるかなと思います。単なるスローガンじゃなくて、企業が人を本当に大事にしていくことで業績や生産性を高めることになりますし、日本全体の経済成長につなるのではないかなと思います。
橋本
橋本
皆さんありがとうございました!
チャットより一部抜粋
・自分のチーム一人一人のwill・ must・ canが重なりあえるような環境を築いていきたいと思いました
・レジリエンスは、幅広くとらえることだと理解できました。
・若いうちから、心理的資本を充実させる支援に取り組みたいです。
・自分自身が動いて変わらなければと思いました。
・大変に深い内容で勉強になりました!